55-参-予算委員会第四分科会-1号 昭和42年05月22日
昭和四十二年五月二十二日(月曜日)
午前十時二十九分開会
本日の会議に付した案件
○主査及び副主査の互選
○昭和四十二年度一般会計予算(内閣提出、衆議
院送付)
○昭和四十二年度特別会計予算(内閣提出、衆議
院送付)
○昭和四十二年度政府関係機関予算(内閣提出、
衆議院送付)
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〔年長者井川伊平君主査席に着く〕
○主査(多田省吾君) これより昭和四十二年度総予算中、労働省所管を議題といたします。
まず、政府から説明を求めます。早川労働大臣。
○国務大臣(早川崇君) 昭和四十二年度一般会計及び特別会計の予算中、労働省所管分につきまして、その概要を御説明申し上げます。
労働省所管の一般会計の歳出予算額は、一千五十一億六千八百四十五万四千円でありまして、これを前年度当初予算額一千十五億五千百六十八万円に比較いたしますと、三十六億一千六百七十七万四千円の増加となっております。
次に、そのおもな内容について概略を御説明いたします。その一は、積極的雇用対策の推進に必要な経費であります。今後のわが国の労働力需給は、新規学卒労働力の減少を中心に労働力の不足基調が一そう強まることが予想されますが、他面人口構成の高齢化や技術革新の進展等により中高年齢槽の職業転換問題など、労働力需給について種々の不均衡や摩擦現象の発生が予想されるのであります。このような情勢に対処し、このたび雇用対策基本計画を策定し、政府全体が雇用問題に取り組む体制を確立し、この計画に沿って、労働者の有する能力を有効に発揮することができるようにするという観点から、労働市場センターの機能の整備、求人、求職者に対する雇用情報の迅速な提供、中高年齢者の雇用の促進と職業転換対策の充実、移転就職者用宿舎の大量建設、雇用促進融資の拡大等の措置を講ずることといたしております。
次に、当面の問題に対処する雇用政策といたしましては、まず、炭鉱労働者に対しましては、炭鉱離職者が独立して事業を開始する場合に、自営支度金を支給すること、及び金融機関から借り入れる資金の債務を保証する制度を新設することのほか、就職促進手当の最高額の引き上げ、移住資金の拡充など従来の援護措置を充実するとともに、炭鉱離職者緊急就労対策事業等を引き続き実施することといたしております。また、港湾労働者に対しましは、港湾労働法に基づく諸施策を実施するほか、雇用調整手当の支給額の改善、港湾労働者福祉センター、簡易宿泊所の建設、雇用促進融資の活用、職業紹介体制の充実強化などの措置を講ずることとしております。以上、これらに必要な経費として、二百五十六億二千七百四十七万五千円を計上いたしております。なお、炭鉱対策関係予算のうち、行政事務費を除く五十億三千三百五万五千円につきましては、今国会において新設が予定されている石炭対策特別会計に計上することといたしております。また、財政投融資計画中に雇用促進融資として百二十億円を計上いたしております。
その二は、失業対策の推進に必要な経費であります。失業対策事業に就労する者に対しては、雇用奨励制度を中心として、一般雇用への復帰を引き続き促進するとともに、失業対策事業につきましては、就労者賃金の引き上げ、超過負担の軽減等積極的な改善を行なうこととし、これらに必要な経費及び失業保険国庫負担金に必要な経費として七百五十九億三千五百八十一万六千円を計上いたしております。
その三は、技能労働力の質的向上対策の推進に必要な経費であります。最近における技能労働力の不足の激化にかんがみ、積極的に技能労働者の養成をはかるため、事業内職業訓練につきましては、補助対象となる訓練人員の拡大、補助単価の改善、訓練施設に対する融資の拡充等、その助成を強化するとともに、公共職業訓練につきましては、総合職業訓練所、一般職業訓練所、身体障害者職業訓練所の増設を行なうほか、就職困難な中高年齢失業者等に対する職業訓練などを実施することとし、さらに、技能水準を一そう向上させるため、技能検定職種の拡大、技能競技大会に対する積極的な指導援助、技能者表彰制度の新設、技能オリンピック開催準備のための技能センターの拡充整備等を行なうこととしております。以上これらに必要な経費として百三億八千九百六十八万八千円を計上いたしております。
その四は、労働災害防止対策及び労働条件の近代化の推進に必要な経費であります。労働災害の防止につきましては、人命導車の基本的観点から、労働災害に関する諸施策を強力に展開することとし、安全衛生局の新設、第一線監督指導機関の強化等の行政体制の整備、第三次産業災害防止五カ年計画の策定、監督指導及び検査、検定の充実、労働災害防止団体活動の充実強化等につとめるとともに、労務管理面からする交通災害防止対策をも進め、総合的に労働災害防止対策を推進することといたしております。また、経済、労働事情の変貌の過程における賃金、労働時間に関する同趣の合理的な解決をはかるため、失効ある最低賃金制の推進、賃金制度の改善指導、長時間労働の排除、社内預金管理の指導等の措置を行なうことといたしております。以上これらに必要な経費として十三億五千二百二万円を計上いたしております。
その五は、労働保険の拡充整備に必要な経費であります。昭和四十二年度から労災保険、失業保険を五人未満事業所に対しても全面適用することとし、今国会に関係法案を提出いたしております。また、この際、事務組合による未適用事業主の加入の促進、労災保険の適用範囲の拡大を行なう等、全面適用の実施に万全を期することといたしております。なお、失業保険につきましては、低所得層に対する給付内容の改善、沖繩帰郷者等に対する失業保険相当納付の実施等により、失業保険制度の健全な運営をはかることとしております。以上、これらに必要な経費として五十九億一千三百七十四万六千円を計上いたしております。
その六は、労働者の福祉の増進に必要な経費であります。労働者の福祉を一そう増進するため、労働福祉施設に対する雇用促進融資等の拡充、港湾労働者、建設労働者に対する福祉施設の拡充等をはかり、また、中小企業退職金共済制度について、その普及促進につとめるとともに、清酒製造業退職金共済制度を新設し、さらに勤労者持ち家を中心とする勤労者財産形成に関する施策の検討と啓蒙をはかることとし、これらに必要な経費として十六億三千三百七十二万九千円を計上いたしております。
その七は、恵まれない労働者層に対する対策の強化に必要な経費であります。恵まれない労働者層に対して積極的な配慮を行なうこととし、これらの労働者層のうち、身体障害者については、労災リハビリテーション・センターの増設、義肢センターの新設、身体障害者職業訓練所の増設をはかるとともに、身体障害名を雇用する事業所の作業施設、設備に対する融資制度を新設し、その労働市場への復帰を促進することとしております。出かせぎ労働者に対しましては、就労前の職業相談の強化、主要地における出かせぎ相談所の新設、通年雇用促進のための行政指導の強化と融資の拡充、内職相談員の新設等その援護の充実をはかることとしております。家内労働者に対しましては、最低工賃の決定、家内労働手帳制度の普及等の行政措置の推進をはかるとともに、家内労働審議会において総合的家内労働対策の樹立のための検討を進めることとしております。また、愛隣地区に対しましては、公共職業安定所、福祉センター等を設置し、同地区における労働者の福祉と就職対策とを総合的に推進することとしております。以上、これらに必要な経費として十二億九千六百六十万九千円を計上いたしております。
その八は、合理的労使関係の促進に必要な経費であります。労使が相互信頼と協力の精神を基調とし、企業の実態に応じ、平和的、合理的な話し合いを通じて労使問題の解決をはかる慣行を樹立するため、労働教育等の指導啓蒙に意を用いるとともに、労働紛争議の予防とその円満な解決につとめることとし、これらに必要な経費として十億五千五百九十七万八千円を計上いたしております。
その九は、婦人及び年少労働者対策に必要な経費であります。婦人及び年少労働者に対しましては、婦人が有する能力を有効に発揮するための条件の整備、家事サービス職業訓練の実施、内職相談施設の拡充等、婦人の職業対策の充実をはかるとともに、勤労青少年ホーム及び働く婦人の家の増設、年少労働者職場適応対策の推進など、婦人及び年少労働者の福祉対策を強化するほか、出かせぎ労働者留守家族対策の推進、農村婦人の過労対策をはかるための調査の実施など、農村婦人に対する指導援助、婦人の地位向上対策を進めることとし、これらに必要な経費として三億九千六百八十一万二千円を計上いたしております。
その十は、中小企業労働対策の推進に必要な経費であります。最近における中小企業の深刻な労働力不足等の事態にかんがみ、事業内職業訓練の実施、及びその施設の設置等に対する助成を拡大し、技能労働者の養成確保とその技能水準の向上をはかるとともに、中小企業集団に対して助成を強化し、労働力の確保、労働条件の改善、労使関係の安定、労働福祉の向上等に関する行政指導を統一的、一元的に実施することとしております。また、各種福祉施設の増設、福祉施設に対する融資の拡大、中小企業退職金共済制度の普及、効果的な最低賃金制の推進、小規模事業場に対する労災保険及び失業保険の全面適用等、福祉対策の充実をはかるなど、中小企業労働対策を総合的に推進することとしております。以上、これらに必要な経費として二百七十八億一千九百八十四万三千円を計上いたしております。以上のほか、国際労働行政の充実、その他一般行政事務費等に必要な経費が計上してあります。
次に、労働者災害補償保険特別会計について御説明いたします。この会計の歳入及び歳出予算額は、ともに一千三百十五億六千六百七十三万六千円でありまして、歳入のうち、保険料収入は八百五十一億六千八百五十八万一千円で、また、一般会計よりの受け入れは十五億円であります。また、歳出のうち、保険給付に必要な経費として六百八十七億五千二十三万一千円、労災病院等の施設の整備拡充のための労働福祉事業団出資に必要な経費として二十九億三千八百六十八万円を計上いたしております。
最後に、失業保険特別会計について御説明いたします。この会計の歳入及び歳出予算額は、ともに一千九百五十億三千七百三万八千円でありまして、歳入のうち、保険料収入は一千四百三十六億七千七百万円であり、失業保険国庫負担金受け入れば三百九十億六千九百万円であります。また、歳出のうち、保険給付に必要な経費として一千五百四十三億六千八百万円、総合職業訓練所の整備拡充、移転就職者用宿舎の建設等のため、雇用促進事業団に対する出資に必要な経費として百四十八億五十九万円を計上いたしております。
以上、昭和四十二年度労働省所管一般会計及び特別会計の予算につきまして、概略御説明申し上げたのであります。何とぞ本予算の成立につきまして、格段の御協力をお願い申し上げる次第であります。