55-参-決算委員会-10号 昭和42年05月23日

 

昭和四十二年五月二十三日(火曜日)

   午前十時五十三分開会

  

  本日の会議に付した案件

○昭和三十九年度一般会計歳入歳出決算、昭和三十九年度特別会計歳入歳出決算、昭和三十九年度国税収納金整理資金受払計算書、昭和三十九年度政府関係機関決算書(第五十一回国会内閣提出)

○昭和三十九年度国有財産増減及び現在額総計算書(第五十一回国会内閣提出)

○昭和三十九年度国有財産無償貸付状況総計算書(第五十一回国会内閣提出)

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○大竹平八郎君 一言安定局長にお尋ねしたいのですがね。これは私自身が、三十数年前になると思うのですが、当時やりました労使協調会、いまの中央労働委員会があるところにあった労使協調会、この委託を受けまして、当時私は労働問題とか無産党の問題に専門的な立場であったものだから、そこで特に委託されてまとめた本があるのですがね。というのは、釜ケ崎山谷の浮浪者といっては悪いが、当時は昭和の初めで非常に不況でもあったという状態で非常に多かったのですね、失業者が。そこで、あの実態調査ということで私は嘱託を受けて、簡易宿泊所から、特に山谷、三河島、こういうところを中心にしての私は労働問題を調べてまとめたものがあるのですよ、いまはちょっとさがしたらないのですが。そこで、そういう体験から伺いたいんだが、これは事務当局の問題というよりも、大きく一つの労働政策という立場にもなると思うのです。また、それだけでなく、あるいは労働省の問題でなく、あるいは厚生省の福祉関係というような問題にもなると思うのですが、最近のこういう好況の波に乗って人手不足だというようなときに、相変わらず私どもが昭和の初めに調査したときと、人数はどうか知らぬけれども、山谷はじめ、それから上野、これは多少はだ合いが違いますが、相当な人間がいるのですね。これらに対してどうにもこうにもならぬものはむろんありますよ。アル中もあるし、それから麻薬中毒者もあるし、それから全く一切世を捨てたというような立場で、働き得る力を持っても動かぬという者もあるけれども、しかし、これは指導いかんによっては相当あそこの人的資源というものを、いまの人手不足の中に相当活用できる面もあると私は思うのですよ。

 そこで伺いたいことは、そういう面に対して、安定局としてどういう方針を今日までとってきておるか。

 それから現状において山谷とか、それから釜ケ崎等には昔から私設の労働紹介所というのがあるのですが、これなんかに対してはどういう措置をとっておるのか、こういう問題を伺いたいのですがね。

 

○政府委員(有馬元治君) 大竹先生御指摘のように、山谷と釜ケ崎愛隣地区といいますか、この地区に対するわれわれの行政の手の差し伸べ方につきましては、数年前に御承知のような騒動がございまして、それ以来、やや積極的に手を差し伸べて今日にきておるわけでございますが、これではいかにも不十分であるということで昨年来検討いたしまして、先ほどから申し上げました雇用基本計画におきましても、この地区の労働者に対する積極的な政策をとれという基本方針が打ち立てられまして、これに基づきまして、私どもは、これから具体的な政策を展開していきたい。で、昔、先生が御調査になった時代よりも、人口等もふえておると思いますが、私ども、いま推定をいたしておりまする、いわゆる日雇い労働者層の数といたしましては、愛隣地区が約一万五千人、山谷地区が一万二千九百人、人口はそれぞれ愛隣地区が三万三千二百十二人、山谷が二万二千二百九十人、こういうふうに把握いたしております。これらのいわゆる日雇い労働者の職業紹介の状態でございますが、現状は遺憾ながら手配師等が相当横行いたしまして、いわゆる青空市場の状態を現出しておるわけでございます。愛隣地区につきましては、約五千人がそういった手配師等の手を通じて、職安法上から見ますと法違反あるいは非常にぐあいの悪いような状態を現出しながら、これが放置されておる。あとの半分は細々ながら安定所あるいは公益法人としての西成労働福祉センター、こういった手を通じて就労配置がなされておるわけでございますが、あとの半分について、これを放置するわけにいかぬじゃないか、特に大阪地区は、万博を控えてこの問題を真剣に考えなければいかぬということから、今年度の予算におきましては、釜ケ崎地区にマンモス安定所を設置して五千人ぐらいの紹介、就労配置は可能であるという施設をつくろう、同時に、福祉センターを併置しよう、こういう計画でもって、予算規模としましては四億二千七百六十九万という、きわめて巨額の金をつぎ込みまして釜ケ崎の対策に乗り出したわけでございます。もちろん地元におきましては、大阪府が中心になりまして地元で土地を提供する、こういう予定になっておりますので、あの地区に約三千坪の土地を求めるということは、これは至難のわざでございまするが、これをあえて府市共同で土地を提供するという前提になっております。したがって、土地代がどれぐらいになるか、いろいろ計算のしかたがございますが、十億近い予算規模でもって愛隣地区の対策に本格的に乗り出す、こういうふうな施策を講じてまいりたいと思っておる次第でございます。

 

○大竹平八郎君 いま一言お尋ねしますが、いま手配師の問題がありましたが、これは昔から警察当局とか、労働当局で密接な連絡をもっていろいろやられておるのですがね、なかなかこの手配師の問題等は解決しないのだが、そうかといってこれをほっておくわけにはいきません。しかし、何かあれをとっているんでしょう、労働省としてはどうなんですか、相変わらずそのまま放任しておるのですか。

 

○政府委員(有馬元治君) 手配師の問題は非常にむずかしいのでございますが、港湾の関係、建設業の関係、あるいは輸送業の関係、いろいろと手配師もそれぞれのグループに分かれておるようでございます。港湾につきましては、一昨年の港湾労働法の成立によりまして約八百人ほど港湾専門の手配師がおったわけでございますが、これを漸次登録制に切りかえたために、手配師を排除していくということで、現在どの程度まで減っておりますか、大阪地区の愛隣地区のこの対策によって、相当部分が手配師としての生業から締め出されるということになろうと思います。ただ問題は、建設産業あるいは輸送業における手配師の活躍といいますか、これはやはり先ほど申しましたマンモス安定所を設置して、そこでわれわれの手で就労配置について責任を持つ体制をとらなければ、単なる取り締まりだけで手配師を排除してしまおうとしてもそこには無理があるのじゃないか、こういうことで、まずは先ほど申しました施設を整備して体制を確立するということを先決問題にして考えておるわけでございます。