72-衆-地方行政委員会-19号 昭和49年03月28日

 

昭和四十九年三月二十八日(木曜日)

    午前十時三十二分開議

 

本日の会議に付した案件

 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)

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○小川(省)委員 労働省おいでですね。山谷の労働対策について若干お伺いをいたしたいと思うのであります。

 山谷に、これは東京都の機関であろうと思うのですが、山谷労働センターという出先機関がありますが、この主要な仕事はどんなふうな仕事でしょうか。

 

○望月説明員 お答えいたします。

 先生お尋ねの山谷労働センターでございますが、御承知のように上野の近くに山谷がございまして、私ども山谷地区の就労者、日雇い労働者のために職業紹介をやっておるわけでございますが、玉姫の労働出張所とともに、田原町の労働出張所、それから山谷労働センター、この三カ所で山谷地区の日雇い労働者の職業紹介業務をやっております。特に労働センターにおきましては、日雇い労働者のための職業相談、それから職業指導、それから職業紹介という形で、毎日の日雇い労働者の就職のあっせんという業務をやっております。これは四十年十月に設立された法人でございます。

 

○小川(省)委員 わかりました。

 そのセンターが最近、いわゆるぐれん隊というのですか何というのですか、そういう方々が、警察の取り締まり等もあるのでしょうが、形を変えて、何々建設の会社員だとか何々組の社員だというふうな形で、従来の手配師的なような形で山谷労働センターに出ばって実際には人集めをしているというふうな話を聞くわけですけれども、具体的に労働省はこの山谷のいわゆる下層労働者の指導についてはどのような指導をしているわけですか。

 

○望月説明員 山谷地域におきます手配師等の問題でございますが、やはりこういった青空市場というのが大都市にあるわけでございますから、こういったものにつきましては手配師等が横行するという危険が非常に従来からもあったわけでございます。したがいまして、山谷地域につきましては、私どもは山谷労働センターにおいて、利用事業所から、たとえば法人に関する登記謄本だとか、それから会社経歴書、それから下請の場合は元請の念書、現場へ連れていく引率者の選任届けというようなものを求人側に求めまして、そういうものを確認した上で紹介業務を行なうというような形をとっておるわけでございます。それからさらには、建設業等が主たる業種でございますので、建設業を主体といたしまして元請、下請等の事業所を集めまして、雇用の正常化につきまして集団指導を行なったり、あるいは求人開拓にあたりましてそういった趣旨を徹底しておるわけでございます。しかし、確かに直接募集というようなのが間々見受けられる場合がございますので、私どもといたしましては、安定所またはセンターへの求人の申し込みにつきまして先ほど申し上げましたような趣旨をできるだけ徹底さしておるわけでございますが、間々見受ける悪質募集者につきましては、警察当局に依頼をいたしまして取り締まりについて協力をお願いするというのが現状でございます。

 

○小川(省)委員 最近、建設会社等の事業は減ったのだろうと思いますけれども、非常に求人数が減少してきている傾向にある。日雇い労働者の失業保険は、たしか二カ月間で二十八日間以上の就労で受給資格が得られるのだろうと思いますけれども、かなり最近求人数が減少しているというふうに聞いておるわけです。この傾向についてはいかがですか。

 

○望月説明員 先生御指摘のように、山谷地区におきましては一月という月、これは例年求人数が減る月でございますが、ことしも相当落ち込みまして、先生も新聞等で御承知のとおり、いろいろごたごたが起きたわけでございます。しかし二月、三月について見ますとある程度回復しております。しかし依然としてまだ必ずしも良好ではございません。そういう認識のもとに、私ども鋭意求人確保に努力してまいっておるところでございます。

 

○小川(省)委員 そこで労働省にお伺いをしたいわけですけれども、労働省はこれらの労働者をどんなふうにとらえているのかという問題なんですが、どうもいわゆるアウトロー的な集団ととらえているのではないかというふうに考えられてならないわけであります。私は、山谷や釜ケ崎等もそうでありますけれども、この種の労働者は、資本主義の中で吹きだまってくるところのいわゆる下層労働者階級でありますから、アウトローの集団としてとらえるとやはり労働対策として誤りではないかというふうに思うわけであります。いまの御答弁を聞いて、求人開拓にも努力をしているということでありますから、なかなかそれが現場にまでまだ届いていないのではないかというふうに考えられるわけですが、これらの人たちをアウトロー的な感覚をもってとらえているということはないわけでしょうね。

 

○望月説明員 そういう考えは毛頭持ってございません。それで私どもは、こういう地区に居住して就労している労働者の方々は、いろいろな社会的な条件あるいは家族的な条件というようなことで集まっている就労者でございますので、やはりこれの基本的な考え方としては、これに対しまして労働面だけでなく、もちろん労働が基本でございますが、民生面その他福祉の面というような総合的な観点で取り組まなければならぬと思いますが、少なくとも労働の面につきましては、やはり生活できるような形の就職あっせんということを考えていかなければならぬと思いますし、それから私どもとしては、そういった地点に景気の変動等によってしわ寄せが行なわれるというようなことがもしあるとすれば、山谷であれば都内の各地区の求人等をそこへ寄せ集めるというような形で、できるだけあぶれが出ないような形の措置を強力に推進していきたい、こういう考えでございます。

 

○小川(省)委員 警察庁に伺いたいわけでありますが、最近における山谷労働者の、あすこは所轄は浅草署だろうと思うのですが、検挙状況の推移といいますか、これはどんなふうになっておりますか。

 

○綾田政府委員 最近の山谷の治安状況は一応比較的平穏に推移いたしておりまして、刑法犯の発生もやや減少ぎみであるということでございます。ことしの一月からを見ますと、大体一月に八十件前後の刑法犯が発生しておりますが、御承知のように、ここではいわゆるけんか、酔っぱらいのけんかによる暴行傷害事件とか、あるいはかっぱらいのような窃盗事犯が比較的多く発生いたしておりますけれども、最近では特にこれといった問題はございません。

 

○小川(省)委員 比較的減少ぎみだということなんでありますが、実は山谷に現地闘争委員会といういわゆる組織がございます。たいへん熱心に、いわゆる山谷労働者の福祉面で、職にはぐれた者のたき出しであるとか、いろいろなことをやっているわけですけれども、これらの人たちを警察は、いわゆるアウトローの暴動を起こすような指導者ではないかというふうに見ている節があるわけなんです。こういう中で真剣に努力をしている人たちを、えらい異端分子のアジテーターというふうな形でとらえているのではないか。いわゆる治安対策、これは当然暴力行為等は根絶をしなければいけませんけれども、そういう形で見ておられるのではないかというふうに考えられる向きもあるわけなんです。ぜひひとつそういうことのないようにお願いをしたいというふうに思っているわけでありますが、それらについてはいかがでしょうか。

 

○綾田政府委員 先生おっしゃるように、現闘委は現地で昨年ごろまではかなり活発にやっておりましたが、私どもといたしましては、どこまでも法令違反の違法行為があればこれを検挙するという姿勢でございまして、特にそういうことは考えておりません。ただ、ことしに入りましてからでも六回ばかり、やはり威力業務妨害罪とかあるいは窃盗事犯とか、そういう事犯が発生いたしておりまして、この現闘委を逮捕したという実例もございます。

 

○小川(省)委員 威力業務妨害などというやつがいろいろひっかけられるおそれが多分にあるわけでありますが、あらためて私もあすこでしばらく生活をしてみてまた御質問を申し上げますから、ぜひひとつ、アウトロー集団というとらえ方をしないで、いわゆる底辺におけるところの労働者という意味を含めて警察も労働省もそういう対策を立てて、現地の中にもそういうことの理解が通るような形で山谷における労働対策をお願いしたいということで、きょうの段階では終わっておきたいと思います。

 そこで本論に入りまして、交付税法に関連をして若干お伺いをいたしたいと思っているわけであります。

 まず最初に、千六百八十億のいわゆる繰り上げ償還に関連をしてお伺いをいたしたいと思うのであります。

 インフレの高進の時期こそ借金の好機だというふうな話があるわけでありますが、何ゆえに金の価値が下落をしていく段階の中で一括繰り上げ償還をしたかという問題がやはり何といってもあるわけであります。地方財政の実態をよく知っている自治省として、どうしても私はこの繰り上げ償還というのは理解できない。国の予算の伸びを二〇%以下に押えるという形の中でやられたのではないかというふうに思っているわけでありますけれども、ぜひこの点を、本会議でもお尋ねをしたわけでありますが、まず明らかにしていただきたいと思うのであります。