85-参-社会労働委員会-2号 昭和53年10月19日

 

昭和五十三年十月十九日(木曜日)

   午前十時五分開会

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  本日の会議に付した案件

○特定不況地域離職者臨時措置法案(内閣提出、衆議院送付)

 

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○委員長(対馬孝且君) 特定不況地域離職者臨時措置法案を議題といたします。

 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。藤井労働大臣。

 

○国務大臣(藤井勝志君) ただいま議題となりました特定不況地域離職者臨時措置法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 わが国におきましては、景気は緩やかながら回復の兆しが見られますが、雇用失業情勢は依然として厳しい状況が続いております。

 しかも、いわゆる構造不況業種の問題が特定の地域に集中的な影響を及ぼしており、その地域全体が疲弊するとともに、一時に多数の離職者が発生すること等により深刻な雇用問題を招くに至っております。

 このような深刻な雇用問題を招いている特定不況地域については、企業の経営の安定を図るための措置等と相まって、特定不況地域離職者等の職業及び生活の安定を図るための特別の措置を講ずることが当面の緊急課題となっております。

 政府といたしましては、このような背景のもとに、特定不況地域において失業の予防、離職者の再就職の促進等のための特別の措置を講ずること等について関係審議会に諮り、その答申に基づいて、この法律案を作成し、提案した次第であります。

 次に、その内容の概要を御説明申し上げます。

 第一に、特定不況地域とは、特定不況地域中小企業対策臨時措置法案に基づき政令で指定された市町村の区域及びその近隣の地域のうち、この法律で定める特別の措置を講ずる必要がある地域として、労働大臣が指定する地域をいうこと等必要な定義をすることとしております。

 第二に、失業の予防、再就職の促進等に関する国、地方公共団体及び事業主等の責務を明らかにすることとしております。

 第三に、国及び雇用促進事業団は、特定不況地域離職者の再就職を容易にするため、必要な職業訓練を迅速かつ効果的に実施するよう特別の措置を講ずることとし、国は、都道府県が同様の措置を講ずることを奨励するために必要な措置を講ずるよう努めることとしております。

 第四に、公共職業安定所は、特定不況地域離職者について、求人の開拓、職業指導の実施及び就職のあっせんを行う等必要な措置を講ずることとしております。

 第五に、四十歳以上の特定不況地域離職者であって、雇用保険または船員保険の受給資格者であるもののうち、一定の要件に該当するものについては、九十日の延長給付を支給することができることとしております。

 第六に、特定不況地域については、指定業種以外の事業主に対しても雇用安定資金制度を全面的に適用すること、特定不況地域離職者の雇い入れを促進するための特別の措置を講ずること等雇用安定資金制度等の特例を設けることとしております。

 第七に、特定不況地域において国、地方公共団体等が計画実施する公共事業に関する特定不況地域離職者の吸収率制度を設けることとしております。

 第八に、雇用保険の延長給付に要する費用等に充てるため、保険料率を労使それぞれ千分の〇・五ずつ引き上げることとしております。

 第九に、中央職業安定審議会への諮問に関する規定その他所要の規定を整備することとしております。

 なお、この法律案は、公布の日から施行し、昭和五十八年六月三十日までに廃止することとしておりますが、雇用保険の保険料率の引き上げに関する部分は、昭和五十四年四月一日から施行することとしております。

 以上、特定不況地域離職者臨時措置法案の提案理由及びその内容の概要につきまして、御説明申し上げました。何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。

 

○片山甚市君 ただいま提案をされました法案について、若干の質疑を行いたいと思います。

 まず、景気は緩やかながら回復の兆しが見られると言われておりますが、雇用失業情勢は依然として厳しい状況が続いております。すでに百万を超える完全失業者は、昭和五十年度以降連続四年、ことに今年においてさらに増加の傾向を示しており、八月には完全失業者の数が百二十一万、失業率二・三四%となっております。政府は、現在策定中と言われる新経済計画、昭和五十四年度から六十年度の検討において、完全失業者など雇用指標は、当初政府見通しよりいずれも悪化する見通しに修正せざるを得ないことを明らかにしたと言われておりますが、これは企画庁の統計でありますが、政府は本年度七%成長目標を掲げ、その達成により雇用改善をうたってきましたけれども、年度半ばにしてこの約束を放棄することは重大であろうと思います。

 まず、この雇用失業情勢の悪化の原因及び今後の見通し並びにその対策について、大臣からの御所見を伺いたいと思います。

 

○下村泰君 十時から開始されましたこの委員会で、私も若干の質問の用意をしてあったんではございますが、各委員の先生方が微に入り細をうがちまして御質問なさいまして、私の聞くのが何にもなくなりました。ただ、それぞれの先生方はそれぞれの職能を代表していらっしゃいます。それぞれの職能を通じて御質問なさいました。私も芸能界という職能がかつてございました。その芸能界を通じてこういう労働問題で質問をしようと思ったんですが、われわれの社会に住んでいる人間は最初から離職者でございます。いまさらこの離職者を救済しろといってもこれは無理な話でございます。ただ、労働時間ということになりますると、労働大臣が恐らく御存じないような不当な労働時間を強いられております。しかし、その不当な労働時間を強いられることの中に、やがては未来に来る栄光のために、みなそれぞれがまんをしてやってきておるわけで、それをまた事細かに分析してここで質問をいたしまして大臣が変な答えを出していただきますと、われわれの社会が変なふうな形になりかねませんので、これはやめさしていただきます。われわれの社会をよく知っているのは、労働省ではなくて、また文部省の文化庁でもなくて、一番よく知っているのは国税庁だけなんです。ですから、これは質問を労働大臣にしてもむだでございまするが、たった一つだけ聞かせてください。

 こういうふうに世の中が不景気になりますると、これはもちろんわれわれの方にも一番響いてきます。現在の社会機構の中で世の中が好・不景気であるかということを一番はだに感じ、一番身近に寒けを催すのは、われわれ芸能界の方なんです。ですから、世の中がどうなっているか一目瞭然すぐにわかります。ただ、こうしたりっぱな法案ができておりますけれども、大変文章がむずかしくて、一体こういう方たちはこういう中に含まれるのだろうかなあというような心配をするんですが、東京台東区における山谷の方々、あるいは横浜中区の寿地区の皆さん、あるいは大阪のかつての釜ケ崎――あいりん地区こういうところに居住していらっしゃる方々で労働をされていらっしゃる方々、こういう方々も、こういう法案の中に十分含まれ、それなりの対策があるんですか、まず職業安定局長に聞かせていただきます。

 

○政府委員(細野正君) いま御指摘の、具体的に挙げられました地域が今回のこの法案の対象になるかどうかということになりますと、この大きな要件が、構造不況業種の影響を受けて、その割合の非常に高い地域で、しかも雇用失業情勢の悪いと、こういう結論になりますので、たとえば市町村単位なり何なりとってみましても、なかなか該当の可能性というのは乏しいんじゃなかろうかというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、この法案の対象としてはちょっと考えにくいんでございますが、しかし、一般的なといいますか、これはあくまでもいま申しましたような事態に対する臨時応急措置でございますが、いま御指摘の地域は前々からいろんな問題がありまして、そこのたとえば就労経路の正常化の問題、つまり手配師等の排除の問題とか、あるいは特別の安定所を設けて、その安定所においていま申しましたような手配師を排除しながらの秩序のある職業紹介が行われるようにするとか、あるいはそれだけでは、職業紹介をやるだけでは、そういう方方の実際の就労の実態に合いませんので、たとえば安定所の近辺に診療所とかそれから相談所とか、いろいろなものを設けて、総合的な、まあいわば生活面におけるまでの相談ができるような実態にするとか、あるいは福利厚生施設を設けるとか、いろんな対策を従来からやってきているわけでございますが、そういう性質のものとして今後ともその対策を強化させていただきたい、こういうふうに考えておるわけであります。

 

○下村泰君 確かに、いま職業安定局長がおっしゃったようになされていることは事実です。しかし、まだまだいいかげんなものです。実際に見に行けば。横浜の寿地区などというところは、いま職業安定局長が言った言葉の五分の一も実施されていないような状態ですね。ですから、あそこへはだれも普通の方は入っていきません。そんなような状況をつくるということが果たしていいのか悪いのか、ましてこういうところというのは、こういう問題の取り上げられる以前、社会全体がこういう空気になったときは一番先にほこりをかぶるところです。ここは。それだけに、こういう地区というのもやはり心遣いしていただきたい。労働大臣、一言ください。

 

○国務大臣(藤井勝志君) 十分実情をわれわれも把握いたしまして、必要な措置を必要な場合は講じたいと、このように考えます。