71-参-社会労働委員会-23号 昭和48年09月11日

 

昭和四十八年九月十一日(火曜日)

   午前十一時二分開会

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  本日の会議に付した案件

○健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○児童扶養手当法及び特別児童扶養手当法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

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○藤原道子君 日雇い健保について御質問いたしますが、この前質問最中に質疑打ち切りの動議で中断。したがって途中からお伺いしますが、あるいは重複するかもわかりません。

 そこで、まず第一に、日雇い労働者の実態についてお伺いしたいのですが、日雇い労働者の賃金、就労、生活実態はどうでしょうか。労働省にお伺いいたします。

 

○説明員(望月三郎君) ただいまの先生の御質問でございますが、ごく簡単に御説明いたしますと、昭和四十七年九月末現在におきまして、私ども公共職業安定所の登録日雇い求職者の数で把握しておりますが、この数は十七万九千人あがっております。そのうちに失対事業の紹介対象者といたしまして十三万二千人というふうにあがっております。

 それで、私ども賃金につきまして把握しておりますのは、失対紹介対象者の分についてでございますが、失対紹介対象者の賃金につきましては、失対で働く場合には失対賃金を支払われておるわけでございますが、そのほかに公共事業それから民間事業に対しましてまあ、何日か働きに行くという方があるわけでございます。その方々の賃金を見ますと、一日二千円以上というのが七三%前後が、民間、公共とも大体同じような数字になっております。それから一番低いところで千四百円から千五百円未満というのが一・〇から二・六というような賃金の状況でございます。

 それから就労状況でございますが、これも失対紹介対象者を対象にしておりますが、四十七年の八月と九月の二カ月をとってみますと、失対におきましては四二・四、まあ、二カ月でございますのでこれの約半分になりますが四二・四、それから公共事業につきましては〇・三、それから民間その他につきまして一・三日という日数になっております。これはやはり失対就労者が高齢化しておりまして、平均約六十歳前後くらいになっておりますので、公共、民間にはなかなか行きにくいという実態がございますので、こういう状況になっております。したがいまして、平均では二月で四十四日でございますので、一カ月当たり二十二日というのが平均の調査の結果になっております。

 それから次に、一般の日雇いでございますが、失対就労者じゃない人たち、これは釜ケ崎とか東京の上野、山谷の付近だとか、ああいった一般の日雇い労働者が大ぜいおるところの就労状況でございますが、これを見ましても全体としては二十日以上というのが七一・七%でございます。一番少ないのが、四日以下というのが六・九%でございます。

 それから最後に、先生お尋ねの生活実態でございますが、これも失対紹介対象者だけを対象にいたしまして、四十七年の三月に、日雇い労働者生活実態調査というのをやっておりますが、これによりますと、世帯人員なり就業人員及び世帯収入というのを見てみますと、世帯人員では全国平均二・三二人が一世帯平均の数になっております。それからそのうちの就業人員が一・五四人ということで一人半くらいが就業しております。それから収入総額につきましては、約四万九千二百円というのが一カ月の収入総額になっております。それからもう一つ、一人世帯か二人世帯かという世帯別の構成を六大都市とその他の地域ということでとってみますと、一人世帯につきましては、六大都市におきましては四四・二%というのが一人世帯でございます。それから、それに対しまして二人以上の世帯のうち、本人以外に就業者のある世帯が三九・二、それから本人以外に就業者のない世帯が一六・六という数字になっております。それから、その他の地域につきましては、一人世帯が二九・六、それから本人以外に就業者のある世帯というのが四一・四、本人以外に就業者のない世帯が二九・〇という実態になっております。

 簡単でございますが、お答えいたします。

 

○藤原道子君 労働省では調査の結果報告書が出ているわけですね。この点で、十分今後とも対策を立てて生活ができるような方向に持っていっていただきたい、努力してほしいと思います。

 そこで、日雇い健康保険の実態はいかがでございましょうか。

 

○政府委員(柳瀬孝吉君) 昨年の四月に実施いたしました日雇い健康保険の被保険者の実態調査の結果でございますが、現在これは大筋の集計はすでに完了してございますが、まだこまかい解析が進んでおりませんので、資料はまだ提出できない状況でございますが、大筋を申し上げますと、日雇い労働者被保険者の平均年齢は四十七・六歳というようなことで、政府管掌健康保険に比べますと、平均の年齢が十二歳くらい高いというふうな状況でございます。また扶養者の状況でございますが、政管健保の場合ですと約一・〇人でございますが、日雇い健康保険の被保険者の場合には平場の扶養率が〇・六人というふうなことで、被扶養者の数が少ないというようなことです。それから業態別の就労人員、どういうような業態に多く働いておるかということでございますが、これは建設業が一番多くて約七二%を占めておる状況でございます。それから賃金の状況でございますが、これは日額別にいたしますと、千円から千五百円という間が一番多うございまして、三一%というふうな状況でございます。大筋の状況はそんなようなことでございます。

 

○藤原道子君 これは実態調査の報告書はまだできていない、――早くつくってください。

 それから日雇い労働者が、いまの賃金のことを聞いてもそうですが、就労しながら生活保護を受けているという話ですが、どの程度が生活保護を受けているのでしょうか。

 

○政府委員(高木玄君) 生活保護による被保護世帯は、一番新しい数字で本年の五月現在で七十万四千世帯が保護を受けておりますが、このうち、日雇い労働者世帯は、失業対策事業従事者を含めまして三万四千世帯でございまして、被保護世帯総数の四・八%に相当いたします。それから、その内訳を見ますと、日雇い労働者世帯のうち、生活扶助を受けている世帯が二万五千世帯、それから医療扶助を受けている世帯が二万七千世帯というふうに私どもは推測いたしております。

 

○藤原道子君 そこで、厚生省の「生活保護速報」というのがありますね、日雇い労働者の生活扶助、医療扶助の適用条項をいまちょっとおっしゃったけれども、これは十分まだ行き届いていないようなうわさも聞くのです。働きながら生活ができにくい、それにその家庭の状況を見ると私ども非常につらいことがありますから、特に今後十分な補助ができるように努力していただきたいし、それから働けば食えるような賃金ですか、労働省、こういう点も考えていただきたい、こう思います。

 そこで時間の関係がありますから少し抜かしまして、そこで財政面についてお伺いいたします。

 日雇い健保の累積赤字及びその赤字の原因はどういうことになっているでしょうか。

 

○政府委員(柳瀬孝吉君) 日雇い健保におきましては、保険料の収入が日雇い健保の適用対象者の特殊性といいますか、保険料二階級の定額制をとっているわけでありまして、したがいまして、これが昭和三十六年度の制度改正以来、据え置かれておるわけでございまして、賃金の伸びが保険料収入に反映しないというふうな状況になっておるわけでございまして、一方支出面といいますか、給付面におきまして被保険者に、先ほど申し上げましたように高齢者が非常に多いというような点で、医療費が高額となっておるわけでございます。

 

○藤原道子君 日雇い健保の財政赤字は健保の場合と比較して、その保険の財政規模からいえば日雇い健保のほうがはるかに重大視されなければならないし、今日のような累積赤字が増大しない以前に財政対策を行なうべきであったではないか、こう思いますが、これはどうなんでしょうか。赤字になってから大騒ぎする、その前に対策を立てるべきじゃないか。

 

○政府委員(北川力夫君) 確かにただいま先生の仰せのとおり、日雇い健保の財政状況は極端に大きな逆ざやでございます。そういう意味合いで、私どもも財政状況の改善あるいは給付の改善というふうなことを考えまして、四十四年と四十五年の二回にわたりまして、給付期間の延長等の給付改善にあわせて保険料日額を被保険者の賃金実態に即したものに改定することを内容とした一部改正案を国会に提出をいたしたような実態があるわけでございます。しかしながら、いずれも廃案になりまして現在に至っております。

 そこで、今回お願いいたしております改正案は、いま先生がおっしゃいましたようなことを考えながら、また過去の廃案になった経緯も十分考えまして、関係審議会等の合意に基づいて、日雇い健保の給付内容の改善、それから財政の安定、両方を考えながら再出発をしたい、こういうことで今度の改正案をお願いいたしておりますもので、そういう意味合いで御理解をいただきたいと存じます。

 

○藤原道子君 そこで、医療給付費の増高による収入の不均衡やあるいは給付内容の改善は、日雇い労働者の実態から見ても保険料の値上げもおのずから限界がある。国庫負担の増額によってこれは措置すべきではないか、こう思うのですが、これはどうですか。

 

○政府委員(北川力夫君) 過去におきましても、社会保険審議会等でやはり国庫補助につきましては日雇い健保に相当大幅に投入をすべきであるというふうな御意見もちょうだいをいたしております。で、国庫補助の問題はそれぞれの医療保険制度を構成する被保険者の階層でありますとか、あるいはこの財政の体質の状況を総合的に勘案をいたしまして、それに見合った措置を講ずることが本来の姿だと思っております。こういうたてまえから、日雇い健保におきましては他の健康保険に例のない給付費の三五%という非常に高率の国庫補助を行なっておりまして、現在の段階ではこれが妥当な程度のものじゃなかろうかと私どもは考えておるような次第であります。

 

○藤原道子君 昭和四十四年の五月二十三日に社会保険審議会が行なわれましたとき、その答申では、労働者側の委員からは国庫負担は五割以上にすべきであるという意見が出ておりますが、これに対してあなた方はどう考えておりますか。

 

○政府委員(北川力夫君) いま、お話しのとおり、四十四年の際には日雇健保法の改正を諮問いたしました社会保険審議会から答申がありまして、その中に総評及び中立労連を代表する委員は国庫負担を五割以上とするというようなことを答申の中で述べております。その問題は、いま申し上げましたように、要するに、日雇い健保という非常に体質の弱いものに対する国庫補助の問題でございますので、そういう問題も考えながら、この四十四年の改正は考えたわけでございますけれども、その状況は、いま申し上げましたように、昨年の六月に、あらためて社会保険審議会からちょうだいいたしました日雇い健保改正に関する答申、また、社会保障制度審議会からいただきました同じ答申、それに基づいてつくったものでございまして、そういう意味合いでは、五割という線ではございませんけれども、専門の審議会並びに社会保障制度審議会等におきましては、現在の状況でも相当な国庫補助が投入をされておると、こういうふうに御理解を願っておるというふうに考えておるような次第でございます。

 

○藤原道子君 私は、日雇い労働者の実態を見ると、むしろ遊んでて生活保護でやったほうが楽なのよ。それはやっぱり一生懸命働いて自活しようと努力しているけれども、老人も多いし、無理をしますから病人も出る、こういうことで結局赤字がふえてくる。そこで、日雇い健保は、あくまでも国の責任で五割以上を補助すべきである。と同時に、日雇い健保が政府管掌であるので当然国が責任を持ってすべての処理をすべきであると私は思う。したがって、昭和四十九年度以降の財政収支の健全化をはかり、過去の赤字財政は保険料で処理すべきではない、国の責任で処理すべきだと思いますが、この点どうですか。

 

○政府委員(北川力夫君) ただいま、もうお答えの中で申し上げましたように、日雇い健保につきましては、三十六年から法律改正も実現しないままに非常に低い給付水準で、非常に悪化した財政状況のもとに現在まで来ておるわけでございまして、何と申しましても、いまいろいろ日雇い労働者の実態のお話が出ましたように、給付内容を改善することがきわめて緊急の要務となっております。そういう意味合いで、今回の改正案におきましては、当面関係者の間で合意のできました、療養の給付期間の延長、あるいは現金給付の引き上げ等を行なっておりますのと同時に、半面において財政面におきましては、いま先生御指摘になりましたけれども、必ずしも全体の財政状況をごらんいただきますと、単年度収支の均衡をとるというふうなことには拘泥はいたしておりませんで、保険料の引き上げにつきましても、三十六年以来の賃金の伸び、そういったものに即して保険料日額の改定を行なう、こういうふうにしておるわけでございます。

 さらにいま先生のお話しになりました日雇い健保の長期的なと申しますか、より最終的な財政の健全化対策、あるいはまた給付内容のよりよい前進というふうなことにつきましては、今回お願いをいたしております改正案が成立をいたしました後において、できるだけすみやかに十分な検討をいたしたい、このように考えておるような次第でございます。

 

○藤原道子君 私は、当然この日雇い健保の赤字は国の責任で解決するというふうにしてほしいのですが、大臣どうですか。

 

○国務大臣(齋藤邦吉君) 日雇い健保の財政が非常に苦しいことは私どもも十分承知をいたしております。したがって、思うにまかせず給付の改善もできないというふうな状況でありますことは、私もほんとうに残念なことだと考えております。しかし、生活の非常に苦しい日雇い健康保険でございますから、できるだけ国も援助をしなければならないというふうなことで、現在でもすでに三割五分国が負担をしておる、こういうわけでございます。しかし、はたして今後とも、――いまのような生活実態である日雇い労働者を対象とする日雇い健康保険が、将来大幅な給付改善をやるにあたって、保険料収入だけに依存するということは、これは容易じゃないと思います。そこで、将来の問題として、やはり給付改善をやっていくにあたりましては、――今度の改正で少しはよくなりますけれども、よその組合に比べますとまだ劣るわけで、どうしてもやはり給付の大幅な改善というものを今後考えなくちゃならぬと思うのです。その改善をやるにあたって、すべてを保険料収入だけに依存すると、私は容易なことではないと思います、そういうことは。実際問題、まあ、保険主義であるから、それは保険料収入だけでまかなえばいいのだ、こうとは言い切れないものが出てくると思うのです。

 そこで私は、ただいま御提案を申し上げておりますこの法律が成立をいたしましたあと、どういうふうな給付改善をやっていくか、それとにらみ合わせながら、国庫の負担をどの程度、どういう面に伸ばしていったらいいか、そういうことを私は十分研究をいたしたいと考えておる次第でございます。したがって、現在の三割五分の国庫負担で、これで十分だということは私は全然考えておりません。将来とも給付の改善に対してどういうふうな国が態度をとるべきであるか十分検討していきたいと考えておる次第でございます。

 

○藤原道子君 私は、やはり国の責任でちゃんと赤字の解消をして、それで日雇い健保が運営されるようにしていただきたいということを強く要求しておきます。

 そこで、今度は給付内容でございますが、労働基準法の第六十五条には、女子の産前産後について、「使用者は、六週間以内に出産する予定の女子が休養を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。」また、「産後六週間を経過しない女子を就業させてはならない。」と規定しているわけですね。ところが今度私はこの六週間についても、いろいろな点からやはり産前産後の休暇は八週間にしてほしいということを強く要望しておるのです。ところが今度のこの日雇い健保の改正を見ますと、これは出産手当ですけれども、日数が三十日になるんですね。この規定からして問題があるのではないでしょうか。産前産後の各六週間。ところが今度産前九日なんです。産後二十一日なんです。これはどのような考えでしょうか。貧乏人はそれでいいんでしょうか。とにかく貧しい者に対して国の対策はいつも冷た過ぎる。産後二十一日。婦人の子宮は握りこぶしくらいしか大きさはない。それがあれだけ大きなおなかになって、それがもとへ返らなければ普通ではない。それが二十一日で返るでしょうか。この点についてどういうふうにお考えになっているか伺いたい。