90-参-科学技術振興対策特別委…-2号 昭和54年12月07日

 

昭和五十四年十二月七日(金曜日)

   午前十時三分開会

  

   参考人

       日本原子力研究

       所理事長     村田  浩君

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  本日の会議に付した案件

○参考人の出席要求に関する件

○科学技術振興対策樹立に関する調査

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○吉田正雄君 時間がありませんから、私がこれから言うのは資料として出してください、次の委員会でやりますから。

 非常に深刻なんですよ、これは。いま定期検査にもうきょうから入ったとおっしゃっていますからね。じゃ、どういう作業でどのような許容量を設定しているのか、作業内容ごとにそれが明らかになるように資料を提出していただきたい。多分定めていないのじゃないかと思うのですよね。定めてあったら、どういう管理区域のどういう作業内容では許容量はどれまでにしてあるかという、本来これがなきゃ意味がないのですよ。ないから、渡り鳥労働者と言われる人たちが一番危険なところへ入っていくのだ。許容量をはるかに超えているのですよ、私たちの調査では。死んでいる人が出ていることも事実なんだ。電力会社は家族のところへ金を出して口封じをやっている、そういう事実も私たちのところに来ているのですよね。そういうことで、作業時間も含めてどういう管理区域内、たとえば原子炉のこういうところでは作業時間がどれだけ、許容量はどれだけ、それから一日当たり、一週間当たり、いま三ヵ月で三レムであるとか五レムであるというふうないろいろな言い方がありますけれども、はっきりしていかないと困るのですね。そういうことで、そこのところをきちんとして出していただきたいと思うのです。

 これだけはわかるでしょう。一日当たり幾らなんですか。炉内の作業は、一日当たりは許容量はどれだけに設定されてありますか。

 

○政府委員(児玉勝臣君) 法令上は、そういう一日当たりの許容量というのは別に決めておりません。それで、各電力会社の現場におきまして一応の目安として考えておりますのが百ミリレムでございます。

 

○吉田正雄君 最近、定期検査や修理の際における人員がとても賄い切れない。この信懲性は、私も直接本人に会っているわけじゃありませんからわかりませんけれども、最近は労働者の確保に非常に苦労して、刑務所から出てきた人をどんどん連れていくという話を聞いているのですよ。いいですか。その辺の山谷だとか釜ヶ崎ではありませんけれども、お兄さん、こういういい仕事がありますよ、一日わずか何分で何万円ですよというふうな言い方で、そういう人までいま動員しているという話を聞いているのです。それは事実であることは間違いないです。そういうことで、いま一日当たり百ミリレムとおっしゃっていましたね。百ミリレムでおさまっていないですね。おさまっておりませんよ。基準がないわけじゃないと思うのですが、あるのですかないんですか。時間がありませんから、まずそれから聞かしてください。いま、作業場所ごとの一時間当たりとか一日当たりあるいは一週間当たりの許容量がどういうふうになっているかというそういう綿密な基準というものが設けられてあるのかないのか。あるとすれば、それを改悪をする動きというものがあるのじゃないかということも聞いておるのです。その点どうですか。

 

○政府委員(児玉勝臣君) 法定上ないということは先ほど申し上げましたが、実際の作業に当たりましては、その作業の内容とそれから作業者のいわゆる被曝との関係の計画、これは管理区域内におきます作業では必ず実施しなければならない問題でございます。そこでの被曝計画をつくりまして、それで何人ぐらいの従事者によって行うかということが考えられるわけでございますが、その場合に、一人当たりの許容量というのが幾らかというのをそのときどきで決めているわけじゃございませんで、先ほど申し上げましたように、各発電所におきまして一日当たり百ミリレムというのを目安として考えておるわけでございます。

 

○吉田正雄君 時間がありませんから、それじゃ、先ほど言った資料ね、もう少し言いますと、いままでの被曝実態をいま言った管理区域ごとにどういうふうになってきたのか、その基準とそれから被曝実態、これを明確にしていただきたいということと、その際における電力会社やメーカーの職員と、それからいわゆる下請、孫請とずっとあるわけですよ。俗に言う原発ジプシーと言われるような本当の下請労働者。組合もない、管理もほとんどされていない。皆さんのあの中央の登録センターなんというものは、あんなものほとんど機能していないですよね。管理がきわめてずさんだ。そういうことで、わかるだけの資料は全部出していただきたいと思うのです。私の方へは、実は氏名を明らかにすると自分の仕事がこれからできなくなるということで、名前は明かさないでくれということでいろいろ来ているわけですよ。いいですか。その一部は堀江さんがみずから自分でもって労働者になって本も書かれておりますから、実態というのはある程度あの本に出ていますよ。出ていますけれども、本当に、今日原子炉の定期検査や修理をやる際の下請労働者の実態というのは実に悲惨なんですね。まさにみずからの命と引きかえにあの作業をやっているのですよ。その実態を安全委員会や通産省や電力会社の幹部、メーカーの幹部は本当に知っているか。本当に安全だと言うのなら、今度、修理の際に、点検の際に、私も入りますから、安全委員長、大臣も一緒に私とあの中に入ってみませんか。入る勇気のある人は私はいないと思いますよ。一番安全だと言う人間が一番そういうときになったら入らぬと思う。非常にいま深刻なんです。

 そういうことで、私がいま言った資料は、これは早急に出していただきたい。私は、次回の委員会でこれをもう少し掘り下げてやりますから。私が聞いているところでは、きょうからの定期検査、この被曝線量の基準については大幅に緩められて行われているのじゃないか、そういうことが言われているのですよね。逆に言うと、いままでの基準では労働者の数が足りない。やれないんですよ、はっきり言って。やれないから、どんどん人間をふやさなきゃならない。ふやすことができないから許容線量というものを大幅に引き上げていく。いま百ミリレムとおっしゃったのですけれども、もう場合によっては十倍の一レムということまで考えられているのじゃないかといううわさすら飛んでいるのですよ。皆さんの手元にあるのじゃないですか、そういう計画というのが。計画がありますかないですか、それだけ最後に聞かせてください。

 

○政府委員(児玉勝臣君) 一日の被曝線量をふやすというような計画は、聞いたこともわれわれも考えたこともございません。

 

○吉田正雄君 本当ですか。事実が出たらどうしますか。

 

○政府委員(児玉勝臣君) 私はまだ聞いたことも、また私自身も考えたことはございません。

 

○秦豊君 まず、質問順位の繰り上げにお力添えを賜りまして、ありがとうございました。

 長田新長官は、いまから私が申し上げることをとりわけ的確にお受けとめを願いたい、後ほどあなたにぜひ伺いたいこともありますから。

 いま吉田さんがお触れになったのは、まさに下請労働者にとりわけ深刻な状態であらわれている被曝問題です。私は、三十分しかありませんから、この問題に集中します。答弁はだらだらしないような配慮を特にお願いしておきたいと思います。

 まず、新長官、私のこの問題についてのとらえ方なんですが、近代科学の最先端と言われている原発の作業現場が、実は前近代的な労働条件、観点を変えれば人権問題とさえ言われるようなずさんな管理体制で放置されている。先ほどから言われていますように、必ずしも皆さんのチェック体制は厳密ではない、放置されている、こういう私は認識を持って御質問をしたいと思うんです。その大きな踏み台としては、たとえばフリーライターの堀江さんの書かれた本がありますね。まさに吉田氏が言った「原発ジプシー」というそのものずばりのタイトルの本なんだが、恐らく皆さんも一通りは披見されたのではないかと思いますし、また、資源エネルギー庁から新たに出された被曝実態、こういうデータを踏まえて質問します。

 そこで、いま二万五千から三万の下請労働者が原発の第一線労働現場を支えています。ところが、資源エネルギー庁のデータによると、七八年度の働く人々の被曝は一万三千二百一人・レム、こうなっていますから、七七年に比べると実に六二%もふえているわけですね。このことをまず伺っておきたいんだけれども、つまり、稼働を始めたないし稼働している原子炉が二十一基とふえたんだ、稼働している原子炉がふえたんだから当然被曝の数量がトータルで多くなったんだと、こういうふうに皆さんは説明をされるかもしれないけれども、私はそうではない。むしろ原子炉の老朽化、無理な稼働、無理な運転、そして放射能管理体制の欠陥の反映だと私は考えている。まずその点について伺っておきたい。

 

○政府委員(児玉勝臣君) 五十三年度の被曝が非常にふえましたのは、主に先ほどお話が出ましたSCC対策によりましてBWR型の発電所の工事というのが多く行われたということでございます。

 

○秦豊君 この場合、問題は幾つかあると思うんですが、児玉さんも正直に確かにB型沸騰水型に問題が多いということは老朽化している、この問題を踏まえていると思うんですね。

 それからもう一つは、社員と下請の比率を比べてみますと、社員の被曝は全体の六%弱なんですね。残りは当然九四%だ、それが全部下請。タコ部屋ですよ、これはあえて言えば。

 そこで、私は、具体的に堀江さんの著作から、抽象論をやってもしようがないから具体的に一つ一つ聞いていきますが、たとえばホール・ボデー・カウンター、WBC、これはもちろん言うまでもなくガンマ線しかはかれませんわな。ところが、実際にどういう状態ではかられているかというと、内部被曝を本来測定するものなんだけれども、測定値が高そうだなと思ったら作業員にシャワーをとらせるんですよ。シャワーをとりなさい、丹念にシャワーをとりなさい、そうしておいて値を下げて、数値を下げたなと思ったらカウンターにかかる、美浜原発の場合はこういうことをしょっちゅうやっている、一例を挙げれば。こういう記述があるんだが、そういう実態の把握はされていますか、あなた方は。

 

○政府委員(児玉勝臣君) 具体的に私たち把握しておりませんけれども、いま先生おっしゃいましたように、汚染されておる個所がわかりますと、それをシャワーで洗ってその除染した効果を碓認するということは通常行われていると思います。