96-衆-予算委員会-3号 昭和57年02月02日
昭和五十七年二月二日(火曜日)
午前十時開議
本日の会議に付した案件
昭和五十七年度一般会計予算
昭和五十七年度特別会計予算
昭和五十七年度政府関係機関予算
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○塚本委員 お忙しい方だから、私は無理もないと思いますが、私、ここで昨年校内暴力の問題も取り上げました。家庭の問題があります。日教組の問題があります。教科書の問題があります。そういう形から学校の管理制度の問題がある。特に、東京都教育委員会が日教組と結んでおる協定の中において、本人の希望と承諾がなければ転勤をさせることができないという人事権の問題が一番の問題だと指摘をしました。幸い、鈴木知事は、本年四月一日からは破棄するという報告を私のところへしてくれました。この鈴木知事の英断によって、もう東京都内におけるところの空気は変わってきているのですよ。全国にも私はこういう体制で――問題は、組合が悪いと言うけれども、管理者の姿勢なんです。魚は頭から腐ると私は三時間前にも言いましたけれども、ここなんです。
私は、本委員会において、一年前、校長先生はなぜ殴られないかという話をしました。校長先生はなぜ殴られないのだ。ほかの先生は生徒にどつかれても、校長先生はほとんど殴られない。見て見ないふりをするからだ。問題があったときには担任の先生に任せて自分は逃げるからだ。最後に、厳然として管理責任を負った先生は注意をして徹底的にそれを教育をいたします。その三つのうちの一つなんです。だから、校長先生は殴られないのだという話を一年前にここで提言をいたしました。
私は、東京都の中で、大臣、ぜひお願いいたします、見に行ってやってほしい。最もよくなかった環境の中学が最もりっぱになって、校内暴力が絶滅をされた事案を一つここで紹介をさせていただきたいと思います。
校長先生が毅然として行ったときにはこれが改まる。この学校は、いわゆる東京におきましてあの山谷という、まあドヤ街というふうに言われておりますが、そういう中において、もう大変にひどい状態の学校です。蓬莱中学校というんだそうです。もうあの山谷ドヤ街の中で、朝学校へ行くと、まずいわゆるうんちが残っておる。あの労務者たちの立ち小便で悪臭ふんぷんなんです。へどがいっぱいあります。そういう学校の中ですけれども、数年前に先生方がよそから転勤してきて、どうしてこんなひどいんだということで、話し合って、おれたちからひとつ直していこうじゃないかということで、先生方が、私も日教組の一員でございます、しかし組合には何とも言わせません、こう言って自主的に私たちは取り組んでまいりましたと言うんです。そうしてまず一番初め、来た生徒から先生と一緒になって、そのふん便の掃除から始めるんだそうです。毎朝だそうですよ。山谷ドヤ街の労務者たちの立ち小便から、そういうものを全部掃除することから始めるんだというのです。それから便所の掃除からすべてのことについて、もういまは学校はピッカピカだそうですよ。自分でそういうことを体験してきた、非行多発の一番悪いところで。もう四時になると危いからといって帰れ、先生方も余分なことをするよりもと言って、四時になるとみんな帰りなさいと校内放送するんだそうです。そうすると、ああいうところですから、みんな中学生、浅草へふらふら出てくると、ストリップの看板やエログロの看板ばかり。こんなところへふらふら行っていい子が育つはずないじゃありませんか。そのときに先生方が、最後まで残ろう、そうして話し相手になってやろうと言うんです。そうしても残業手当は全然出さない。ぐずぐず言ったときに――それは日教組の諸君がぐずぐず言ったそうです。ところが、管理者がやる気のある方に味方をしてくれたと言うんです。ここが大臣、大事なところです。そういうものと摩擦があるときに、必ず管理者がまじめにやる者の味方をしたら、今日の国鉄だってあんな姿にはならなかったと私は思っておるのであります。ここはそういうふうで、日本で一番悪いとは申し上げませんけれども、いわゆる大阪における釜ケ崎と東京の山谷と言えばおわかりいただけると思います。そういう中においてピッカピカの学校ができ上がった。
私は、過日その学校の中の風景を、よそから余り参観が多くなった、どうしてこんなにりっぱになったんだということから、その姿を私はフィルムで見せていただきました。
彼らは、ただ単に頭じゃないと言うのです。実際に自分で行動させればよく覚えると言うんです。奉仕活動を自分でさせるようにいたしました。そうなると、残っておっても学校の中が楽しくなるのです。先生方はいわゆる残業手当をよこせなんて言わないと言うんですよ。子供のためにいつまでも残ってやろうじゃないかという形に変わってくると、今度は先生どっか日曜に遊びに行こう、こういうことになったから、行く場所がないから千葉県の農家を借りて、休耕田を借りて、そうして田植えまでやってみたと言うんです。こんなに彼らが生き返った姿を見たことがないと言っておりますね。ついにはボランティア活動までやって、障害年だからといって、昨年は身障者に対するいわゆる奉仕活動をやってきましたと言うのです。そうすると彼らは、いままでわがまま言っておったことが済まなかった、身障者の諸君と一緒に生活するときに満足なものがどんなにありがたいか覚えたと言うんですよ。それを全部作文に書かせるから、みんな作文がうまくなったと言うんです。頭じゃないんですから、やったことを書けばいいんですから。もうそうなると夏休みまでみんなが一緒に出かけるようになる。こういうような体験を通じて、いわゆる暴力の一番典型的であったと言われておりますその学校が全然暴力がなくなって、父兄も理解をしてやっていく。それでおって進学率は決して落ちておりません、むしろ向上してきたのだと、その先生方は目を輝かして私どもに言っております。
文部省におきましても、県に一つずつ勤労学習何やらという体験校をつくろうというようなことをおっしゃってみえるけれども、これは県に一つではなくして、やはり田植えというようなもの、芋掘りというようなもの、老人クラブに慰問に行って一緒に遊んであげて、身障者と別れるときには向こうは涙を流して別れを惜しむ、そういう体験を通じて彼らは暴力をなくしたと言うんです。
どうぞ大臣、もう近々のうちに、時間を見て、朝から半日ぐらいで結構ですから、見に行ってやってほしい。そうして、本当に具体的に体験を通じて若者たちが直っていく姿、そのとき最も大切なことは、管理者が毅然として、やる気を持っておる先生の側につくんだということが私は印象的でございます。
この点に対する感想と決意のほどを文部大臣と総理大臣に伺って、時間が参りましたから終わりたいと思います。
○小川国務大臣 校内暴力の問題は、一言にして申しますれば、学校、家庭、社会それぞれのあり方、それと生徒児童自身の性格、素質というようなものが絡んで出てくる問題と心得ておりますが、御指摘がございましたように、学校におきまして、校長を中心として一体となってこれに取り組んでいくという姿勢において欠けた学校があるということにも一半の責任があると理解をいたしております。
校内暴力を絶滅いたしますために、文部省として数々の施策を実行して今日に至っておりますが、お言葉にございました勤労生産学習、植物の栽培等を中心にして正しい勤労観を培う。これについて実践的な研究をいたしますための学校を指定するというようなことも今年度から実行に移す予定になっております。
非常に貴重な御注意、御教導をいただいたと考えておりますので、今後もこの問題につきましては、文部省一丸となって対処いたしていくつもりでございます。
将来、必ず時間を捻出いたしまして、学校の視察も実行する所存でございます。
○鈴木内閣総理大臣 ただいまは塚本さんから、校内暴力の追放、さらに非常に乱れた校風を刷新をした、こういうような具体的な事例につきまして、その上に立つ責任者、指導者が体を張って真剣に立ち上がったことがそういう成果をおさめたというお話を伺いまして、大変感銘をいたしたわけでございます。
私どもも、いまの学校暴力、家庭暴力、子弟の教育ということに大変心を痛めておりますが、今後とも関係当局を督励いたしまして、努力してまいりたい、こう思っております。