63-衆-予算委員会第一分科会-5号 昭和45年03月17日
昭和四十五年三月十七日(火曜日)
午前十一時四分開議
本日の会議に付した案件
昭和四十五年度一般会計予算中法務省所管
――――◇―――――
○山田(太)分科員 その答弁のようにできておれば問題はないわけです。
時間があと十分足らずしかありませんので、これは朝日新聞の報道でございますが、東京医科歯科大学の農村厚生医学研究施設、その長である柳沢教授が、五百人の出かせぎ労務者を追跡調査した結果を発表されております。その五百人の追跡調査を発表なさっているその数字を見てみますと、時間がないので数字を簡単に申し上げますが、いまおっしゃったような結果になってないということです。これは最近の報道です。それはまず労災、労働上においての事故で死亡した人が七名、それから負傷者が九名、病気で帰ってきたのが八名、蒸発が一名。
そうしてもう一つ、私が調査した地元のある部落、四十四世帯の部落でございます。その四十四世帯の部落の中で死亡者――やはりこれは下請の下請の下請のようなところへ行っている人です。補償をもらっていません。死亡一名、それから負傷事故で帰ってきている人が五名、このうち三名が何ら金をもらってないそうです。それから病気になって帰ってきた人が三名、それから蒸発して家庭破壊した家が三世帯であります。四十四世帯の部落です。このようなのは多いほうではあります。しかし、このような四十四世帯の部落でさえも、十二名にわたる事故が出かせぎの結果起きているところもあります。
またもう一つは、東京出かせぎ援護相談所、これは上野です。そこの調査は、これはもう聞いていらっしゃると思うのですが、六千人の相談があったうち三割の千八百人、三割もの多くの方が、労働条件や賃金をだまされたということによって、転職さがしに再び舞い戻っている。あるいはそのうち賃金をだまされた人を含めて、賃金の不払い等、二〇%の人がその被害を受けている。また、その六千人の相談のうちの三割の千八百人の中にあるものでさえも、やはり蒸発で家庭破壊が百四十人もあります。
これはまた見方は違うといたしましても、問題点は別の問題点といたしましても、出かせぎ労務者の結果がこのような状況になりつつあるというところです。この問題は、いまおっしゃったような方法では、またいままでやってこられたことでは防ぐことができないという証拠じゃないかということを感じるわけです。この点についてはどうでしょう。
またこれからより一そう離農なりあるいは出かせぎなりふえていく現状にある方々を、どのようにして保護していくかという点について、もう少し真剣に考えていただかなければならないと思います。
そこであともう四分しかありませんから私のほうから申し上げます。これに対して、まず出かせぎ労務者の手帳、これは出してはいらっしゃいます。しかし、この中の三割、すなわち六千人のうちの千八百人のうち、この手帳を持ってない人が六割おる。それから、職安からの紹介でない人が六四%おります。いまの御答弁のようなことでは、現状がこうなっているのだということを考えたときに、その答弁はただの答弁にしかすぎないとしかいえないわけです。これをどう防いでいくか。その点についてはこれからの問題でございますが、いまの答弁だけでは満足できない現実の証拠が出てきています。もちろん、あなたをいじめようなんと思って言うのではありませんけれども、こういう現実があるのをどのように対処していこうとする計画があるか、その点を一言聞かしてもらいたいと思います。
○保科説明員 先生御指摘のような問題があること、私もわかっております。したがいまして、出かせぎ労働者対策の基本といたしましては、まず事業主に対しましては、出かせぎ労働者を多く雇う事業主の事業所台帳をつくりまして、安定所のほうでいかなる事業所であるかよく把握するようにいたしまして、安心のできる事業所へ紹介するということを一つの対策にしております。
それから、出かせぎ労働者に対しましては、できるだけ安定所なり市町村を通して就労するように呼びかけをいたしております。(山田(太)分科員「できるだけでなしに、どうやっていくか」と呼ぶ)それから、出かせぎされる方の出かせぎ労働者台帳というのをつくりまして、就労するときには安定所を通って就労するようにというような呼びかけあるいはパンフレット、それから農村における放送等を通じまして呼びかけを行なっておるところでございます。
それから、出かせぎ援護相談所の状況も、先生のおっしゃいましたような状況でございますので、そういう問題がございますので、東京、大阪、札幌、名古屋とつくったわけでございますが、新年度は横浜にもつくる計画にしております。安定所でできない、きめのこまかい周辺の相談をやってまいろうというのが相談所の趣旨でございますので、そういうような対策をもっともっと努力して、きめこまかくやって、出かせぎ労働者の保護に対しまして万全を期したいというふうに考えております。
○山田(太)分科員 その点の具体的な措置については、後ほど書類でいただきたいと思います。
そこで、もう時間が迫ってきましたが、もう二点だけ聞きたいことがあります。先ほどから申し上げておりました、これから農村からの出かせぎが非常にふえてきはしないかという問題です。
労働省からお見えになっている方は、局長を言うてあったはずですが、一緒にかち合ったかもしれません。そこで、課長さんでは御返事できないかもしれませんが、炭鉱離職者については特別措置法があります。離農者にも特別措置法を考えるべきではないか、その点について一点と、もう一つは、時期は忘れましたが、労働大臣の御答弁の中に、出かせぎ者に対する特別立法をするという答弁をなさっていたことを私、聞いております。それについてのその後の状況はどうなっておるかという点、それからもう一つ――これはよく覚えておいてくださいよ、時間がないから質問だけ先にします。それからもう一つ、これは要望と質問と一緒でございますが、大阪には労働福祉センターが愛隣地区にできております。
〔登坂主査代理退席、主査着席〕
東京においても、この大阪府における労働福祉センターに類するものをつくる要望があれば、労働省としても十分援助するつもりがあるかどうか、その三点についてお伺いしておきたいと思います。
○大坪説明員 ただいま先生からお尋ねのございました、出かせぎ労働者についての何らかの法律的な規制が必要ではないかというお話でございます。これは昨年の当国会におきまして、前労働大臣であられました原労働大臣が、検討に値するというお答えを申し上げておると記憶いたしております。私どもの大臣も先日、本国会におきまして、検討いたそうというふうなお答えはされておると存じますが、問題が非常に複雑でむずかしゅうございますので、私どもからは直接お答え申し上げるのは非常にむずかしい問題だと思うので、御了承いただきたいと思います。