76-衆-法務委員会-6号 昭和50年12月10日

 

本日の会議に付した案件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関 する件

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○古川政府委員 ただいま保護観察官一人が持っております観察対象者の数、これは一対三百のような事例があるのではないかという御指摘でございますが、全国的に見ますと、五十年八月末現在でございますが、第一線の保護観察官は全部で五百七十二名おりまして、対象者数が六万七千三百七十七名、結局これを割りますと、保護観察官一人当たり平均担当事件数が百十八件という状況でございます。ただ、これは各観察所でばらつきがございまして、最近、社会内処遇ということが非常に重要視されてまいりまして、家庭裁判所などでも非行少年等につきまして、従来交通事件は不処分になりましたりなにかする事例が多かったのでございますが、最近は保護観察の方へ任すべきだという傾向も強くなってまいりまして、そういう傾向の強い家庭裁判所あたりではそういう交通の非行少年が非常にふえて、そういうところでは、私いま承知しておりますところでは、保護観察官一人で二百名程度のところがあるようでございます。ちょっと三百名というのは私まだ聞いておりませんが、二百名を超えるところがあることは事実でございます。

 こういう点につきましては、われわれもできるだけそういうばらつきがないように考えてまいりたい。同時にまた、全般といたしまして、やはり理想的に言いますと、保護観察官一人で対象者数は五十名ぐらいが理想的だ、こういうふうに言われております。できるだけその方に近づけたい、かように考えておるわけでございます。

 ただ御承知のように、増員関係につきましては、人員削減等のこともございますので、われわれ、観察官については毎年三けたの増員を要求しておるのでございますが、これが毎年二十名前後ということで、ただ十年ぐらい前に比べますと、四十年には保護観察官一人平均二百十六件でございました。それが先ほど申し上げましたように、ことしは十年たちまして百十八と、これもさらに今後増員の努力を続けましてできるだけ負担を軽くいたしまして、理想的な保護観察ができるように努力してまいりたい、かように考えております。

 

○沖本委員 観察官の場合についても言えるのですけれども、いろんな社会の民主化というようなことで、多種多様の考え方、生活に対する思考あるいはその行動、いろんな点が、個人個人、昔とずいぶん変わってきているわけですね。そういうものに対応できるような観察官でなければ、いま例を引かれました非行少年なら非行少年についての更生というようなことは図れない、現状維持で現状はどうであるかということを見るにすぎない、こういうことになるわけですね。

 そういう点から考えていきますと、現在全国にいらっしゃる保護司の方々、毎年私よく言いますけれども、相当年齢が高齢化されておって、果たしてその人たちの能力で保護司の役割りが果たせるかということですね。ずっと古いお考えの持ち主である場合には、明らかに現在の青年、少年を含めての人たちと、考えなり何なりに断層が起こっているはずなんですね。それを埋め合わせるだけの能力をお持ちになるだけの努力をしていただいているかいただいていないか。また法務省としても、そこに報酬の伴わないいわば名誉職的なものであるために、無理なことも言えないということになりますと、その反面、私は向こう側の方からいろいろ見ていますけれども、どうしても名誉職的に肩書きがほしいということで、しばしばトラブルを起こしています。あいつはそんな能力なんかないのに保護司の名前をとったとか、そういうふうなのはちまたでしばしば聞く話なんですね。そうしますと、保護司という役割りというものと、保護司になっていらっしゃる方の能力というものを比較していくと、それは十分機能を果たさないというふうに私は見るわけですけれども、そういう点はもう一度根本から考えを変えてみていただいて、そして将来に向かっていかにあるべきかというふうに見ていただきたいと思うのですね。

 私の住んでおるところは大阪の西成でございますから、いわゆる愛隣地区そういう刑余者のたくさんおる地帯でもありますし、しょっちゅうそういう方に触れてはおりますけれども、いろいろと変わってきているわけです。そういう点考えてみても、複雑なこういう保護司の業務というものは、もっと新しい物の考え方で見ていただかなければならないわけですね。昔ドヤと言われたところはいまはホテルと名前は変わっているわけです。中にはカラーテレビもありますし、いろいろとその内容は変わってきているわけですね。ところが、そういうものに対応できないようなことであれば、これは保護司の能力がないということになりますから、その点も十分研究していただいて、将来に向かって検討を加えていただくし、そういう内容のものが、また別に考えれば観察官の上にのしかかってきているということも言えるのではないかということが言えるわけですから、十分能力を発揮していただくためにはやはり十分人をふやして仕事を楽にしてあげる以外に十分な役割りを果たすことはできないのじゃないか、こういうふうに考えられます。こういう点について、いかがですか。

 

○古川政府委員 いま沖本先生から御指摘いただきましたように、少年の対象者は非常にふえてきております。しかも非常にむずかしくなっております。保護司各位に伺いますと、やはり成人よりは少年の方がむずかしい、ことに少年院を退院した者が一番むずかしいというようなことをよく言われております。

 そういう断層の問題、われわれそれにつきましても前々からいろいろ努力をいたしまして、研修を強化いたしますとか、さらに最近力を入れておりますのは、先生も御承知のBBS運動でございまして、これは全国に約一万人のビッグ・ブラザーズ・アンド・シスターズの会員、少年、青年諸君ですが、こういう人たちに大いに協力してもらい、まして、保護司さんの片腕になっていただきまして友達活動を行う、非行少年の更生というふうなことに大いに力を入れております。予算も法務委員会の御援助もございまして、ことしはBBS関係予算も約十倍にもふえたような状況でございまして、そういうふうにわれわれ力を入れておるわけでございます。

 ただ、何分にも保護司各位の適任者、先ほど名誉職だけになっているような点がありはしないかという御指摘でございますが、最近適任者、つまり本当に保護司として活躍いただく適任者を得るのはだんだんむずかしくなっているというのが実情でございます。これにつきましては、できるだけわれわれ本当に適任者を得るように、観察所その他を通じまして努力をしているわけでございます。現在欠員も一割、一二%はあるような状況でございまして、できるだけ適任者を選んでいるつもりでございますが、いろいろ御指摘もございますので、そういう点についてわれわれ十分考えていかなければいかぬと思います。

 ただ、その報酬制、最近こういうふうに経済情勢がなってまいりますと、単なるボランティア、無給ということでいいかという問題につきましては、従来からもいろいろ問題がございまして、最近保護司各位、つまり一線の保護司各位はどのようにそういう点を考えておられるかという点を十月末にアンケートをお願いいたしまして、全国約五万の保護司さんの中で約三千人をアトランダムに選びましてアンケートをしました。それがようやく集まってまいりまして、来年早々に集計できると思うのでございますが、ただ、ちょっとその一部を見ておりますと、どうもやはり報酬をもらってやるよりは、自分たちはボランティアなんだから実費弁償で十分である、報酬制よりは現在の制度の方がいいのだという御意見の方が多いように見受けられるわけでございます。しかし、それにいたしましても、もっとそういう御労苦に報いる努力をしなければならない。やはりある程度報いられるということで初めて適格者、適任者、じゃおれもなろうかという方もおいでいただけるわけでございまして、そういう点につきましては今後とも十分努力してまいりたい、かように考えております。