91-衆-運輸委員会-13号 昭和55年04月23日
昭和五十五年四月二十三日(水曜日)
午前十時三十分開議
本日の会議に付した案件
参考人出頭要求に関する件
道路運送車両法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)
交通事業における公共割引の国庫負担に関する法律案(久保三郎君外六名提出、衆法第三二号)
陸運に関する件
海運に関する件
航空に関する件
日本国有鉄道の経営に関する件
港湾に関する件
海上保安に関する件
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○永井(浩)政府委員 タンククリーニングの現状についてのお尋ねだと思いますが、わが国のタンカーのクリーニング作業は一部乗組員がみずから行うケースもございますが、その大部分は専業者に請負させるという形をとっていると考えております。
それで、これらの業者につきましては、専業者といたしましては、廃油処理事業協会というのがございまして、所属する会社が二十社弱あるわけでございまして、一応その限りにおきまして私どもも把握してあるわけでございますが、実際の作業が具体的にどのようにされているかということについては、いまのところ詳細には承知しておりません。
○田畑委員 率直に申し上げまして、実際の作業状況というのが最終的にどうなっておるかということを運輸省が、大まかでも結構でございますから、把握しておらないということはまことに困るわけであります。海上投棄が行われているのではないかという疑いは、もはや今日運輸委員会のわれわれこうした仕事に携わっておる者のみならず、広く全国民が疑いを持っておるのですね。それはもう数年前、あるいは十年前から、廃油ボール等が行楽地といいますか、海水浴地あるいは観光地等の沿岸に流れつきまして、いつもこれは問題になっておるわけであります。したがって、いま今日のこうした事態の中において、いわゆる最終のクリーニングとその廃油の処理について、どういう一般的な業務形態になっておるかということについて、運輸省は把握をしておらないということでは通らないと私は思うのであります。もし、真実十分な把握がないとするならば、これは直ちに調査をいたしまして、その結果を私どもの方に明らかにしていただく必要があると私は思うわけでございますが、よろしゅうございますか。
○永井(浩)政府委員 今回の事件にかんがみまして、私どももその実態の詳細を知る必要があると考えておりまして、近く実態調査を実施することを検討いたしております。
○田畑委員 さて、そういうお答えでございまするが、昨日も、実際に船に乗られましたルポライターでありまする加藤邦彦さん、この人のお話をお聞きいたしますと、いわゆる釜ケ崎といいますか、そういう人夫が集められる地域が幾つかあるそうでございますが、そういうところにおいては、過去十年やってきた、あるいは過去七年やってきたという多年のこうしたことに対する経験を持った日雇い労働者の方がおられまして、そうしてそれを聞き込みました結果、ぜひわしも乗せてくれと、こういうふうに頼みまして、実は乗ったのだ、こういうことを言っておられるわけでございます。そういたしますと、これは私の想定でございまするが、こうした最末端のタンククリーニング並びに廃油処理業者に渡すまでの間は、そうした日雇い労働者を中心にして行われておるのではないか、そういうことがずっと慣習として一般化しておるというふうに考えざるを得ないわけでございます。
そういたしますと、これは海を守る、海の清潔さを維持するという基本路線からいきますと、そういうような労働状態で果たしていいのかどうか。また、仮にそういうふうになるならば、そこにしかるべき監督者が必要なのではないかというふうな考えを当然持たざるを得ないのであります。その点に関しまして、政府側はどう考えておるかということをお答えいただきたいと思います。
○永井(浩)政府委員 タンククリーニングを専門業者に請け負わせる、あるいはその専門業者が日雇いの労働者を雇用してこの作業を行うということそれ自体は、別に、ほかのたとえば労働法令等に違反しない限り、問題はないと考えております。
ただ、一般的に申し上げまして、複雑な下請関係とかあるいは専門的知識のない日雇い労働者の方がこういった作業に従事するということについては、とかく責任体制が不明確になる、こういう点はあろうか、このように考えております。したがいまして、こういった体制についてどうしたらいいかということについて、現在私どももそういった実態調査とあわせまして、今後の対策を検討したい、このように考えておるわけでございます。
○田畑委員 私、深くは存じませんが、港湾の荷役関係の法律等によりましては、下請のまた下請、そしてまた、さらにその下請というような、二重、三重の下請行為というものを排除いたしまして、一次下請程度以上は及ぼしてはならないという考え方が出されているようにお伺いをしておりますが、その点は間違いございませんか。関係の方いらしたら、ちょっと御答弁いただきたい。
○鮫島政府委員 お答え申し上げます。
港湾運送事業につきましては、先生のおっしゃるような趣旨の規定が入っております。
○田畑委員 港湾運送事業というのは、大体において岸壁あるいはその付近におけるところの荷役事業でございますね。ところが、今回生じておりますところの大型タンカーのタンククリーニングというのは、洋上においてこういうクリーニングを行うということがどうも一般化しておるように見受けられるわけでございますが、その点、間違いございませんか。
○鮫島政府委員 お答えいたします。
一般に港湾外の海上で行われているのが通例だと承知しております。
○田畑委員 港湾内で行われておるところの港湾の荷役事業について、二次、三次、四次というような下請を禁じておるにかかわらず、外洋上において行われておるこうしたタンククリーニングにつきましては、これは無制限に下請ができる。こういうやり方をやっておりますと、今回の徳山丸事件のような問題が生じる可能性は非常に高いというふうにだれしも思わざるを得ないと思うのでございます。したがって、いまなるほど総務審議官の言われましたとおり、三次、四次にわたりましょうとも、そのこと自体は何ら労働法とかその他に違反するものではないということだけで問題を事足れりとするかどうかというところに、私は海運行政の非常に重要な分かれ目があると考えざるを得ないのでございます。単に責任体制を追及するということも大事でございますけれども、今回見られましたような四次、五次にわたるところのこうした下請を行うにつきましては、そこにきちんとした歯どめとかあるいは節度とかいうものをやっていかなければならないと思うのでございますが、この点について、再度御答弁いただきたいと思います。
○永井(浩)政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、非常に下請関係が複雑になりますと、当然のことながら責任体制が不明確になりがちである、こういう点がございます。そういったところもあって、今回の事件の一つの原因になっておるのではないか、このように考えておりますので、その辺をどうするかということについて現在検討中でございます。
○田畑委員 ただいま申し上げましたことは、私の意見として強く申し上げておきたいと思います。
それから、これに関連いたしまして、いわゆる二重、三重の下請関係が生じておるわけでございますが、きょうは厚生省の環境衛生局の方からもお見えをいただいておるわけでございまして、ひとつ参考までにお伺いをしたいと思うのでございます。
陸上におけるこうした廃油等の廃棄物につきましては、こうした下請関係がたくさんある場合におきまして、事業者並びに下請関係の規制というのは今日どういう現状になっておるかということをお伺いしたいと思います。
○杉戸説明員 お答えいたします。
下請関係の規制は、廃棄物処理法におきまして、まず業の許可、その業の許可と申しますのは、収集、運搬、処分、それぞれの業の許可、それからあと都道府県等の監督、指導、そのような指導などをいたしております。
○田畑委員 事業者の責任はどうなっておりますか、厚生省。あなたにお聞きするのはちょっとどうかと思うのでありますが、私がいま問題にしておりますのは海上問題でございますから、この場合におきますと、徳山丸に例をとりますと船主、船の持ち主、これは事業者です。この事業者の責任はどうなっておりますか。
○杉戸説明員 お答えいたします。
廃棄物処理法で、海面に廃油等不法投棄いたしました場合、処理法上これは罰則がございまして、それは一つは、事業者が収集、運搬業の、これは許可業者でございますが、許可業者に収集、運搬、処分まで委託いたしました場合は、この事業者に対しましては委託基準違反、これは六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金でございますが、そういうような罰則もございまして、規制をいたしております。それから処理業者につきましては、これは不法投棄いたした場合は同様の罰則が科せられることになっております。それから別のケースでございますが、事業者が収集、運搬、処分の業の許可業者に収集、運搬、処分を委託する場合でございますが、この場合も、これは事業者は違反はございませんが、その処理業者に対しては、不法投棄となりますので、同様の罰則がかかることになっております。それからもう一つのケースといたしまして、事業者が無許可の処理業者に収集、運搬、処分を委託した場合でございますが、その場合は、これは事業者は委託基準違反で同様の罰則がございますし、また処理業者は不法投棄で同様の罰則が科せられます。また無許可営業ということで、これは一年以下の懲役または五十万円以下の罰金、そのような罰則が設けてございまして、いろいろ規制がなされておるのでございます。