77-衆-予算委員会-11号 昭和51年02月12日

 

昭和五十一年二月十二日(木曜日)

    午前十時二分開議

 

       

        参  考  人

        (経済団体連合会会長)    土光 敏夫君

        (日本経営者団体連盟会長)  櫻田  武君

        (日本労働組合総評議会企画局担当幹事)   安恒 良一君

        (全日本労働総同盟調査局長) 河野 徳三君

        (全日本自由労働組合委員長) 近藤 一雄君

        予算委員会調査室長      三樹 秀夫君

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本日の会議に付した案件

 昭和五十一年度一般会計予算

 昭和五十一年度特別会計予算

 昭和五十一年度政府関係機関予算

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○永井国務大臣 ただいまのまず第一の問題でございますが、大学卒業者の就職状況でございます。これは昨年の春先、経済状況が悪いというので心配をいたしておりました。そこで求人の時期を少しずらしたわけです。求人の時期をずらしまして、一ヵ月後の比較では、これは危惧するほどではなく、その前年度の求人の一ヵ月後とほぼ同じ程度の求人があったということでございます。それが九月末でございますが、しかしさらに、その後どの程度の事実上の就職内定があるかという調査を十一月、それから十二月、一月、三度に分けて行っております。まず十一月の……(石母田委員「一番最近のものを」と呼ぶ)そうでございますか、しかし、一番最近の一月のはまだ集計中でございますから……。十二月末現在では内定率約六割でございます。

 それから第二の先生の御質問の一時待機、採用取り消しの問題でございますが、これも昨年問題になりましたので、労働省とも協力をいたしまして、これはやはり危惧をいたしておりましたが、幸いに本年は採用内定ということがありながら、しかも一時待機とか採用取り消しという事態は生じていないということでございます。

 

○石母田委員 いまの数字は、三十六万人のうち、未就職者数が約十五万人というふうに文部省からも受け取っておりますけれども、大体六〇%というのはそういう数字として理解してよろしゅうございますか。

 

○永井国務大臣 結構です。

 

○石母田委員 そういう状況のもとで、私は近藤参考人に、まず、一体失業者がどういう生活、就労状況にあるかという実態を現場におられるあなたから知らしてほしいと思います。

 

○近藤参考人 近藤です。ただいま先生御指摘の、特に職安登録日雇い労働者の就労と生活の状況について最初に申し上げたいと思います。

 これは特に東京の場合がひどいのでありますので、就労の状況について最初、玉姫、河原町労働出張所に限定されますが、両出張所合わせて約五千名登録しておりますけれども、一月の延べ求人数が一万二千七百五十二名、うち東京都の特別就労対策として六千五百五十五ありますので、一般求人の約五割強をこれが占めているという状況であります。

 輪番の回転、これは紹介を受ける機会が回りばんこに来るわけでありますが、その状況は、玉姫の場合は、一月の場合四回から五回、河原町の場合は七回から八回、最低月十四日就労しないと、雇用保険の日雇い失業給付というお金があるわけですけれども、それももらえない。それから日雇い健康保険の受給資格もなくなるという状況であるわけです。きょう傍聴に来ました仲間の手帳を若干持ってきておりますが、こういう状況であります。これは一月がこのとおり三日しか働いてない。それから、十二月が同じく三日であります。これは全部調べればあれですが、時間がありませんから申し上げませんが、中には一日しか働けないという状態もある。それはたまたま回る場合、自分の就労に適さない、たとえば労働の強度だとかあるいは賃金の問題だとかありまして、適さないといった場合は希望しないわけでありますから、そうするとどんどん回りばんこが回っていきますので、回数としては四回から五回、七回から八回ということになっておりますけれども、実際にはそれ以下の場合もあり得るという状況であります。私たちは少なくとも十四日以上の確保を切実な要求として、これは労働省当局にも要求してまいりましたし、昨年十一月の十一日の衆議院社会労働委員会でも労働省の遠藤局長は、月十四日の就労の保障について期待に沿うべく努力するというふうにお答えがあったわけでありますしかし、実際の状況はいま申し上げたような状況で、全く就労の状況は最悪の事態だというふうに言われております。

 次に、生活の状況を若干申し上げますと、これは一月二十四日の朝日新聞が伝えておりましたいわゆる年末年始の青カン、露天で寝た労働者の凍死について伝えておりますが、その際は年末年始に六名、そうした状況でいわゆる青カンで亡くなっているわけであります。しかし実際にはもっと数が多いのでありまして、たとえばドヤで、その日たまたまおったということで外ではないけれども凍死をしたという例もありますので、私たちの全日自労の組織が調べたのによれば、少なくともこの山谷のかいわいでは年末年始の時期に三十名を下らない、そういうふうに言われているところであります。

    〔小山(長)委員長代理退席、井原委員長代理着席〕

 現在ドヤ賃は、宿賃でありますね、ドヤ賃と言っておりますけれども、それは四百三十円が最低であります。ですから、最近特に地下道だとかそういうところで寝る者、それから軒下に寝る者がふえております。対策はどういう対策が行われておるかということを率直に申し上げますと、いま寒いわけですから、この寒さに寝入りますと死んでしまいますので、警察官がときどき回ってきては寝るな、死んでしまうぞ、こういうことで起こして歩くというのが最大の対策だというふうにわれわれは見ているところであります。何らこれらの労働者に対して仕事を与えるとか、それから生活を保障するという対策がとられてない。

 それから、最近ますますまた売血がふえているということを申し上げておきたいと思いますし、月四回から六回も売血する者もおるという状況であります。

 先ほど若干生活保護の話もありましたけれども、生活保護の適用についてもこの地帯においては病気でなければ適用しない。いわゆる働く意思と能力があれば当然働くことが第一でありますので、働く機会があるなしは別として希望しろということになりますから、診断書を持ってこいというふうに最近言っております。これについては非常に重大な問題だというふうに思います。働く場所がないことは非常に明らかなのでありますから、当然生活保護の適用が無条件に行われなければならないというふうに思います。

 二つ目の問題は、私はいま特に職安登録の日雇い労働者の問題を申し上げましたが、失業多発地帯、特に筑豊の問題について若干申し上げたいと思います。

 筑豊全体で失業対策の事業に従事している労働者は約一万七千名であります。一般失対は八千五百、緊就が二千五百、開就が二千八百、特開が三千ということになっておりますが、その中心であります田川の職安管内を見ますと、田川の職安管内全体の人口が十六万四千二百十三人に対して世帯が五万一千三百五十三世帯というふうに言われております。そのうち失対諸事業が八千、それから、いま中高年雇用促進特別措置法による手帳によって就職促進の措置を受けているものが約千五百、それに生活保護を受けている世帯が一万百十四世帯あります。ですから約三割から四割が生活保護だとか失対事業だとかいうのによって、それでなければ生活ができないという状態にある。

 こうした失業と貧困による生活の環境は、特に少年の非行が顕著になっているということ、これは田川署が二月五日に少年非行白書というのを発表しておりますけれども、それによると、昨年補導した刑法犯の検挙数が三百五十四名、そのうち小学校の生徒が六十四名、一昨年よりも二十九人ふえているというふうに言われております。犯罪の内容も非常に凶暴化している。だから最近の傾向はいわゆる失業と貧困による非常に大きな影響をこれに与えているというふうに言われているところであります。特に失業と貧困の家庭環境について川崎町立中学校で調べたのによりますと、川崎のこの学校は四百四十七名検査をしたわけでありますが、その中で特殊学級に入らなければならないという対象者が七十九名おるというふうに言われておって、非常に大変な実は事態だというふうに言われております。

 ぜひこの地帯では公共事業を大規模に起こして失業者を吸収すること、失対事業の改善によって生活状況を改善すること、地方自治体の負担を軽減するというふうなことが強く求められております。特に緊就、開就事業が五十二年以降実施されるかされないかということを非常に仲間は心配しておりますので、その不安をぜひ除去してほしいという希望が強いわけであります。

 失対労働者の生活を概括的に申し上げますと、失対事業の賃金は現在二千百四十円、五十一年度からは一応予算案によれば二千三百六十八円であります。一〇・六%の引き上げになっておりますけれども、しかし、月約五万円前後でありますので改善する必要があるというふうに思います。それから、失対労働者の家計調査を私たちは三年間連続して行って、特に中央大学の江口教授などの協力を得てその集計等を行っておりますけれども、昨年十月の状況は、七十一世帯の平均でエンゲル係数が五二・七%、これは前年でありますけれども、四十九年が四四・〇%でありますから非常に悪化しているということがここで言われるわけであります。まさに動物的な生活を強いられている。賃金の状況からしてそういうことになっております。

 この深刻な失業者の状態に対して緊急に仕事と生活の不安を取り除く対策が強く求められておりますし、先ほど私はちょっと申し上げましたけれども、北海道における出かせぎ問題などについても非常に深刻であります。北海道だけじゃない、東北も含めてでありますけれども、出かせぎ問題が深刻でありますので、そうした問題についても十分ひとつ労働者に働く機会と生活の保障を確立するために国会で十分御論議を願いたいことを常に念願しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 

○石母田委員 いま聞いていて非常にはだ寒い感じがするわけであります。私も、いまの近藤参考人のお話のような経験を一つしているわけですが、私どもの住む横浜には、いわゆる釜ヶ崎、山谷と並んで寿町というところがございます。失業者の密集地帯ですが、これを管轄する伊勢佐木署の発表によりますと、管内で昨年一年間に行路人の死亡者数、つまり行き倒れで死亡した数が百四体中、その七〇%が寿地区と報告されております。こうした点でこの地域でも、いまのお話にありましたような防犯上の事犯が失業の多発と同時に起きているわけであります。

 私は、ここで公安委員長としての福田自治大臣にお伺いしたいと思いますが、昨年東京都に対し、こうした失業の悪化という中で、警察当局から、防犯上の立場からも失業救済の緊急対策を要請したというふうに聞いておりますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。

 

○福田(一)国務大臣 お答えをいたします。

 この雇用不安による防犯上どのような処置をしておるかということで、特にいまの伊勢佐木町ですかの問題を御質問があったわけでございますが、われわれとしては、この雇用不安による影響として、行路病人とかあるいは定まった住居を有しない者が、保護する者がだんだんふえておるという事情も踏まえまして、常に雇用情勢の変化に注目して、地域的に必要があるところでは、保護、それから防犯活動の強化、関係機関への要望などの措置を実は講じております。もし具体的な問題でありましたら保安部長からお答えいたさせます。

 

○石母田委員 質問の意味は、東京都にそういう要請を行った事実があるかどうかということを聞いておるわけでございます。

 

○福田(一)国務大臣 それも実はございます。昭和五十年の七月四日に、警察庁の保安部長から東京都の労働局長及び民生局長に対して、山谷地域日雇い労働者の求人対象について依頼をしております。その趣旨は、山谷地域内の簡易宿泊所の人口が減少しているとはいえ、玉姫労働出張所において最高一日四百十三人というようにかつてないほどの多数の就労できない者が出るなど、労働者の不満がうっせきしていることから考えて、ひとつ十分にこういう面について処置をしてもらいたいというようなことを通知をしております。

 

○石母田委員 私は、こういう状況は、もはや失業者の問題というのがいわゆる地域的な、年齢別あるいは部分的なものではなくて、全面的な問題になっているし、あらゆる職種に及んでいることは言うまでもないと思います。こうした点で、私は、この失業者の生活保障というものが国の施策としてもきわめて重大な緊急な課題になっているというふうに考えておりますけれども、この点について、労働大臣には常々聞いておりますので、きょうは、政府を代表するという意味で総理大臣が来ておりませんで、その次に当たる福田副総理に聞きたいと思います。

 

○福田(赳)国務大臣 ただいま伺ったところでも、この日雇いの方々の状態は非常に深刻なように思われるわけでありますが、それにはどうしても失対事業的性格の公共事業を起こす必要があろう。そこでそういうことにも着目いたしまして、政府といたしましては本年度は第四次不況対策、それから引き続きまして五十一年度におきましては公共事業を、五十年度また四十九年度はかなり抑えたのですが、今度はこれを非常に拡大をいたしておる。これがとにかく一番有効な手段ではあるまいか、さように考えますると同時に、早く予算を議決していただきまして、その執行を取り急がなければならぬというふうに考え、その施行をいかに早くいたすかということにつきまして鋭意いま政府部内においても検討いたしておるというところでございます。

 

○石母田委員 いまは公共事業に失業者を吸収することが一番の施策だというふうに答えられる。なるほどそうだと思います。

 私は近藤参考人に、それではその施策というふうに考えられている実態は一体どういうものであるか、近藤参考人に聞きたいと思います。

 

○近藤参考人 公共事業に失業者を吸収するということについては、失対事業が開始された当時からこのことは言われておったし、しかも実際にそのことが行われてまいりました。特に特別失業対策事業だとか臨時緊急就労対策事業だとかということで、これは公共事業に対する吸収率ということでそういう措置が行われたわけでありますが、最近は公共事業に失業者を吸収するということについてほとんど行われてないというのが実情であります。当局は住宅建設等に失業者を吸収する、そのために努力をするというふうにわれわれにも言明しておるわけでありますけれども、余り実施をされていないという、実際には働いていないというのが実情であります。

 例を一つ申し上げますと、東京足立の大谷田地区というところで公団住、宅建設を行っておりますけれども、ここで躯体工事では十五社、付帯工事では三十六社あって、その協力会の会長は戸田組が行っておりますけれども、これは何回戸田紺に申し入れをしても登録日雇い労働者を雇い入れしない、求人をしないという状況であります。彼らの言い分によれば、不況のために手持ち労働者を使うだけでいっぱいであるということです。設備工事は技能工中心だから日雇いの仕事はない。材料運搬などくらいはあるだろう、こうこちらが問い詰めているのに対しても、言を左右してなかなかそのことについて答えないという状況であります。特に大成建設などでは五百二十人の無技能労働者を使うということになっているというふうに聞いたものですから、それを再三申し入れを一これは同じく足立地区であります、同じく公団の建設をやっております関係で、そういうことを聞いたので、再三申し入れをやったところが、には十名求人があったというだけで、五百二十名という数は全くこれは架空な数字だということになっているという状況であります。したがって、公共事業によって失業者を吸収するということは、私たちもぜひやってほしいわけでありますけれども、実際にはなかなかそうなっていかない。特に手持ち労務でいっぱいだというのが現在の状況で、なかなか日雇い労働者のところにまで渡ってこないという状況になっております。

 

○石母田委員 これが実態だと思います。幾ら公共事業を起こしても、そこで職安を通じての民間の日雇いの人たち、そういう人たちが入れないという状況ではこれは一切問題は解決しない。

 いまのお話でちょうど住宅公団の話が出ておりますが、建設大臣に私はお伺いしたい。これは昨年、あなたもそのときは大臣だったと思いますが、十一月でしたか、閣議でも関係大臣に労働大臣から協力要請をしたというふうに聞いております。またその前の十月には、各都道府県知事へ要請を職安局長の名前で出して、いわゆる公共事業の発注状況をよく知らしてもらって、そして職安がそういう人たちを吸収できるようにしたいという要請が行っているわけです。特に建設大臣は、こういう公団など公法人を含めまして、かなりの公共事業を持っておられる部門なので、建設大臣として、一体、公団などがそういう事業をやる、大成建設その他にやらせるときにこういう指導をどういうふうにやっておられるか、あるいは今後どうするつもりであるか、お伺いしたいと思います。

 

○竹下国務大臣 石母田委員にお答えをいたします。

 建設業は、もう御承知のごとく、日雇い、臨時の職員が比較的多い業種であります。過断な機会でございますから、率直にその内容を申し上げますと、製造業は、大体日雇いが〇・八%、臨時が一二・一%。これが建設業ともなりますと、日雇いが一二・一%、臨時が八・八%。そういうふうに、この建設業というものは製造業に比してはるかに日雇い、臨時の雇用者総数というものは多いわけであります。それが副総理から申されましたように、公共事業の執行に当たって当然のこととしてそういう方の雇用の場を確保できる、こういう理屈につながるわけでありますが、先ほどの参考人のお話にもありましたごとく、率直に言って今日の段階におきましては、いわゆる手持ちの労働力とでも申しましょうか、そういうことから、それに、おっしゃっている状態の中にまだ来ていないというのが実態であります。今後これらの職員を雇い入れる必要が生じたときは、もとより職安のあっせんによるようにこれは指導してまいっておりますが、私の就任前でございましたけれども、労働大臣からの御要請の点につきましては、関係公社、公団あるいは都道府県等に対しましてそれぞれ指示をいたしておる、もうすでにその通達がなされておる、こういうことであります。ただ現実の問題として、まだ手持ちの労働力をもって事に当たっているというのは、率直に私も肯定をいたすわけであります。

 

○石母田委員 私の聞いている話とはずいぶん違うのです。建設省がこういうものでは余り協力的じゃないという政府部内の話も聞いているのです。実態がそうなっているのだから、特に先ほどの話のように、公共事業に、民間はもうそうでなくてもなかなか雇い入れる条件はないわけでしょう、先ほどの話から。ですから公共事業がまずそういう方向で失業対策としてやらぬと、これはなかなかできないですよ。ですから建設大臣、もう一度……。

 私はこういう経験があるのです。この間、これは運輸省関係ですけれども、やはり地元の中小業者を、入札のときに雇うように指導してほしいということで、それが非常に成果があって、運輸省が行政指導したのでしょう、それでそういう成果があらわれているのです。ですから、建設省としても、通達を出した出したと言うのじゃなくて、実態がそうなっているのだから、やはり大臣としてもそういう点での行政指導を強める、あるいはそれを徹底させるような具体的な措置をぜひとってほしいと思いますが、建設大臣、どうです。

 

○竹下国務大臣 私にも御趣旨は理解をできますので、具体的に、通牒をもって措置すると言ってしまえばそれまでになりますが、そういう姿勢のもとに行政の実施に当たりたい、このように思います。

 

○石母田委員 各省に一々またこういうふうに確認すると大変なものですから、政府を代表して福田副総理に重ねてお願いしたいのですが、こういう意味で公共事業、特に政府機関ですね、各省、こういうものについては失業者、特に職安を通じての失業者を吸収することを、閣議などで一定の吸収率を決めまして、いまいろいろばらばらがありますから、大体一定の割合でやるように指導する、こういうことを、まあできれば、連名の次官通達という例もあるそうですけれども、そういうことなどでぜひ緊急に徹底するような諸施策を講じてほしいということを政府を代表してお答え願いたいと思います。

 

○福田(赳)国務大臣 いまちょうどそういう諸問題、公共事業をどういうふうに質的にうまく配分していくかというような問題につきまして協議する仕組みを考えていこうというような段階になっておりますので、早急にさような方向で措置いたします。

 

○石母田委員 そこで、どうしてこういう政府の失業対策というものがおくれるかという一つの理由の中で、現在の失業の実態を把握する上でわが国の統計では、完全失業者の百万人とかいうようなものが主になっているのです。これ以外に、失業者というものを決める政府の資料がなかなかないのです。その完全失業者の定義というものについて私は非常に疑問を持ちまして、この三年間国会でたびたび労働大臣とやり合ってきたわけであります。

 それは、日本の完全失業者というのは一週間一時間も仕事につかない、働かないということです。しかも求職活動、職を求めている労働者だということになりますと、日本のような社会保障の現在で、そういう人が一体どういう人なんだろうかと首をかしげたくなるような、国際的にもきわめて違った内容なんですけれども、総理府の統計局長が労働力調査でこういう定義をやっておりますが、まず事実の確認として、完全失業者というのは、いま私が申しました、一週間一時間も収入を伴うような仕事につかない者で、しかも求職活動をしている者というふうに理解しておりますけれども、そのとおりですか。

 

○川村政府委員 お答えをいたします。ただいま先生のおっしゃるとおりでございます。

 

○石母田委員 これは私は、諸外国の問題でよく出すのですが、アメリカは十六歳以上です。日本は十五歳以上ですが、過去四週間中特別の求職活動をした人という問題とか、この中には、レイオフになっている、復職を待っている人も皆含めているのですね。それからイギリスは、毎月中旬の月曜日だけで失業している人、職安に登録している人とかというふうに、日本のように一時間も働かなかった、この人がまあ百万人いるというだけでも大変なことだと思うのだけれども、先ほど近藤参考人にあるような、月に一日でも働いたというと、これはもう一週間一時間になりますから、これは含まれない。果たしてそういう完全失業者というだけで日本の失業の実態が反映できるかどうか、こういう批判がありまして、最近、労働大臣の私的諮問機関ですか、いろいろ諮問機関があります、雇用政策調査研究会というところで、「諸外国においては失業者数ないし失業率が政策判断の指針として有効に機能しているが、我が国の労働力調査による完全失業者数および失業率は労働市場の状況を必ずしも的確に示していない」こういうことで、この失業の定義等の面で、いわゆる諸外国と比較できるようなものにする工夫も必要だろう、こういう報告か意見が出ておりますが、労働省の意見として、一体こういう労働力調査による完全失業者、こういう定義の仕方などについて検討を加える必要があるかどうかというものについて答弁していただきたいと思います。