96-参-決算委員会-2号 昭和57年01月20日

 

昭和五十七年一月二十日(水曜日)

   午前十時開会

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  本日の会議に付した案件

○昭和五十三年度一般会計歳入歳出決算、昭和五

 十三年度特別会計歳入歳出決算、昭和五十三年

 度国税収納金整理資金受払計算書、昭和五十三

 年度政府関係機関決算書(第九十一回国会内閣

 提出)(継続案件)

○昭和五十三年度国有財産増減及び現在額総計算

 書(第九十一回国会内閣提出)(継続案件)

○昭和五十三年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (第九十一回国会内閣提出)(継続案件)

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○中山千夏君 きょうは釜ケ崎あいりん地区に設置されているテレビカメラの問題と、それから死刑廃止についてお伺いしたいと思うんですけれども、何しろ時間がないものですので、お答えの方もその辺御協力をお願いいたします。

 昨年の八月二十五日に、大阪西成のいわゆる釜ケ崎あいりん地区へ行きました。労働者の方の案内で、あいりんセンターを見学しましたり、それから、釜ケ崎の方たちとお話をしたりしてきたんです。そのときに労働問題とか、それから医療問題とか、もうそのほかとても私なんかの手には余るようなむずかしい問題をたくさん皆さんからぶつけられました。皆さんに聞いたところによりますと、余り政治家とか、それから行政に当たっている方々に意見を言う機会がないんだそうです。それで、本来ならもう少し力のある人にぶつけたい問題を、とりあえず私にぶつけるという形になったんだろうと思います。

 その中でいろいろ問題はあるんですけれども、私自身も不審に思いましたし、それから皆さんにもぜひこれは国会で聞いてほしいと言われた問題を取り上げてみたいと思うんですが、あいりん地区に行きますと、街路とか、公園とかに、テレビカメラが設置されているんです。このテレビカメラについてちょっと御説明をいただきたいんですが。

 

○説明員(佐野国臣君) あいりん地区につきましては、比較的泥酔者の要保護事案といいましょうか、警察的に見ますと保護しなきゃならぬような問題だとか、あるいはけんか、暴行傷害といいましょうか、その種の事案が比較的多いところ、事件としては多くございますので、警察官がパトロールをする。あるいは立って監視をするというふうなことの間隙を、やはりこういった補助的な手段を使った方が効果的であろうという面もございまして現在あいりん地区で十二台ほどそういった防犯カメラを設置しておるという状況でございます。

 

○中山千夏君 それで、このモニターが原則として西成署にあるということですね。設置の時期は昭和四十一年からというふうに聞いております。

 目的の中に救護というのがありますけれども、私が聞いているところでは、いまでも冬をピークに二千人から三千人のいわゆる行き倒れの方々が出ている。それを聞きますと、ちょっと余り救護の役には立っていないんじゃなかろうかという気がしまして、主に防犯目的であろうと思うんですね。これは、テレビカメラで防犯をするというのは、警察にとっては非常に効果の高いという見方、評価があると思うんですけれども、人々にとっては、町へ出ると年じゅう監視されているという形になってしまうわけです。それで、どうしてわれわれだけが町へ出たときに年じゅう監視されていなければならないのかと怒ってるんですね。私も、それはどうしてなんだろうかという気がすごく強くするんですが。

 

○説明員(佐野国臣君) ちょっといま数字を、私十二台と申し上げたんですが、十四が正確のようでございますので訂正さしていただきます。

 それで、むしろその問題につきましては、じゃあ現実にどれだけ機能しているかという具体的な数字でむしろ誤解を解へ方がよろしいかと思いますんで、具体的な数字を申し上げてみたいと思います。

 たとえば五十六年の一年間でございますが、この監視テレビによりまして、警察が有効に対応できたという事件、ないしは事案を申し上げますと、刑法犯の事件につきましては、昨年一年に二十一件取り扱っております。それから、その他といたしまして、これはやはり一番多いのは、保護が五十件ございます。それ以外にも、けんかの仲裁、あるいは中には火災の発見なんというやつも入っておりまして、その他的なやつが七十八件合計しますと九十九件でございますか、一年間にそういう形で防犯カメラが機能しておったという点は、警察的にはどちらかといいますと、相当な効果があるというふうに見ざるを得ないかなと思っております。

 それから、地域の方の反発というふうな御指摘もいまございましたんですが、私どもも、これを設置した場合に、設置されてもまた酔っぱらいや何かにすぐ壊されているようでも困りますし、また、せっかく、パトロールのお巡りさんのかわりに、そういった機能を果しますよということをやっておるならば、それはそれなりに地域の住民の方にも知っておいていただいた方が、当然、安心感あるいは防犯的な効果もあるというふうな観点から、この種のものをやる場合には、地区の自治会、それから商店会とか、それから警察的には防犯協会なんていうものもございますが、やはりそういった団体に、いま言ったこれのカメラがどの程度の効果があるのか、あるいは、その写す範囲としましても、一般的には、何といいましょうか、どなたでもわかる公共の場所の範囲だよというふうなこと、あるいは、それを監視していることによって、効果がこれだけ生じますというふうなこと、そういった、誤解を生んだりすることのないように、あるいは、安心感を持たしてあげるという面での寄与する面、そういったこともありますので、まず原則的には地域の方々には、そういう御説明をやっております。それから、他の府県におきましてもこういった問題は多少あるわけでございますが、やり方といたしましては、私どもの耳に入ってきますのは、同じようなやり方でやっております。それから、むしろそういったものが設置されて、非常に何といいましょうか、確かに安心感を持てますから、もう少し設置数をふやしてくださいというふうな意見ももちろん一方にはございます。そういう状況でございます。

 

○中山千夏君 恐らく先ほども申しましたように、私がお会いしたのは、なかなか行政をしている方々に意見を聞いてもらう機会がないという方方の意見ですから、その辺できっとそちらに入ってくる意見と、私が受けた意見の食い違いが大分あるんだろうと思います。だけど私が信じておりますのは、私が会ったような方々、いわゆる労働者の方々というのが、あいりん地区では大半を占めていると思います。ほかの地区でもこのような形でテレビを設置している町ですとか地区とかというものが何ケ所かございますか。

 

○説明員(佐野国臣君) 現在私の方に手元に入っております数字で申し上げますと、全国的には九十五台いま設置されておるようでございます。地区のブロック別で、やや代表的に申し上げますと、近畿地区が三十二台、それから中部地区が二十七台、東京、警視庁管内が二十一台というのが主要な設置個所でございます。

 

○中山千夏君 公共の場所に、カメラを設置して、監視といいますか、警察が見るということは普通の状態だとお考えですか。それとも何か特別な状態であって、できればそういうことはなくしたいというふうにお考えでしょうか。

 

○説明員(佐野国臣君) やはり場所的には繁華街であるとか、それからいま申しましたように警察的な事象が比較的多いというふうなことで、警察官がきめ細かくパトロール、行って見張りをするとかというふうなことができないようなところを、こういった機会的な補助的な手段でやるということがベターじゃないかというふうには考えております。

 

○中山千夏君 常時どこでもどの町でもついているというものではないわけですね。あいりん地区にしましても、四十一年からつけられて、その前にも事件があったことはあったわけですね。そうすると、これは将来外すということも考えていらっしゃるのか、それとももうずっとつけっ放しだというふうに決めていらっしゃるのか、どちらなんでしょうか。

 

○説明員(佐野国臣君) 設置の目的なり、理由が、先ほども申しましたように、警察の責務を果たす上での個人の生命、身体、財産の保護という、そういった観点からのものでございますので、そういった事犯がほとんどないようなところに特別にお金をかけてそういうものを設置しても意味はございませんし、やはり現場のそういった実態的な必要性なり、効果と申しますか、そういったもの等を常に比較考量しながら考えていきたいと。ただいま申しましたようにあいりん地区の関係につきましては、御指摘のような点があったということを十分われわれも念頭には置いてまいりたいと思いますが、いまの状況でございますと、なおしばらくこういった形を続けさしていただければというふうに考えております。

 

○中山千夏君 私は、基本的に公共の場にカメラを据えて監視するというような形が、どこにせよ、そういう形で監視が行われるということについて反対なんですよね。公共の場にそういう設備をつけるというのは、治安維持の方法としては行き過ぎなんじゃないかというふうに考えています。治安というものを考えますときに、治安はやっぱり政治のよしあしが非常に大きく影響してくると思うんですよね。釜ケ崎なんか見ましても、あらゆるところに行政の無気力というのが私には感じられました。職安なんかはあってなきがごとき状態でして、これなんかは、釜ケ崎で医療活動とか、それから労働者の救済活動なんかに取り組んでいる民間の運動家たちがたくさんいるんですけれども、その人たちの熱心さと比べると、行政の無気力というの、がものすごく目立つんですね。むしろ行政がその地区の生活向上に力を入れることで、ずいぶん治安というのはよくなるというふうに、これはどなたでも考えられると思うんです。ですから、警察もむしろテレビカメラを設置して治安を守るというような方向よりも、その地区に住んでいる人々の基本的な人権と、生活向上に資するという方面にももっともっと力を入れて、治安を確保していただきたいと思うんですが、その点いかがでしょうか。

 

○説明員(佐野国臣君) 警察事象という形でできる前に、やはり何らかの行政的な施策というふうなものが先行した方がいいということは御説ごもっともでございます。したがいまして、私どももいろいろな場面、あるいはいろいろな機関と緊密な連絡をとりまして、いろんな行政的な施策というものを働きかけてはおります。ただいまも申しましたように、こういった具体的に酔っぱらっちゃって、冬寒いときに寝込んでそのまま凍死せぬかというふうな場面、あるいはけんかとかというふうな、こういった緊迫な場面になってまいりますと、やはりそこは警察が正面に出て対応せざるを得ないといいましょうか、あるいはそれが住民の方からやはり期待されているという面もあるんじゃないかという気がいたしますので、先生の御指摘も十分念頭には置いてまいりますが、いまのあいりん地区の関係のカメラについては、なおしばらく活用を回らせていただければと、かように考えておる次第でございます。

 

○中山千夏君 時間がありませんので、またこの問題については次の機会にお話申し上げたいと思います。

 次に、死刑制度についてちょっと伺います。大臣、私は死刑は廃止すべきだというふうに考えております。これは一つには人命を奪うことを禁止している法律が、片方で合法的に人命を奪ってしまうということは不合理だというふうにも思いますし、それから犯罪の抑止力にはならないと、これたくさんの学者たちもそう言っていますことですし、私もそう考えます。それから刑罰は何か被害者のかたき討ちの肩がわりであってはならないのではないかというふうに考えています。それから死刑そのもの、刑罰そのものが非常に人々の心を痛めるというような、そういうことからいろいろな反対意見を持っている人たちと運動をしている、そういう立場なんですけれども、法相の死刑に対する御意見を伺っておきたいと思うのです。ただし、奥野前法相のような紋切り型ではなくお答えいただきたいし、それからもう一つ、一昨年の十月に行われました総理府の世論調査によったお答えは避けていただきたいです。と申しますのは、これ非常に意図的な調査で、分析であるというふうに、これは私だけの意見じゃありませんで、当時の新聞を見ましても、「調査結果を“勝手読み”」というような、これは毎日新聞ですか、それから「誘導尋問の色濃いが…」という、これは日本経済新聞なんかにもちょっと批判のあったことがあります。坂田さんの御自身の死刑制度に関するお考えを、率直なところをお聞かせいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。