96-参-決算委員会-8号 昭和57年04月26日

 

昭和五十七年四月二十六日(月曜日)

   午前十時二分開会

    ―――――――――――――

 

  

  本日の会議に付した案件

○昭和五十三年度一般会計歳入歳出決算、昭和五

 十三年度特別会計歳入歳出決算、昭和五十三年

 度国税収納金整理資金受払計算書、昭和五十三

 年度政府関係機関決算書(第九十一回国会内閣

 提出)(継続案件)

○昭和五十三年度国有財産増減及び現在額総計算

 書(第九十一回国会内閣提出)(継続案件)

○昭和五十三年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (第九十一回国会内閣提出)(継続案件)

    ―――――――――――――

 

○中山千夏君 きょうは、大阪あいりん区、それから東京山谷地区などにおける労働状況についてお伺いしょうと思っておりましたら、ちょうどけさの新聞に、山谷で「群衆、交番に投石 二百五十人騒ぐ」というような記事が出ておりました。その中に、「東京都山谷対策室によると、四月は例年、求人が少なくなる時期だが、最近はとくに住宅建設などが減ったため求人が激減、都城東福祉センターには「食べ物がない」「寝る所がない」といった生活相談に来る人が急増している。こうしたこともこの日の騒動の背景にあるとみられている。」というふうに書かれてありました。なかなか就業状態がここのところ景気等の関係でよくないようなんですが、どうなっていますでしょうか。どのようにつかんでおられるでしょうか。

 

○政府委員(関英夫君) 東京山谷地区におきます最近の就労の実態でございますが、こういった地区への労働者が最近ふえてきております。それに対しまして求人は前年と比べると少し減というような状況にございます。山谷地区の上野の公共職業安定所の玉姫労働出張所、これが日雇い労働者の職業紹介を扱っておりますが、最近五十七年一−三月の数字では、求人二百七十二、就労が二百七十二ということでございますが、昨年の一−三月に比べますと、一・八%減という数字になっております。ただ、昨日夜の騒動につきまして、私どももけさすぐ問い合わせてみたわけですが、就労のことからの騒動ではなくて、別の問題で騒動が起きており、けさの紹介状況も平穏に行われているというふうに聞いております。

 

○中山千夏君 この新聞でもそれが原因だというふうには決して書いてなくて、背景にそういう労働問題があるんだろうというふうに書いてあるわけなんですけれども、一体にやはり就業状態というのは悪いようなんですが、大阪のあいりん地区の方になりますけれども、こちらの職業安定所の様子を見ますと、何か本気にそういう状態を解決する気があるのだろうかという気がしてしまうんですね。それは職業安定所でほとんど職業紹介を行っていない。もちろんほかに組織がありまして、労働福祉センターという財団法人が職業紹介の業務を行っているということなんですけれども、大変私不思議に思うんですけれども、職業安定所が職業紹介の業務をしていないというのは大変不合理ですし、これ法律的に見てもちょっとまずいんじゃないかという気もしますし、どうしてこんなことになっちゃっているんでしょうか。

 

○政府委員(関英夫君) 昭和三十七年に西成の労働福祉センターという財団法人ができまして、そこに無料の職業紹介事業を許可し、そこがこの日雇い労働者の職業紹介に主として当たっていると、こういう状態で現在に来ておるわけでございますが、それ以前から先生御承知のように、大阪のあいりん地区といいますものは、路上で早朝多数の労働者が集まり、そこに手配師のような人が見えまして、労働者を連れていって就労させる。こういう実態が非常に社会的にも問題を起こし、付近の人々にも御迷惑をかけておったわけでございますが、これを公共職業安定所で扱おうといたしましても、必ずしも労働者がお役所に登録をして、そして役所の紹介でということになじみにくいような形態もございまして、いろいろと努力したけれどもうまくいかない。そこで、国と大阪府と地元の大阪市、三者でこの路上における青空市場を何とか解消しようと、こういうことでお金を出し合いまして、あいりん地区の総合福祉センターというものをつくる。そこにもちろん国の安定所も入るけれども、その中にいままで路上で相対して取引していたものを、その中でやってもらう。そして、みんなで協力して構成する財団法人で、職業紹介だけでなく、生活上の相談、あるいは医療上の相談、その他福祉関係の相談、あるいはその総合施設の中には住宅もあるわけでございますが、住宅相談、そういったようなことを総合的にやって、労働者から親しみを持たれた形で、単に職業紹介ということだけでなく、総合的な対策をやった方がいいんではないか、こういうことで、財団法人を設立し、国としてはそれに無料の職業紹介事業を認めて、そして今日の形態になってきたという経緯があると私は承知しているわけでございます。現在安定所はそれでは何をしておるかということになりますが、安定所として一番大きな仕事は、いわゆるあぶれた人々に対する保険金の支給でございますが、同時に事業主に対します指導、あるいは求人開拓といいますか、そういうようなことを安定所は一生懸命やっている。それとまあ全体の職業紹介状況につきまして、指導監督的立場から安定所が中に入ってやっていると、こういうのが現状であろうかと思っているわけでございます。

 

○中山千夏君 大体経過とか、現状については承知しているんですけれども、いまの御説明でもちょっとわからないのは、その労働者に親しまれるやり方をなぜ職業安定所がとることができないんでしょうか。職業安定所がすればいいと思うこと以外のことは、労働センターはやってないわけですね。その相対方式というものにしましても、職業安定所でもやはり労働者の希望も十分入れて、ほかの職業安定所では紹介業務をしていらっしゃると思いますし、その親しみが持たれるような運営を職業安定所がなぜできないんだろうかという疑問がどうしても残りますので、なじみやすいとかにくいとかというだけの問題じゃなくて、ほかに何か理由があるんじゃないでしょうか。ちょっと伺ったところでは、やはり職業安定所が非常にこう経費の節減で、あいりん地区に対応するだけの人手だとか、お金だとかというものがなかなか持ちにくいというようなこともちらっとお伺いしたんですけれども、そういう別の何かわかりやすい理由というのがあるんじゃないんですか。

 

○政府委員(関英夫君) 先生御承知のように、あいりん地区におきましては、早朝のわずかの時間に、一日当たり二千五百人ぐらいの方が就労していく。就労される方があの地区におられる日雇い労働者のすべてではございません。すべての労働者の数になりますと大きな数でございます。そういう人々を相手に、わずかの朝の時間に職業紹介をし、そしてあぶれた方々のうち多くは保険金の支給を受ける、これをできれば公共職業安定所がすべて一貫してやれれば一番いいんでございましょうけれども、安定所としては、限られた人員と予算の中で十分対応できないという面もありますが、同時に労働者の中にも安定所に求職登録すること自体を余り好まないような、非常に自由な生活の中で暮らしていきたいというような御希望もございまして、求職登録、そして職業紹介票を切ってもらって就労していくということに、余りなじまないような方もございまして、三十七年以前に大きな青空市場がございまして、非常に問題ございまして、関係方面とどうやってこれを正常な形に持っていくかということを検討いたしました際に、いろんな事情から、やはりいまのような形がいいんではなかろうかということに落ちついたわけでございまして、現在のような形に落ちついたのが、安定所の人員なり予算面からの制約だけというわけではないというふうに私は承知いたしております。

 

○中山千夏君 結果として非常にうまくいっているということであれば、そうした方法をとったのもよかったのかなということになるのかもしれません、法律的な問題とはまた別にいたしましてね。しかし、労働福祉センターと、それから職業安定所の二本立てになっているこの形の中で、いろいろと厄介な問題が起こっているということも事実でして、ここに釜ケ崎で働きながら組合をつくって労働問題に対処している人の書いたものがあるんですけれども、これをちょっと読みますと、「二百四十件。これは一年間の労働相談の数です。このほとんどが賃金不払いなんです。手配師や人夫出しから労働者に支払わせた金額の合計は三百二十万二千七百六十二円です。」という報告があります。この手配師というのは、さっきおっしゃった釜ケ崎へ来て労働者を募集して、マイクロバスなどで業者へ送るという仕事なんですね。それから人夫出しというのは、飯場、つまり寄宿舎を持ち、そこへ労働者をプールし、その飯場から業者に労働者をあっせんする。業者が直接飯場へ労働者を迎えに来ることもある。こういう仕事を人夫出しと呼んでいるらしいんですけれども。請負業者からは大体九千円から一万円の労賃が出ているのだけれども、労働者の手に入るのは片づけの比較的楽な仕事で六千五百円くらいだというんですね。これは手配師や人夫出しがピンはねをしている。このピンはねというのはもちろん労働基準法にも職業安定法にも違反している許されないことであって、もちろん労働福祉センターや、職業安定所を通して仕事をしていたら、こういうピンはねにかかることなんかがあっちゃいけないと思うんですけれども、現実にはこうして二百四十件もいざこざが起こって、しかも、こうして働いている人たちが自分で組合をつくって、その組合に一年間に二百四十件も相談が持ち込まれる。労働福祉センターや職安でも、こういういわゆる労働相談というのですか、こういう相談を受けているというお話でしたけれども、そこでの業務も、もしかしたら先ほどの話じゃありませんけれども、相談もなじまないか、あるいはその福祉センターや職安に行くよりも、こういう民間のところへ行った方が、実際解決してもらえる率が高いというのか、その辺のところにも問題があると思うんですね。こういう状態であるということは、その労働福祉センターというものと二本立てにしたことによって、かえってあいまいに、つまり働くときの条件をきちんと決めるとか、これも法律で定められていますけれども、実際現地へ行って聞きますと、労働福祉センターを通して仕事に行くときにも、きちんと契約を行って行っているという例はほとんどないわけです。その労働福祉センターに対するこう指導というのが、直接職業安定所などと違って、行き届かないんじゃないんですか。

 

○政府委員(関英夫君) 労働福祉センターに対します指導は、安定所として十分に行っておりますし、また労働福祉センター自体が府や雇用促進事業団や、そういったところの現職の方々が役員を兼ねてやっていらっしゃるわけで、そういうところの指導は十分いたしておりますし、財団法人だから無料の職業紹介というのは無責任でいいんだということじゃございませんで、無料の職業紹介事業を大臣が許可した以上、これは職業安定機関でございます、国の機関と同じでございまして、そういったところの職業紹介に法に反することがあってはならないのは当然でございます。ただ、三十七年以前の青空、路上で行われてた状態から見れば、このあいりん総合福祉センターを建てて、そこの中で財団法人のもとで就労していくという形での秩序は、従前から見れば私は大幅に改善したものだろうというふうに思いますが、そうなったからあらゆる違反がすべてないかといえば、現実に先生のお話のように、賃金不払いなども後を絶っていないといいますか、前から見ればずいぶん改善されたと思いますが、いまだにそういう状態があるということも事実だろうと思います。そういう意味では賃金不払い等については基準監督機関と十分連携しておりますし、基準監督機関も申告のあった件はもちろん取り上げて解決に従事しているわけでございますが、なかなかこの辺のところは、大阪だけでなく、東京におきましても、あるいは横浜におきましても、こういった建設関係の就労の実態というものの改善ということには、非常にむずかしい面がございまして、一挙にすべてを改善するというわけにいきませんが、これからも事業の指導を強めて、そういったことのないように努力をしていかなければならない点だろうと思っております。

 

○中山千夏君 労働福祉センターの役員には、いまおっしゃったような方々のほかに、いわゆる建設業界の方も入っておられますね。労働者の代表が入るというのはむずかしいのかもしれませんけれど、労働者の代表は入っていないわけです。

 ちょっと考えますと、こういうことも聞くんですよ。つまり、求人側ですね、人を求める側が、職業安定所からだとどういう人が来るかわからない。割り当てられてしまうと、どういう人が来るか、その来る人について、労働者についてとやかく文句を言うことはできないけれども、労働福祉センターの相対方式というのは、片一方で労働者にとって自分が働く場所の条件などを選べるという利点がある一方で、労働者を求める側から言っても、働きそうな労働者、よさそうな労働者というものを選ぶことができる、そういう方式になっている。つまり、求人側の都合がかなりあるという話を聞くんですけれども、その辺はどうなんでしょう。

 

○政府委員(関英夫君) 安定所の紹介に当たりまして、日雇い労働者について輪番的な紹介をやっている例がございますが、これはごく一部の、どうしてもそういうことでできるだけ多くの日雇い労働者に均等に機会を与えなければならないような事情にある場合だけでございまして、職業紹介の本筋はやはり求人者が欲するような求職者を、そして求職者の欲するような求人をあっせんすること、これが本筋でございまして、安定所が行います場合には、特別の場合を除いて、十分職業相談をいたしまして、両者にとって最も適切な紹介をするのが本筋なわけです。ただ、一時に大量の日雇い紹介をしなければならない場合で、しかも求職者に比較いたしまして求人数が非常に少ない場合には、できるだけ機会均等ということで輪番的に職業紹介を行っている場合がございます。その場合には、通常一般的には、何といいますか、単純労働といいますか、だれがやってもできるような求人、こういうものについて輪番的に紹介をする場合があると、こういうことでございます。

 

○中山千夏君 それからもう一つ、これは何より大問題だと思うんですけれども、労働福祉センターにも求人される方々が登録をなすって、そしてその登録した会社については、それが違法なピンはね業者などではないかということをきちんと調べているということは、現場で福祉センターの方にも伺いました。ところが、実例を見ますと、労働福祉センターで紹介を受けて行った先が、いわゆる人夫出しをやっているところであったり、手配師だったりという例があるわけなんですね。

 それから、報道にはもっとすごいことが書いてありまして、センターに登録している業者の約六〇%は実態として違法なピンはね業者だと、こういうふうに報道しているところもあるくらいなんですね。事実上この六〇%というのが正しいかどうか、もちろん私にもわかりません。しかし、そういう報道がなされるからには、新聞記者というのもいいかげんなことを書くわけじゃなくて、いろいろな例を見、実態を調査したりした上で、こういうことをきちんと責任を持って、新聞社として責任を持って書いているのでしょうから、何らかのことがあるだろう。労働者自体の話を聞いてみましても、そういう例があり、新聞にもこういうことが報道されているということは、福祉センターや、それから職安の方々が、いえ、絶対そんなことはございませんというふうにおっしゃっても、なかなかそうですがって信じられないんですよね。だから、もう少し、もしかしたら書面の上などで調査なすったときにはきちんとした会社であって、その時点では皆さんの方に手抜かりはないのかもしれないけれども、実態としてそういう会社がまじっているかもしれないわけなんです。だから、そんなことは絶対ございませんというお答えばっかりじゃなくて、少し調査をしてごらんになったらいかがかと、私ずいぶんそういうふうに思っているんですけれども、どうです。

 

○政府委員(石井甲二君) 賃金不払い、あるいは中間搾取あるいは強制労働というような問題についての問題でございますが、労働基準法は先生御承知のように第五条で強制労働禁止、第六条、中間搾取を禁止する、あるいは二十三条、二十四条で賃金不払いということがありますが、現在、定期監督あるいは各所轄の監督署において、その面の監督をいたしております。

 また、たとえばあいりん地区におきましては申告による監督を行っておりますが、いままでのところ中間搾取、あるいは強制労働についての事実はございません。

 また、いわゆる賃金不払いについては十二件ございましたが、これは改善をされております。

 しかし、実態的にはいろいろな問題があるという、まあ一応の先生のお話のような実態も、必ずしも明確ではございませんが、できるだけその労働者がそういう事実があれば、その事実に即して監督署に申告をし、監督をするということをお願いをむしろしたいというふうに考えております。

 

○中山千夏君 こういう地域には大変ボランタリーの方がたくさん入られまして、労働問題に当たっていられる方もいらっしゃいますし、それか、ら医療問題に当たっている方もいらっしゃいます。そういう方たちを見ていますと、いろいろと問題の多い地域ですから、命がけなんですね。必死なんです。何か問題があったら、それにとにかく早く、効果的に対処しようということで必死でやっていらっしゃる。それに比べまして、いまの御答弁にけちをつけるわけじゃありませんけれど、現地の職安の方、それから労働福祉センターの方に、こんなことを書かれています、こういう問題がありますというふうに申し上げても、いまの御答弁のように、何となく落ち着いていられて、そんなことはございませんというようなことをおっしゃるばかりなんですね。

 私が申し上げたいのは、そういう何か落ち着き払っていちゃまずいんじゃないかということなんですよ。事実、大変たくさんの死者が出る地域でもあります。そういう問題の場所で、普通の行政以上の覚悟といいますか、意気込みで当たらなければならない場所について、落ち着き払っておられるのが私は大変不満でもあるし、不思議でもあるわけなんです。

 ですから、この件はもう一度お願いしますけれども、労働福祉センターでとにかく職業の紹介を受けろと言われて、みんな一応信用して行くわけですね。その信用して行った先が人夫出しだったり、手配師だったりするということは、これは大変なことですから、そういうことがあったら。ぜひ、もっと積極的に調査にも当たっていただきたいし、そういう業者がまじり込まないようにやっていただきたいんです。

 大臣、いかがでしょうか。

 

○国務大臣(初村滝一郎君) いま中山先生からいろいろとお話を聞きまして、なかなか決まったとおりいかない場合もそれはあるかもわからないと私もいま聞いたわけでございます。したがって、労働者のためにもこういう状況が改善されなければならない、かように考えますので、よく調査をして、そういう点があれば必ず改善すると、積極的に取り組んでいきたい、かように考えます。

 

○中山千夏君 ぜひよろしくお願いします。

 調査にしましても、私がこの問題を取り上げようと思っていろいろ資料を集めましたときも、労働省の方からいただく資料などより、ずっと民間のボランタリーの方たちからいただく資料の方が詳しいということがあるんですね。もっともいろいろ問題のある地区ですから、行政に当たっていらっしゃる現場の職員の方は大変困難が多いだろうと思うんです。ですけれども、直接労働者とよく接触するということを心がけて、労働者の意見をよく酌み取るようにしていただきたいんです。いまの現状では、私が見ましたところでは、労働者自身の意見を聞く、意向を酌み取るという機構がほとんど見当たりません。何でも労働者自身が労働福祉センターのようなやり方を望んでいるのだと一方ではおっしゃいますけれども、私などが聞きますと、職業安定所でちゃんと職業の紹介を受けたいと言っている労働者もたくさんいるわけです。ですから、労働者が何を望んでいるのかというあたりもよくつかんでいらっしゃらないんじゃないかという気がいたしますんで、労働者の声をよく吸収するようにしていただきたいという、これもお願いなんですが、いかがでしょうか。

 

○国務大臣(初村滝一郎君) 私は、労働大臣に就任してから、安定所をずっと見て回った、時間の許す限り。このごろ中身をずっと調べますと、専門家が、有能な方が前線に出て陳情を受けていらっしゃる。私は、やはり陳情に来た方々の、何を目的に陳情にやってきておるのか、それをつかむことが大事である。要するに陳情者の身の上になって相談に応じなさいよ、こういうふうに訓示したわけでございますが一そういう精神でやっていけば、やはり不平も相当解消されるでありましょう。したがって、働く方々が本当にこれを望んでおるんだと。それに対する答えを前向きにすべきであるということで、今後、できるだけそういう指導に持っていきたいと思います。

 

○中山千夏君 ありがとうございました。

 

○中山千夏君 私は、一の会を代表して、昭和五十三年度決算外二件を否認し、内閣に対する警告案に賛成する立場から、討論を行います。

 まず第一に指摘したいのは、予算のむだ遣いと公費天国の実情です。中央競馬会に関する私の質疑などでも明らかにされたとおり、特殊法人、財団法人、また関係民間企業への天下りによる政、官、財の構造的な腐敗は、ロッキード事件以後もますます拡大されていると言えます。

 残念ながら、そこに政府の反省の色を見ることはできません。

 また、審議の中でも指摘したとおり、多額の広報予算を、政府の意見広告に利用するなど、そもそも公費についての政府の基本的な考えに誤りがあると思わざるを得ません。予算はすべて国民の血税であることを忘れず、公正に使用されることを私たちは切に望みます。

 そして第二に、むだ遣いが目立つ一方、不合理な財政削減、人員削減のしわ寄せが、非力な人々を圧迫している点が問題です。刑務所における不当経理、被収容者の著しく貧しい衣食、大阪あいりん地区や東京山谷地区における消極的な労働行政、医療行政などは、その一端でありましょう。軍備によりも、非力な人々の人権を守るために使われることこそが、予算の適正な使い方だと私たちは考えます。

 最後に、会計検査院の権限強化の問題を挙げます。予算の適正な運用を促すために、会計検査院の権限を強化せよとの多くの委員の長年にわたる指摘は、まことに的を射たものでしょう。にもかかわらず、政府が院法改正に積極的に取り組む姿勢を見せないまま、次の予算運用へと移行していくことに対して、私たちは憤りを感じます。

 以上、政府の誠意ある積極的な改革を希望して、私の討論を終ります。