84-衆-社会労働委員会-20号 昭和53年06月06日
昭和五十三年六月六日(火曜日)
午前十時二分開議
本日の会議に付した案件
労働関係の基本施策に関する件
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○西田(八)委員 ひとつ労働大臣、この点は特にお力を入れていただいて、そして、そういう方向で、潜在している、下にもぐっている、そういう失業者と言うんですか、職を失った人たちの対策というものに重点を置いていただきたい、お願いをしたいということ。
もう一つは、例の炭鉱がなくなりましたときに、産炭地振興法という法律があって、特定の地域に対して、ある程度の援助をしながら工場誘致なんかをやられた経験があるわけです。今度の造船だとか繊維の不況というのは、炭鉱のように、なくなってしまうものではないわけですが、しかし造船業あるいは繊維業も、お互いに、その一つの地域のメーン産業になっておることは事実なんですね、主産業になっておることは。したがって、そこの火が消えるということは、町全体の火が消えるということにもなるわけなんです。したがって、こういう不況地域に対する振興対策というのはとらなければならぬというふうに思うのです。これは、あるいは通産の仕事であるかもわかりませんが、たまたま、ここで大臣がおられますので、大臣、経済閣僚会議に出られるのでしょうから、そういうことについて何か特別の措置をするというようなお考えはないかどうか。もしお持ちならば積極的にお進めいただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
○藤井国務大臣 特に造船業がその地区の主体をなしておるようなところ、あるいはまた地場産業としての繊維産業、こういったところに対して、どのような雇用対策を進めていくかということ、これは実際なかなかむずかしい問題でございます。しかし、われわれとしては、たとえば造船地帯においては、やはり船をつくることをふやす、海上保安庁の巡視艇の建造を急いでもらう。あるいは解体船の作業を進めてもらう。こういうふうにして新しく雇用の機会を創出するような仕事をふやすような方面に対して、運輸省並びに、そのほか関係省庁に連絡をとっていくということでございまして、繊維産業の場合には、これまた構造不況業種として非常にむずかしい条件に立たされておるわけでございますけれども、今度は、ところによってはダウンストリームの製品加工というような方面へ消費者のニーズに対応した工夫をいろいろしてもらう。そういう面に職業訓練と結びつけた対策をやったらどうかとか、いろいろ現在検討をしておりまして、特に今度、新しい試みとして地域職業訓練センター、こういった問題について、それぞれの地区において、ふさわしい計画をお持ちのところもあるようでございますから、そこら辺の関係者とよく連絡をとって、せっかく、ことし新しい試みとして全国に三つばかり予算としては取っておりますから、そういう面を踏まえて、これから地場産業が新しい方向へ展開していくための人手をつくり上げる。マンパワーをひとつ、その地域に形成していくという、こういう努力も必要ではないか、このように思うわけであります。
○西田(八)委員 大臣の言われんとするところはわかるのですが、ただ、それだけでは実際は地域の振興にはならないと思うんですね。ですから地域の振興をさせるためには、やはり何か積極的に国の施策として、そうした将来きわめて雇用の安定する業種あるいはそれにふさわしいような事業というものを展開していかなければならないと思うんです。しかし、それには市町村自体の現在の硬直化した財政状況の中では、とても、やり切れない問題があると思うんですね。したがって、そうした特定の地域、たとえば離職者が何%か出ているという一つの線を決めて、そこから上になるようなところに対しては特別の援助、指導というようなことも考えるべきじゃないかというふうに思うわけですね。これは産炭地はそういうふうになっているわけですよね。産炭地振興というのは、そういうふうになっているわけですが、こうした不況地域についても、そういう対策を立てるべきではないかというふうに思うわけでございますが、これも先ほども言うように、これは労働大臣の直接所管事項じゃないので、むずかしいかもわかりませんが、どらかひとつ今後の政府部内の討議の中で、こういう意見もあったということをお伝えいただいて、対処、善処していただくようにお願いをしておきたいと思います。
それから先ほど土木関係の労働者のことについて質問が出ておったわけですが、最近こういうようなのが出てきておるわけですね。公共事業に非常にたくさん出てきた。しかし土木事業というのは上から下へ何段階にも分かれて下請、下請と入っていくわけです。そうすると下請、その次、孫請、そして曾孫請ぐらいになってきますと、資材その他では、もう削減できないわけですね。当然、上の出される方から工費を安くするためには、どうしても労賃でしほるよりほかない、こういう形になってきて、そして一番下の孫請、曾孫請あたりにおいては、たとえば最近の労務賃から比べて、一日五千円も見積もられておればいい方で、五千円を割る場合がたくさんあるわけですね。そうすると労働者の来手がないのです。それでは。したがって、それが県道の修理であるといたしますならば、われわれの住まいしておるところの道を直すのだから、ひとつ協力してやってくれということで、その県道の通る部落の人たちに一戸に一人出てこい、男の場合は三千円渡そう、女の場合は二千五百円だ、それが弁当代だということで人を集めて工事をしている実態が、ある地方で明らかになったわけですね。
これは明らかに労働者賃金の中間搾取になるのではないかというふうに思うわけですが、そうした実態があるということを私はここで明らかにしておきたい。それは労働行政の面で、労働基準法のように中間搾取の排除という厳然とした条項もあるわけですから、ひとつ、そういった問題については十分建設省にも注意を促すようにお願いしておきたい。
また最近、新聞やあるいは週刊誌等によりますと、立ちんぼ、いわゆる職業安定所へ行っても、なかなか求人がないし就職できない。ただし、その日その日、失業保険が切れて、どうすることもできないということで、たとえ五百円でも六百円でも現金をつかみたいというので、大阪の釜ケ崎や東京の山谷に似たような形のものがどんどんふえてきている。あるいは札幌あたりの駅の構内に浮浪者と目される、いわゆる北洋漁業の離職者がうろついて何十人かにふえている。毎日その数がふえているというようなことが報道されておるわけです。
これはまさに職業安定行政の上からいって、あるいは雇用行政の上からいって好ましくない状態だと思うのです。したがって、そういう悪質な業者に対して厳しく取り締まると同時に、やはり、そういう人たちに対して、おれは長年、二十年漁船に乗ってきたんだ。いまや陸に上がったかっぱ、何することもできないという前途に対して夢も希望も失った、そういう労働者に対して希望を持たせる、あるいは新しい職というものを身につけさせるということは、きわめて重要なことはできないかと思うのですが、そういう問題についても、限られた数で、しかも大量の離職者を抱えて、その指導というものは大変だろうと思いますけれども、ぜひ、そういう面にも心を配っていただいて対処していただきたいと思うのですが、ひとつ大臣の所信を聞かしていただきたいと思います。
〔羽生田委員長代理退席、委員長着席〕
○藤井国務大臣 長い不況の続く現在、ある程度経済指標としては明るさが感じられるような情報なり意見も出ておりますけれども、これが本当に本格的な日本の経済の体質が立ち直って、その方向へ向かっておるのか、一時的な現象であるかということは、まだまだ私は見きわめがむずかしいのではないかというふうに思います。少なくとも雇用の面においでは、御指摘のような非常に重苦しい深刻な状態が目の前に現在、展開をし、われわれは、その直接の雇用不安に悩む労働者の声を耳にしておるわけでございますから、われわれはあらゆる力を尽くし、情報を集めて、そして、関係省庁と連格をとって積極的に問題解決に前進をしなければならぬ。そういう意味から、けさ方から、いろいろ御意見に対してお答えをしておりますように、労働省の枠組みをはみ出したような雇用創出の問題提起をいたしておるわけでございまして、大いにひとつ、いいと思うことは何でも提言をし、これを実行に移すように関係方面に働きかける努力を一層今後も続けていきたい、このように考えておるわけでございます。