61-衆-予算委員会第一分科会-3号 昭和44年02月26日

 

昭和四十四年二月二十六日(水曜日)

   午前十時二分開議

 

本日の会議に付した案件

 昭和四十四年度一般会計予算中内閣及び総理府(防衛庁及び経済企画庁を除く)所管

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○沖本分科員 お答えは少し抽象的なお答えになったわけでございますが、現実としてもうすでにそういう格差ができております。そうしますと、同じ同和地域でありながら、手厚い保護を受けておる――現段階では全体に手厚いとはいえないわけですが、手厚くない中にもある程度の保護を受けておる、施策を受けておるという地点と、全くそれが薄いというところで冷淡である、こういう内容が現実にあるわけですね。こういう点をやっぱりそろえていって、あるところに持っていかなければならない。それは措置法を実施すればできるだろう、こういうことになるかもわかりませんが、それまでの問題もすでにあるわけなんで、そういう点についてどういうふうにおやりになるか。

 

○床次国務大臣 ただいまあらためて御質問いただきましたのでわかりましたけれども、やはりこの同和問題に対する関係当局者の心がまえと申しますか、事業実施に対する気持ちもだいぶ差があるのじゃないか。ただ従来におきまして、財政的に非常に苦しい立場があったために、なかなかやりたくてもできなかったところもありますから、そういうところができやすいように補助のかさ上げというような問題も先ほど申し上げたわけでありまして、やはり今後同和事業に対する認識が徹底するに従いまして、必要であるにかかわらずこれができなかったというところもなくなってくるのじゃないか。また、必要か必要でないかということに対しましては、地元でもってそれぞれ十分検討されまして、そうしてこれが計画的に立案をされて、これが具体的な仕事になるというふうなたてまえに今後ともなってまいると思うのでありまして、この点は同和に関する理解の進展の度合いと申しますか、そういうところもかなり大きな差があります。同和事業と申しますか、同和事業の性格というもの、思想というものをよく理解させながら進んでいきたいと思っております。

 

○沖本分科員 いま御答弁いただいたのは、その格差の問題という点について御答弁いただいたのだ、私はそう了解したわけなんですが、それとは別に、先ほど申し上げましたように、改良住宅をつくった、あるいは道路を敷いた、あるいは下水の施設をつくった、共同水道から水道を各戸に引くようにした、あるいはいろいろな施策が今後あるわけなんです。これは特別措置法と両々相まって進められていくとは思うわけなんですけれども、その中にあって、結局スラム対策という問題とそれから同和対策という問題とが混合されていく。たとえていいますと、大阪の西成の愛隣地区、従来からいわれております釜ケ崎も一般概念ではこれは同和地区だろう、こういうふうに一般の方は考えていらっしゃるわけです。あそこは同和地区ではなくてスラム地帯で、別のほうに同和地域はあるわけです。こういう点がやっぱりきちっと区別された施策が講ぜられていかなければならないし、また、それを施行して実施していただく地方公共団体のほうも、十分そのことを考えた政治を行なっていただかなければ、受けるほうの側でいろいろな問題点が出てくるわけです。そういう点について、たとえていいますと、先ほど言いました住宅の問題も、いわゆる公営住宅と同じようなスタイルの改良住宅ができ上がるわけです。それを目の前に見ているわけです。目の前に見ていて、ずいぶん住宅が建ったから、私たちもこの公営住宅に住宅難のときに入れるのだ、こう思ったところが、そこに入る方々は違う地域に住んでいらっしゃる方々がすぽっと入ってしまったということで、行ってみたら公営住宅の指定の住宅ではなかったということで、あれはどういうわけか、特別待遇じゃないか、こういうことがかえって差別の差別を生んでくる、こういうかっこうになっておるのが現実に起きておるわけです。こういうものは、やはりある程度の指導であるとか、ある程度の問題をやはり行なっていくほうの側が踏まえてやっていただきさえずれば解決してくるのじゃないか、こういうふうに考えるわけですけれども、現業にもう起きつつある。これが特別措置法ができて差別をなくするためにどんどんこの法律を施行していくようになると当然起き上がってくる問題として考えられるわけなんですが、この点について総務長官はどういうふうな考えでお取り組みになるか。

 

○床次国務大臣 ただいまの問題につきましては、従来のあり方等も詳しく知っております政府委員からお答え申し上げます。

 

○橋口政府委員 先生から御指摘になりましたような現象はあろうかと思います。都市部の中の住宅の問題あるいは自治体相互間の格差の問題、確かにそういう現象が出てきております。まさにそういう現象を踏まえての本質をついての御質問でございます。ある意味では同和地区に行政投資が相当集中して行なわれている。それがかえって周辺地区との間に格差を生み出しているという現象も出てまいろうかと思います。特別措置法の制定及び長期計画の運営の過程におきまして、事業量の確保と同時に、個所づけと申しますか、事業配分についても十分配慮してまいりたい。ただ、やはりこういう問題に対する対処のしかたとしては、地方団体の理事者のお考えというものが一番大きなきめ手になるのじゃないか。先ほどもお話がございました都市スラムとの均衡の問題も出てきておると思います。ただ同和地区の性格とスラム地区とはやや性格を異にしているというふうに考えますが、しかし、いま御指摘になりましたような現象が、かえってまた同和地区の住民意識に必ずしもよくない影響を与えている面もあろうかと思います。事業の運営については十分配慮してまいりたいというふうに考えております。

 

○沖本分科員 この問題はやはり将来にわたってだんだんと大きくなってくる問題だと思うわけです。そういう点については各省間でおやりになる仕事でございますから、たとえて言うなら、いわゆる公営住宅をどんどん建てていくという点について、改良住宅を建てるという点についての立地の問題だとかそういう問題について十分の配慮を払って、その建てる土地の選定とかそういう問題もやはり立体的に考えてやっていただかなければならないので、そういう点については十分な検討と、総理府においてそういう点キャッチしていただいて、むしろよりよくその問題が処理されていくような問題を総理府のほうで十分できるような力を持っていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。そういうことでありますが、結局この四十四年度同和対策関係予算というものは、あれでございますか、同和対策措置法が通った場合には、そのままその中にこの予算は吸収されるもんでしょうか、あるいは別途に施行されていくもんでしょうか、どちらなんでしょう。

 

○床次国務大臣 新しい措置法の施行の時期も関係がありますけれども、大体現在の予算でもって本年度におきましては間に合うものと考えておるわけであります。

 

○沖本分科員 そういう点におますと、先ほどのお話の中に大体その四割程度の上昇を示してここまできたと、こういうことなので、十分重点的な扱いをやっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。

 また同時に、これから一番問題になるのは教育の問題についてですね。そこに差別が起きている、あるいは就職の内容についての差別が起きている。これは特別措置法ができて十分そういう問題は消化されていくことになるわけですけれども、やはり要は、それに携わる人たちの組み方によって違うわけで、こういうものの内容はただ予算だけで片づけられるもんではないわけです。こういう点について、全体的な差別感をなくするというモラルの問題、こういう点について長官はどういうふうなお考えを将来に向かってお持ちなんでしょうか。

 

○床次国務大臣 事業費の問題につきましては、ことしの予算におきましては、この措置法というもの並びに長期計画というものを頭に置きまして策定いたしたために、相当伸び率が大きかったということを申し添えておきたいと思います。

 なお、同和問題の特色は、他の事業と違いまして、事業量の多寡だけもって論ずべきものではない。同和対策の中にも書いてあります思想的なものがかなり大きな役割りを果たしておる次第でありまして、御意見のごとき点につきましては十分これは考慮すべき問題である。教育その他の思想普及、徹底という問題が、特に同和事業の中においては加味されておる点が、ほかの事業とは異なる点であることを十分考えまして、今後とも慎重に努力してまいりたい。

 なお、一面から申しまして、特別措置が講ぜられることによって非常に伸びることの反面におきまして、先ほどお話にありましたような周囲との格差というような問題も出てきて、そのためにかえって同和問題を害するというようなことはあってはならないと思う。この点の調和を十分考えながら、私どもも慎重にこの同和対策特別措置法ができました以上は、その趣旨に従って努力してまいりたいと思います。

 

○沖本分科員 これは当然この法律ができたときにお互いに考え、また論じなければならない問題ではあるわけでございますが、やはりこの法律の受け入れ体制として、すんなりとこの法律が受け入れられて施行できるように、前もってそういう問題点を十分積み重ねていただいて、そういう事態の上に乗せていってこれをスムーズに進めていくような準備的なものもお進めになっていただいておいたほうが、もっとこれは効果があがるのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。先ほども申し上げましたとおりに、多分にモラルの点、あるいは実際に特別措置法をつくって差し上げて差別をなくすることをやったことが、かえって差別感をつくっていくようなことになったんでは、根本的なものがもう間違ってしまうというようなことになりますから、十分に法律の精神が生かされる土台をつくっておいて法律を乗せていくような方法を、総理府のほうで十分対策をつくっていただきたい、こういうふうにお願いいたしまして、私の質問を終わります。