60-参-決算委員会-2号 昭和43年12月18日

 

昭和四十三年十二月十八日(水曜日)

   午前十時十七分開会

 

 

  本日の会議に付した案件

○理事補欠選任の件

○参考人の出席要求に関する件

○国家財政の経理及び国有財産の管理に関する調査

 (国家財政の経理及び国有財産の管理に関する件)

○継続調査要求に関する件

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  〔理事松井誠君委員長席に着く〕

 

○和田静夫君 ちょっと物価の問題でお尋ねをしておきたいんですが、用地買収や関連事業で建設資材の値上がり、地価の高騰、諸物価の値上がり、こういうものが会場周辺の住民生活にたいへんな悪影響を及ぼしております。これはモントリオールの場合も、諸物価が非常に上がって、開催前の半年ごろから終わりごろまでの間には、御存じのとおり二倍に達したと、こう言われておる。それから東京オリンピックの場合も、生鮮食料品等を中心としてたいへんな値上がりを示したことは御存じのとおりであります。はなやかな宣伝の裏に、国民や地方自治体に負担が増加をする、あるいは市民生活へ悪影響を及ぼす、政治、社会、労働などの各分野にたいへん大きな暗影を投げかけている、こういう問題については、責任を持った行政措置というものをとっていただきたいと、こう思うんです。答弁を求めたいところですが、時間がなくなってきておりますから、先に進みます。

 一つ伺っておきたいのは、先日も新聞で見たのですが、悪質な労務者によるところの強姦、暴行、のぞき、こういうようないわゆる生活侵害が行なわれて、住民の間に自警団というような形のものが組織をされているというふうに仄聞をいたします。こういう実情について、この機会に明らかにしておいてもらいたい。

 

○政府委員(植木光教君) 先に御質問ございました物価の問題につきましては、私どもとしましてもたいへん心配をいたしまして万全の措置をとってまいりました。用地質収に関しましては、各事業主体が緊密に連絡を取り合いまして、土地収用法の適切な連用などによりまして、適切な価格で買収を進めて早期に取得をするというように努力をしてまいっております。また、建設資材につきましては、たとえば砂利を砕石に転換させるというようなことによりまして、ただいまのところは、万国博による影響は出ていない模様でございます。また、会期中の生鮮食料品の値上がりも憂慮されるところでありますが、純増分は近畿全体の消費量の二、三%と推定をされておりますので、生産、出荷調整を適切に行ないましたり、あるいはまた流通施設、冷凍設備などを整備するというようなことによりまして解消いたしてまいりたいと考えております。

 後段の労働者の風紀素乱のことについてのお答えでございますけれども、お話しのようにこの建設工事を進めてまいりますと、ピーク時には一日五万人の労働者を補充する必要があるという状況でございます。したがって、大阪府内に多数の労働者が集中をすることになります。管理面には細心の注意を払う必要がありますので、政府といたしましては、建設労働者の円滑な管理、必要労働力の確保、さらに受け入れ態勢の整備、なかんずく福利厚生施設面の整備充実ということが先決問題であると考え、いま精力的に取り組んでおります。また大阪府及び地元建設業協会等に対しまして、総合的な福利厚生施設の推進でありますとか、宿舎を計画的に分布させるということ、あるいは共同福利厚生施設の整備等に対しまして強く要清いたしておりまして、政府としても援助策の一環として、労働者用の宿舎を設置、貸与するということにしておりまして、ただいま建設希望業者の申請を受け付けているという状況であります。また労働者が集中的に集まりますので、地元民とのもんちゃくの起こることが心配されますので、会場の近辺には派出所を増設するなど、警備力の増強につとめますとともに、協会ガードマンによります警備、地元防犯協会と民間機関による自主防犯体制の強化などをはかりまして、ただいまの問題につきましての万全の施策を期しているという状況でございます。

 

○和田静夫君 ちょっと聞きたいのですけれども、労働省の関係で、いまの私の質問に関連して次のことを後ほど資料として提出をしていただきたいと思います。

 一つは、建設労働者の現況と対策ですが、他府県からの出かせぎ労働者の実態、たとえば石川県からどれだけ、富山県からどれだけ、新潟県からどれだけ、そういう形のものを資料として提出願います。それから、その出かせぎ労働者の住居、いま御答弁がありましたが、それは将来展望を含めて、今日までのあの会場の建設従事者を含んで明らかにしていただきたいと思います。

 それから労災防止、特に賃金不払いの対策について、業者間との関係における指導、契約の状態、それから社会保険関係の適用の状態、それから労働基準法が求めているところの諸規則を含んで、たとえば就業規則その他の問題についての現況、これはサンプルとして提出していただきたい。それから労働者の雇用契約、これについてひとつ写しを資料として出していただきたい。

 先ほど御答弁がありましたように、こんなに多くの労働者がとにかく万博の工事を中心として動くわけでありますから、一番やはり心配になるのは、明治三十五年の第五回内国御業博覧会が天王寺公園、新世界一帯を会場とした。あのときに治安維持のためと称していろいろな措置がなされ、そうして今日の釜ケ崎ができ上がった。釜ケ崎発生の歴史との見合いにおいて、私たちはいわゆる過疎過密の問題というものをかなり心配せざるを得ない。いま出かせぎの実情も資料として求めましたが、たとえば北陸から出てくるところの人たちが、工事後も帰らないという形における過密現象がひとつ問題になる。それが大阪岡辺にプールされる。そこに出てくるところの町方の新しいスラムという問題は政治の問題として十分考えなければならない問題だと思いますが、それらについて、どのような対策を講じられようとしているのか、明らかにしていただきたいと思います。

 

○政府委員(植木光教君) 川治三十五年の内国勧業博が行われた結果、釜ケ崎にスラム街ができたかどうかは、私、つまびらかにいたしませんけれども、この万国博事業によりましてそういう事態が起こることは絶対に避けなければならないと思います。したがいまして、政府としましては、雇用促進事業団によりまして第二種移住者用の住宅、プレハブでございますが、これを建設いたしまして、工事終了後は全部撤去することにいたしております。また、建設業者が建てております飯場ももちろんございます。これにつきましては、地域的にも分散をしております。したがいまして、第二の釜ケ崎になるような心配はないと思いますが、関係省庁ともよく連絡協議いたしまして、ただいまのお話のような事態が絶対に起こらないように努力をしたいと存じます。

 

○和田静夫君 これももう資料でお願いしたいのですが、万国博の予算執行の状態、後ほど私に届けていただけませんか。それとのかね合いで、工事請負の状態ですね、この二つは資料でお願いをいたします。

 次に、入場料です。入場料がきまりましたね。きまったのに私はたいへん不満であるのですが、たとえば、いろいろの経過、三回くらいあったようですけれども、おとな六百円、青年四百五十円、子供百円、こういうような内定の線がどうもくずれて、結果的には、おとな八百円、青年六百円、子供四百円、こういうような形にいま大体あれされているようですが、私は、万国博で政府が過去何べんか答弁されている中で、たとえば、りっぱなものだ、一回行ったって済まないのだ、六回くらい行かなければならないのだというようなこととかね合わせて、いわゆる平均家族がここに行った場合に、たいへんなものだと思うのですね。一回行くだけでたいがい八千円から一万円かかる、こういう状態のものが一体――もちろん交通費や食事代も含めてですが、市比が求めているところの万国博なんだろうか。やはり大多数のものに対する万国博ではなくて、特権階級を対象とするところの万国博にどうも入場料の点で落ち込んでいっているような気がします。まあ経過はありましたが、その経過の中で最も安い条件で内定されておったものから、どうして上げざるを得なくなったのか、それはまかなうためだというようなことになるのでしょうが、それなら、一体万国博をいわゆる大衆のものとして成功させるために、もっともっと政府が補助金を出すとかいう措置が考えられなかったのだろうかということを一つと、それから、これは最後にいたしますけれども、どうしてもやはり心配になるのは、あと地の利用であります。あと地がいやしくも一部の企業の利益に供せられることのないように配慮してもらうのは当然なんですが、最近どうも耳に入ってくるのを整理してみますと、たとえば阪急電鉄か――固有名詞をあげていいかどうかわかりませんが、阪急電鉄が、万国博のきまる数年前から土地を買い集めていた。そして意外に早く手放したことから、いろいろなうわさが取りざたされています。これは調査してみなければわかりませんが、数年前に坪八百円程度で手に入れた土地が、いま二万七千円で簡単に手放された。この阪急の場合、その見返りとして娯楽ゾーンの特殊な調査が依頼されたといわれております。あるいは、あと地の利用も何かまかされる公算が大きいのではないかというようなうわさもあるわけであります。私はこれによって黒い霧がかからないようにこの機会に警告を発しておきたいと、こう思うのです。少なくとも大衆負担によってつくられた万博の会場でありますから、これは国民に還元をされなければいけません。出展者を中心としたあと地処理が行なわれる、そうしてそれがまた大きな利潤を呼ぶというような形のことがないように、私は次のことを提案をしてみたいと思うのです。たとえばいまの協会のスタッフとは別に、知識人や労働者や住民、そういう民主的なあと地利用のための処理機陶をつくる、そういう形のお考えがあるかないか。この二つのことを御答弁願いたいと思います。

 

○政府委員(植木光教君) 入場料の問題につきましては、参事官からお答えいたしますが、あと地の利用計画でございますけれども、これは政府としましては、万博を長く記念をして、かつ、の社会経済の発展に役立てるという見地から検討を進めております。たとえば会場は約三百三十万平方メートルでございますが、その中心部の百二十九万平方メートルにつきましては、公園として都市計画が決定されましたことは御承知だと存じます。残余の分につきましては、できるだけ早期に決定すべく検討中でございます。

 また、お話しのございました阪急の問題につきましては、全然私どもはそういうことを聞いておりません。調査をいたします。