41-衆-法務委員会-8号 昭和37年12月07日

 

昭和三十七年十二月七日(金曜日)

    午前十一時九分開議

 

本日の会議に付した案件

 法務行政に関する件

     ――――◇―――――

 

○赤松委員 兵庫県に在職されておりましたならばよくおわかりだと思うのでありますけれども、関西へ参りますと、暴力団の巣くつは尼崎と姫路であるということが一般に言われておるわけでありますが、この点については、一つ勇気を持って暴力団に対する徹底的な検挙をやっていただきたい。例の釜ケ崎事件が起きまして、そうしてこの委員会から調査団を派遣したわけであります。私が現地調査をやりまして得ました確信は、御案内のように、一口に釜ケ崎と申しますけれども、あそこのベッドはおそらく東京の高級ホテルよりはるかに高いわけです。それからいろんな社会の落後者と言いますか、ルンペン、プロレタリアと言いますか、そういう人たちがあそこに多く住んでおります。しかし、これを一定の施策を施して更生させれば絶対にできる。そうして全住民構成の二割を暴力団が占めておる。この二割の暴力団を徹底的に検挙して、残る八割は非常に善良な市民でありますから、この善良な市民に対して更生の方法を講ずれば、私は一挙に更生できるという自信を得ておるわけであります。ところが、その二割の暴力団というものは、なお今日公然と釜ケ崎に巣食っているわけです。私ども驚いたことには、調査団が署長を先頭にずっと行きますと、変な黒い帽子をかぶって、細いズボンをはいて、何かあんちゃん気取りのやつが道にずっとたっているわけです。われわれの姿を見るとぱっと逃げるのです。逃げ込む家を見ますと、何々組という組の事務所なんです。事務所の中をのぞいてみますと、何々組のちょうちんがずっと並んでおる。それと同時に、鉄かぶと、木刀、そういったものが公然と事務所に陳列してあるわけですね。これは、いざけんかというときには、それぞれ鉄かぶとをかぶり、ちょうちんを持ち、木刀を持って飛び出す。そういうように白昼公然とけんかの態勢ができ上がっておるわけです。今の法律でこれを取り締まるということはなかなか困難であると思うのでありますけれども、しかし、すでに相手に対して暴力を加える武器を公然とそこに並べてあるのでありますから、やはりこういう点については、その撤去を求めるとかすることは私は可能であると思うのであります。要するに、あんちゃんの背景をなすものは何であるかというと、この鉄かぶとであり、木刀であり、あいくちであり、拳銃である、こういうことになるわけであります。従いまして、こういう点についても一つ格段の注意をしていただきたい、こう思います。

 それと同時に、私は思うのですが、最近映画あるいはテレビなどを見ましても、映倫の存在は、私はエロチシズムを取り締まるということだけでなしに、むしろあれなんかは、いわば頽廃的な傾向で、これはある程度思想的な教育その他によっても是正できる。しかしながら、そうでなしに、今殺し屋といったようなものがどんどん、これは輸入映画だけではありません、日活その他でこういうものがどんどんつくられている。映画の影響というものは非常に大きいものです。しかし、これは今野放しになっているというのが現状なんです。この間も新聞でやかましく言われておりましたが、例のほとんど本物の拳銃と違わないような玩具のピストルが出ている。これなども私は、業者がつくってもうけたいという気持はよくわかるのですけれども、これが社会的にどんなに悪用されておるかということは、私が申し上げるまでもなくよく御存じだと思うのであります。こういう一連の暴力を助長するような傾向を克服するために、私は、警察庁として一定の方針を立てて、これに対して断固とした取り締まりの方針を打ち立てて実行していくことが必要じゃないかと思うのですが、こういう点についてはいかがでございましょうか。

 

○野田説明員 暴力を是認する、あるいは暴力を容認するというような社会風潮が存在することは治安上非常に重視すべき問題でございまして、やはり法を意識的に無視し、軽視し、あるいは暴力を是認するという風潮に対しましては、あらゆる機会に適切な方法を発見してこれを是正していかなければならないというふうに考えております。先ほどちょっとお話がありましたいわゆる暴力団、ぐれん隊等の持っているいわば凶器になるようなものにつきましては、これは銃砲刀剣につきましては、銃砲刀剣の所持禁止の法令によりまして取り締まっていくように努めております。現に御承知のように、尼崎等でたしか三十五年の三月初めと思いますが、組同士の乱闘事件がありまして、それを契機に尼崎等におきましても暴力追放の市民運動も非常に強くなったわけでございまして、自来暴力団等の公然たる活動につきましては相当是正はされてきておると思うのです。兵庫県の暴力の取り締まり等も、三十四年に約二千件、三十五年に三千五百件、三十六年には約五千件というふうに、非常に暴力関係の事案の取り締まりは強化されております。その間に凶器の不法所持とか、あるいはいわゆる集団的な暴力のための集合は、いわゆる凶器準備集合罪あるいは銃砲刀剣不法所持という形で乱闘直前に押えているという例が毎年約十七、八件あるわけです。そういう形で、暴力団の情報というものがかなり前に入りますと、乱闘一歩前という段階でこれを凶器準備集合罪なりあるいは銃砲刀剣不法所持なり、そういう形で押えることができる。ですから、いろいろな情報なり動きに応じて、できる限り迅速にそれらの者を取り締まっていく。同時に、ある程度暴力関係の事案の内偵が進みますれば、押収捜索等によって合法的に入り得る機会にそれらのものを押収していくというようなことにも努めております。特に今お話のありましたように、暴力団等の暴力を助長し、暴力を是認するような動向につきましては、今後ともあらゆる機会を通じて十分な取り締まりを実行させていくというふうに考えております。