71-衆-石炭対策特別委員会-7号 昭和48年04月09日

 

昭和四十八年四月九日(月曜日)

    午後一時四分開議

 

 委員外の出席者

        参  考  人

        (日本石炭協会会長)     貝島 弘人君

        (石炭技術研究所所長)    八谷 芳裕君

        (全国鉱業市町村連合会会長) 坂田九十百君

        (日本炭鉱労働組合中央執行委員長)     里谷 和夫君

        (全国石炭鉱業労働組合中央執行委員長)   道下 一治君

        (全国炭鉱職員労働組合協議会議長)     木崎 順二君

        商工委員会調査室長      藤沼 六郎君

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本日の会議に付した案件

 石炭鉱業合理化臨時措置法等の一部を改正する

 法律案(内閣提出第六三号)

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○田中(六)委員 私は一点だけ各参考人にお聞きしたいと思います。

 先ほどから六名の参考人、非常にお忙しい中をわれわれのために国会に出席していただきまして、まことにありがとうございます。

 今回の石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正法案の中で、管理委員会というものが設けられまして、かなりの強力な力を持っておるわけでございます。しかしながら、各参考人のお話を聞いておりますと、エネルギー資源を確保しておかなければ、特に二千万トンを下らざる線で石炭を五十年まで確保しておかなければ大きな後悔をする、しかも里谷、道下両参考人の意見によりますと、二千万トンを下らざるということもすでに現実に崩壊しておる、さらに、その目的年次には二千万トンを下らない線で確保することは困難であろうということがいますでに明らかにされておるわけでございます。これは私は、その他保安の確保、鉱害問題、産炭地振興事業、そういうあらゆる面から石炭にまつわることを考えますと、やはり体制というものに頭が行かざるを得ませんし、これはやはり私企業の限界が来ているのじゃないか。私企業の内包する矛盾があらゆる角度からあらわれている。国あるいは国民の要望するエネルギー資源の確保のトン数、これを維持しなければいけない。これ以上閉山させてはいけないという至上命題があるにもかかわらず、私企業ということで、閉山する場合はどうにもしようない。しかも、すでに閉山の準備をしておる会社もあるわけで、私どもが見ましても、この五十年、五十一年を目安に二百万トンを下らない線ではたして確保できるだろうかという大きな疑問を持つわけです。

 したがって、私は自由民主党に籍を置いております。われわれも、政策の変更、つまり石炭だけは、エネルギーという大きな観点から、それからそれにまつわる諸問題から考えまして、国営、国管にせざるを得ないんじゃないか。今回の管理委員会の力はあくまで私企業の前提に立った管理委員会でございますが、私企業じゃなくしなくてはいかぬのじゃないかという気持ちがするわけでございますが、各員に、それぞれ国営、国管に石炭はする時期になっておるのじゃないかということを私は感ずるわけでございますが、五次答申がすでに出ておるさなかにこういう質問をすることはどうかと思いますが、過去十年間五回の答申が全然変わらない方向で、同じ流れできておるということに疑問を持つわけでございますので、その点、各員に私の質問をぶつけて、御回答願いたいと思います。

 

○田代委員長 簡潔にお願いいたします。

 

○貝島参考人 ただいまの田中先生の御質問にお答え申し上げます。

 私どもは、この第五次答申の審議過程におきまして、管理会社的な考え方にすでに賛成しております。そのような立場の中でいろいろ御議論をいただいて、今次の、いま現在ではそこまでいくのは無理であろう、したがって管理委員会、さらには需給調整委員会という形でやりなさいという御答申でございますので、私どももこの法律ができました上は、その線に沿って最大限の努力をいたしたい、かように考えております。

 八谷参考人 私も貝島参考人の言われたのと同じような意見になるわけでございますが、ただいま先生のお尋ねのように、直ちに国営あるいは国管という問題よりも、答申にも盛られましたように、管理委員会、これをいかにスムーズにかつ目的のとおりに運営するかというようなことでやっていくべきであろう、かように考える次第でございます。

 

○坂田参考人 私も石炭鉱業審議会の末席を汚しておりますし、また通産大臣に答申いたしました体制委員会の一員として、いろいろな石炭対策の審議に加わっておるわけでございますが、すでに第一次、第二次、第三次、大体二千五百五十億程度の肩がわりもされておりますし、その他安定補給金あるいは坑道掘進補助金あるいは設備近代化資金、いろいろな資金が流れておりまして、そうした助成措置がなされながらも、まだ炭鉱経営が続けていけないという状態、これは、やはりただいま田中先生のおっしゃるような姿にならざるを得ないのではなかろうか、こういうふうに考えております。

 それから、これは御質問がないようでございまするけれども、石炭政策といたしまして、これはただ石炭の確保という面でなくて、石炭を確保するにはそれによって生ずるところのもろもろの問題、たとえば鉱害復旧の問題、労働対策の問題、産炭地振興の問題、こういうものを忘れた石炭政策はないと思う。現在九州だけで三千万トンの合理化閉山がなされております。したがいまして、これの鉱害はばく大なものがあるわけなんです。そこで、臨時石炭鉱害復旧法、要するに臨鉱法を先生方の御尽力によりまして十カ年延長していただきました。今年の四十八年度の予算が、さっき申しましたように百七十億。そこで、いまの全国鉱害量を十カ年に割りますと、大体百七十億程度でいいかもしれませんけれども、法律で十カ年延長したから十カ年で鉱害復旧をやればよろしいということにはならない。石炭を採掘したあとのさびれております地域の振興をはかるには、どうしてもあの鉱害を復旧しなければ産炭地の振興もできません。したがって十カ年法律が延長されようとも、これを五カ年に短縮して復旧するあるいは三カ年で復旧するというような前向きの姿勢でやってもらいたい。ところがいまのような制度では、私は鉱害復旧はなかなか遅々として進まないと思う。現在の現行法から申しますると、これは企業が鉱害を起こす、起こした企業が復旧するというのがたてまえになっておる。ところが企業がやれないという状態。したがって国は法律までつくってこの鉱害復旧をやろうとされておるわけなんです。

 いま鉱害にいたしましても、無資力鉱害と有資力鉱害と二つあります。無資力鉱害は鉱害事業団が主体となってやっておりますが、有資力はそれぞれの企業が国の補助をもらって復旧をいたしておる。こういうところに問題があると思う。鉱害復旧事業団というものは全国統一した鉱害事業団があるわけなんです。私は有資力とか無資力とかではなくして、国土の保全、民生の安定の立場から鉱害復旧をするとするならば、石炭は国家管理にして、そして国の責任においてすべてをやっていく。そしてその復旧は事業団にやらしめる。こういうような措置をとられることを希望いたします。

 そういう面から申しますと、私はやはり国有、国管にもう移行すべき時期が来ているのではないか、こういうふうに、私は企業の側でもございませんし、労働者の側でもございません、自治体の立場から申しますと、企業には非常に冷たいような言い方になるかもしれませんけれども、私はもうその時期が近づいておるのではなかろうか、こういうふうに考えるのでございます。

 石炭というものを出せばあとはどうでもいいというようなことではいけないわけでございまして、やはり石炭が、合理化によって閉山された地域がどんな苦しみをやっているかということを先生方に十分知っていただきたいと思う。

 たとえば炭住の問題。全国で八万三千戸の炭住がございます。これが、われわれは新しい特別の立法をやっていただきたいということを陳情いたしておりますけれども、一つの法律をつくるということは非常に困難でございまして、なかなかこれが問題になりません。けれども、この八万三千戸の全国の炭住に、閉山地域に、依然として滞留しておる労働者の子弟は、環境の悪いところで育ち、環境の悪いところで教育を受けております関係上、どうしても青少年の不良化というものが著しいものがあるわけでございます。閉山いたしまして十年いたしますと、人間の住むような炭住ではない。釜ケ崎がどうだとか山谷がどうだとかいいますけれども、そんなものじゃないのです。たとえば三井鉱山にいたしましても、非常に炭住が新しい。これも閉山いたしましてもう十年になる。あと五年もいたしますともう人の住まうようなところではないわけなんです。こういうところに住まわして、今後国家を背負う胃少年を育てろといわれましても、これは困難です。したがって、こういう面からも、かろうじていまやっております炭住改良法に基づきまして、年間に千戸か千五百戸をやっておりますけれども、全国の八万五千の炭住を改良するにはとうてい時間的に間に合わない。したがって、やはり石炭を国家の管理のもとにやるようになりますれば、こういう問題をむしろ国としては強く取り上げていただかなければならぬのではなかろうか、こういう面から、私は国営、国管を希望するものでございます。

 

○里谷参考人 私ども三十七年に石炭政策ということで運動を起こしました趣旨のものは、私企業体制では日本の石炭産業の安定を実現することは不可能だろう、こういう意味で、政策による石炭産業の安定をこの十二年来運動を続けてまいりました。したがって、簡串に申し上げますと、いま行なわれている政策は御指摘のように縮小、撤退の政策ではないかと思っています。ですから、先ほど数字を申し上げましたが、二千六十八万トンということで炭労内部の数字を見ましたが、私どももこのことを判断いたしますと、これから閉山をしなければならぬ山があることについても十分に認められるわけであります。しかし、増産体制に入れるのか、安定対策に入っていけるのかということになりますと、その具体策はないのであります。したがって、国有化を指向するというのは、資源を温存をし、それを開発するという意味からいっても、そういう体制が正しいのではないのか、こういうように思っています。

 一つの例でありますが、いま火力発電所の問題についていろいろ議論をされていますが、私どもが専門家の方々からあるいは業者の方々から言われていますのは、たとえば石炭火力をつくっても安定供給がされるのか、こういうように言われています。したがって、水力発電所を設置した場合は十五年から十六年の安定を供給するんだぞ、こういうように言われますが、十六年間安定供給をする体制にいまあるだろうか、こういうように判断をいたしますと、私は、いまの私企業体制では十六年間の安定供給をする企業はないと思います。そういう面から申し上げましても、私どもは資源を十二分に活用をする、しかも縮小、撤退から安定と増産への道をたどるとすれば、体制変革よりない、こういうように信じているものであります。