81-衆-社会労働委員会-1号 昭和52年08月01日

 

 

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 国政調査承認要求に関する件

 閉会中審査に関する件

 労働関係の基本施策に関する件

 

  

○橋本委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯川宏君。

 

○湯川委員 六月二十四日に、私の方の選挙区でございますが、大阪市大正区三軒家の柳井建設という企業の寄宿舎の火災によりまして、焼死者、焼け死んだ方が十二名、それから負傷者が三名というふうなまことに遺憾な事件が起こったわけでございますが、私も、ちょうど参議院選挙中でございまして、現地にその日に行きましてある程度のことは見、また聞いてまいったのでございますが、これに関連いたしまして労働省がおとりになりましたその後の措置につきましてお伺いいたしたいと思います。

    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕

 

○桑原説明員 六月二十四日に不幸な災害が起こりまして、二十四名のうち十二名の方がお亡くなりになり、三名の方が重軽傷を負われたということになりまして、早速私どもといたしましては、所轄の大阪労働基準局、監督署から係官を現場に派遣いたしまして原因の究明に当たらせる等、現在鋭意調査中でございます。

 本災害に関しまして労働基準法の違反が濃厚でございましたので、直ちに調査をいたして、現在、基準法の九十六条、建設業附属寄宿舎規程の違反、また基準法第十五条第一項の労働条件明示の違反事実を認めましたので、七月二十二日付をもちまして大阪地検へ送検をいたしたようなわけでございます。

 その後、大阪基準局におきましては、管内のこういった寄宿舎の事故の再発を防止するために、七月一日から七日までに約百五十の問題のある事業所につきまして緊急一斉監督を実施したようなわけでございます。

 

○湯川委員 労災補償関係についての見通しその他おっしゃってください。

 

○桑原説明員 十二名の方がお亡くなりになりましたわけでございますので、遺族補償の問題がございますが、私どもといたしましては、現在その申請を待って直ちに支給できる手はずを整えておりますが、お亡くなりになりました十二名の人々のうち一名の方が身元不明でございます。鋭意調査いたしております。また、あと一名の方は受給権者がどなたになるかということでいま御協議中で、まだ申請が出てきておりません。十名の方については申請が出てきております。

 ただ問題は、賃金台帳が焼けてしまったわけでございますので、どういった賃金算定をするかということでいま基準局では検討中でございますが、とりあえず労災保険法に基づきますいわゆる一種の見舞い金的給付二百万――ことしの四月から百万を二百万にいたしましたが、その給付をしておるようなわけでございます。

 

○湯川委員 そこで、この寄宿舎につきまして一、二お伺いしたいのでございますが、労働省はもちろん、基準法の施行以来、寄宿舎の問題につきましても同じように非常に注意を払われて、事業附属寄宿舎規程というのを二十二年から施行しておられますね。それと四十二年につくられた建設業附属寄宿舎規程というものとの関連ですが、両方を見てみますと、建設業附属寄宿舎規程の方は工事完了の時期が予定されるもの、八条三号のうちでもそういういわば臨時的なものを考えておるように思われるのであります。そうしますと、今回の柳井建設の寄宿舎というのは、大正区の三軒家東といいますと、普通の商店、民家がまともな形である、一つのブロックの中の表通りから入った内側の区域でございまして、普通のいわゆる建設現場での臨時応急の寄宿舎的なものとはかなり違うのじゃないかという感じがするのであります。そういたしますと、皆さん方の言われる、あなたの言われる建設事業附属寄宿舎規程によるのか、あるいは二十二年から施行されておる事業附属寄宿舎規程によるのかという点がちょっと疑問があるのですが、どちらとお考えですか。

 

○桑原説明員 事業附属寄宿舎規程、いわゆる本則の方は、固定的な一般の産業につきまして附属しておる寄宿舎に適用させる、しかし、それではなかなか十分に対応できないわけでありまして、そこで建設業の附属寄宿舎規程をつくって、より実態に合った監督指導をしようということでできたわけでございます。

 それで、今回のものはやや固定的な寄宿舎に見えますけれども、この建設業附属寄宿舎規程をつくります当時の考え方は、基地的な寄宿舎を含めまして、永久事業をあちこちやっておる総まとめになるやや固定的な寄宿舎も含めまして建設業附属寄宿舎規程の適用をする、こういう制定当初の考え方がございますので、そういう考え方でこの問題を処理してまいりたい、こういうふうに考えております。

 

○湯川委員 建設業附属寄宿舎規程を援用されることは了解できますが、現実にこういうものは全国にいろいろな形のものがあるわけですが、大阪等で考えますと、恐らく千カ所足らずのものじゃないかと思います。そういたしますと、一つの基準監督署で平均しまして三十から多いところで五十くらいじゃないかというふうな感じがいたします。そうしますと、この規程が施行されてからでも十年たっておるわけでありますが、十年たちまして、寄宿舎制度について労働省も非常に関心を持つというのであれば、一つの監督署ではそれぞれのものについてその実態等をかなりなものは把握されておってしかるべきじゃないかという感じがするのであります。先ほど申したように、現場がそういう、とんでもない場所じゃございませんで、普通の市街地のところに同居しておった、まともないわば社長の自宅とくっついた施設であります。しかも長期的にそういうふうに利用されておったと思いますから、そうしますと、監督署としてはそれくらいの実情は本当は把握しておかれなければならないものだと思いますが、実際に西監督署においてその辺のことをよく知っておられたかどうか、その辺ちょっと伺いたいと思います。

 

○桑原説明員 当該柳井建設につきましては、四十七年ごろ一般的な監督を実施した経緯はございますけれども、この寄宿舎についてその後引き続き監督した実績がございませんことは、きわめて残念でございます。限られた監督官の数でございますので、手が回り切れぬという、言いわけになりますが、そういう点もございますが、先生お話しのように、私どもといたしましては、こういった都市過密の中における寄宿舎のあり方につきまして、その問題点を十分掌握して問題が起こらないようにすべきではないかというふうに反省をいたしておるようなわけでございます。

 

○湯川委員 事件が起こりましてから七月の第一週に、大阪においても百五十カ所ばかり調べられたというふうに聞いておりますが、さような程度でできるなら、恐らく千足らずの寄宿舎についてできるはずですから、年末ごろにはやろうというのではなくて、およそすべてについてよく実情を把握されるように監督署を激励していただきたいというふうに思います。

 次に、大阪は御承知のあいりん地区というものがございまして、あそこから来ておる建設労働者もいるわけでございますが、今回の場合にあいりん地区と関係のありました労務者は何人ぐらいと思っておられますか

 

○清水説明員 私どもで把握しております限りでは、いわゆるあいりん地区から来ておられた方というのは二名程度というふうに聞いております。

 

○湯川委員 最近、出かせぎ労働者あるいは季節労働者につきまして、労働省が非常に努力をしておられるということはよくわかるのでございますが、実際問題としまして大阪等で、大阪は特に万国博がございまして、あの以前に非常にたくさんの人が見えたわけですが、そういう方たちがいわば居ついて、自分の故郷といいますか、田舎とは無縁の形でかなりの人がおるというふうに思われる節があるのです。今度の場合も恐らくあいりんは二名程度ではないかというお話でございますが、二十五、六人ここに現実におったわけです。そういう人たちで、あなたの方の季節労働のリストにも載らない、職安にも載らない、あるいは市町村のベースにも載らない、しかし現実にさような方が数多くあちらこちらで働いておられるというふうな実態が相当あるというふうに思われるわけですが、これに対しまして季節労働に対する調査といいますか、対策をさらに広めまして、現実にこういう形の人たちがどれくらいおるのか、また、それの労働の実態はどうなのかという辺まで、ひとつ職安その他のルートを通じて努力されるようにお願いしたい。これはお願いでございます。

 そこで聞きますと、柳井建設が寄宿舎についての届け出その他しかるべきものをしていなかったというふうに聞いておりますが、さようでございますか。

 

○小粥説明員 基準法上、寄宿舎についての届け出義務等がございますが、残念ながら柳井建設についてはそのような手続はございませんでした。

 

○湯川委員 届け出をしていない、あるいは寄宿舎規則その他所要の手続をしていないという点では業者側にも問題があると思いますが、しかし先ほど申し上げましたように、監督署の側でももう少し実態に即した指導等をしていかなければならないと思います。問題は、業者から見ればいわば煩わしいといいますか、余り好きこのんで積極的にやることではないということの要素もあって、なかなか渋る人もおるのでしょうが、これに対しまして、ただ相手が渋るからというだけで受身の態度では、今後ともよくならないというふうな感じがいたします。特に昨年の十月から、建設労働者の雇用の改善等に関する法律ですか、ああいうものも施行されておりますし、役所側としての法律上のいろいろの措置というのはかなり前進してきておると思いますが、これが現地におきまして期待されたような実効が必ずしも上がっていないという点では、なかなか問題があろうと思います。こういう法律も周知をされ、それが目的どおり実施されるようなぴしっとした指導といいますか、体制を現地の監督署等においてとられるように一段の工夫が必要じゃないかというふうに思います。

 さらに、こういう向こうさんが余り積極的にのってこないというものにつきましては、もう少し別の方法で、たとえば公共団体の指名等に関連しまして、寄宿舎の問題とか基準法その他等々に関することで事業主側が必ずしも好ましくない、相当社会的な指弾を受けなければならないような実態を続けておるというふうなものに対しまして、指名その他で考慮もするというふうなくらいのかなり思い切ったこともしなければいかぬのではないか。最近は、業者の贈賄等に関連しまして、地方団体等で三月とか半年の指名停止等をしておりますが、これに準じたようなことを建設省その他の役所とお話をされまして、もう少し建設業に対するぴしっとした詰めのできるような対策もあわせて考えていく必要があるのではないかというふうに思いますが、いかがでございますか。

 

○桑原説明員 特に労働者を死亡させるというような重大事故を起こしますものにつきましては、私ども、その事業所につきまして、やはり社会的責任をとってもらわなければいかぬという基本的な態度を持っております。したがって、建設省と十分連絡をし、お互いに通報制度を持ちながら、お話しのように、そういった事故を起こした業者については、指名その他について建設省と十分相談をし、外していくというような毅然たる態度をとってまいりたい、こういうふうに考えております。

 

○湯川委員 最後に、労災補償関係でございますが、先ほどの特別支給金が二百万円、それから遺族の年金等では、遺族の数、関係者にもよりましょうが、年間百万から百二、三十万の程度でございますか、そういうふうに伺っておりますが、労務者本人の責めに帰すべきことでなくてこういうふうに命を落とされたというふうな方の家族に対するそういう補償関係が、この五年、十年間の交通事故による人身事故に対する補償等に比べまして、かなりけたといいますか、数字的に大きな開きがあるというふうな感じがするのであります。

 今回の場合は、家を離れて何年も音信もなかったという人がかなり多いようでございますが、それとこれとは別でありまして、やはりそういう補償につきまして、最近のあれこれに行われる補償の額と、この労災補償保険による年金その他の額とがやや開きがあり過ぎるのじゃないかという感じがするのであります。もちろん、保険数理その他保険の計算から見まして、そう簡単においそれとはできないと思いますが、もう少しこの十年、十五年間の事故のフリクエンシー等を比べ合わせまして、少し改良するという余地、あるいはそれについての検討をする余地があるのではないかというふうに考えるのでございますが、いかがでございますか。

 

○桑原説明員 労災保険法の改正につきましては、この数年の間に二、三回改正をいたしまして、その都度改善に努めてきたわけでございます。したがって、その内容、水準につきましては、もう諸外国に劣らない。ILOの百二十一号条約につきましても批准ができるような状態で批准いたしたようなわけでございます。

 お尋ねの一時金と年金の問題でございますけれども、御理解いただきたいと思いますのは、いまの二百万というのは全く見舞い金的な性格のものでございまして、諸外国にも余りない。実は五十一年度の百万を今度二百万に四月から上げたようなわけでございます。

 年金の問題につきましては、いろいろ考え方があると思いますけれども、これはやはり一時金を差し上げましても、どうしても残された未亡人の方は、一時金を持って、途方に暮れられまして、いつの間にか雲散霧消するというふうな問題がございまして、やはり年金の方がすぐれた補償措置ではないかというふうに思います。したがって、いま先生がお話しのように、百万ないし百十万程度になりますが、残された奥様の余命年数あるいはその後のスライド率等を考えますと、自賠どころの騒ぎではない、相当高い、何千万という数字になるはずでございます。

 それからもう一つは、どうしても一時金を欲しい方は、年金の前払い制度がございまして、これを計算いたしますと、千日分ですから、いまの賃金計算から言いましても、五、六百万円の一時金の前借りができますので、少なくとも不幸からの立ち上がりについては支障がないのではないか。やはりすぐれた措置は年金ではないかと思っておりますので、引き続き労災の中身につきましては、社会情勢その他の進展に応じて考えてはまいりますけれども、現段階においてはそういうふうに考えておるわけでございます。

 

○湯川委員 いまの特別支給金は別にしまして、年金の百万というのは、一般に町で言われている交通事故等の三千万とか四千万とかいうものに比べますと、これは一時金でございますが、これに比べますと、いわばその金利程度の額ですね。ですから、その辺について諸外国に劣らないというお話でございますが、なおひとつ詳細な御検討をお願いしたいと思います。

 最終的に、寄宿舎等につきまして、もちろんこの場合は、炭鉱とかあるいは昔の紡績の宿舎というものとは全く違ったものだと私は思いますが、現実を見ました感覚もそうでございますが、ただ寄宿舎についての基準局なり、あるいは監督署等の取り組み方として、もう一段真剣にやっていただく必要があるのじゃないかというふうな感じがいたします。

 私の質問は以上で終わります。

 

○戸井田委員長代理 次に、栗林三郎君。

 

○栗林委員 ただいま湯川さんからも御質疑がありましたが、私もこの件について質疑をいたしたいと思います。

 去る六月二十四日未明、大阪市大正区三軒家の建設業附属寄宿舎、その宿舎内から出火をして出かせぎ労働者十二名の焼死、三名の負傷者を出すという大惨事が発生したのであります。この惨事は出かせぎ者の関係の事故としては戦後最大の事故であります。かつて尻無川では十一名亡くなった事件がありましたが、それを超す大事件でございます。私もこの際、この事故の原因とその責任を追及し、同時に、今後再びかかる惨事の発生を防ぐための対策等に関しての質疑をいたしたいと思うのでございます。

 まずお尋ねする前に、私は、社会党を代表して、この災害で亡くなられました十二名の方々の霊とその御遺族の方々に対して深甚なる弔意を表するものでございます。

 さて質問に入りますが、この悲惨事の原因は、雇用主であり宿舎の管理責任者である柳井建設の代表柳井武雄こと柳根作の法令無視に基づくものでございます。労働基準法、建設業附属寄宿舎規程はもちろん完全に無視されております。そのほかに消防法、職安法違反の容疑もきわめて濃厚でございます。

 私も焼失現場を見てまいりましたが、宿舎は、四方を二階建て、四階建ての建物に囲まれたその中にある空地に建てられた古い木造二階建ての宿舎でございます。隣接物との空き間はわずか三十センチ程度しかない、人が入れない、そういうような状態でございます。また出入り口は一方だけで、わずか一メートル五十センチ程度の幅員、長さは五メートルくらいの小路によって表の市道に連絡する、こういう状況でございます。したがいまして、万一出入り口付近より出火をしますと、いわゆるブロック火災となりまして、たちまち猛火に包まれ、逃げ口がふさがれてしまうのであります。かてて加えて避難口がない、警報設備が全くない、廊下が狭い、ですから、常に危険が充満しておった宿舎でございます。したがって、この悲惨事は、出かせぎ労働者また不幸な境遇にあるデラシネ労働者と言われておるふるさとを捨てた労働者たち、かの人たちの人権とその生命がいかに軽視され、否無視されていたかという事実を示す典型的な事件とも言うべきでございます。

 出かせぎ労働者の生命と安全、健康と自由を守るために、過ぐる昭和四十三年に現行の建設業附属寄宿舎規程が施行された。自来十年になる今日、しかも大阪市のど真ん中にかくのごとき危険な違法宿舎がまかり通っておる。まことに慄然たる思いを深くする次第でございます。したがって、柳井建設のかかる違法行為とその責任は徹底的に追及されなければならないが、同時に、かかる違法宿舎の存在を許し、黙認してきた労働省側の行政指導の怠慢もきわめて重大だと考えるものであります。

 大阪西監督署は、去る七月二十二日に、この事件に最終決断を与えまして、柳井武雄を基準法、建設業附属寄宿舎規程等の違反事件として大阪地検に送検したと聞いておりますが、この際、この事故の大要と、中にいまだ一名、水野さんと名のる労働者の身元が不明と聞いておりますが、その後の調査状況がどうなっておりますか、この状況及び労災補償保険法認定に関して、御遺族に対する措置等についても、ただいま報告がありましたが、きわめて断片的でありますので、一応この事件の発生、経過、措置等についてまとめて御報告をお願いいたしたいと思います。

 

○桑原説明員 先ほどもお答えいたしたわけでございますが、六月二十四日午前一時二十分に、大阪市大正区の柳井建設の寄宿舎において火災が発生いたしまして、寄宿しておられました二十五名のうち十二名の方が亡くなり、三名の方が重軽傷を負われたというまことに遺憾な事件でございました。御遺族の方々に対して衷心より哀悼の意を表する次第でございます。

 この寄宿舎は、木造かわらぶきモルタル塗りの二階建ての構造のものでございまして、住宅密集地に建てられておりましたために、寄宿した労働者の方々は、隣接した民家の壁等にさえぎられて避難することができずに焼死されたわけでございます。出火の原因につきましては、いま警察当局とも鋭意究明いたしておりますけれども、まだ判明に至っていないわけでございます。

 労働省といたしましては、災害発生直後、所轄の大阪労働基準局大阪西監督署から係官を派遣いたしまして、原因の究明に当たらせる等、鋭意調査を進めておるようなわけでございます。

 いま先生のお話しのように、本件につきましては、労働基準法の違反といたしまして、同法の九十六条建設業附属寄宿舎規程の違反、同法第十五条の労働条件明示の違反事実で七月二十二日に大阪地検へ送検をいたしたようなわけでございます。また直ちに、同種災害が起こらないように、七月一日から七日まで、約百五十の事業所について緊急一斉監督を実施し、災害防止についてさらに努力をいたしておるところでございます。

 労災につきましては、直ちにお支払いができるように準備をいたしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、とりあえず労災保険法上の労働福祉事業として二百万円の弔慰金を差し上げる。さらに御遺族の申請を待って直ちに支払いができるような体制をいま整えておりますが、十名の方からいま申請が出てきております。一名の方は、受給権者をだれにするかということで家族の中で御協議中で、まだ出てきておりません。もう一名の方は、身元不明で出てきておりませんので、いま警察と相談をしながらその身元確認に努めているようなわけでございます。

 私どもといたしましては、本災害が、お話のように事業主がこういった法令に対してきわめて遵守意識がなかったということ、また私どものこれに対する行政の対応の仕方が手ぬるかったということについて反省をいたしておるわけでございます。

 

○栗林委員 送検になりましたその違反容疑は、基準法十五条、九十六条、九十六条は建設業附属寄宿舎規程、それらの違反として送検された、こういう報告でございますが、これには基準法以外に、昨年施行されました建設労働者の雇用の改善等に関する法律がありますね、その法律の第七条に違反しておる事実はないかどうか、お答え願いたいと思います。

 

○細野説明員 ただいま御指摘のございました雇い入れ通知書の交付につきましては、これを交付していないという事実が判明いたしております。

 

○栗林委員 それならば、これも送検の対象になるのじゃありませんか。

 

○細野説明員 この雇い入れ通知書の交付の規定につきましては、罰則がないわけでございます。実態的には御存じのように、基準法の先ほどの十五条の内容がオーバーラップしておりますので、基準法十五条の点で送検をしている、こういう状況でございます。

 

○栗林委員 先ほどもちょっと触れましたが、これは職安法四十四条違反の容疑もきわめて濃厚でありますが、この四十四条関係はどのような御調査をされていらっしゃいますか。

 

○細野説明員 事業所の焼失に伴いましてその台帳等も焼失しておりますので、まだ完全なる調査を終了しているわけじゃございませんが、現在まで調査しましたところでは、労基法違反の事実は判明いたしておりません。

 

○栗林委員 この業者は、大阪知事の許可を受けて事業を行っておる建設業者でございますが、請負業とはこれは名のみで、ほとんど労働者供給事業を行っておるではないか、そういう事実は私の調査した限りにおいては明白である、こう申し上げてよいと思います。それでありますから、こういう事実関係をひとつもっと積極的に調査をしてもらいたい。事件が発生してから何日になりますか。すでにもう基準法関係では送検をしておるわけですからね。職安法違反についても非常に容疑が濃厚でありますので、これを投げっ放しにしておきますと、また役所と業者との癒着なんてことを言われますよ。どうかひとつ積極的に調査を進めていただきたい。この際、元請との関係、労働者を供給した供給先の関係を一日も早く明確に調べられまして、私どもの方にも報告をしていただきたい、こういうように望みますが、いかがですか。

 

○細野説明員 御指摘がございましたように、元請等の調査を現在やっておるわけでございますが、先ほど申しましたように、十分調査を尽くしているという段階まで行っておりませんので、なお引き続き調査をいたしまして、もし御指摘のように違反の事実等がございましたら、この是正を指導するという考え方でございます。

 

○栗林委員 消防関係のことは、私、関係者を呼んでいただくことの手続をしなかったので、ここでは直接お尋ねしませんが、消防法の違反容疑も非常に濃厚であります。私は消防法には詳しくありません。詳しくはありませんが、消防法の規定によりますと、やはりこのような多数の人方を寄宿させる、そういうところには一定の警報設備等人命に関するそういう危険防止のためのいろいろな設備をしなければならないという規定があります。ただ、その中に面積で基準を示しておるのか、あるいは収容人員で基準を示しておるのか定かでありませんが、私の聞くところによりますと、常時五十人以上収容する場合は適用されるのだが、柳井の場合は常時四十人の宿舎であった、したがって、免れておったというように聞いております。しかし私は、消防法のことは詳しくありませんが、この消防法違反の事実も非常に濃厚であります。昭和四十九年以来、大阪市消防当局は数回にわたって改善を警告しておるわけです。し

 かし、いまだに改善をしておらない。したがって、消防法関係の違反もきわめて濃厚でありますが、この関係については全然聞いてはおられませんか。部外のことで全く知りませんか。

 

○桑原説明員 消防法につきましては、私ども所管でございませんでつまびらかにいたしておりません。ただ、私どもの寄宿舎規程をいろいろ検討する場合に、消防法の改正その他改善につきましては、あわせてそれに合うようにしてまいっております。そういった意味で私ども、たとえばいまの警報装置については、七条にその設置が義務づけられておるというように考えております。そういう意味では、私どもとうらはらになっておりますが、収容人員については私どもつまびらかにいたしておりません。

 

○栗林委員 ただいま報告がありましたように、今回の事故は、法令が完全に守られておれば、こんなに大きな事件にはならなかったと思われますが、十条は避難口、十一条は警報設備、十四条は廊下の幅員等、これはすべて人命に関する重要な事項であります。これらのことが、規則どおりの施設が整備されておりましたら、被害を最小限に食いとめることができたはずであります。しかし、この宿舎には避難階段があったのです。避難階段がなかったのではないのです。避難階段はあったのです。この事実をお調べになっていますか。

 

○小粥説明員 避難階段があったことは承知いたしております。ただ、その避難階段に至るところにとびら、とびらと申しましても、実は部屋みたいな形につくられておりまして、それが通行できない状態になっていた。それが災害を大きくした一因にもなっておると承知しております。

 

○栗林委員 ただいまの御答弁にありますように、避難階段の設備はありました。ところが、その避難階段の踊り場にテレビやその他の道具を積み重ねておった、したがって、避難口がふさがれておったわけであります。

 しかし、もっと重大な問題があるのです。単に荷物が積まれておっただけではない。この避難階段に通ずる廊下に柳井組の職員を寝泊まりさせるために、この職員の名前は杉野さんと私は聞いておりますが、杉野さんという職員を寝泊まりさせるために、その階段に通ずる廊下の一部をふさいで部屋をつくっておった。きわめて悪質な違反行為と断ぜざるを得ないのであります。単にそこに荷物を積んでおったということではない。意識的に避難口を無視したのです。労働者の生命などは石ころのように考えておる典型的な事実ではないでしょうか。そういう事実をお調べになっておられますか。

 

○小粥説明員 その部屋に住まわしていた労働者の方の名前までは承知いたしておりませんでしたが、少なくともいざという場合にそこを通って避難階段に行けるような状態になっていなかったということでは、使用者側の姿勢について大いに問題があったということと承知いたしております。

 

○栗林委員 大阪の消防署では、これはたしか四十九年以来四回立ち入り調査をして警告を発したと聞いております。消防署は、このように人命に関する問題でありますので非常に指導を厳重に行っておるわけであります。大阪の基準局、監督署は全然調査をしなかったのですか。大阪のど真中にある宿舎だから大丈夫だという先入主で調査をしなかったか。届け出をしておらなかったから知らないは許されませんね、これは。全然調査をしなかったのですか。お答え願いたいと思います。

 

○小粥説明員 柳井建設の当該宿舎につきまして、監督の事実は残念ながらございませんでした。建設業の附属宿舎一般につきましては、従来から建設業を監督行政でも重点業種として取り上げておりますので、五十一年度でも相当数の監督実績を全国的には持っておりますが、本件の柳井建設の宿舎については、残念ながら監督いたしておらなかったという状況にございます。

 

○栗林委員 私は、出先の監督官が熱心に労働者の生命、安全を守るために活動されておられる事実は、そのとおり認めるものであります。常に敬意を表しておるものであります。人員の足りないということも承知しております。だからといって、こういうような危険が充満しておる宿舎の存在を許しておくということは、私は許されないことだと思うのでございます。

    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕

 大阪基準局では、今年も昨年も、あるいはその前の年もかなりたくさんの現場点検を行っております。昭和五十年には百三十八カ所の宿舎の点検を行っておる。その前の年も百五十カ所ばかりの飯場を点検しておるのであります。それでありますから、監督官の皆さんのそうした御奮闘、御努力に対しては深く敬意を表するものでありますが、しかし、何ぼ調査をしても、調査をしただけでは何にも意味がないのではないでしょうか。調査をしたからには、その事実を指摘した以上は、必ず改善を実行させる、そこまでやはり指導を強化しなければ何にもならないと思うのであります。

 私は、全国出稼組合連合会に関係しているものでありますが、私どもは、ことしも東京と大阪で大会を開き、大阪の大会では、最大の決議はこの宿舎の改善でございました。その宿舎の改善決議を携えて、私を初め多くの出かせぎ労働者が大阪の基準局に参りまして、いろいろと宿舎の改善について要請をしたのであります。

 御承知でありましょうが、大阪基準局で調べた資料によりますと、違法飯場が、違法宿舎が何と七六%に上っておるのですよ。これは私どもの調査ではありません。大阪基準局の発表です。七六%の違反宿舎がある。その中で、人命に関する部分、いわゆる警報設備のないものが三四%も占めておるのであります。大きな事故が発生しないうちに改善の行政指導を強化すべきであると私どもは抗議的に申し入れをいたしました。

 過ぐる通常国会でも、予算分科会において、私から石田労働大臣に附属寄宿舎の改善を強く要望してございます。だが、少しも改善されてはおらないではありませんか。改善指導の行政指導の跡を少しも認めることができないのであります。まことに遺憾に存じます。

 今回の事故は、雇用主柳井武雄のきわめて悪質な違法行為であって、断じて許されないが、それと同時に、先ほども申し上げましたが、当局の、労働省側の行政怠慢もこれまたきわめて重大だと考えておるものでありますが、労働省はどのように責任を感じておられるのか、その所信のほどを伺いたい。

 

○越智政府委員 ただいま先生の御指摘になりました点につきましては、私どもも、今回の柳井建設の宿舎についてはきわめて遺憾に存じております。

 先生の御指摘の中で、私どもの方で監督をいたしたものにつきまして違法がありました場合には勧告をし、また命令をして改善まで持っていくようにいたしております。

 しかし、何しろ全宿舎が全国で一万以上と言われております。また、届け出のないものもあるようでございます。こうした問題で全部を監督する、立入検査をするということはきわめて困難でございますので、今後は関係団体、特に建設業労働災害防止協会等の御協力をいただきまして全部を調査し、報告していただく、そうして私どもの方でチェックをいたしまして怪しいと思うものを立入検査いたしまして、全国的に一斉にこの調査をしてみたい、そうして今後かかる事故の起こらないように努力をしてまいりたい、かように考えておるのでございます。

 

○栗林委員 今後再びこういう事故のないように努力をするという御答弁でございますが、この程度の答弁でありますと、これはいつの場合も聞かされておる答弁でございます。少しも新しい答弁とは考えられません。同じなんですよ。私は、単なる善処、努力では納得できない。もっと具体的な対策と行動を示してもらいたいと思います。

 先ほども申し上げましたが、大阪の基準局の資料によりますと、違反宿舎は七六%、警報設備のないものが三四%もあった。避難口のないもの、出入り口の欠陥多数、これでは労働者の生命を守ることができない。それならば東京はどうか、全国はどうか。東京及び全国でも恐らく半数以上は違法飯場であるはずでございます。そうでしょう。それをお認めになられませんか。大阪の場合は七六%。全国ではどれだけの違法宿舎がありますか。資料があったらお答え願いたい。

 

○小粥説明員 全国の建設関係の宿舎を過去監督いたしておりますが、一番新しい数字で申し上げますと、昭和五十一年度監督いたしました結果では、違反率としては四七・七%という数字になっております。

 

○栗林委員 それでは大阪ばかり罪を着るようなことになりますね。大阪基準局は、私がいま声を大にして責任追及はしておりますけれども、私どもが関係しました、出歩きました地域では、大阪基準局が最も熱心に宿舎の指導をやっておる事実を申し上げておきます。それですから、大阪が七六%だ、全国が四七%、こんな数字なんてとても私どもは信用できませんね。しかし、これは後日にいたしますが、いずれにしても半数は違法宿舎なんです。これをなくするために私どもからひとつ申し上げたい。

 まず第一に、全国一斉点検を行うべきだ。かつて一斉点検を東京でやったことがありますが、かなりな成果を上げた事実があります。この際、全国一斉に点検を行うべきである。

 第二は、ことしの冬から、というのは、何カ月間ぐらいの猶予は与えなければならないと思いますので、三カ月ないし四カ月の改善の猶予期間は考慮すべきでありましょうから、少なくともそういう猶予期間を考慮に入れて、ことしの冬からはこのような違法宿舎の使用は絶対に禁止するという強い行政指導を行うべきではないか。こういうような措置をとらざる限り、このような不法宿舎の改善は不可能だと思います。

 第三番目には、こういうような不良業者に対しては、先ほど湯川さんが申されましたように、あるいは指名の停止をする、あるいは柳井のような悪質なものに対しては許可の取り消しをする、こういうような行政処分も十分考慮に入れなければ、私は、この劣悪な違法宿舎の改善は不可能だと思っておるものでございます。

 この建設業附属寄宿舎規程は、私から申し上げるまでもありませんが、この規程は昭和四十三年に施行されて今日で十年になります。この規程をつくるに当たっては、当時監督課長であった現在の藤繩次官、それと、その当時彼を補佐しておりました、たしか今回広島に転勤されたと聞いておりますが、金丸広島基準局長、これらの人たちが熱心に努力され、この問題はイデオロギーの問題ではない、宿舎改善はイデオロギーの問題ではない、人道問題である、ヒューマニズムの立場に立ってわれわれも協力をする、熱心に努力をされまして、反対する資本側も説得をしてつくられたのがこの規程でございます。

 したがって、その当時は、新しい規則に基づくモデル宿舎をつくって、これを渋谷あるいは東京の各地に展示をしまして、指導奨励を熱心にいたされました。それですから、施行された二年、三年は非常に改善の足が速かったのであります。非常に改善されてまいりました。しかし、今日に至っては、十年になってもまだ四七・七%、大阪の場合は七六%、こういうような違法宿舎がまかり通っておる。

 それですから、どうかこの法律を制定した当時の熱意に労働省は立ち返ってもらいたい。その熱意に立ち返ってもらえるなら、かつて一斉点検をして改善の実を上げたこともあります、一斉点検はできないことはないはずです、ぜひ一斉点検を実行してもらいたい。そうして改善をしない場合はその宿舎の使用は禁止してもらいたい。そうして許可の取り消しやあるいは指名の取り消し等の行政措置を十分踏まえての対策を実行してもらいたいが、この点についての当局の決意をひとつ伺いたい。

 

○越智政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、この建設業の寄宿舎につきましては、ずいぶん悪いところがたくさんあるということはお説のとおりでございます。

 そこで、今回の災害も、警報器の問題あるいは避難階段の問題、こういうものによりまして災害が大きくなった、そうして多くの犠牲者を出したという点では御意見のとおりでございます。そこで、私どもいままでもこの改善につきまして指導をし、また勧告、命令をして、聞かない者は宿舎の使用禁止もいたしておるところでございます。

 そこで、御指摘の点検につきましては、先ほど申し上げましたように、全国で一万以上ある、まだ十分わかっていないものもある、こういうものを十分調査いたしまして、できるだけ点検をしていくようにいたしたい、かように思います。いま全国で監督官が約二千七百名でございます。そこで、この建設業の監督につきましては、約三分の一の勢力を使ってやっておるのでございます。しかし、それで十分とは言えませんので、今後さらに力を入れまして、特に寄宿舎に力を入れまして、先ほど申し上げましたように、この関係団体等の御協力もいただき、そして監督を厳重にいたしまして、万遺憾なきを期してまいりたい、かような決意でございます。

 

○栗林委員 私は、そういう抽象的な答弁では納得できない。こういう大きな事件が発生しておるのです。それですから私は具体的に指摘しました。点検については一斉点検をやるという、そういう決意の表明は得られない。点検はいつでもやっていることは私、承知しております。一斉点検をやりなさい、どうです。

 

○越智政府委員 一斉点検の御指摘でございますが、一斉点検はやりますが、その具体的な、いつからいつまでにやる、そしてどういう方法でやるかということをひとつ検討さしていただきたい、こういう答弁でございます。そして、そのためにはいわゆるもぐりといいますか、届け出のないもの、こういうものにつきましても、できるだけ関係団体等の御協力をいただいて、調査をしていただいて、調べていただく。しかし、それで全部とは言えないかもわかりませんから、特にそういう届け出のないもの、こういうものについて力を入れてやっていきたい、こういう決意でございます。

 

○栗林委員 一斉点検については決意のほどわかりましたが、もう一つ、今冬を期して、もしも違法飯場があったらその宿舎の使用を禁止することは、これは行政でできるわけですから、そういう不法な違法宿舎の使用を禁ずる、ひとつこういう処置をとってもらいたい、この決意はいかがですか。

 

○桑原説明員 御指摘のように、私どもといたしましては、この災害を機にいたしまして、心を新たにして寄宿舎の抜本的な改善対策に乗り出したい、こういうふうに思います。したがって、そういった不法な状態にありますものにつきましては、早急に改善をさせる、改善できないものにつきましては、使用停止も含みました厳重な措置を講じてまいりたい、こういうふうに思います。

 

○栗林委員 今回の犠牲者は出かせぎ労働者でございますが、その中には出かせぎ者ではありますけれども、これは軽べつして申し上げるのではございませんが、デラシネ労働者といわれるいわゆる根なし労働者、ふるさとを捨てた不幸な境遇にある労働者も多数含まれておるのであります。しかし、だからといって、こうした人たちの人権が無視されてはならない。だからといって、こうした労働者の生命を無視してよいというものではなかろうと思うのであります。私は、こうした不幸な人たちの人権、労働権を無視して、しかも職安法に違反をして彼らを雇用し、ぼろいもうけをしておる事実をつかんでおるものであります。明らかに職安法違反を行って労働者の供給事業を行っておる。この犠牲になっておる労働者はこうしたデラシネ労働者、ふるさとを捨てた気の毒な境遇にある労働者。彼らは何にも言わない。それをよいことにしてこれを悪用しておる。しかも職安法をゆがめて使用しておる。これは許すことはできないのであります。今回の柳井事件につきましても、職安法の違反がきわめて濃厚でありますが、きょうは職安法に関する問題は後日に譲りたいと思っておるものでございます。

 あと五分ばかり時間があります。この寄宿舎規程のことについての質問でありましたので、ついでにお尋ねしたいことがありますが、これは私、通告しておらなかったから、もしか調べておらなければ、後で結構でございます。

 というのは、昨年の十二月十三日、富山県の黒部市にある吉田工業の宿舎で発生したガス中毒事件がございます。出かせぎ労働者二名がこの吉田工業の寮内で一これは火事ではありません。不注意によるものですが、ガス中毒によって出かせぎ労働者二名が死んだ事件があります。私どもは、この事件は当然、労働者災害補償保険法の認定になる事件だと思っておりましたところ、なかなか認定はむずかしい。なぜむずかしいかと聞いてみましたら、この寮は余りりっぱ過ぎて、これはいわゆる建設業でありませんから、事業附属寄宿舎規程に規定される宿舎とは認めがたい、したがって認定はできないのだ、こういう説明をいただいておるものでございます。しかし私はここに、事業附属寄宿舎規程の認定する宿舎はどういう宿舎を認定するか、認定基準の規則を持っております。これを厳格に当てはめれば、あるいは附属寄宿舎と認めがたいかもしれません。だが、労働者は吉田工業に雇用されて、おまえの宿舎はここだと指定されれば、指定される宿舎が事業附属寄宿舎と思ってそこに寝泊まりをするのであります。労働者は弁護士ではない。法学士ではないのであります。会社の方から指定された宿をあるいは宿舎を、これを事業附属寄宿舎と考えて寝泊まりをしておるのであります。ここは光志寮という寮でありまして、四階建てのきわめて近代的な建物であります。吉田工業は海外にも大きく事業を発展させておる企業でありますので、多くの外人も出入りするわけであります。そういう外人のお客さんが来たときもその光志寮に泊めております。国内のお客さんも泊めておるわけであります。その寮内の一部に出かせぎ労働者数十名が収容されて寝泊まりしておったのでございます。私は、その当時、吉田工業にはそうした労働者を寝泊まりさせる宿舎がなかったので、それよりも悪い宿舎ならば問題がありますが、それよりももっともっとりっぱな近代的な宿舎であるならば労働者からも小言は言われまい、役所からも小言は言われまい、こういう考えであったろうと思います。そこで、その光志寮に寄宿させたのでございます。してみれば、独立したものではないにしましても、その寮の一部を寄宿舎として使用しておる事実は明瞭ではないでしょうか。こういうような事実関係から、私は、この附属寄宿舎規程の認定基準は、この際もう少し拡大解釈をしていただいて、でき得ればこうした犠牲になった労働者に労災が適用されるような、認定されるような行政的な配慮ができないものか、この点をひとつ伺っておきたいと思います。

 

○桑原説明員 具体的な事実関係につきましては、いま手元に資料がございませんので、いずれ先生のところに説明に上がらせたいと思います。

 おそらく事業附属寄宿舎に入っているか入っていないかの争点のポイントは、業務上災害であるかどうかということになるわけでございますので、仕事をしていくためにどうしてもその寄宿舎に入らなければならない、しかも共同生活になっている、したがって、使用者がそこに生活させる、何といいますか共同管理下にある、責任のもとにある、こういうところがどうなるかということだと思います。したがって、そういう判断でその問題をどう処理するかということでございますが、具体的な事実関係を添えて先生のところに御説明に上がらせたいと思います。

 

○栗林委員 これで終わりますが、この際、次官に御要望申し上げたいのだが、出かせぎ労働者、あわせてこうしたふるさとを捨てた労働者はずいぶん多いわけでしょう。私どもは、この出かせぎ労働に対しては反対であります。なぜかと言えば、農業が崩壊する、家庭が破壊される、したがって、出かせぎには反対です。反対ではあるが、しかし、いまの農家経済の現状はこれを許さない、兼業せざるを得ないのが、いまの農家経済の現状であります。したがって出かせぎに来る。また、今日の日本の産業も今日の日本の資本も、よい悪いは別にして、この労働力がなければ公共事業もできなければ生産も思うように上がらない。それですから、今日の日本は、好むと好まざるとによらず、出かせぎ労働力はきわめて貴重な労働力と言わざるを得ない。しかし私どもは反対だ。その理由は、農業崩壊、家庭破壊、人道問題、こういうところにあるわけであります。そういうように出かせぎ労働というものは、多くの矛盾を抱えての労働力であります。あわせてこうしたふるさとを捨てた労働者の皆さん、これらの労働者をどうすべきか、この労働力をどう使うべきか、どう活用すべきか、一般労働者としてでは守ることのできないのが、こうした人たちの立場でございます。

 労働組合法があるではないかと言いましても、わずか三カ月、四カ月、五カ月で移動する、毎年職場を変える、きわめて臨時的な出かせぎ労働者に、労働組合をつくって資本と対抗したらよいではないか、団体交渉をやったらよいではないかと言っても事実上不可能でしょう。いまの関係労働法はその大事な部分で出かせぎ労働者には事実適用されない。それでありますから、この出かせぎ労働あるいはふるさとを捨てたこうした労働者の労働の基本に関する問題について、ぜひ労働大臣の諮問機関としての調査機関――私は、審議会とは言いません、調査機関あるいは懇談会等を設けて、こうした出かせぎ問題等の基本に関して調査をする機関を設けていただきたいと思いますが、これに対する次官のお考えをひとつお示し願いたいと思います。

 

○越智政府委員 出かせぎ労働者が非常に多い、このことは先生の言われますように、なるべく出かせぎ労働者がなくなるような施策を施さなければなりません。こうした点から、政府といたしましても、農村工業導入法とかいろいろの施策を講じておるところでございますけれども、現実の姿は何十万、四十数万と言われておりますが、こういう労働者が出かぜぎに従事しておる、こういう実態でございます。そこで私どもは、この実態を的確に把握するために、使用者側もまた労働者側もでき得る限り安定所を通じてやっていただくような方法にしていただきたい、こういう希望を持っておるのが第一点でございます。

 そこで、いまの審議会とかそういった問題でございますが、これはかねがね大臣もこういった点に非常に意欲を持ちまして、検討が進められております。御承知のように、いま審議会等は行政の問題でできるだけ少なくせよというような点もございますので、これに対しましては専門の部会であるとかそうした点でよく検討を進めていくようにしていきたい、かように思うのでございます。現在は中央職業安定審議会あるいは労働基準審議会、こういうものがございますが、こうした中におきまして、専門部会等を設けてひとつ御期待に沿うような検討を進めていきたい、これが大臣の考えでございますし、私も、そういうふうにやっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。

 

○橋本委員長 次に、草川昭三君。

 

○草川委員 草川でございます。

 まず最初に、柳井建設の事故の処理についてお伺いしたいと思いますけれども、ただいまのお話だと労働基準法の九十六条違反と十五条違反というお話ですが、そのほかに消防法違反あるいは建築基準法違反の事実があったのかないのか、お聞かせ願いたいと思います。

 

○桑原説明員 他省の所管でございますので正確なお答えはできませんけれども、同様な規定が消防法等に規定されておりますから、併合罪というかっこうになるのではないか、こういうふうに思います。

 

○草川委員 私どもが少し調べたのでは、五十人未満の場合は消防法違反あるいは建築基準法違反には該当しないというようなことがあるわけでございますが、その点はいまのお話で多少どうかということもございますが、私の質問は、たとえそうだとしても、実際上の飯場というのは、五十人以上の飯場というのはかなり大きい飯場になるわけでございますから、実際上は、二、三十人規模の俗に言う飯場、いわゆる寄宿舎でございますけれども、それが多いと思うのです。でございますから、消防法なり建築基準法に適合しておるかどうか、他省にまたがりますけれども、せっかく一斉点検をなされるとするならば、あわせてそのような点検をこの際していただきたい、私はこういうように思うわけであります。

 そして労働基準法の「寄宿舎の設備及び安全衛生」の九十六条の三に「労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関し定められた基準に反する場合においては、」基準局として「使用者に命じた事項について」云々というような項があるわけでございますが、この際、全国一斉点検をただいま基準監督官がなされてみえるわけでございますが、この第三項に適合するような具体的な例がすでに出ておるのかどうか、その点についてお聞かせ願いたい、こういうように思います。

 

○小粥説明員 建設業附属寄宿舎の監督については先ほどもお答えしたのでございますが、五十一年度の実績で約四七・七%強の違反の事実もございます。ただその中で九十六条三項による即時是正といったものがどの程度あったかというのは、いま手元に資料を持ち合わせませんので後ほど御報告させていただきます。

 

○草川委員 私は、このような不幸な事態が出て全国的な点検も始まると思いますが、率直なことを申し上げまして、先ほども論議があるわけでございますが、実際基準監督官の方々とお話をしますと、寄宿舎点検以外にも安全衛生は山ほどあるわけでございまして、一年間で当該の事業場、所管の事業場でございますけれども、それを回れるかどうか。もちろん労働省本省として回るべきであるという指導はあるわけですが、現実には私は物理的に不可能な状況だと思うのです。そして、災害があれば急遽こういうような点検活動ということになるわけでございますが、建設業の場合、急に人をふやせと言ったってこれはできないことでございますので、具体的な提案があるわけでございますが、いわゆる親企業の自主管理、自主点検というものをもっと労働省は本格的に業界に呼びかけるべきではないだろうか。そのために一つ質問をするわけでございますが、この柳井建設の作業員がみぞ掘り作業を主としてやっておったという新聞報道がございますが、それの親元というか発注主は一体どこなのですか。

 

○小粥説明員 みぞ掘り作業を具体的にやったかどうか承知いたしておりませんが、災害発生時点で現に柳井建設がやっておりました事業は、坂口建設が受注いたしました倉庫建設工事というふうに承知しております。

 

○草川委員 柳井建設ばかりではなくて、大阪の周辺のいろいろな業界の方々の調査あるいはまた新聞記者等の調査によりますと、大体みぞ掘り作業が多いのは電電公社関係の穴掘りだとか、それからまた政府関係、今日不況で約七三%の公共投資の前倒しがやられておるわけでございますが、公共投資関係の建設作業の二次、三次、四次、五次、実際柳井あたりになりますと六次から七次あたりの担当になってくるのではないかと私は思いますけれども、少なくとも公共投資関係の発注先の関係官庁というものが、末端でどのような労務者が作業に従事しておるのかを点検したらどうか。いま私はみぞ掘りということを言ったのですけれども、みぞ掘り以外にも清掃作業もあるでしょうし、いろいろな末端作業があるわけでございますが、公共投資関係だけでも、当該の官庁が徹底的に第一線の作業実態というのを点検してみる。そして当該の一番末端の労働者がどのような寄宿舎におるのか、一回そういうような総体的な監督というものを協力しませんと、現在の労働基準局の監督官だけに、率直な言い方をすれば、行政の怠慢ということだけでは物理的に解決しないと私は思います。でございますから、いまの公共投資関係だけでも、いわゆる建設に対する監督というので大きな設計事務所なんかが監督するわけでございますが、いわゆる施工だけではなくて、実態まで監督をする必要があると思うのです。そういう新しい立場から、他の官庁なんかにも協力を要請して、末端の行政がいかに安全に運営されるかということについてどのようなお考えを持たれるか、お聞かせ願いたいと思います。

 

○桑原説明員 御指摘のように、監督官は全体で三千人おりますけれども、実際動けるのは二千七百人、一人の監督官が千事業所を持っておるのが実態でございます。したがって、その主体的能力をどう重点的に配分するかということで苦慮いたしておるわけでございます。先ほど政務次官が申し上げましたように、こういった問題が再び起こらないように重点的な監督指導をやってまいりたい、そのやり方の一つとして、先生御指摘のような、特に公共的な事業を中心にしてやっていくというのも一つの方法ではないかと思いますし、しかも安全衛生法で元請責任というものが明確にされておりますので、そういった法律的なたてまえをもとにいたしまして、いま先生の御指摘のような問題も含めまして十分検討させていただきたいと思います。

 

○草川委員 次は、具体的ないわゆる寄宿舎の問題でございますが、俗にいう飯場はいまプレハブ住宅が多いと思うのです。たまたまこの柳井建設の場合はかなり古いアパートを改造しておるわけでございまして、周辺に倉庫がずっと立ち並んできたからよけいに今回のような被害が出たわけですが、一般的には建設産業はプレハブであります。このプレハブ工法というのは非常に簡単に大体二階建ての作業場ができるわけでございますが、天井が低いわけでございますし、窓も一つしかございませんし、冬は寒い、当然暖房も石油コンロというようなことになりまして、消防上も非常に危険な状況があると思うのです。ところが、往々にして建設作業の場合はプレハブの飯場というものが長期間残っておるというのが全国的に散見いたしますが、プレハブ建設を寄宿舎に認めることが是か非かということを抜本的にこの事故を契機に考えてみる必要があると私は思うのです。このプレハブというものが建築基準法に適するのかどうか、あるいは寄宿舎として認めることには不可ではないかという意見から私はいま質問するわけですが、その点についてのお考えをお聞かせ願いたい。

 

○桑原説明員 事業附属寄宿舎規程と建設業附属寄宿舎規程と二つございまして、恒久的な寄宿舎につきましては相当それなりの法制的な整備をしております。建設業附属寄宿舎規程というのは、どうしても有期事業になりますものですからその辺の兼ね合いというものがございます。せっかくの御提案でございますので、建設省その他専門家と十分協議しながら、人間の生命にかかわることでもございますので十分検討させていただきたい、このように思います。

 

○草川委員 これも私要望ですが、先ほど有期事業ということをおっしゃられましたが、確かに建設業は有期事業なんですが、たとえば一年なら一年、あるいは半年なら半年で許可をとって、一たん契約は終わります。しかしその飯場は実際には移動しないのです。その飯場はそこにおって、また違う業界と契約をする、またそこで有期事業を半年とか一年という契約をする。ところが、いま言いましたように、今回の大阪の事故の場合でも、古い方になりますと約四年間生活をしてみえたという方も見えるわけです。でございますから、有期即その契約だけを取り上げればそのようなことになりますけれども、その地域として取り調べをする場合には問題が出ておる。だから逆に消防法だとか建築基準法だとかという形からこれを監督していかないと、基準局だけではつかみ得ないところの問題がある。ですから、そういう点での総合的な対策についてひとつ何かお考えがあればお聞かせ願いたい、こう思うのです。

 

○越智政府委員 ただいま基準局長がお答えしたとおりでございますけれども、これは建築基準法の問題あるいは消防法の問題、いろいろございます。特に建築基準法の問題が多いと思いますので、私の方の労働省といたしましてもそういう意見を述べながら、ひとつ検討を建設省の方でやっていただく。私の方ではりっぱな宿舎を指定し、りっぱな宿舎に宿泊さすということが一番望ましいところでございますけれども、基準法の問題もございますので検討をさしていただきたい、かように思います。

 

○草川委員 そこで提案があるわけでございますけれども、いま御存じのとおり雇用促進事業団というのが全国的にかなりの宿舎を持っておるわけです。これも当初は一年契約でございましたが、かなり長期間の契約になりまして、最初は炭鉱の離職者の方々を中心に入っておるわけでございますが、私はかなり空き家があると思うのです。この大阪の場合も、いろいろな層の方がお見えになりますけれども、三十一年ぐらいから大阪へ来ておる、あるいは杉田さんなんというのは四十四年ごろから大阪にお見えになって、前月家族に五、六万円の送金をなすっておる。非常にまじめな方もずいぶんたくさんお見えになるわけであります。ですから、もし事業団がこのような方々に、そんなに長くおるのなら、そんなに長くというのは結果論ですけれども、もっと積極的に、このような宿舎があるというような案内をするとか便宜を計らうならばこういうこともないと私は思うのです。そういう点では、私は、この事業団の宿舎のあり方というものも、基本的に、これからももっと積極的に入居をあっせんするというような形でこのような方々の入居を図るべきではないか、こう思うわけでございますが、お聞かせを願いたいと思います。

 

○細野説明員 移転就職用宿舎の全国の入居率は現在大体九三%という状況でございます。先ほど先生御指摘のように、本来移転をして就職をしてこられる方のための宿舎というのが基本的な性格でございますので、ある程度空きがないとそういう緊急の用にこたえられない、こういうこともございまして、一応のめどとしまして大体五%程度というものをそのための準備にとっておく。したがいまして、先ほど申しました九三%という入居率は、全体としてはおおむね妥当な入居率ではないかなというふうに考えておるわけでございます。先ほど、空いているところをもっとPRするべきじゃないか、こういう御指摘でございましたが、いま申しましたように、本来移転して就職をする方、あるいは住居の移転をやむなくされたために職業の安定を脅かされるという方々のための住宅でございますので、一般的なPRをするということには実は向いていないわけでございますが、いま申しました入居の資格のある方に対しましてはパンフレット等を通じましてPRに努めておる、こういう現状でございます。

 

○草川委員 私は、事業団の場合も、総合的な対策を立てるためにも、長期間の出かせぎの方々には積極的に利用するようこれからも勧めていただきたい、こういうことを要望しておきたいと思うのです。

 それから、出かせぎ労働者の実情については、労働省は約四十五万人と言っておみえになりますが、出かせぎ労働者の組合の方々は全国的に約百万おるという言い方をされておられます。このような方々の実際上の安全教育というものがどういう形で行われておるのかという点については、これも約七〇%が実際上は無視をされてきておるという報告を出かせぎの労働組合の方々はしておみえになるようであります。

 そこで私はそのことに関連をして質問を申し上げたいわけでございますが、出かせぎ労働者の賃金の実態というのが、今回の場合は四千五百円から五千円ぐらいだと言われております。そのことについて、犠牲者の方々の平均賃金は大体どの程度であったのか、お聞かせ願いたいと思います。

 

○小粥説明員 今回の被災者の方々の賃金につきましては、先ほど労災の関係でも御答弁申し上げたのですが、関係の賃金台帳その他関係書類が一切焼けておりますので、いま調査中ということで正確なところはわからない段階でございます。至急調査をしたいというふうに考えております。

 

○草川委員 大体この種の方々は四千五百円から五千円ぐらいだと言われておるわけでございますが、一つは、建設省がいわゆる公共建物等についての積算をする資料で建設物価調査会というのがあるわけでございますが、ここの資料だと、このような労働者、たとえば言われるところのみぞ掘りのような作業、あるいは清掃作業というような末端の労務者の方々の平均日給というのは幾らくらいになっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。

 

○小粥説明員 地域によりまして、また職種によって違うわけでございますが、いま御指摘の職種にぴったり合うのがいま手持ちの資料等ではございませんが、普通作業員として見ますと、大体近畿地区では六千円台が多いように見受けます。

 

○草川委員 建設物価調査会というのは東京、大阪、非常に細かい積算の各資料をつくっておりますが、いま言われたように一般末端の土工というのは六千円ぐらいです。ところが現実には四千五百円から五千円払われておるわけですから、これはいわゆるピンはねなんです。ですからこのピンはね業務――ピンはね業務というのはないわけですけれども、いわゆる末端のところで大体一日千円とか千五百円ぐらいというのが建設会社の人集め能力を左右するところだと思うのです。ですからこういう方々というのはどちらかといえば、自分の飯場に十人とか二十人というのを入れて、自分の飯場からマイクロバスで自分が請け負った元請のまた二次、三次ぐらいのところへ人を入れるわけです。明らかに私はこれは職業安定法違反だと思うのです。職業安定法違反なるがゆえに、また逆にこのような劣悪な寄宿舎というものが放置をされておる。だから私は、そういう点を解決をしない限りこのような事件というのは現実的になお残るのではないだろうか、そういう立場から御質問を申し上げるわけでございます。

 先ほど、書類がなくなっておるということでございますけれども、このような同種類の人集め業者というのはなおたくさんあると思うのですが、その点についての局長の御意見を賜りたい、こう思います。

 

○細野説明員 先ほど申し上げましたように、この件につきましても現在までのところ職安法違反という事実は見当たらないというふうに申し上げたのですけれども、引き続き元請等を通じまして調査をいたしまして、もしそういう御指摘のような点がございましたらその是正に努めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。

 

○草川委員 この場合は恐らく私は請負じゃないと思うのです。こういう末端の契約というのは請負ではなくて一日幾らという契約でやっておるわけでございますから、賃金台帳を徹底的に調べ、元請との契約関係を明らかにするならば、必ず私は職業安定法違反の事実は出ると思うのです。だからこれは本気で当局が調べていただきたいということを申し出をしたい、こういうふうに思います。

 同時に、最近の建設業の実態を見ますと、ここ二、三年来、出かせぎ労働者の賃金というのは上がっていないのです。大体末端の労働者というのは五千円前後であります。ところが元請の段階だと、建設の契約というのは、労務賃金というものはコストアップということで積算上は一割とか一五%値上がりをしておることは間違いないわけですね。しかし末端のところへいくと、数年間賃金というのは横ばいだという今日の建設産業の実態というものをぜひ労働省もつかんでいただきたい、こう私は思うわけですね。

 さらに、これは労働基準局の方にもお尋ねをしたいわけでございますが、最近非常に土どめ――いわゆる穴を掘ってみぞがつぶれるという意味での事故もたくさんあるわけですから、土どめ工事等については非常に厳格な監督もやられておるわけです。私は非常にいいことだと思うのです。ところが、そのためにはいろいろと安全班というものの立ち会いが必要になってまいりまして、それぞれの資格を得た、安全帽なんかに資格のマークをつけた人もずいぶん現地で立ち番をしている。ですから、国鉄関係だとか電通関係だとか、わりと公共投資関係の工事になりますと本省からの調査もときどきございまして非常に厳格になってきた。これは一面いいことなんですけれども、問題は、安全工数というのですか、いわゆるウォッチマン、張り番の費用というものは全然積算の中には計上されていないわけです。ですからその分だけ全部下請の方に来るわけです。親元が、安全上監督が非常にやかましくなったために当然ウォッチマン、張り番が要るわけですから、一日一人なり二人の工数というのが要るわけです。ですからその分だけ上乗せをして本来の基準行政というのを厳格に図っていきませんと、基準法でこうなったのだから張り番が必要だ、こういうことも必要だということだけでは、先ほど言いましたように結局本来の六千円の建設の単価というものが四千五百円になって労働者に支払われていく。その分だけどこかでひねらなければいけないわけですね、末端の下請業者にしてみれば。そういうのがいまの実態でありますから、物を言わないところの出かせぎ労働者のところに一番しわが寄ると私は思うのですよ。本来、労働組合があれば当然そこでは賃上げ要求もあるだろうし、あるいは一人の安全班が必要だということ、あるいは交通整理の張り番が必要だということになれば、その分だけたくさん親元に要求をしろということになるのですが、それが一顧だにされないというところに、末端のこのような状況がある。そういう親方の方も寄宿舎の改善の費用もない、だから昔ながらの一番劣悪な寄宿舎が使われていくということになると思うのです。

 だから、その根本を解決しないと、幾ら監督行政をしっかりやれ、あるいは末端の下請の親方に問題があると言っても、金がなければ弱いところにしわが寄るわけですから、私はそのような根本的な問題をまず解決をしていただきたいというように要求をしたいと思うのですが、その点についてのお考えをお聞かせ願いたい、こう思います。

 

○桑原説明員 建設業の災害防止は、特に重層下請になっておりますので、御指摘のように元方が安全衛生、災害防止に対して十分な配慮と申しますか、そういうものがなければとうていできないと私は思っております。そういった意味で安衛法ができまして、特定元方の責任というのをはっきりさせてまいりました。御指摘のように、そういった安全的な投資の問題について元方が下請に対して十分配慮しなければ、当然に災害がそこから出てくるというふうに思います。したがって、幸い私ども、建設業の災害防止協会、これは中小も大手ももちろん入っておりますが、そういった中でこういった議論を十分煮詰めながら、本当の意味で下請を含めて災害をどうして防ぐかというきわめて大きな御示唆だと思いますので、十分そういった面についての浸透を図ってまいりたい、こういうふうに思います。

 

○草川委員 ぜひこの元方の責任でいま私が申し上げたようなことがやられるようこれからも御努力願いたい、こう思います。

 最後になりますけれども、労災事故の死亡について、いわゆる使用者の安全保障義務というのがいま話題になってきておるわけであります。御存じのとおり、使用者は労働者を雇ったときから労働者を安全に就労させる義務があるというので、労災事故があった場合には、使用者側に具体的なたとえば過失がなくても労働者に対する安全保障の義務を怠ったのではないだろうか、具体的なその事例がなくても包括的な責任があるというので、現在その安全保障義務の問題についての裁判が一つ始まっておるわけでございます。いわゆる従来の個別的な裁判、労災保障をめぐる訴訟では、使用者側の不法行為、過失が請求理由の柱であったわけでございますけれども、その直接の過失の問題を乗り越えて、債務不履行を請求理由の柱として訴えられておる事件があるわけでございます。これは裁判の今後の問題ですが、今回のような寄宿舎の場合はまさしく、雇ったときから使用者側に安全保障義務というのが包括的にあるのだという具体的な事例ではないかと私は思うのですが、その点について、これは裁判とは関係ないという立場で御見解を賜りたい、こう思います。

 

○桑原説明員 私ども、基準法あるいは安全衛生法を運用していきます場合に、使用者が雇用契約に基づきまして一定の作業を労働者に命じます以上は、その作業に付随する危険を防止するよう配慮していくことは当然使用者の義務である、こういうふうに考えております。したがって、裁判の行方はこれからの問題でございますけれども、債務不履行の問題、場合によっては不法行為の問題等が一つの問題として提起されようかと思います。

 

○草川委員 時間がございませんので最後に一つ、これは余り具体的な御答弁はなくても結構でございますが、労働省の責任ではない、当該の警察の問題だと思います。釜ケ崎の日雇い労働者の組合の方々からその犠牲者の方々の収容されたお寺で焼香をさせろという申し入れがあって、それを現地の警察の方々が会社側の了解がないからだめだと言って断ったという報道がなされております。この問題のために遺族の方々も大変な御迷惑をなすったという報道があるわけでございます。

 私は現地のそのときの状況というのがわかりませんからあれでございますが、やはり出かせぎの方々だとか、あるいはこれは山谷でもそういう例があるわけでございますが、労働組合という名前を使っておみえになりますけれどもそれなりの集団の方々がお見えになるわけでございますが、こういう事故があった場合にはできる限り刺激のないように、焼香をさせろと言われるなら、遺族の方々とも御相談願って、どうぞという程度で済めば、そんな座り込みをするというようなこともないわけですし、またいたずらに刺激を与えてかえって遺族の方々に悲しい思いをさせないように、現地の判断というのが私は非常に重要なものになってくると思うのです。これは私、別に労働省の責任の問題ではないと思いますけれども、私もかつてこういう事故に何回か直面したことがあるわけでございますが、往々にして業者の方々は、もう資料もないとか、あるいは新聞記者がいろいろな質問をするとかというのでてんやわんやになっているということが多い。また、大事故ですから外部の方々もいろいろお見えになる。そういうときにはできる限り関係者の方々が協力し合って、まず遺族の方々に連絡をするとか対策を立てるということ、そしてまたそういうような申し出があるなら、焼香なら焼香ぐらいはどんどん認めてあげてもいいのじゃないだろうか、こんなような気がするわけでございます。これは、これからもそういう事例を予想して対策を立てるという意味ではないわけでございます。問題は、根本的に、この建設業等については、特にこの下請関係については元請の責任で、いつも名簿の整理だとか家族との連絡だとか、あるいは緊急対策等の処置について万全の処置がとられるよう、使用者側の責任においてやっていただきたいということを申し上げまして私の質問を終わりたい、こういうように思います。

 

○橋本委員長 次に、和田耕作君。

 

○和田(耕)委員 もうほかの委員の方から大事な問題はいろいろ御質問をされたようだし、そしてまた御答弁もあったようでございますから、私から重ねてそのようなことについて御質問することは避けたいと思いますけれども、御答弁になったことはひとつ効果のあるような形で実行していただきたいということをまとめてお願いを申したいと思います。

 二、三補足的な質問をしたいのですけれども、十二人の亡くなった人の出身別がわかっておればお答えをいただきたいと思います。

 

○小粥説明員 亡くなられました十二人の方のうち十一人の方についてはわかっているわけでございまして、近畿地方以西の方が全部でございます。具体的に申し上げますと、四国、九州、近畿、山陰といったところがそれぞれ該当になっております。

 

○和田(耕)委員 東北の人はいないのですか。

 

○小粥説明員 東北地方はございません。

 

○和田(耕)委員 この柳井建設全体で四十九名ですか働いているようですけれども、この人々は日本国籍の人だけですか、あるいは韓国関係、北朝鮮関係の人が働いておりますか。

 

○小粥説明員 柳井建設の労働者全員についてはちょっと承知いたしておりませんが、いまの十二名の被災者の中でお一人、名称からあるいは外国籍ではないかと推定される方はおいででございますけれども、帰化されているのかどうか、その辺まではまだ確認いたしておりません。

 

○和田(耕)委員 この出火の原因というのはまだわかっていないということですけれども、もう四十日近くたつのにわからないというのはどういう問題があるのですか。

 

○小粥説明員 いろいろな説もございまして、たとえばたばこの火の不始末ではないかというような点もあるのでございますが、何分全焼してしまったものですからその辺の明確なところがわかりませんで、いま鋭意調査中という段階でございます。

 

○和田(耕)委員 これはわかる見込みがついていますか、あるいはわからないということになるおそれがありますか、どっちなんですか。

 

○小粥説明員 当日寄宿していた人で生き残っておられる方も半数以上おられるわけでございますから、そうした方のいろいろ事情等も聞くようにいたしておるのでございますが、警察ともども一緒にやっておるのでございますけれども、いまのところまだそういう見通しは立っておりません。

 

○和田(耕)委員 私、この労働省のお調べになった報告を拝見しておりまして驚いておるのは、一階で宿泊した九名のうちの四名、二階で宿泊した十六名のうちの八名、この十二名の人が死亡なさっておるのですけれども、一階で寝ていた人が半分も死ぬというのは、窓から飛び出すというようなことは全然できないところだったのですか。

 

○小粥説明員 生き残った方々のお話等を伺いますと、気がついたときにはもう火が相当回っていて、脱出するのが精いっぱいであったというようなお話もございます。したがって、特に二階の場合には、窓をあけましても隣の家の壁があるということで出られないというようなことがあったわけでございますが、気がついたときには特に入り口の方にもう火が回っていてしまって、そっちになかなか行けなかったという話もございますから、そのような事情が事故を大きくしたのではないかと思います。

 

○和田(耕)委員 では、一階も二階も窓から抜け出していくスペースは全然なかったわけですか。

 

○小粥説明員 窓から逃げられた方もいるわけでございます。ただ、裏側の方が隣の家と接していて、そこから抜け出る余地がなかったというような事情もあったわけでございます。

 

○和田(耕)委員 先ほど政務次官も、全国的にこのような出かせぎ労働者の調査をするというお話だったのですけれども、一年もそれ以上もかかって全体的に調査するというよりも、大都市あるいは密集地帯を先に選んで、そしてこういうひどいところを先に調査をするという方法をとっていかないと、役所がいろいろ相談して、計画をして、一斉に出るということをやるのは余り適当じゃないのじゃないかというふうに思うのですね。特に労働者を集団的に住まわしておるというようなところ、このような状態は大都市にはまだ幾つかあると思いますよ。地方の場合はこういうところは余りないと思います、すぐ境を接して逃げ場もないといったところは。だから大都市のありそうなところを特に集中的に選んで、そこから早く調査をしていくというようなことであれば、これはそう時間はかからないでできるわけですね。仮に三週間もあればあらかたわかってくるということですから、こういうひどいところを早く的確に労働省でもつかむ。それは消防署関係、警察関係の者と協力して実情をつかんで、そして改善のための効果的な措置を早くとるということが必要だと思いますね。いかがでしょうね。

 

○越智政府委員 先ほどお答えいたしましたが、一斉点検の手順であるとかあるいは方法、これについていまから検討いたしたいと思いますが、御指摘のように集団地、こういうところから先にやっていきたい、こう思います。また、先ほどもお答えいたしましたが、われわれの手のついていないようなところ、今回の柳井建設の場合、いままで監督が行われていないという実態でございますので、ひとつ関連団体等の御協力もいただきながら、特に重点的に危険な個所と思われるところを先にやっていきたい、かように思います。

 

○和田(耕)委員 そればひとつぜひお願いしたいと思います。特に住宅関係の問題は建設省とかあるいは自治省とか、そういうところも関係のあるところですからめんどうな連絡もあると思いますけれども、これは現在の当面の問題として緊急を要する問題ですから、したがって、至急に大事なところから先に明らかにしていくという方法で対処していただきたいと思います。

 それで、もう一つ御質問したいのは、一昨年でしたか、建設労働者の雇用改善に関する法律というのが出ましたね。あれは雇用関係が中心だったようですけれども、特に建設労働者というのは、生活環境の問題と離して雇用問題が考えられないほど特殊な一つの職場と生活環境があるわけで、あの法律を改正して、もっと生活関係の問題が監督官庁で把握できるようなことを考えてみたらどうだろうというふうに私は思うのですけれども、いかがでしょうね。

 

○清水説明員 建設労働の問題につきましては、基本は何と申しましても雇用関係を明確化していく、それが非常に複雑な建設労働を改善する場合のまず第一の出発点である、まずそこから着手していく、そういう全体の考え方に立っておりまして、そういった意味合いで雇用関係の明確化のための措置、雇用管理責任者の選任でございますとか、あるいは雇入通知書の交付でございますとか、そうした事柄を規定をいたすと同時に、そういったものと並行して事業主の自主的な雇用改善の努力を助長するための助成制度を設けて、その両者によって雇用の改善を図っていこう、こういう全体の考え方に立っておるわけでございます。御指摘の生活関係、こういうふうにおっしゃいましたけれども、相当幅の広い問題であろうかと思うわけでございますけれども、こうした宿舎等の点につきましてできるだけレベルアップを図ってもらうということのために、必要な助成制度を設けつつ行っている、こういうことでございます。

 

○和田(耕)委員 あのときも私は質問をしたと覚えておるのですけれども、特に宿舎等の環境の整備という問題は役所としても監督責任の一つの項目として挙げられるようなことにすることと、親方といいますか元方といいますか、それの責任があのときも明らかでなかった問題があるのですね、雇用関係の問題でも。特に親方、元方の方がもっと責任を持った態度をとらないと、結局いろいろなものをつくってもよく効果がある政策がとれないことは実情から見てそうですから、何とかこの関係をもっと法律的に責任を明らかにするようなことをやらないと、いろいろなことをやりましても結局隔靴掻痒というのか、肝心なことができないということになりはしないかというふうに私は思うのですけれども、そういう問題、いかがでしょうか。そういう質問をすることを通告しないですぐここでやるわけで、返答はできないと思いますけれども、いかがでしょう。

 

○越智政府委員 御指摘の問題で、まずこうした建設業の工事の発注者自体も御配慮をいただきますし、次は元請がやはりしっかり指導をしてもらう、これも当然労働安全の義務があるわけでございますから、こういうことに力を入れていただく。私の方といたしましても、先ほど来議論がございましたが、建設省と関係官庁ともよく連絡をいたしておりまして、御指摘もありましたように労働基準法違反というようなことをやりますと、これは指名を停止するとかいろいろな方法をとっていただいておるのでございますけれども、そういうことだけでもいけませんので、先生のお説のとおり、さらに生活環境もよくするように各省にもお願いいたしますし、私の方自体でもよく指導監督をしていきたい、こういうふうに考えております。また、何回も言っておりますが、こうした関連団体等もそういうことをやらなければならないという気持ちになっていただくように、建設関係の各団体に働きかけて協力をしてもらう、こういうふうにしていきたい、かように考えておる次第でございます。

 

○和田(耕)委員 最後に要望しておきますけれども、たしか昭和四十四年でしたか、北九州市の八幡で病院の火事の事故がありまして、社会労働委員会の委員で視察に行ったことがあるのですよ。あの状況をつぶさに拝見をしたことをいま思い出しておるのですけれども、あのときも大騒ぎをしていろいろなことをやったのですよ。ここでも決議をしたり何かして要望したのですけれども、結局あの事故の教訓が生かされない事例がその後何ぼも出てきているのですね。特に、こういう問題については全部をやることはできないでしょうが、しかしぜひともやってもらわなければならぬことだけはやっていただくようにこれはお願いしたいと思っておりますし、そういう幾つかの急ぐ優先順位をつけた処置の仕方を、次の臨時国会が開かれるぐらいまでにぜひともこの委員会に報告していただきたいと思うのですよ。全部をきれいにやれと言うのではないのです。先ほど二、三例を挙げたようなことを、効果のあることをこういうようにやるのだということを挙げていただかないと、この教訓はなかなか生かされないということになりますから、ぜひともお願いいたします。

 

○越智政府委員 先生の御指摘のとおり、先ほどお答えいたしましたように一斉点検をいたしますが、その以前に計画いたしまして、重点的なところを早急にやるようにいたしまして、この委員会で御報告をさしていただきます。

 

○和田(耕)委員 お願いいたします。終わります。

 

○橋本委員長 浦井洋君。

 

○浦井委員 今度の大阪の大正区の飯場の大量焼死事件について質問をしたいわけでありますが、二十五名おられた労働者の中で十二名が亡くなられた。非常に深刻であり痛ましいわけです。そういう点と、それからもう一つは、亡くなられた方の身元がなかなかわからなかったというような問題が、今回の非常に不幸な特徴だろうというふうに思うわけであります。

 だから、先ほどからいろいろ論議をされておりますように、建設業その他で常習的に現実に存在しておる重層下請の問題で、労働者がきわめて悪い労働条件で働かされておる。それから労働法規による保護もないというようなことを端的に示しておるだろう。私も関西でありますが、九州、四国、中国地方から、万博を契機としたあのたまたま高度成長の時代に、農業が破壊されて、農業で食っていけなくて大阪に集まってきた。そして帰るチャンスを逸してあいりん地区その他、大阪も神戸もありますけれども、そういうようなところにいわば沈でんをしたといいますか、そういう層に対する施策が全く及んでおらないというようなことが、今回の痛ましい事故の一つの大きな原因だろうというふうに思うわけです。

 だから政府として、これは後で各論的にお尋ねいたしますけれども、その附属寄宿舎のあり方であるとか、あるいはそういうスラム街といいますか、あいりん地区を初めとした飯場あるいはドヤ街における労働形態の実情あるいは雇用形態のあり方、こういうようなものを一遍至急に点検をして、改善すべきところから実行していくということが先ほどからも強調されておりますし、私もそう思うので、まず最初に政務次官の方からひとつ具体的な決意をお聞かせ願いたいと思う。

 

○越智政府委員 先ほど来お答えをいたしておりますとおり、非常に不幸な事態でございます。労働省といたしましては、お答えをいたしておりますように、ひとつこのことの計画をいたしまして、重点的に指導、監督、点検をしてまいりたい、こう思います。

 そこで第一番に、お答えもいたしましたが、この実態が非常に把握しにくいところに問題がございまして、今回は賃金台帳であるとかあらゆる書類が焼失しておりますので非常にむずかしい事態でございますが、こうした方々の実態ができ得る限り安定所等で把握できるようにしていきたい、また現におります者につきましてもよく調査をして実態を把握していきたい、こう思います。

 また、宿舎の問題につきましては、先ほど来お話がございましたように、建築基準法の問題、それから消防法の問題――今回の問題は警報器が作動をしておればこういう惨事にならなかった、こう思いますので、消防法のことにつきましては十分存じておりませんけれども、建設業の附属寄宿舎につきましては私の方で網をかけておるわけでございますから、よくそういう実態をつかみまして、今後こういったことが起きないようにひとつ十分努力をしていきたい、かように考えております。

 

○浦井委員 寄宿舎の問題に入りたいと思いますが、先ほど来建築基準法の問題が出ておりますが、これは私、建設委員をやっておりましてよく知っておるのですが、建築基準法というのは名だたるざる法でありまして、いま論議になっております附属寄宿舎規程の方がまだかなりの規制と罰則がありまして、建築基準法に準拠をしてということになりますと、いまの法では具体的に何もやれないことになるわけです。そのことを申し添えておきたいと思うわけです。消防の問題についても、原因不明ということでなかなか手がかりがないわけでありまして、他に依存するのでなしに、やはり労働省としてきちんとやっていく、こういうことを要望しておきたいと思うわけです。

 それで寄宿舎の問題についてでありますけれども、この柳井建設の寄宿舎は、これは確認でありますけれども、労働基準法九十五条による届け出がなかったというのは事実なんですね。

 

○小粥説明員 そのとおりでございます。

 

○浦井委員 そこでその次に、労働基準法九十六条によるところの規程、省令ですね、これの問題について、この前、柳井建設の寄宿舎の場合は二つある規程の中で建設業附属寄宿舎規程が適用され、これによって規制を受ける、こういうふうな答弁があったのですが、そのとおりですか。

 

○小粥説明員 今回検察庁へ送検いたしました理由としては、建設業附属寄宿舎規程の違反、さかのぼって労基法九十六条違反ということで送検しております。

 

○浦井委員 建設業附属寄宿舎規程が適用をされておるのだというふうに、はっきり理解をしていいですね。

 

○小粥説明員 そのとおりでございます。

 

○浦井委員 そうであるならば、先ほども多少論議になりましたけれども、その建設業附属寄宿舎規程の第一条には「この省令は、労働基準法第八条第三号の事業であつて事業の完了の時期が予定されるものの附属寄宿舎について、適用する。」そして第三号というのは「土木、建築その他」こうなるわけでありますから、この条文自身は理解できるのですが、しかし、柳井建設を初めとした人口密集地に張りついておるところの飯場の実態というのは、このたてまえとはかなり違ってきておるわけですよね。柳井建設の場合で言いましても、もうすでに昭和四十年ごろから寄宿舎として使われておる。どう言いますか、その第一条に言うところの「事業の完了の時期が予定きれるもの」というようなことと実態がなかなかそぐわぬですよね。それから実質上は半恒久的な寄宿舎になっておるわけですし、さらにまた、先ほどからお話が出ておりますような基地的な寄宿舎になっておる。さらに言うならば、柳井建設の場合でも、私もいろいろ調べてみましたけれども、これは明らかに職安法四十四条違反の労務供給業をやっておった疑いが非常に濃いというふうに言わざるを得ないわけです。だから、こういう問題、こういうような矛盾について労働省側としては一体どう考えておられるのか、聞いておきたいと思います。

 

○桑原説明員 当該事件につきまして、事業附属寄宿舎規程で処理するか建設業附属寄宿舎規程で処理するかというのは多少問題があるところだと思いますが、四十二年にできましたときの立法趣旨と申しますか、それは有期事業自体をやることでございますけれども、有期事業の基地的な寄宿舎につきましてもこの規程を適用するというようなことでこれまでずっと取り扱いをしてまいったわけであります。今回送検する場合も、検察庁と十分相談をしてそういう扱いにいたしたわけであります。

 問題は、実態がそういうような、当時つくったときとだんだん変わってきたという問題があるとするならば、それについてはやはり私どもは寄宿舎規程の見直しということをやっていかなければならぬ、こういうふうに思います。

 

○浦井委員 後段の方の質問の答えはどうですか。

 

○細野説明員 御指摘の、労働者供給事業ではないか、こういう点でございますが、けさほど来お答えを申し上げておりますように、現在まだ調査は完了いたしておりませんが、現在までに調査したところでは、職安法の四十四条に言っております要件には該当していないというふうに考えております。

 

○浦井委員 なかなかこのごろは四十四条に該当するというような形での摘発が少ないというふうに私は聞いて、労働行政がはなはだ後退しておるのではないかと嘆いておるわけでありますけれども、いま私ここで言いたいことは、この問題というのは、非常に奥の深い問題の一端がたまたま焼死事件というかっこうで出てきたわけであって、だから単に、いま基準局長の言われた寄宿舎規程を必要であれば見直す、これは必要だと思うのですよ、やらなければならぬと思うのですが、それだけで片づく問題ではなかろうというふうに思うわけです。やはりこの際、こういう不幸な事件を契機として、建設業の特に重層下請になっておるような状態の実態の把握であるとか、そこで働いておる労働者の雇用契約の状況であるとか、あるいは先ほども言われたような労働条件や生活環境、こういうようなところにわたってまで総点検をしていく必要があるのではないか。そして、単に総点検をするだけでなしに、その結果を世人に公表をして改善をしていく、そのために労働省はあるのだというふうに私は思うわけでありますが、この点について次官なり局長なりの御意見を一応伺っておきたいと思います。

 

○桑原説明員 建設業は特殊な仕組みになっておりまして、重層下請というかっこうになっておりますから問題が非常に処理しにくいということでございます。したがって、安全衛生法では特定元方の責任ということで、建設業については特に安全衛生法上の義務を元方に課しておるという形になっております。それから労災保険法上の保険料の納付金も元請に課すというような形、あるいは賃金不払いにつきましては建設業法でもって元方にその責任の一端を持たせる、こういうようなことで法制的にも非常にきめ細かく、元方と下請との関係を他の産業と比べて厳しくやっておるわけでございます。

 そういった意味で、私ども行政の運営もそういった総合的な判断で、下請の責任という形だけでなくて問題を処理してまいってきておるわけでございます。したがって、たとえば災害が起こった場合に、それが賃金にも関連して出てくる場合もありましょうし、いろいろな問題が災害に関連して出てくるということがありますので、災害をとらえる場合に、総合的にそういった労働環境全体について見きわめていくという形で問題を処理してまいりたいと思いますし、必要に応じてそういった問題について御報告を申し上げてまいりたい、こういうふうに思います。

 

○浦井委員 建設業法であるとか建設労働者の雇用改善法ですか、あるいは基準法、そのほかあるいは安衛法ですか、そういうようなところでかなりきめ細かく規制をしておるのだと言われておるけれども、実態はそうではない、その実効がなかなか上がらなくて実際は余り変わっておらないのだということは、そういう答弁をされた局長自身もよく御承知だろうと思うわけです。だから、それはあなたの部下である労働省の出先の行政に携わっておられる人たちも、単に人をふやすだけでは、もちろん人もふやさなければならぬけれども、どう言いますか、ポイントが狂っておるのではないかというような意見すらあるわけなんです。だから私、尋ねたいわけですが、先ほど言われた建設労働者の雇用の改善等に関する法律の中で雇用管理責任者の選任であるとかあるいは建設労働者募集届の提出などが定められておるわけですが、しかしこういうことが、去年の十月一日施行でありますけれども、果たして柳井建設で実施をされておったのかどうか、どうなんですか。

 

○清水説明員 雇用改善法の関係で雇用管理責任者の選任の関係につきましてはいろいろ調査をしておりまして、いまのところ選任された模様はないというような状況の報告を受けております。それから募集の届けの関係につきましては、この点につきましてもそういった届けは出ていないというように……。

 

○浦井委員 だから、せっかく法はたてまえと筋としてはできたかもしらぬけれどもやはりやられておらないわけですよね。そこに私は問題があると思う。

 それから、御承知のあいりん地区の中に労働省の公共職安がある、一方で大阪府の外郭団体である西成労働福祉センターがある、こういうことですよね。その中で、西成労働福祉センターの方は、労働省の方もよく御承知のように、最低限雇用関係を明確化するということをさしあたって目的にして、紹介方法も相対方式という、労働省の言う集団管理センター方式というようなことで、プラカードを掲げてやればよいという非常に実情に即した、よかれあしかれそういうやり方がやられておる。そこには求人者として五百の業者が届けて登録をしておるわけだ。そこでお尋ねしますけれども、雇用改善法に基づく建設労働者募集届をそこへ提出している業者というのはどれくらいあるのですか。

 

○清水説明員 手元に正確な数字を持っておりませんけれども、後で御報告申し上げますが、大体ことしになって全体として百までは行っていないのじゃないかと思いますが、後で正確な数字は御報告申し上げます。

 

○浦井委員 それは後で御報告してもらってもいいですけれども、私の聞いたところでは二十か三十ぐらいだ、こういうことであります。だから、少なくともあいりん地区の労働形態あるいは紹介事業の実態にこの雇用改善法というのが即しておらない、アクションしておらないということは言えるのではなかろうか。局長はふきげんそうな顔をしておられるようでありますが、何でそういう開きがあるのか。片方は五百の業者がとにもかくにも、事業をやって金もうけしなければならぬということもあるでしょうけれども、来ておるわけですよね、府の福祉センターには。ところが公共職安の方には二十か三十しか来ておらぬ。ここに労働省としても国としてもよく考えてみなければならぬ問題があるのではないか、こういうように私は思うわけです。私も長年神戸の新川の、昔賀川豊彦さんがやられておった地域で、あのドヤ街の中で診療活動をやっておりましてそこの実態はよく知っておりますけれども、大変だろうと思うのですよね、それに輪をかけた形があいりん地区で存在しておるわけですから。だから労働行政の観点からいっても大変だろうと思うのですが、大変だといってほったらかしにしておったらこういうふうに十二名が焼死するわけなので、やはりもう少し知恵もしぼり、力も出して、実態に即した労働行政をあの地域でも実行していかなければならぬ責務があるのではないか、こういうように私は思うわけです。

 だから、その中でさしあたって、先ほどから各党も主張されておりますように、私も言いたいのは、一番の根本は、元方、元請業者が常時きちんと自分の請け負った仕事全体に従事しておる労働者を把握しておくというようなことが義務づけられなければならぬだろうと思う。それを元方にやらさなければならぬ。それから、下請でこういうような事故が起こる、法律違反行為が起こるというときには元方が責任をとる。たとえば公共事業をやっておれば、一時契約を破棄するとか停止をするとか、そういうような具体的な措置、規制をやはりやらなければならぬ。私が調べたところによりますと、今度の柳井建設の場合でも、柳井建設が人を供給しておると言うと語弊があるかもわかりませんが、その所は藤原工務店、佐藤道路、それから西濃組、坂口建設、そのほかあるわけですよね。これが第一次下請になっておるのか二次、三次になっておるのかわかりません。元方はもう一つある。先ほど出ましたように、枚方あるいは北摂津、北摂の方の事業というのは恐らく公共事業ないし公共的な事業だろうというふうに思うわけですが、これは藤原工務店がやっておる。坂口建設は新大阪の駅の近所の流通センターの近くの倉庫の建設をやっておる、こういうことであります。だからこれもあるいは公共的な性格を持っておるかもわからない。こういうことでありますから、早急に調べて、この件について緊急にいま私が申し上げたような元方の責任をきちんとさして、それに対して規制をしていくということをやっていただきたいし、恒常的にもやはりそういう規制が必要ではないかというように思うわけでありますが、ひとつお答えを願いたいと思います。

 

○越智政府委員 先生の御指摘をいただきました労働行政につきましては、なお改善努力をいたすべき点はたくさんあると思います。しかし、われわれ何もやっていないかといいますと、鋭意努力はいたしております。改善すべき点は大いに努力をして改善をしていきたい、こう思います。またこれは工事の発注者、受注者、発注者と元請が十分理解をいただき、協力をいただかないとうまくいかないことはお説のとおりでございます。

 そこで、労働基準法に違反する、あるいは職業安定法に違反する、こういった元請業者につきましてはひとつ使わないようにしていただく、こういうことに持っていきたい、こう思います。また、公共事業につきましては、何回も申し上げておりますように、基準法違反とかこういう違反が出ますと通報いたしまして、指名停止であるとかそういう処置を現にとっていただいておるのでございます。しかし、今後なお連携をよくいたしまして、私の方の労働省自体も大いに努力をいたしますし、各省にも御協力をいただいて前進してまいりたい、かように考える次第でございます。

 

○橋本委員長 すでに五分オーバーしておりますので、締めくくってください。

 

○浦井委員 最後に、これも労働省の幹部にひとつ申し上げておきたいわけなんです。現地で私いろいろ聞き取りをやったわけでありますが、事故の当日、警察であるとかあるいは消防の方は非常に人数も装備も重々しく、物々しく繰り込んできてそれなりに仕事もやられたのでしょうが、それに比べるとわが労働省の末端では装備もなく、たまたま雨も降っておったそうでありますが、警察やら消防署の方はかっぱも着てきちんとやった、ところが監督署の方はかっぱもなしに、しょぼくれたかっこうで少人数でやっておった。そこでそれに従事をしておった人たちが非常に強い疑問を持ったそうです。だから、やはりこの際、そういう事実もあったのだということで、えりを正して下の声も聞きながら、末端の労働行政が労働者保護の観点から円滑に行われるようにひとつ十分な配慮をしていただきたい、このことを申し上げて私の質問を終わりたいと思います。

 

○越智政府委員 御激励をいただきまして、まことにありがとうございました。私の方といたしましても、今後、現場の指揮あるいは服装等も含めましてひとつ考えたいと思います。御承知のように、警察であるとか消防であるとかは、服装なり訓練がそういうところに対応するようにできておると思いますので、私の方がその点は十分でないかもわかりませんが、ひとつ鋭意努力してまいりたい、かように考えております。

     ――――◇―――――