102-参-社会労働委員会-25号 昭和60年06月06日
昭和六十年六月六日(木曜日)
午前十時十分開会
本日の会議に付した案件
○地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、労働基準監督署並びに公共職業安定所及びその出張所の設置等に関し承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内関提出、衆議院送付)
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○下村泰君 私が申し上げたのは、要するに、派遣元が解約できる、それはもうやったっていいでしょう。派遣元が解約したときに、派遣元がもし横に大きな輪っかをつくって手をつないでいれば、どこそこの会社はこれこれこういうふうに派遣労働者を扱う、したがってあそこには出しちゃいけません、というふうに派遣元事業団体が手を握れるんだ。そんなことをしている派遣元ありますか。さっきから話を聞いていれば入札制度なんていうでしょう、あなた。そんなことをしていたら、ほかのがすぐその中へわっと割って入るでしょう。バスで並んでいるときの割り込みと同じですよ。そういう会社がいっぱいあるんでしょう。ウの目タカの目でねらっているわけでしょう、自分のところの利益を得るために。
例えばこれを芸能界に置きかえてみましょう、芸能界に。芸能界に置きかえた場合に、週刊誌であるとかマスコミ関係がある特定のタレントを目指していろんなことをやりますわ。そのときに、音楽事業者協会というのがあるんですよ、その音楽事業者協会が横にすぐ連絡をとって、あの週刊誌はあかん、あのテレビ局はあかん、こうやれるんですよ。芸能界なんて弱い立場ですよ、そんなところは。それでもそうやって、自分のところの抱えている商品ですよ。商品は大事にせにゃいかぬ。派遣元という会社だって、自分のところで抱えている労働者は商品なんです。その商品が出先においてこっぱのように扱われた場合に、それを出している出し元の方がお互いに手を握って、ああいうところには出さぬというだけの強い力があるならばこの二十八条は生きてきますよ。何ら裏づけがないじゃないですか、こんなもの。何ら裏づけのないことを、こんなものをやったって何にもならぬですよ、これ。それでもまだ答えられますか。
○国務大臣(山口敏夫君) ですから、先ほどの下村先生の、派遣労働における六原則的な認識というのは、私は、言いかえてみれば、芸能界的な一つの競争社会における、大スターかあるいはスターダストか、こういう天国と地獄の中における、競争社会における一つの規定の中になりますと、いろいろそういう御指摘の部分もある。
しかし、私は、派遣労働の場合は、これはやはり労働側のニーズもある、また、使用者側のニーズもある。こういう中で、やはり先生が指摘した六原則ほど極端な形でこれが運営されている、こういうことならば、この産業そのものも伸びないわけでございますし、同時に、先ほど来申し上げているように、新しい産業、業種でございますから、芸能界ですら――すらというと大変問題がございますけれども、そういう横の連絡がようやっとあの激しい競争社会の中においても、やっぱりお互いのタレントの人格とかあるいは事業の存続という立場において一つのルールがつくられてきている、こういうことだと思うんですね。
だから私は、派遣労働の分野におきましても、先ほど来安武先生からも御指摘があったような、不当、不法な低賃金で契約をする、こういう形態というものは、おっつけ業界の自然淘汰といいますか、近代化の中においてこれが十分改善されていく。私は派遣法の法案自体がそういう派遣労働者、あるいは派遣元、あるいは派遣先等における大いなる一つの改善へのてことして機能する、こういう確信の上に立ってこの審議をお願いし、成立方をお願いしているわけでございます。
再三自信がないんじゃないかという御指摘もありますけれども、これは新しい業種ゆえに、確信を持ってこうだと、こういうことを申し上げる方がむしろ問題に対する不誠実だ、こういうことで、私は一歩一歩こうした問題への改善努力を進めていくという姿勢の中で御答弁申し上げているということをぜひ御理解賜りたいと思うわけでございます。
○下村泰君 あのね大臣、三年、三年と言うけれども、こういう関係の仕事をしている人は、三十五歳でスクラップと言われているでしょう。おもしろい歌聞かせましょう。ここに出ている。「一つ 人貸して、もうけていながら低賃金…三つ見ると聞くとは大違いの花形職場…九つ こき使われて三十五歳でスクラップ…」と書いてある。こういう数え歌があるんだそうですよ、こういうところで働いている方々の。三年先なんていったらどうなるんですか、これは。三年先じゃぼろぼろになりますよ。
もう施行して、悪しきところがあるならばすぐにどんどん改正するぐらいの意気込みがないと、今大臣がおっしゃったでしょう、新しい法律なんだから。しかも、これ労働者を守るための法律なんでしょう。ところが、今までのところ、ずっと案文見ると、何かにつけて派遣元、何かにつけて派遣元で、派遣先には何にも規制がないように感じるんですよ。そうすると、何かこの法案は派遣先保護法案みたいなものなんだ。ここのところがどうも納得がいかない。
それから、もう一つ伺わしてください。一般派遣事業だから許可制になりますな。そうすると、暴力団が、幾らでも名前を変えてやることができる。例えば興行というのは、広域暴力団は取り締まりを食って全部はみ出されておるんです。しかし、ダミーの会社をつくれば幾らでも、現実にやっている。またやられている。そういう状況なんですよ。してみると、これでも同じことが言えるのではないか。また、建設業界の話はこの間安定局長にもしましたけれども、東京の山谷、大阪のあいりん、横浜の寿、ここじゃ皆やっておるわけだ、だから取り締まりができない。してみればこれは資金源になりゃせぬかという心配があるんですが、どうですか。
○政府委員(加藤孝君) これは基本的にそういう方々がこういう業務ができないような欠格条項ということで規定をいたしておるわけでございまして、また名義貸しについても禁止の規定があるわけでございます。実態といたしまして、また先生が御指摘になるようないろんな脱法的な形でそういう方々が実際には運用されるというようなことであれば、やはり業務の適正な運用実施ができる体制にない、あるいはまたできていないという面での例えば許可の取り消しであるとか、事業の停止命令であるとか、そういう仕組みもあるわけでございます。もし、そういうような関係での問題があるところは、これまた警察庁とも十分連携をとりまして、そういうことのないようなやはり対応をしていかなきゃならぬとこれは思います。
○下村泰君 向こうも巧妙ですからね、よろしゅうございますか。大阪のある暴力団は、頭がいいけれども学校へ行かれない子供を自分のところで引き取って、東大の法学部を卒業さして、法学関係の勉強を全部さして、しかも国家試験を受けさして弁護士のライセンスを取らせてこれを自分のところの顧問弁護士に育て上げようとした事実があったのですよ。よろしゅうございますか。これを、このやくざの親分が黙っていればいいものを、新聞に発表したために警察から弾圧食った。組の名前は言いません、私もやられるといけないから。怖いから。そのくらい彼らも考えている。非常に彼らの仕事の先々も変わってきています。今、彼ら多角経営になってきているんだから。そういうふうなことを考えると、今安定局長が言った、そんな簡単には取り締まりができない方法を向こうは考えていますよ。十分気をつけてください。
さて大臣、先ほども申しましたが、この法案は、何だか知らぬけれども派遣先保護法案みたいな感じかするんです、どうお尋ねしても。私にはそれしか受け取れないんですけれども、最後に労働大臣の確たる御意見をひとつ伺っておしまいにしたいと思います。
○国務大臣(山口敏夫君) 先ほど来から御答弁申し上げておりますように、派遣労働また派遣事業、こういう新しい業種というものが生まれ、あるいは社会的にも定着をしている、そういう中で、どうしても野放し的な部分が、労働者のいろいろ御指摘いただいているような問題を生み出している業種もある。そういう中で、我々といたしましては、この派遣法の成立によって派遣労働者の保護と派遣元あるいは派遣先における雇用者としての使用者責任というものをより明確にひとつ確立をする、こういう決意とお願いを込めましてこの法案を提出をし、審議をいただいておるわけでございます。
そういう意味におきましてぜひ御理解を賜りたいということと同時に、これからの高齢化時代における非常に労働人口の増加というものが、六百万、七百万規模でこれが見込まれておる。国鉄の問題を見てもおわかりのように、いかにこれからの労働市場の問題解決へ取り組まなければならないか、こういうことも含めまして、ぜひ派遣事業、派遣労働における環境整備に努めたい、こういうことでございますので、一層の御理解のほどを賜りたいと思うわけでございます。