[005/017] 80 - - 社会労働委員会 - 2

昭和520301

 

○草川委員 続いて私は、非常に特殊というのですか、われわれが特別な配慮をしながら現実を見なければいけないということでございますけれども、山谷というのが東京にございますけれども、山谷地区というのは一番底辺の雇用状況が一番顕著に出るところではないか、こう思うのであります。そこでの実情を調べてまいりますと、あそこは一番景気のしわが早く出るところではないだろうか、こう思いますが、昨年に比べて約二〇%ぐらい仕事が少なくなっているわけであります。特に、長期契約といいましても月に稼働が一番長い方々で十二・五日しかございません。そして行き倒れというのですか、凍死をして、仕事がなくて死んでいくのがことしになってから十七人も見えるわけです。現状では全く無情な死ではないだろうか。いま私どもも一般的ないろいろな諸要求等あるわけでございますけれども、あの実情というものは、とにかく住む家なし、あるいは仕事なしというので、朝晩炊き出しなんかが行われておるという、まさしく高度工業国家においては信じられないような状況というものが現実にあるわけであります。

 私はそこでいろいろな問題で調べてまいりますと、大変恐縮でございますが、一九六〇年、ですから十七年近く前に大臣が山谷友の会の会長をなすってみえるということを実はそこでたまたま聞いたわけであります。いわゆる有名人、著名人がずいぶん集まられて、山谷というものを何とか本当に人間味のある立場から考えなければならぬじゃないかということで、会長をなすってみえるということを私は発見をしたわけであります。これは非常にいいことをやっておみえになったわけでございますが、なぜそれが定着をしなかったのか。私は、その都度思いつきで山谷対策なんかをやるから非常に不信を買っておる点があると思うのでありまして、大臣に新たになられたわけでございますから、十七年前の山谷友の会の会長をやってみえる大臣が改めて山谷地区を見て、もう一度日本の今日の現状の中からあれをどのように解放をしていくのか、解決をしていくのかというようなお考えがありましたらお聞かせ願いたい、こういうように思います。

 

     石田国務大臣 東京の山谷、それから大阪の愛隣地区、ともに全く底辺の人たちでありまして、いま山谷友の会のことが出まして、なぜいまやめているのかというお話でございましたが、実は十五年ぐらいやりました。始まったのはいま御指摘の一九六〇年じゃなくて、もうちょっと前なんであります。昭和三十二年に私が初めて労働省へ参りまして、ああいう地区の視察をしておりましたときに私の旧知の者が山谷に住んでおりました。これはキリスト教徒でありまして、非常に熱心に山谷地区の人たちの世話をし、相談に乗っておったわけでございます。それから一方、あそこのいわばドヤ街の主人たちの中にも、自分たちが金を出し合って何か改善の道を講じたい、こういう意向が動きましたので、知名人、有名人を積極的に誘ったわけではないのです、参加をしてくれる人は無論拒まなかったのでありますが、たとえば共同食堂の経営とか、あるいは巡回診断、これはNHKと朝日新聞が協力してくれまして、かなり定期的にいたしました。この巡回診療を定期的にやって、初めのときはずいぶん疾病を発見したのでありますが、その後だんだんと疾病の発見率が減ってまいりましたのはやはりそれだけの効果があったものだと思うのであります。しかしそれが、実はその中に住んで世話をしてくれておった男が死んだわけです。かわりの人を見つけられないかと思って私もずいぶん探してみたわけでありますが、あそこに住んで世話をするという人はなかなか見つけにくい。そこで東京都の方に仕事を移管をいたしまして、そうして東京都の方でそれをいろいろやっていただいておるものと思っております。まだ就任して間がないし、何しろ朝から晩まで予算委員会に座っていなければいけませんからまだよう訪ねないでおりますが、近く訪ねていくつもりでございます。

     草川委員 いまの大臣のお話をお聞きしまして、私も非常に賛意を表しますから、ぜひそういうような機会をつくっていただきたいことを要望を申し上げておきます。

      次に、やはり景気調整のしわの問題が中高年齢にいくということをさらに深めていきたいと思うわけでございます。

      午前中にも定年という問題が出ました。労働界の方からも定年の延長ということが出ましたが、大臣からのお話がございましたのでそれは結構でございますが、現実の運営の中で定年前の研修制度というものがあることはもう御存じのとおりだと思うわけであります。ところが、その定年前の研修に関する調査というものがほとんどない。これは労働省にもないわけでございまして、私たまたま、社団法人で中高年齢者福祉管理協会というのがございまして、そこで資料をもらってきたわけでございます。ここも余り詳しい調査はしているわけではございませんけれども、それでも各企業の労務担当者に、現在、定年前約五年ですけれども、そういう社員を対象に定年後の再就職に役立つような独自の研修をしておるかどうかと問うたところが、八二・四%がしてないという答えを出しておるわけであります。そして、こういうような制度があることを知っておるかというような問いに対して、よく知っているというのはわずか十六でありまして、二三%しかない。聞いたことがないという管理者は約二割近い数字があるわけでございまして、結局、定年の問題ということがこれから非常に社会問題になってくるわけでございますが、職業再訓練の問題についてもほとんどこれは絵にかいたもちというのですか、もうそのままに放置をされておるような状況じゃないだろうか。ですから私は、この定年前研修に関するこの制度というものを、せっかくあるならばもっとこれを充実することを行政側の方では積極的に取り上げていただきたいし、各都道府県には労政事務所というものがあるわけでありますけれども、この労政事務所の役割りもほとんど情報収集ということが中心でございまして、現在ある制度を具体的に展開するということについては非常におくれておる点があると思う。これは要望でございますが、ここらあたりをぜひひとつ積極的にお考え願いたいと思うわけでございます。

      そこでひとつ、この中高年齢なり年輩の人に犠牲が寄らない方法は一体ないものかどうか。アメリカの場合は、御存じのとおりレイオフ制度というのがあるわけですから、若い人の方が失業が多いわけでございます。アメリカの場合、ちょうど十年ほど前になりますけれども、連邦法で年齢差別禁止法、これは私、正確な名前かどうかあれでございますが、一口で言えば、年齢差別で、年をとるがゆえに解雇しては相ならぬという連邦法があるわけであります。私はこの話を聞いたときに非常に興味を持った、という言葉は悪いわけでございますけれども、労働界の方からはたまたま大量解雇制限法案というような要望も出ておるわけでございます。私は、大量解雇制限法案というものが現実にできれば一番いいわけでございますけれどもなかなかむずかしい問題があると思うのですが、少なくとも年齢差別によって解雇をするというようなことをしないとか、あるいは採用というようなことを差別をしないという基本的な原則のようなものを、これは理念として大臣がいまからあらゆる機会に訴えられて、ひとつ日本の雇用構造が変わっておるということを現実的に直されていくような方法をとられたらどうなんだろうか、こんなようなことを考えたわけでございますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思うわけでございます。