76-衆-社会労働委員会-3号 昭和50年11月18日

 

昭和五十年十一月十八日(火曜日)

    午前十時三十一分開議

 

 

本日の会議に付した案件

 労働関係の基本施策に関する件

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○島本委員 これでばかり時間とるのは困るのでありますが、ここまで来た以上、もう一つ念のために聞いておかないと次に進めない。

 雇用対策法の中で農民、自営業者、農業をやめて求職申し込みをする人たちを訓練する、この訓練を受けるときの失業保障的な制度として職業転換給付金制度というようなものがあったと思うのです。これはもう農業、出かせぎ労働者、こういうふうな人に対して適用されていなければならないと思うのですが、昨年は何人くらい適用されましたか。

 

○遠藤政府委員 いま手元に詳細な数字を持ち合わしておりませんので後ほど御報告いたしますが、御承知のように一昨年まで、四十八年までは人手不足ということで、農業から転換する方々が職業訓練を受け、あるいは就職指導を受けることによって、二次産業あるいは三次産業に転職をされておりました。具体的にこの職業転換対策の対象になりまして手当を受けられた方はごく短期間で就職をされるというような状態でございましたので、私ども雇用対策法によりますこの制度も、それ相当の効果を上げてまいっておりますが、その後は農業からの転換者というものはだんだん減少してまいっておりまして、こういった一次産業からの転職者に対しましても、今後こういった雇用対策法によります職業転換給付金制度を十分活用してまいりたい、かように考えております。

 

○島本委員 したがって、これはそういうような場合を予想してつくられたのでありますから、失業者が積極的に利用できるように改善すべきなんでありますが、依然としてこの点は数少ないはずです。それで法律ができても、やはり法が目的どおりに実施されない、こういうようなことであってはいけないわけであります。いま、これは雇対法によるもの、または中高年齢者雇用促進法、これによるもののみを聞いたわけであります。民間の日雇い労務者の仕事ということになると、これに当てはまらない、もっとみじめな状態になっているんじゃないかと思うのであります。せめて法律によって救済され、また、それを意義づけられているものはまずまず不十分ながらも生き長らえる。しかしながら、民間の日雇い労務者の仕事は一体どういうふうになっていますか、これをひとつ報告願いたいのであります。

 

○遠藤政府委員 御承知のように日雇い労働者、こういったいわゆる短期的な就労者につきましては、できるだけ常用化を促進するというような施策をとってまいっておりまして、全国的に言いますと、日雇い労働者の登録数は漸次減少してまいっております。これにつきましても、昨今の不況の影響を受けまして、本年に入りまして横ばい、いままでずっと減少してまいりました登録日雇い労働者数が、ことしに入りまして横ばい、ないしは若干部分的に増加している傾向もございますが、それにいたしましても、これに対します求人がこの不況の影響を受けまして急激に減ってまいっております。従来のような、いわゆる人手不足時代のような就労状況でないことはもう御承知のとおりでございます。しかしながら、全体として見ますと、一般的な傾向としては、こういった日雇い労働者の方々の就労も、雇用保険法によります失業給付の対象になります二カ月平均二十八日以上の就労は一応確保されているような状況でございます。

 ただ、その中で東京、大阪等の山谷とか釜ケ崎とか、こういった地区で求人の減少によります就労困難な事態が出てまいっておりまして、こういった点につきましては、先ほど大臣からもお答えがございましたように、それぞれの地域につきまして地元都道府県当局とも連絡をとりながら、この求人の確保、就労の確保に努力いたしておるような状況でございます。

 

○島本委員 局長にちょっと注意しておきますが、私、最前列にいてもあなたの声が私の耳には乙女の声のようにか細く聞こえる。堂々たる体躯のようにいい声を出して答弁してください、一回、一回耳をそばだてなくてもいいように。

 確かに求人が減っているということ、いま答弁がございましたが、しかし失業者が減っているということになると、労働者が減っているということになりますと、一人一人の就労は高くなってもしかるべきじゃないか。いかに求人が減り、労働者がふえたか減ったか、私の手元にあるこの数字によりますと、山谷の玉姫労働出張所、これは余りにもひどいじゃありませんか。たった二日より月に就業してない、こういうような月もあるじゃありませんか。これはどういうことなんですか。責任は国ですか、都道府県ですか、市町村ですか。

 これはまたちょっと別な資料ですが、東京都が四十九年度の冬期または四十九年度の特別枠というようにして出してやったときにはちょっと日数が上がるんですね、十日というふうに。しかし十日でもこれは少ないですね。私も、これを見て実際びっくりするのです。こういう人はどうして生活しているのですか。また、生活できないような状態でいわゆる公共職業安定所、こういうようなものを運営さしておくということは、ちょっと私は理解に苦しむのであります。少なくとも生活ができるような状態にしてサービスをし、指導してやるのが労働省のたてまえ、こういうように思うのですが、この人たちはどういうようにして生活できるのですか。月に二日くらいのあれでもってどうして生活できますか。これは三日、四日、五日、六日、これより多い月はございません。六日ぐらい働いて、月どうして生活できるのですか。どういうようにこれを生かしておいて指導しているのですか。これは大臣ですか、局長ですか。――では大きい声で答弁してください。

 

○遠藤政府委員 山谷地区の日雇い労働者の方々の就労状況は、確かに本年に入りまして従来から見ますと悪化してまいっております。いま玉姫労働出張所、いわゆる山谷地区の就労状態が月に二日か三日でしかないのじゃないかというお話でございますが、山谷地区の労働事情は非常に特殊な事情がございまして、この労働形態も先生御承知だと思います。

 玉姫で登録をしております日雇い労働者の方々は三千数百名おられます。この実態を見てまいりますと、そのうちの約半数強が常用ないしは臨時、一定期間就労するという形で、その残りの四五、六%は日々就労という形で、いわゆる玉姫の労働出張所なりあるいは山谷の労働センターに出てきて、そして安定所なり労働センターの紹介を受ける、あるいは直接雇用されている、こういう状態でございます。

 そこで、いまお話のありました二日ないし三日といいますのは、玉姫労働出張所で受け付けた求人を輪番紹介した回数が月に三日程度だ、こういうことでございます。この山谷地区で日々就労しておられます方々は、安定所の紹介で就労する場合と、それから民間のいわゆる求人者側と直接取引で就労する場合、あるいは自分の縁故あるいは友達の紹介等で就労する人たち、こういうものが全部入りまじって月間ある程度の就労が確保されているという状態でございます。

 昨年の暮れの就労状況を見ましても、月間十四、五日以上というのが大体全体の三分の二程度を占めておりまして、十日未満というのが大体二五%くらいある、こういうのが通常の状態でございます。そのときから見ますと、いわゆる安定所の輪番紹介によります日数が大体五、六日から七、八日あったものが二、三日程度に下がっておるということで、確かに非常に厳しい状況になっておりますので、いま御指摘になりましたような東京都当局が特別求人を出すことによりまして、この山谷地区の月間の就労日数を確保していく、こういう措置がとられております。これがことしの九月に東京都の方で求人を打ち切ったというようなこともございまして、先般来、東京都当局とも相談をしながら、特別求人を従来どおり続けるというような措置をとってもらうように話を進めておりまして、大体こういう線が確保されたようでございます。私どもは民間の求人開拓、確保に努力いたしますと同時に、東京都の従来から出されておりました特別求人によりまして、山谷地区の方々の日々の就労につきましても、できるだけの努力を続けてまいりたい、かように考えておるわけでございます。

 

○島本委員 言葉でできるだけの努力というのはいいのでありますが、窓口であろうと民間であろうと二日、三日、これくらいの働きで一カ月の生活の維持なんかできるわけはない。その間、全く放置された状態になっている、無行政状態です。

 私は直接本人から受けました。その中である四十六歳になる男の人は、やはり二日しか自分は与えられない。その二日の仕事の中から一日一食に切り詰めた。そして二十日には即席ラーメン、二十一日の一食カレーライス、二十二日は即席ラーメン、二十三日も即席ラーメン、二十四日は焼きそば一皿、二十五日は食パンだけ、二十六日は即席ラーメン、二十七日はカレーライス、これが少しよかった、こういうような状態で、一日一食、これで食いつなぎをしているような状態だとすると、全く私としては予想できないことなんです。これも特殊事情があるからいたし方がないのだ、これは放置しておいていいものかどうかということです。そうじゃないはずです。これは中には生活保護の適用の申請をしている人もあるのですが、病気をしていないからといって、収入があるはずだということで一日、二日、また三日、四日くらいの収入しかない者に対しては生活保護の適用も受けられない。

 大臣、これが本当だとしたらとんでもないことです。病気になっても、この間どういうふうにしてやっているのかわからぬでしょう。こういう状態でほったらかされているのです。私はそれを見る場合に、生活の苦労は並み大抵ではございませんし、私どもの方で聞いたところによっても、まさかと思うことがやられていて、これが生活の知恵か、こう思うことがありますが、サケの頭を百円で買ってきて、その百円のサケで一週間食いつないだ、こういうようなこともあるんだそうであります。こういうような状態にしておくということは政治の貧困じゃありませんか。行政の貧困じゃありませんか。特殊地帯だとしてもしそれを放てきしておいたならば差別待遇じゃありませんか。サービス機関であると言いながら、労働省自身は職安の面では実体がないじゃありませんか。一体これはどういうことなんですか。

 大臣、こういうようなことは許したらだめだと思うのです。二日間しかない者の生活、生活保護の適用を受けようとしても、丈夫だからだめだといって断られてきている、これは五十歳近くの人です。大臣、これは残酷というより言葉がありませんよ。――もうあなたはいいから大臣、決意をちょっと述べてください。

 

○長谷川国務大臣 こういう厳しい時代には、一人一人が生きる苦労というものは大変でございます。私は、いま先生が御指摘のことを、いろいろな委員会などでも御指摘をいただくものですから、先ほど局長からも御答弁させましたけれども、東京都の方に特別に要請して、年末の仕事を出してもらうことを話もし、さらには数日前でしたか、東京都の労働局関係の諸君、さらにはまた、いまの玉姫初め労働出張所の責任者の方々に労働大臣の部屋に来てもらいまして、こうした事態の話も聞くからいままでも非常に熱心にやってもらっていただろうが、私の方も内閣に対してしたり東京都に対してしているから、さらに一層努力してもらいたい、こういうふうにお願いをしたことであります。

 そうした方々に接触する諸君の話を聞いても、埼玉あたりに働きに行ったそういう人々が賃金の不払いになったところを、わざわざ追っかけていって賃金を取ってきてやる、従来やってないようなことまでやってでもお手伝いするという気持ちに実は胸打たれたわけでありまして、おっしゃるとおり、こういう厳しいときに一番しわ寄せのある諸君に対しては、ひとつほかの方以上の努力と施薬をやってまいりたい、こう思っております。

 

○島本委員 一体、具体的な問題としてこの食べられないような人たち、この人たちの収入の枠ばあるのかないのか。二日か三日、これしかないと言う。そうなったら日雇い失業保険も役に立たない。そうすると健保はどうなるか、これさえも役に立たない。一体病気になったらどうすればいいのか。体力も能力もあるのに、これは原因は何でしょうかね。こういうことをしておかれないはずです、いまの憲法のもとで。そうするならば日雇い労働者に対する失業納付に特例を設けて、月間十四日の職業安定所の出頭によってでもこれを給付してやってもいい、こういうことぐらいはやってやらないと病気になったらどうなりますか。これはもう間接に人殺しを容認しているようなことにさえなる。自殺教唆かもしれない。こういうようなことを考えたら深刻じゃないかと思うのですが、いまのような給付の問題はどうお考えでしょうか。

 

○遠藤政府委員 日雇い労働者の雇用保険の失業給付の問題でございますが、これは月平均十四日、二月で二十八日ということで給付が行われることになっております。先ほど先生の御指摘のございましたように、日雇い労働者の方々の就労の実態を見ましても、昨年の暮れ以来、非常に就労が厳しくはなっておりますけれども、一般的に全国的に見ますと、この雇用保険の受給要件を満たすことはさほどむずかしい問題ではございません。ただ一部に、いま御指摘になりましたような山谷地区のような問題がございますが、これは就労の確保をできるだけ図るということで、いま大臣からお話しございましたように、東京都と緊密な連絡をとりながら就労増を図ってまいっております。私ども、この山谷地区の方々につきましても、昨年まで程度の就労は確保できるように年末年始にかけまして特別求人も出す、こういう措置をとることにいたしております。

 保険の受給要件を、そういったたてまえを崩して給付したらどうか、こういう御指摘に対しましては、この保険制度のたてまえから受給要件を出頭という形に切りかえることは、保険制度の根幹を崩すことになりますのでそれは別といたしまして、この受給要件を満たすように就労の確保に努力をしてまいりたい、かように考えております。

 

○島本委員 二日や三日でできないからこれを言うのです。満たさせると言うなら、それに対する反対給付があってしかるべき、担保があってしかるべきだ。特殊地帯であると言うならば、憲法のもとではっきりあなたは失業者を救済するための重大な任務を負っている。一体これはどういうことですか。口だけで言ってもだめなんです。私どもの尊敬する大臣は、スト権の問題できちっとここでやって政府統一見解だと言ってもまだ低迷している。まして局長がそこで言ったからといってだめですよ。本当に信用できるならば、それに対して特例はこの際考えなくてもそれに準ずるような方法をこう行いますとか、あるいはやれなくても同じような効果を及ぼすような方法を考えるとかならいい。どうもこの点では私はまだまだ言葉だけの答弁だ、こういうふうに思っている。中に愛情と誠意が感じられない。

 いま失業保険の印紙の売買さえ行われているということを知っていますか。一枚三百五十円で買って、最後の一枚が必要だったら三千円までするのだ、こういうような実態だということを聞いて唖然としているのであります。ましてその中に手配師が入ってあっせんをして、病気した場合のこの失業保険なんかの印紙に対してはもう融通し合わせている、こういうようなことであります。これは犯罪行為じゃありませんか。

 こういうふうなことだって、やってやらないからこれが発生するのです。すべて労働省の責任に帰する問題だと私は思うのです。これはそのままにしておいてはとんでもないことになると思います。これを知っているかどうか。これに対する対策……。

 

○遠藤政府委員 山谷の就労実態につきましては、先ほどから申し上げておりますように、非常に厳しい情勢にございますので、こういった人たちの就労確保については、私どもは大胆の御指示を得まして最大の努力をいたしてまいっておりますし、また、今後も続けてまいります。

 で、東京都の特別求人が出てまいりますと、大体昨年程度の就労は確保できるかと、かように考えておるわけでございます。

 いま御指摘になりました、雇用保険の日雇い労働者の印紙の売買の問題でございます。本年に入りまして東京、大阪でこういった実例が出ておることも承知いたしております。こういった不正受給につきましては、もう厳正な処分をいたさなければなりませんし、今後とも不正は不正としてこういう問題については的確な措置をとってまいるつもりでございます。

 それにいたしましても、こういった罪を罰するということもさることながら、そういう事態が起こらないように月十四日、二月二十八日の就労を確保していくということが私どもにとっては最大の要務だ、かように考えております。山谷地区のような特殊事情についてももちろんでございますけれども、その他の地区で仮に一日、二日足りないために印紙の売買が行われるというふうなことにならないように、就労確保ということで全国の安定所を督励いたしまして、十分な措置をとってまいりたいと思います。

 

○島本委員 じゃ今後は来月から十四日は必ず確保してやる、こういうふうな答弁であるとして私は了解したいと思います。また一カ月後にデータをもらってどうなっておるか調べますが、いまでも二日、三日、これが十四日に上がるんですね、間違いありませんね、大臣も聞いているのだから。

 

○遠藤政府委員 そのために第四次景気対策が決定されまして、それに伴う補正予算も先般御審議いただいたわけでございます。私どもこの補正予算が一口も早く実施されることによりまして、全国の安定所に登録されている日雇い労働者の方々が公共事業その他で就労の確保を図られる、そのために担当の窓口で求人開拓を実施いたしまして、こういった就労の確保に最善の努力をしてまいりたい、それによりまして、あぶれたときに雇用保険の失業給付が受けられるように最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。

 

○島本委員 もう時間がないので残念なのでありますが急ぎます。

 最大の努力というのは言葉なんですよ。だから、実態として必ずそれをやります、そばで大臣問いているのですから、努力するということは必ずやるという意味だ、こういうふうに解釈していいですね。

 

○遠藤政府委員 実は、きょうも全国の県の職業安定課の担当補佐を集めまして、これからのこういった就労対策あるいは求人開拓につきまして指示をいたしております。これは全国の安定課職員が一丸となって、先出御指摘のような方向で努力をしてまいりたいと思っております。

 

○島本委員 わかりました。

 仕事がなくて長崎では自殺をした人もいます。聞いていませんか。あえて言うと北松の浪崎洋子さん四十二歳、この人のだんなさんが前は炭鉱に勤めておった、それが失職した、何回行ってもどうも窓口では受け付けてもらえない、子供たちを抱えてどうにもならなくなって自殺をしてしまったという例さえあるのだ。

 そういうふうにしてみると、都道府県と相談してという言葉があるのですが、やはり大臣、国の方がその裏づけをやって金をやるのでないと、向こう自身、財政逼迫した自治体でやはりできないのであります。ですから、こういう点を十分考えて、そうでなければまた失対に入れてやるようにして救済するか、そうでなければ国から金を出してやって、やりなさいと言ってやるか、それでなければ雇用保険を窓口へ出頭したことで認めてやる、まあ昔の失業保険ですね、こういうふうにすること以外にはないんじゃないですか、救済するのには。これはもう結論でありますが、恐らくこれ以外にはないでしょう。口で何を言ったって、またきょう終わってしまえば、後は横を見て笑っているかもしれない。そんなことであってはだめだから言うのだ。

 いまの三つ、もう一回失対に入れるような制度改正をするか、それでなければ都道府県に国の責任によって金を出してやる、それと、このいまの雇用保険法の適用というのですか、これを、出頭したことによってそれはもう効力を発生するように認めてやる、こういうようなことでいいんじゃないかと思うのですが、大臣の神の声を聞かしてもらいたい。

 

○長谷川国務大臣 いろいろ御回構いただくお話でございますけれども、やはり問題は働く口をお互いがつくってあげるということが一番大事だと思いまして、東京都の場合でも、私の部屋まで東京都の労働局の方に来てもらったり、あるいはまた、そういう所管の所長さんに来てもらって、実情を聞いて、そして年末の手配をしてもらいたいということをお話し申し上げているのでして、まあ信用されないと言われればそれっきりでございますけれども、この次ここの委員会に来てあなたに怒られぬよう一生懸命ひとつがんばりますから、御理解いただきたいと思います。

 

○島本委員 理事の方から、もう予定の時間が過ぎたからやめろということであります。本当はこの問題はもう少し詰めたいのでありますが、いずれ口を改めてもう一回やらしてもらいます。

 最後に、やはり以前に、皆さんが知っておられると思うのです、局長も知っているのですが、中高年齢者雇用促進法、昭和四十六年、これを審議している際に、定年制の延長は六十五歳をめどにして、そしてとりあえず六十歳までは最大の努力を払う、当時の大臣がそうおっしゃった。これは私の脳裏に焼きついているのであります。この定年制の問題に対してどうなっているのか、雇用率の義務づけ、こういうようなことも当然必要でありますが、高齢者に対する雇用の拡大がさっぱり行われておらない。中高年齢者雇用促進法という法律ができておっても、このような状態だ。これに対して拡大する最大の方法をひとつ教示願いたい。

 それと同時に、失対制度の五十年再検討がいま行われておりますが、七回ぐらいまで研究会が行われたそうですね。この際、賃金問題を含めて審議の経過、これも明らかにしてもらいたい。これが私の最後の質問であります。

 

○遠藤政府委員 四十六年にいわゆる中高年法が制定されます際に、この委員会におきましていろいろと熱心な御審議をいただきました。その際に、いま御指摘になりました六十五歳ということは、定年を六十五歳まで延ばすということではなくて、これは先生ちょっと誤解していらっしゃるのじゃないかと思いますけれども、六十五歳までを労働力として雇用対策の対象として法律的に考えます、それで定年は、いわゆる戦前の五十五歳定年というのがいまだに一般化している、これをできるだけ六十歳まで延ばしていくような具体的な施策を進めていきたい、こういうことをその当時申し上げたかと思います。その後、これは実は、定年延長の問題は所管は労働基準局でございますけれども、私どもも雇用の関係から、特にこの定年延長ということには重点を置いていろいろと配慮を加えてまいったわけでございますが、本年に入りまして、従来、この二、三年来定年が若干ずつ、五十五から五十六、五十七、五十八と延びてまいっておりましたが、こういう不況で定年の延長が足踏み状態にございます。その中でも、五十五歳以上の高年齢者の就業問題、雇用の安定ということは非常にむずかしい情勢になってきておりますので、ことしは大臣が先頭に立たれまして、特に当面六十歳までの定年延長ということで、昨年から予算的にも定年延長の奨励金制度ができる、あるいは中高年齢者のいわゆる雇用率制度を活用する、こういったことで、できるだけ定年延長六十までという目標を掲げていま努力をいたしております。来年度、実はいま、雇用率の問題を中高年齢の雇用率ではなくて高年齢者の雇用率、しかも、それを事業所単位に雇用率をつくってみてはどうか、これを支えにして定年延長、六十歳までの定年を延ばすということをもっともっと強力に進める必要があるのじゃないかという具体的な検討をいまいたしております。こういうことで、成案を得られましたならば、また先生方の御意見を承らしていただきたい、かように考えておる次第でございます。

 

○石井政府委員 失対事業の五十年の検討の経過でございますが、これはいろいろな問題がございますけれども、一つは、失業対策事業を打ち切らないということについては、この前の国会の幕切れにおきまして、大臣からはっきり申し上げておいたわけでございます。したがいまして、その枠内におきまして、現在、失対事業の就労者の問題といたしまして一番大きな問題は、やはり年々高年齢化いたしまして、現在、平均の年齢が六十を超えまして六十・二歳ぐらいだと思います。それから女性の方が非常に多くなりました。これは大体六二%ぐらいだと思いますけれども、そういう方々について、失業対世事業を打ち切らない、継続するという今後の展望の中でどういう就労の実態を確保したらいいのかということを基本にいたしまして、先ほど先生御指摘のように七回ばかり審議を継続しております。現在のところは、各委員の先生方がそれぞれ手分けをいたしまして、実際に就労の現場を視察いたしまして、そういう現地の状態、あるいはその中でいろいろな陳情もございましたが、そういうことを含めまして、さらに具体的な実施の内容あるいは事業のあり方あるいは就労の形、そういうことを含めまして、今後、失対事業を打ち切らないという前提の中での、また、そういった年齢その他の条件を考慮した上での最適なあり方をどうするかということを現在検討中でございます。現在検討の渦中でございますので、私どもといたしましては、来年の四月施行を目標にいたしまして、できるだけ早く結論を出していただくようにお願いをしたい、こういう状況でございます。

 

○石母田委員 次に、日雇い労働者の就労について、この間寺前委員が十一日の日に質問を行いました。私も職安を視察いたしまして、特に横浜の寿町あるいは山谷地区の職安を早朝から視察いたしました。その中で、特に極端に就労日数が低くなっている民間日雇い労働者の問題について緊急な措置が必要であるということについて大臣にも申し入れいたしまして、大臣もこの点については同感を示して、いろいろな措置についてお話がありました。

 そこで、その就労条件を保障するものとして、最近東京都が特別就労事業をやるということで、私の聞いているところでは、二万二千人を四月まで、そして毎日四百人程度の特別就労事業によって救済を一部にしたい、こういうふうに聞いておりますけれども、この点はこのとおりでしょうか。

 

○遠藤政府委員 そのとおりでございます。

 

○石母田委員 これは遠藤局長が寺前委員の十一口の質問に答えまして、山谷のような問題については、いわゆる年末年始にかけて東京都と事務当局と十分連絡をとりながら、こういう人たちが従来就労しておりました実態にできるだけ近い線にまで就労確保をできるよう最大の努力をしてまいるつもりです、こういうふうに答弁されております。こういう一つの成果といいますか、努力の結果だというふうに見てよろしゅうございますか。

 

○長谷川国務大臣 あなた方からも陳情をいただきましたし、また国会でいろいろな方々からもこういう問題について非常に御同情ある御発言をいただきました。

    〔竹内(黎)委員長代理退席、菅波委員長代理着席〕

それを体しまして、私は先日閣議で実は御報告いたしまして、今度の景気対策の予算の場合に、公共事業を出す場合に、建設省、農林省、運輸借、こういうところは公共機関に情報を早く提供してもらいたい。大臣の発言によって下の方が非常にやりやすくなるということでございましたから、それを申し上げ、一方また局長が東京都の方に参って折衝をし、さらにはまた、私どもの部屋に、山谷を初めそうしたところの労働紹介所の所長さんに来てもらって、東京都の方からも来てもらって、最近の実情等もお聞きしながら、いま局長が申し上げた一日四百人くらい、年末からお正月にかけてというふうな話も受け、大いにこちらが喜びもし、また激励もし、いまから先の御精進もお願いしたところであります。

 

○石母田委員 こういうようなものについて、山谷だけではなくて、同じような条件にあるような寿町とか愛隣地区とか、多少程度は違いますけれども、そうした私の見てきたところについても、かなり就労日数が低いというような場合にはこうしたものをぜひ同じように前進させていただきたい、こういうふうに思いますけれども、大臣どうでしょうか。

 

○遠藤政府委員 日雇いの求人確保につきましては、全国的に日雇い登録の人たちの就労確保を図っておりまして、これは各都道府県知事に対しましてもそういう指示をいたしております。特にいま御指摘の愛隣地区あるいは寿町等につきましても、従前の就労状態に近い線までできるだけ努力するように、こういう指示をさせておるわけでございます。

 

○石母田委員 これはいろいろ指導したのはあれなんですけれども、財源が一銭も出ないというのでは……。やはりいまの地方財政危機の中では単費だけでやるというのは困難なわけですけれども、こういう問題についてぜひ何らかの財源的な援助といいますか、財政的な援助というものについて考えられぬかどうか、あるいはそういうものは検討する余地があるのかどうか。この点について、これまた大臣にお伺いしたいと思います。

 

○遠藤政府委員 これは先般来の第四次総合的景気対策の中で公共事業費等、そういったものが積算されておりまして、これが各都道府県、地方自治体等、あるいは民間の投資の増強といったような形で出てまいりまして、これを受けて、こういった日雇いの求人開拓の強化に努めて、そういうことによって最近少しずつよくなってきている、こういうことでございますので、これから年末から来年にかけまして、さらに一層こういった民間を含めた求人開拓に努力をしていきたい、かように考えておるわけでございます。

 

○石母田委員 これは財源的に一銭の援助もないということでは困るので、都としても実は九月に財源がなくて切れてしまったのです。だけれども、年末年始にこのままでいったら大変だということで十二月二十五日から再開される、こういうことでございますので、国としてもこうしたものを援助していくという姿勢をぜひとっていただきたいというふうに思います。

 きょうは時間がございませんので、われわれ野党四党が共同で雇用及び失業対策緊急措置法案を提案しているわけですが、残念ながら最低賃金法案と同じように、野党四党の議題を単独で正式に議題にするということについては自民党が承知をしません。参議院ではあのように原爆援護法が本会議で討議されるというような事態ですが、これは一口に言うと力関係で、野党の力が弱いということで、何の理由もなく私どもは正式の議題として審議できないというのは非常に残念であります。けれども、私は、この四党案に盛られた内容というものは、今日の失業、雇用の緊急な問題を解決する上できわめて重要な内容が含まれているというふうに考えております。先ほどの千葉の三井造船の問題にしましても、ああいう社会的に不当な解雇というようなものに追い込むようなものについては規制するとか、あるいはいま極端に就労日数の低いものについての失業保険の資格要件についても特別な緩和の措置をとるべきだというようなことで、月七日、二カ月十四日というような問題についてもこの四党案で触れて、現在の解決についてきわめて重要な資するところあるというふうに思っております。いずれ、われわれはどうしてもこの問題について徹底的な審議実現を図りたいというふうに考えております。

 最後に一言、二、三分ですけれども、先ほどの学卒者の就職の問題で、ことしの二月十五日の予算委員会で私が学卒者の問題について質問したときに――採用取り消しの問題なんです。そのときに長谷川国務大臣は――ちょっと聞いていてください。遠藤局長はないと言ったんだけれども、いま議事録を読んだら、「来年就職をあっせんする場合には、ことし内定を取り消したような企業はこういう企業であるからということを、その諸君によく知らせておく。ある場合にはそういう企業を公表もする。こういう姿勢などもとっております。」というふうに言っておりました。このことについて遠藤局長は、そんなことは言いっこないと言うが、遠藤局長はちょうどこのときいませんでしたから。労働大臣はこういうふうに言ったと私は記憶しておりますし、そういうことを言ったことについて、今回ももうすでに始まっておりまして、またこういう事件が起きることのないように、こうした問題についての大臣の決意と、その後どういう具体的な方法をとっておられるのかという問題について、最後に質問したいと思います。