72-参-社会労働委員会-11号 昭和49年05月14日

 

昭和四十九年五月十四日(火曜日)

   午前十時二十分開会

 

  本日の会議に付した案件

○結核予防法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○児童手当法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

    ―――――――――――――

 

○政府委員(三浦英夫君) あるいは先生の御質問に対して二、三落とす点があるかもわかりませんけれども、あらかじめ御了解いただければと思います。

 まず、外国との比較でございます。外国との比較につきましては、死亡率の比較しかございませんが、現在のところ日本の死亡率は人口十万に対して一一・九になっております。これに対しまして先進国の例をあげますと、たとえばオランダが一・二、アメリカ合衆国が二・七、あるいは西ドイツが八・三というように日本よりも死亡率の低い国が先進国にはまだございます。一方かなりの、たとえばフィリピンをあげますと、人口十万対八十というように、わが国に比べましてかなり結核の対策におくれておられるような感じのするところもございますが、いわば日本国は中進国の上というあたりに位置するんじゃないかというような感じでございます。

 それから第二点の結核の現在患者でございますけれども、患者をなかなか把握する法はございませんが、結核予防法では結核患者の登録制度というものがございます。現在昭和四十八年で結核患者として登録されております総数は九十二万三千人になっております。それに対しまして、そのうちにいわば活動性といいますか、まだ結核がいわば完全になおっていない、現在疾病中と思われる活動性と称される方がそのうちの五十七万人を占めております。さらにその中に感染症と感染性のおそれが強い方が十一万四千人ございます。一方入院の関係で見ますと、昭和四十八年の三月の末の入院患者数が十万四千人になっております。これに対しまして、現在結核ベッドとして把握しておりますのが十五万五千床でございますから、結核のベッドの利用率は六四%程度になっているような現状でございます。

 以上概括的に申し上げました。

  〔委員長退席、理事須原昭二君着席〕

 

○沓脱タケ子君 そこで、いま実態についての御見解を伺ったわけですけれども、まあ結核斜陽論というのが盛んに横行いたしまして、結核対策の軽視の風潮というのはやはりたいへん強くなってきているわけですが、実態はいまお聞きしましたように、欧米諸国と比べましても、私の調査をいたしました統計によりますと、これはいまの一一・何人かの死亡率、これはほぼ欧米諸国、オランダやデンマーク、アメリカ、そういったところと比べると約二十年前の水準なんですね。ですから、先進欧米諸国と比べたら二十年おくれていると。いまの日本の水準というのは、大体そのデータで見ますとポルトガルだとか中南米諸国程度だという実態だという点がやはり明確にされなきゃならぬと思うんです。したがって、決して結核対策を軽視しちゃならぬという点を、こういった数字的なデータからも言えるのではないかというふうに思いますし、結核はそしてまたそんなに簡単に片がついていないんだと、むしろ逆に社会の底辺に深く潜行していっているというふうなのが実態ではないかと思うわけでございます。これは時間がありましたら少し申し上げていきたいと思ったんですけれども、そういった点で、決して結核対策を軽視してはならないという点のまあ集中的、典型的な実情を一つ申し上げて、具体例を出してお尋ねをしていきたいというふうに思うわけです。

 具体例と申しますのは、大阪市西成区、ここは大阪市内でも格別の罹病率、発生率の高い地域です。中でもその中で集中的に問題になっておりますのは西成区の愛隣地区というところの結核対策でございます。これをちょっと簡単に実情を紹介申し上げてみたいと思うわけですけれども、幸いに大阪市の西成保健所の学会報告をたいへん簡単にまとめた資料がありますので、これを要点だけ紹介をしたいと思います。

 愛隣地区というのは西成区の東北端に位置しまして、面積〇・六二平方キロ、人口約四・六万人、四万六千人です。そのうち約二万人が単身労働者、全国各地より集まった者が大半を占めている。全国的に見て結核患者は減少しつつあるが、愛隣地区におきましては横ばい状態が続いており、罹患率、有病率は他都市と比較して異常な高値を示している。どの程度の異常さかという、これはグラフが出て、数値が出ておりますので、一、二申し上げてみたいと思いますけれども、これは名古屋の例をとりますと、名古屋の罹患率が一八〇、これに対して西成の罹患率が八八三、その西成の中の問題になっておる地区の愛隣地区では罹患率は二一三三です。それから有病率を見ますと、同じく名古屋は六二〇、西成の有病率というのは二一五二、中でも愛隣地区は三七〇〇、これはけた違いに異常な値を示しております。ここで感染源対策の一環として、住民の要求もあって、毎年一回であった住民健診を毎月一回定めてその実施結果を出しております。これは昭和四十八年度の分でございますけれども、これによりますと受診者千百八人の中で要精検者、精密検査を要する者ですね、要精検者が百五十七名、一四・二%という状況なんです。しかもその百五十七名のうち四十五名は登録済みの人です。すでに以前に登録をした人、全く治療中絶患者であるという状況になっております。これがまあ実態になっておるわけでございます。

 そこで問題になってまいりますのは、愛隣地区の単身労働者の結核相談、これはもう保健所で一般的にやっていて間に合わないということで、その愛隣地区の集中的な対策として、私立更生――大阪市立ですね。大阪市立更生相談所及び保健所の分室、これが協力してやっておる。ところが、病床数の減少によって「収容が非常な困難を来しており、事故退院等により再入院する場合は相当期間待機せざるをえない状況のため、その在野期間中が感染源対策上の問題点である。当所では、」これはまあ、まとめた内容を全部一応紹介しますね。「当所」というのは大阪市立更生相談所ですが、私立更生相談所は、大阪市の環境保健局、それから私立更生相談所と西成保健所とが協力をして、「昭和四十七年九月から四十八年五月まで三回に分けて近畿一円の国公立病院十一カ所、私立病院五カ所を訪問し、その実状を訴え収容を依頼したが、愛隣地区患者は即日入院を要するため難色を示された。」それから大阪市消防局の資料によりますと、昭和四十八年二月から十二月までの発生件数、――消防局はこれは救急患者の搬送ですね。これの「発生件数は百二十四件で、収容したもの六十件、一時収容したもの三十二件、診療後帰したもの二十四件、その他八件」、そのまあ件数もさることながら、「その所要時間は一件あたり」――これは救急車ですよ。「五十分から十五時間を要している。」こういう状況になっておるわけでございます。こういうふうにまとめられた内容をもう少しリアルに申し上げてみますと、たとえばこの地域では一人の入院患者を発見しますと、要入院患者を発見するとベッドさがしにどのくらいの苦労を要しているかと、これは保健所――西成の保健所と大阪市立更生相談所の職員の意見です。一人の患者を入院させるためにベッドさがしにまず平均二十五ないし二十六ヵ所ぐらいに電話をしてやっとさがすことができる。多い場合には一人の患者さんのために、五十ヵ所以上に電話をしなければならない。こういうふうな状況になっておるということがいわれています。それから、大阪市の消防局結核患者収容状況の資料というのを見ますと、これはもう実にたいへんなんです。先ほど平均五十分から十五時間を要しておる――平均じゃなくてそのぐらい要しているというふうにいわれておりましたが、これはたまたま大阪市の消防局の資料によりますと、昭和四十八年度中の結核患者収容状況というので、これは西成の愛隣地区管内のデータですが、搬送人員が二百七十七人、一件あたり五十分から十五時間だというふうに書かれておりますが、これによりますと、具体例――非常にリアルに消防局ですから報告をしているわけですね。その報告をそのままちょっと参考のために申し上げてみますと、どのくらいかかっているかというと、「八月十一日西成区松田町二−二十七幸陽荘十七時四十四分に覚知し、大和中央病院に選択搬送したが満床のため同病院前で三時間十六分待機したのち、救急指令台の指示により岸和田市民病院へ搬送(到着二十一時十分)同日二十三時帰署、本件所要時間計五時間十六分。」

  〔理事須原昭二君退席、委員長着席〕

 また、次の例は「九月四日二十時に覚知し、大和中央病院に選択搬送したが満床のため救急車内で同病院医師の診断を受けたところ続流性結核と判明し入院の必要があるので、救急指令台に連絡し、収容可能な病院選定を依頼

 大和中央病院到着(二十時二十三分)後同院前にて、観察待機し、翌前二時から五時までの間港救急隊の応援観察を受けた。

 同四時五十五分海道救急隊が再度出場し、港救急隊と交代し、引き続き観察し、同九時十五分いったん出張所に引き返し、二部から一部へと仕事を引き継ぎ、同十時四十五分、救急指令台の指示により暁明館病院に収容

 本件所要時間十四時間四十五分」、こういうふうな状況になっているわけでございます。こういう状況でございますから、これはここでは何としても入院患者をすぐに入院させられるベッドがほしい。保健所のまとめのところではこういうふうにいわれております。「1。愛隣地区結核患者の収容については、現在の労働者の社会環境から即刻収容しうる施設が望まれるので、国公立をはじめ、民間医療機関の患者受入れの協力を要請する。

 2。併発症に関しては、精神病の併用病床を、国公立病院に設けてほしい。」こういう二点が書かれているわけでございます。

 ちなみにこれはどういう状況になっているかといいますと、いまこの愛隣地区の扱っている患者の入院取り扱い状況というのは昭和四十七年度で八百三十八人、昭和四十八年度は八百六十一人です。ところがこの中で保留をされて即日入院できなかった者は四十八年度は八百六十一人中百三十人、それから結核病床は大阪府関係だけでもこの二年間、四十七年三月末から四十九年三月末までの間で千八百五十九床、約二割近く、二割程度二〇%近く病床が減っております。

 それから収容状況の行き先きはどういうふうになっているかということですが、これを見ますと、これは西成保健所管内でございますから、愛隣地区と一般地域とに分けてあるのですがね。昭和四十八年度を見ますと愛隣地区が六百八十六人、一般地域が百八人、計七百九十四人になっております。それが収容状況は国立が二十七人、公立が六十一人、私立が七百六人というふうな状況になっているわけでございます。そういう状況でございますから、これは一番問題になっているのは、ベッドがないという問題が一番大きな問題になっている。

 最初にお伺いをしたいのは、こういう具体的な集中的な状況というのが出ているわけなんで、そこで保健所の関係者が切に願っている国公立の病院にまず収容をしてもらえないものだろうか――先ほど申し上げた国立、公立というのは一般患者なんですね。一般患者のうちの一部なんで、愛隣地区からは国公立病院は一切収容がされていない。これを何とかして受け入れてもらえないだろうか、というのは開放性の患者がたいへん多いわけです。これもちょっと申し上げたほうがいいんですけれども、そういう点で、国公立病院でのベッド数がこの十年の間に十万から減っておるわけですけれども、十年じゃないですね、昭和三十三年から見ますと、二十六万ベッドあったのが結核病床十五万に減っているわけだから十一万ぐらい減っている。しかも充足率が六割余りということになっておるわけですから、これはたいへんなことで、感染性の患者さんが十七万ですか、ですから十万ぐらい入っておったら七万ぐらいは排菌をしながら感染性の患者さんが一般地域で野放しにされておるという状況になっておるわけですね。で、集中的に出てきておるのは、たとえば愛隣地区だと、こういうかっこうになって出てきておるのですけれども、国公立病院が収容するという立場をなぜおとりにならないのか、これは一ぺんどうしてもはっきりしていただきたいというふうに思うわけなんですが、いかがですか。

 

○政府委員(滝沢正君) 愛隣地区の具体的な事例につきまして先生から御質問と御説明があったわけでございますが、われわれの資料には愛隣地区からの命令入所患者、四十七年末でございますが、国立が十二、公立が五、私的医療機関が五百五十六という数字がございまして、ゼロではございませんが、非常に私的に多く入所しているという実態はいなめないと思うのでございます。実は大阪府の医師会長からも昨年来何度も電話その他具体的にお会いしてお話がございまして、この愛隣地区の結核患者の収容について話し合いたいということで、私のほうでは近畿の地方医務局というのがございますので、そこも参画いたしまして、大阪府衛生部、労働部、あるいは市の環境保健局、民生局、消防局、それから西成保健所、大阪府の医師会、西成地区の医師会、国公立の病院長のおもなる方々、こういう方々で協議会をつくるということで御相談ございましたので、当然のことながら積極的に参加していろいろ対策を協議していただきたいということでお願いしたわけでございます。その後、協議の経過等も、概要もございますが、非常にむずかしい問題をかかえておるようでございます。先生のおっしゃるように、実態は私立に多く入っておりますが、愛隣地区の結核患者が喀血、その他病気を持ちながら労働しておる、病気が急変する、したがって救急患者的な収容体制を考えなきゃならぬ、こういうことになりますと、国公立ももちろん収容を積極的にすべきでございますが、一面また愛隣地区と関係の深い近隣の私的病院等も含めましてその際収容するという実態もございましょうし、また大阪市の福祉関係あるいは厚生関係等の御配慮等もございまして、実態はいままでの収容の数字は私的に多いという形になっておるのもまた実態であろうと思うのでございます。われわれとしてはこの協議会のこまかい経過は詳細には存じませんけれども、やはりこの愛隣地区だけで急に患者が発生した場合、これは本来は望ましくないのでございまして、健康管理あるいは健康診断等がもっと徹底して、悪化しない状態のときに結核治療ができるのが望ましいんでございますけれども、この点につきましては特殊な条件の地区でございますし、現実には医療としてそれに対応しなきゃならぬというふうに思うわけでございますので、最近入りました愛隣地区の対策の一環として、第一次の収容施設を愛隣地区に小規模ベッドでつくろうというようなお話し合いがこの協議会によってなされて、予算的にもこれが具体化がはかられるように聞いておりますので、当面の救急的な収容については、そのようなものができますればたいへん対策として前進するのではなかろうか。その後の第二次的な収容について十分この協議会等を通じまして、国公立ももちろんのこと、私的も含めまして、お互いに協力し合うというようなことになろうかというふうに、直接参加しておりませんので、いろいろの報告をもとにしてお答えしたわけでございます。

 

○沓脱タケ子君 いや、私は特に大阪府医師会から要望もあったということ、あるいは大阪市会からも、これは議会で議決をして、二年ぐらい前に厚生省にお願いをしたということも記憶しておりますが、たいへんな大問題になっている。結核斜陽論が論じられて、片方では対策が軽視をされてきているんだけれども、先ほども申し上げたように、低所得者から国民の底辺に深く潜行してきているという実態が集中的にこういった地域にあらわれている。したがって、住民健診をやっても一五%も精密検診を要するパーセントが出てくるというような状況では、これは一般の地域から言うたら五倍強ですね。そういう状況になっておるということは、感染源が放置されているということになると思うんです。その率で見ますと、愛隣地区四万六千人の住民の中で二万人が単身労働者、で、その人たちにその数字を適用いたしますと、精密検診を要する患者、これは三千人になるわけですね。精密検診を要するというケースも、これは保健所の担当しておる先生方からの御意見も直接伺いましたけれども、一般の職場や地域での精密検診を要するというふうな内容とは違う。内容は、ほとんど空洞を持っておる、あるいは片肺の半分以上が浸潤におかされている、結核におかされているというふうな、たいへんなしろものの精密検診を要する内容になっているというふうな状況でございますから、これはいま協議会で計画をしているそうだから、それができればたいへんけっこうだというふうにおっしゃるわけだけれども、実態はどうなっているかといいますと、大体結核で発病しておっても、動ける間、ぶっ倒れるまで働くというのが労働の実態でしょう。それからたいへん疲れるからたいがい酒を飲む、栄養失調、栄養不良というふうな状況が常について回っておるという状況です。それから宿泊場所というのは、いわゆる野宿あるいはドヤ街ですね、そういうところですから、これは毎晩毎晩消毒するというのはできませんからね、常に感染にさらされているという状況の中で起こっているわけです。ですから、患者を発見した場合に、一ヵ月先だったら入院引き受けますというて連絡をしてもらっても、その患者どこへ置いておくか、ドヤへ置いておくわけにいかぬわけですね。ドヤに置いておったら、周囲の人に感染しますよ。そういう状況になっておって、しかも一人の患者が発生したら、平均二十五、六カ所病院をプッシュしなかったら収容ができない。救急車は患者を乗せたままうろうろしているというふうな状況というのが、いまの日本の、結核斜陽論が論ぜられておる中で、こういう状況が起こっているんだということをひとつ認識をされて、結核ベッドが絶対量としては確かに足らないけれども、あいてるわけですからね、そうでしょう、六四%しか充足してないんだから、少なくともそういった点はすみやかに収容できるというふうな体制を、これは結核行政として厚生省がそのかまえをおとりになるかどうか、そのことば基本的に大事です。これは、私立病院での結核ベッドの問題というのはいろいろ問題あります。時間がありませんからきょうは触れませんけれども、そういう点について厚生省として、関係者が協議会で取り組んでくれているようだから安心ですというような話じゃなくて、集中的にこういう事態が起こっているということを認識した上で対策をどうするかと、行政上のかまえをどうするかという点をはっきりしてもらいたいと思う。

 

○政府委員(三浦英夫君) 先生御指摘の愛隣地区の問題あるいは東京、名古屋その他のいわゆる低所得と申しますか、ああいう地区の方々のところに結核の感染源が集中しておると、この問題について十分認識しております。先ほど先生御指摘の愛隣地区の要精密検診のパーセンテージのことにつきましても、私ども勉強しておるような次第でございます。実は今度の改正をお願いしましたのは、結核をそういう軽んずるという意味で改正をお願いしているんじゃなくて、むしろ小中学校の健康診断とかあるいは予防接種等につきましては……

 

○沓脱タケ子君 そんなものはわかってるがな。

 

○政府委員(三浦英夫君) むしろその手を抜いたところを今度はそういう方々を中心に対策を、各保健所を動員いたしまして、積極的な対策をとっていきたいと思っておる次第でございます。

 

○沓脱タケ子君 これは、私が集中的な蔓延地域の問題をなぜ出しているかというのは、対策も確かに手がぬけている、関係者にまかしていますという形では話にならぬということを言っている。これは国公立、先ほど数値を局長お述べになりましたけれども、どこまで行って入院をさしていると思いますか。三重県や岡山あたりまで連絡をして入院をさしているんですよ、実際には。そういう状況で、一人の患者をつかまえて二十五、六回平均電話せぬと行き先が見つからぬという状況というのは、こんなものはまともな医療体制じゃないですよ。知っておって何もしなかったら、これはたいへんなことです。集健の結果もよく存じておりますって、知っててほっといたらたいへんなんです。そのことが問題だというので、少なくともこれは協議会で対策を立てたとしても、あしたからの間に合わないんです。少なくとも国公立病院を中心に国公立が引き受けるという立場にお立ちにならないと、私立病院がそれは断わられてもしようがないですよ。しかし圧倒的多数は私立病院が現に収容しておるという状況なんですからね、その点ははっきりしてもらいたいと思う、姿勢を。

 それからもう一つあわせて申し上げておきたいのは、こういった地域で一番困っておるのは精神病との併発患者です。精神病との併発患者は行き先がない。取ってもらえるところがないんです。それに対してはどういうふうに措置をされるか。これは結核菌をまきながら精神病患者をああいう地域にほうり出しておくということは、どういう状況になるかというのは申し上げなくてもおわかりだと思うので、これに対しての対処のしかたをとういうふうにお考えになっておるか。

 

○政府委員(三浦英夫君) 精神と結核の特に併発されている患者さんの問題、私ども非常に苦労しているところでございます。これからの特に精神ベッドにつきましては、そういうアルコール中毒であるとか、あるいは一般的な精神異常者の方で結核を併発されているような特殊な精神病患者さんのベッドにつきまして、国としては特段の助成をしていって、そういう精神ベッドを育成していくと、こういうような方向で臨むつもりでしている次第でございます。

 

○沓脱タケ子君 そうすると、私立の病院に助成をして、そうして精神病院に結核患者の受け入れベッドを持たせるということですか、どっちですか、結核療養所に精神病棟をつくらせるということですか。どっちにつくる……。

 

○政府委員(三浦英夫君) もちろん国立として、医務局長がおられますが、国立ももちろん受け持っていただくし、あるいは民間病院の方でも特にそういう患者さんを受け取っていただけるようなところには助成をして、国公私立相まってそういう特殊な患者さんのベッドを、なおこれから精神対策として伸ばしていきたいと、こういう考えでございます。

 

○沓脱タケ子君 医務局長おられますからと言うておられますけれども、医務局、どないですか。国立ですぐ併発患者の対策おとりになりますか。

 

○政府委員(滝沢正君) 実は、先ほども申し上げましたように、国立は、当初軍人の精神関係の療養所というのは全国に、当時国立に引き継いだときに四つほどしかございません。その後、結核療養所の運営と地域の結核患者の収容状況、あるいは地域の精神病床の不足収況、そういうものを勘案しながら、その後約二十近い施設を結核療養所から精神療養所に転換いたしまして、約現在二十ほど持っておりますけれども、これが地域的に非常にバランスが、特別の使命を持って設置していないものですから、――特に大阪地区には国立の精神療養所が、奈良の松籟荘というのが一番距離的に近いところではございます。そういうところでただいま結核と精神の合併症の問題をできるだけ対応するように指導してまいりまして、現在全入院患者の八%ぐらいが肺結核を持っておる患者を収容いたしております。この点につきましては、公衆衛生局からも答えましたように、かなり地域性で、県の衛生行政の一環として結核と精神の合併症が発生した場合どこで収容していくかということは衛生部長のやはり十分考慮しておかなきゃならぬ問題でございますので、われわれも国立としてはこれに御協力すると同時に、行政的には結核と精神の合併症をともにこれから老人病的な要素も強くなりますし、そういう意味で、それぞれの地域においてそういうベッドの確保というような問題を検討していただいて、精神病床の設置が必要ならばこれに助成していく、こういうような形をとるべきだと、国立は当然その一環としてすでに転換して、精神療養所としての機能あるものはその地区で、もともと結核から転換したものが大部分ございますので、結核との合併症を担当する、こういうふうにしていきたいと、こう考えております。

 

○沓脱タケ子君 今後やるんですな、それ。いまどういう状況になっておるかというたら、この地域の精神病との併発患者の最近の行き先をちょっと調べてみた。そうしますと、これは原山高原サナトリウムに四人、それから三重県の小山病院に三人、岡山の万成病院に二人、これ全部国立ですか。違うでしょう。国立はそういう役割りを果たしてないですよ。で、大阪市内で発生した患者はもう何十ヵ所いうてさがして、三重県だとか、岡山あたりまで手を伸ばして収容しなきゃならぬという実態になっている。これは府県の衛生部長が腹をきめてやらにゃならぬと同時に、厚生省の行政として、医療行政としてこういう患者さんの扱いについてどうするかという基本的な行政上の基本をお立てにならないと、これは府県でかってにやれいいうたって、大阪市のどまん中で起こったことを大阪府下で片がつかずに、奈良県にも聞き、京都にも聞き、三重県にも聞き、岡山にも手を伸ばしてやっと一人の患者に対処しているという実態なんです。こういう実態というものはまともな医療行政じゃない。まともな医療行政になるようにするためには厚生省がどうするかというやっぱりかまえですよ。基本的なかまえが大事だと思うので、医務局長おっしゃったように、結核療養所が精神に変わっているからそこらがやりやすい言うておられるのだから、局長が思っておるだけではこれはならぬですよ。それが併発患者を収容できるような体制をこれは至急におやりになりますか。

 

○政府委員(三浦英夫君) 先ほども申し上げましたとおり、精神と結核の合併症の患者の問題につきましては私ども非常に頭を悩ましております。現在こういう合併症のベッドが、精神ベッドが二十六万床のうち現在四千三百床しかないのが現状でございます。今後特に精神対策につきましては、こういうベッド数を国公私立合わせて、相ともどもに地域の実情によって充足をはかっていくように行政指導していくつもりでおる次第でございます。

 

○沓脱タケ子君 これはまあ、お手上げでございますという御答弁なんですけどね、お手上げでございますではとにかく困るわけですよ。感染源をまきちらす開放性の結核患者で精神病患者が野放しにされたんじゃこれは話にならぬ。早急にやはり合併症の患者を扱える国立の医療機関でそういう施設を急速に整備するという形で対処をしていただかなければ、これは絶対量がたいへん足らぬのでもう苦慮しておりますでは話にならぬと思うんですよ。その辺はっきりしといてください。急速にその対策を対処するかどうか。

 

○政府委員(滝沢正君) 先ほど来御説明いたしてますように、わが国の国立病院、療養所は陸海軍当時の傷痍軍人療養所、病院を引き継いだのでございまして、これを計画的に整備したものではございません。したがって、今後新たにそういう国立の精神療養所をそういう目的のためにつくれということであれば、今後のこれはきわめて重要な課題になるわけでございますが、現状ではわが国の精神ベッドは私立が大体八五%を占めて、一五%が国立、公立等でございます。そういう実態を踏まえまして、私立病院といえどもかなり規模の大きい機能のいいものもございますので、私は何も特殊な目的のものであるからといって国立ですべてやらなきゃいかぬというのじゃなく、わが国の精神医療の実態から申しますと、公私を問わず、その地域にその必要性があればやはり助成してその整備をしていくと、あるいは運営についても配慮をしていくと、こういうような考え方に立ちませんと現実的ではないというふうに思いますので、今後結核の推移によっては一部精神療養所に転換する施設もなしとしないのでございますが、やはり結核の重要性が本命でございますので、結核の療養所としての運営の見通しの立った上でございませんと積極的な精神療養所の転換は困難でございます。ただ一つ両方をあわせ持って運営することの可能性は私は検討する必要があろうと思っております。結核療養所の中に特定な地域によっては精神ベッドというものを持つということによる合併症の対策というものもこれは不可能ではないと思います。その点については十分検討する必要があろうと、こういうふうに考えております。

 

○沓脱タケ子君 私は、あれですよ、国公立だけでやれと言ってるんじゃないんですよ。しかしね、新しい事態ですよね、集中的にそういう形で出てきているのは。そういう集中的に出てきておる新しい事態に対応するためには、少なくとも国立でそういう受け入れ体制というものをつくりながら全体の医療体制の整備をはかっていくというふうなことが必要ではないかと思って、少なくとも国立ではさしあたってというふうに申し上げているわけです。結核療養所が旧陸軍傷痍軍人療養所を引き継いだものでと何べんもおっしゃいますけれども、そんなことをいつまで言うてたら話にならぬですわ。もう三十年になりますがな、間もなく。一体三十年何しとったんやいうことになりますよ、そんなこといつまで言うてたら。三十年の間に、それじゃ結核対策の医療行政ね、傷痍軍人療養所のままで不十分でございまして、ございましてばっかり三十年言うてきたんかと。そんなばかなことを局長が何べんも言わぬほうがよろしいですよ。実際。それはしようがないですわ、現状がそうなんだから。しかし、私が申し上げたのは、少なくともそういった必要度があればと局長おっしゃってますけどね、必要な実態というものを明確にして御要望申し上げているんですよ。さしあたって、少なくとも国立の一ヵ所にどっかでもそういうものをおつくりになると、一ヵ所といっても、これはどこでも一ヵ所じゃ困りますけれどね。そうして民間も含めて医療体制を整えていくというふうなかまえがあるのかないのかということでも大違いですからね。そのことで特にお聞きをしておるわけですよ。これはもう一つやるという気があるのかないのか、さっきの話聞いているとわからぬですけれども、最終的にこれだけ重大問題に集中的な典型的問題になっているところを具体例として出しているわけですからね、少なくともほっておいてよろしいということにならぬと思うんですね。大臣どうですか、これはいまお聞きいただいておりましたのですけれども、一ぺんにどんぴしゃりと出ないのかもわかりませんけれども、ほってはおけないという事態だけは明らかだと思う。どういうふうに早急に対処されるおつもりなのか、決意なり御計画なりをお伺いしたいと思います。

 

○国務大臣(齋藤邦吉君) 結核問題は先般の御審議を通じましてずっと長いこと御審議をいただいているわけですが、全国的に見ますと、なるほど非常によくなってきておることは事実でございましょう。しかしながら、いまお述べになりましたような地域的に集中的に結核患者が発生している。特に所得の低い方々の層の中に出ておるということは私もよく承知をいたしております。さらにまた全国的に見ますれば老人階層のほうに非常に多くなってきている。そういうふうないろいろな問題、実は承知をいたしております。

 そこで、さしあたりいまの集中的に発生しておる地域についてどうするかということでございますが、これはもう国も県も民間も一緒になってやはりこの問題に取り組むということは私は絶対必要な問題だと思います。そこでこういう問題については大阪ばかりではありません、東京もありますし、名古屋もあります。そこで、そういう当該府県の知事がまずどういう体制で臨むかということをまず計画的にきめてもらう。それに対して国はできるだけの援助をする、こういうたてまえで臨みたいと思います。したがいまして大阪府では衛生部が、大阪府の知事がどういう考えを持っているかということから始まりまして、早急にこういう問題を解決するための計画を具体的に大阪なら大阪、名古屋なら名古屋、具体的にその計画を立てさすようにいたします。これはどうか私のほうにおまかせいただきたいと思います。しかし、その場合に何でもかんでも国だ、国公立だというわけにはまいりません。これは実際、もう先生自身そうおっしゃっているんですから、民間の医療機関にも御協力をいただきながら、それにまたいま申し上げましたような精神病と結核についての合併病棟の建設の問題とかいろいろあります。そういう問題については大阪府のほうと相談をいたしまして具体的な計画を立てます。そして必要があれば国の療養所の中に一棟ぐらい建てるとかいろいろなことをやっぱりやっていかにやあなりませんから、こういうふうなことを具体的にきめるようにいたしたいと思います。

 

○沓脱タケ子君 この法案と直接関連をいたしまして少しお聞きをしておきたいのですけれども、特に私は医学医療の進歩の中で、たとえば定期健診を今度の改正案のように小学生一回、中学生一回の定期健診にするということについて特別それがよくないというふうなことを考えているわけではありません。BCGの効果というのは十年程度の効果を持つというふうなことがすでに学問的に確認をされているという実態でございますから、それはそれとしていいと思うんです。ところが、そういうふうに定期健診が少なくなるということが引き続き結核対策の軽視につながるということになってはならない。そこが非常に大切だと思います。

 そこで、特にお聞きをしたいのは、たとえば高濃度汚染地域ですね、いま申し上げたような。集中的蔓延地域、つまり罹病率、発生率の高い地域、そういうところの対策、それから先ほどもちょっと申し上げましたけれども、これは数値をあげて言いたいと思いましたけれども、中小零細企業の労働者の中にたいへん罹病率あるいは感染患者の発生率というのが大企業と比べますと半分ないしときによったら四分の一ぐらいの違いが出ているわけですね。そういう点で、低所得者を含めての中小零細企業の労働者、低所得者層に対する健診ですね、健診の度合い、こういったものについてどうするかという点を、その辺が学童生徒の減った分がどうなるんだという内容については、これはどういうふうにお考えになっているかお聞きをしたい。