71-衆-社会労働委員会-4号 昭和48年02月27日

 

昭和四十八年二月二十七日(火曜日)

    午前十時三十三分開議

 

 

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 労働関係の基本施策に関する件

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○和田(耕)委員 そういうことを言っているのじゃないのです。私の質問は、つまりある一定の労働時間を越えて労働さすとかいうことじゃない。いまのような非常に暑い温度になった、非常に寒くなった、そのときの働く一時間の労働時間を二時間として計算をするというような考慮をすべきだと思うけれども、それに対してそちらのお考えはどうかということです。

 

○加藤国務大臣 これはなかなかいい御意見です。いま大臣として、新米大臣がさっそくどうせいということはなかなかむずかしい点がありますが、事実これはいま政府委員に聞いたのでありますが、もう要らぬこと言うなといいますが、私、実は欧米を回ったときにその話を聞いたのであります。詳細に聞いておりませんから自信がありませんから――三十何度のときにはやめとか零度以下はやめとかいうことにいまの日本の現状はなっておりませんが、御趣旨を尊重して、ちょっと責任のがれのようなことを言っておりますが、これはやはり使用者の立場もありますし……。なかなか卓越した御意見で、これはさっそく検討したいと思います。

 

○和田(耕)委員 私はソ連の捕虜で五年ほど働いたことがあるのですよ。やはりああいう国でもあるのですよ、ああいう国と言うと失礼だけれども。それは考えてみれば当然のことですよ。その人たちは短期の臨時の仕事じゃないのですから、大部分は常用化している人なのですから。これは出かせぎの労働者だけじゃないのですよ。たとえば鉄道工夫でもあるいは電気工事をやっておる者でも、ガス工事をやっておる人でも、一般の室内労働では冷暖房が完備しておるということですから、屋外に働く者だけがそういうものに対して配慮されないということはおかしなことで、それをどの程度配慮するかというのは問題ですよ。だけれども、いま労働大臣がおっしゃるように、その問題をひとつ至急に検討していただきたい。

 

○加藤国務大臣 先ほど賛成いたしましたが、これはきょう初めてお聞きいたしまして、役所でもこれは専門家でありますからやや聞いたことはあると思うけれども、労使の関係でいまだ問題になっておりませんが、さっそく各方面の事例も取り寄せたり、やはり屋内はこのごろ冷房がなかったら困るとか、団体交渉で冷房せよ、こういうようなことがありますので、屋外の問題に対しましても労働省として考慮する、特にそれに対する研究を慎重に、迅速にやることは当然と思います。

 

○和田(耕)委員 この問題を例としてあげましたのは、つまり屋外で働いておる肉体労働者、これはますます今後重要になります。列島改造なんということを言い出すと、ますます大事なことになります。しかし案外この問題をお考えにならない点から、労働者はそういうところへいかないのです。単に働いてもらうために来てもらうという面も大事な面ですけれども、やはり普通の労働者として同じ労働条件で働いてもらうようにするということは必要なわけですね。そういう点から労働大臣、事務当局を督励していただいて、ぜひともそういうふうな肉体労働者を重視していくという一つの例としてその問題を検討していただきたい。これが第一点です。

 そして第二点の問題は、その中でとりわけ出かせぎ労働者、これは先ほども申し上げたとおりいろいろ問題のある労働者です。しかしこれが最近の日本の高度経済成長をささえてきた原動力の一つであることは間違いない。しかしこの人たちに対する労働条件とか、あるいは生活環境とかいう面から見ると、いま私が申し上げたとおり、これはきわめて臨時の仕事だ、例外的な仕事だという観念があるために、すべての生活環境とか住宅とかその他の施設が臨時のものになっているという事実は否定できないと思うのです。たとえば住宅にしましても、飯場、これはみな企業企業にまかしておるという形、飯場ではみ出る人は、東京でいえば浅草にある山谷とか、あるいは釜ケ崎とか、それに準ずるようなところで集団をつくって生活をするという状態なんですね。つまりこのことがいろいろ社会問題になり、事件を引き起こす温床であるわけですね。このような人たちの大部分は常用的な人ですから、少なくとも月に一回や二回、国から家族を呼んで生活できるような生活条件、住宅条件というものは考えてあげなければいけない、そういう時期に来ていると思うのですけれども、そういうふうな考え方に立って、その人たちの住宅を雇われておる会社にまかせておくのではなくて、国がいろいろ融資するとか、あるいはその他のいろいろな配慮をするとかいうことで、もっと人間が恒常的に住めるような住宅条件、生活環境をつくり上げてあげる、これは努力すべきだと私は思うのです。その点どうでしょうか。

 

○道正政府委員 住宅一般につきましては、いわゆる従業員の寄宿舎の問題でございます。これは寄宿舎規程もございまするし、改善を要することは御指摘のとおりでございます。先生の御質問の中に、月に一ぺんくらい国元から家族が来てゆっくり泊まれるような施設をつくるべきではないか、こういうことでございましたけれども、実は四十七年度の予算におきまして、東京と大阪と名古屋にその種の施設をつくるということで現在都府県と相談をいたしております。少しおくれましてまことに申しわけございませんが、そのうちにできる。これができますならば、先生の御指摘のような家族団らんの場として大いに活用していただけるものというふうに考えております。

 

○和田(耕)委員 それは非常にいいことで、ぜひやってもらいたいと思いますけれども、数が少ないでしょう。東京で、たとえば今年度の予算でどれくらいつくりますか。

 

○道正政府委員 御指摘のとおりでございまして、六十万という出かせぎの労働者の皆さんに対する施設としては非常に少ないのでございますが、とりあえず国の予算としてはそれぞれ一億ずつ、四十八年度につきましては、北海道は札幌につくりますが、これも一億でございます。ただこれには地元の都道府県におきまして上のせをしていただいておりますので、全体の規模としては一億を上回りますけれども、いずれにいたしましても全員が月に一ぺんというわけにはなかなかほど遠いわけでございます。ただこういうものをつくりますことによりまして、その実績等を見まして、非常に評判がよくてもっとつくれということであれば、これは私ども拡充するというように努力をしたいというふうに思います。

 

○加藤国務大臣 少し和田議員とこっちの答弁が食い違っておるので、和田議員は、いま局長が話したようにランデブー宿泊所というよりは、もう少し広範囲な恒久的なものをやれ。私は大臣就任当時から、この出かせぎの方が一番気の毒だ、私の郷里など相当あったのでありますが、このごろ工場が郷里の地方へ進出いたしましたから、過疎でなく、とまりました。ところが東北その他においてはやはり出かせぎの問題はほんとうにお気の毒で、環境、家庭生活、家庭のいろいろな悲劇もいろいろなことを惹起して、もう少し労働行政としては出かせぎの問題を少なくしたい。これは日本列島改造じゃありませんけれども、工場の再配置で出かせぎを少なくするという根本対策とこれに対する福祉対策――ランデブーといったって一億で、ちょっと宿泊する程度ではもう少し足らぬと思いますから、これは四十八年度の予算では私が提唱いたしたのでありますが、もう間に合わなかったのであります。いま局長から話があったように、もう少しあたたかい、実のある出かせぎに対するいろいろな対策を講ずる。いこいの村もけっこうだけれども、四十七万の方の家庭生活を破壊するようなものに対してあたたかい思いやりの施策を講じることは私は大賛成だ、こう言って、私の主張は、これはもううそ偽りなく、局長連中にも話したのでありますが、就任当時はもう大体予算の骨子がきまっておりましたが、四十九年度においては和田議員の御説のような方向に、私の所存としては、これは局長とは相談いたしておりませんが、その方向に強く持っていきたい、こういう所存であります。

 

○道正政府委員 補足させていただきます。

 国が直接やる施設としては先ほどお答えしたとおりでございますが、そのほかに、たとえば事業主が恒久的な住宅を建てたり、あるいは福祉施設をやるための融資制度、これは四十七年度におきましては二百二十三億、四十八年度におきましても二百億をこえる融資ワクを用意いたしております。そういうものの中で、やはり先生御指摘のように建設業というのは一番そういう施設はおくれておるわけでございますので、建設業界にも大いに活用していただきたいというように考えております。蛇足かもわかりませんが、補足説明をさせていただきます。

 

○和田(耕)委員 そういう方向でもっと強化してもらうということをお認めいただいてありがたいと思います。いま一人の人が人間らしく住まえる最低の条件は、たとえば四畳半なら四畳半という部屋は自分の部屋だということになりますと、その部屋に月に一回なり二回なり奥さんを呼び子供を呼ぶということができるわけですよ。そういうふうな気がまえで、特に出かせぎの人は家がないわけですから、出かせぎの労働者をそういうふうな住宅に住まわせるように至急にやってもらいたい。そうしないと、いまの都市におけるいろいろな問題、あるいはその人自身の生活の破壊、家族の破壊、ばらばらになる、あるいは蒸発をする、つまり家庭の破壊の問題が起こってくる。都会にはそういう誘惑は一ぱいあります。ちゃんと家を持っておる人でもそういう人はたくさんおるのだから、しかも住むに家のないところでごろごろしておるという状態では、これは日がな一日まっ黒になって働いておる人なんですから当然のことですね、いろいろなところに出入りすることは。したがって一人の人にはやはり最低四畳半、六畳くらいの部屋を準備するようなことは、これはぜいたくな要求じゃないのです。そのことで奥さんとか子供さんをそこへ月に一回なり二回呼ぶ。呼ぶ場合のいろいろな費用の問題もありましょう。それを含めてもっと常用的な労働者として出かせぎ労働者を待遇するということは必要じゃないのか。

 特に、これは政府が顧慮しなければならないのは、この人たちには強力な組合がないのです。組合があれば、たとえば海員のような場合は強力な組合がある。そうして半年くらい外洋で仕事をして港に着く。港に着いて、海員ホームというようなものがあって家族がみな来る。それは組合なり会社が出すということになっておりますけれども、この人たちにはそういうふうな生活をバックアップする組合がないのです。したがって政府は、これを会社につくらすために強い一つのワクをはめた融資のしかたも必要になってくる。炭鉱問題が重要なときに、炭鉱住宅が問題になりました。炭鉱住宅をつくるときにいろいろな政府の融資のワクというものがあったと思いますけれども、そういうふうな形でいまの建設労働者に対して生活条件を、とにかく人間らしい安定したものにしてあげるということを、これはこの経済社会基本計画にも書いてあるのですから。大きな見出しをつくって書いてある。ゆとりのある安定した生活をつくるということが書いてあるのですから、ぜひこれはやってもらいたいと思います。単にいまの福祉センターのようなもの、これはその上にできるものなんです。そういう条件の上にできるものなんです。それではいまの私の申し上げておるようなことの役には立たない。なぜならば数が少ないということで、地域も離れておる。どうせ東京に一カ所か二カ所。かりに十カ所つくったって、非常に離れたところになります。そういうことですから、その問題、特に生活の基盤の問題は考えていただきたい。

 

○加藤国務大臣 これはもう私、お答えのためのお答えでありません。私就任したときに特に痛切に感じまして、この点を強調して、いまの御指摘のように、組合もなく発言もない。そうしてこれは家族の者から見ると、夫婦が何カ月も離れるということは、これは家庭生活の破壊に通ずることは、これはもう御想像のとおりであります。さような点から、かようなものに対して、政府はこれらの施策をやることは当然である。特に大臣というものはやはり役所の考える以上のことを、和田議員がいま御指摘のようなことを当該大臣が強力に推進すべきだ、こういうのが私の持説でありますから、四十九年度には御趣旨の線に沿ってがんばることを確約いたします。

 

○和田(耕)委員 ぜひともお願いいたします。

 もう一点お考え願いたい点がございますけれども、これも、いま言ったような臨時の仕事、臨時の働き手というふうな観念があるけれども、実態はもう常用だという観念に立って、労働者の教育、訓練という問題を組織的にあるいは総合的に考えていただきたい。この問題なんです。

 たとえば各きまった大企業なりそういう企業の職場では、会社もいろいろの教育計画を立てております。あるいは組合もそういうことをやっております。しかし、この人たちにはそういうものが一切ない、組織的な教育のものが。これは労働省としてもいろいろな試みがあることは知っております。またやろうとしておることも知っておりますけれども、しかし、これは本格的なものじゃないですね。したがって、この人たちが仕事をしながら資格が取れるという制度をもっと拡充してもらいたい。いまある資格を取るためには、学校を出るとか、少なくともある時期に学校を出るとかいう制度があります。学校というのがあります。その学校というものは、こういう場合でも一月とかそういう仕上げのときは必要だと思いますけれども、働きながら上にのぼっていく階段をつくってもらうという考え方で、いろいろな資格の付与を考えていただきたい。いままできまっているようなちゃんとした規定のあるような階段とは別に、働きながらより高い資格が取れるような制度をぜひとも考えてあげなければならない人たちだと私は思います。また、この出かせぎの人たちに限定していいますれば、つまり仕事をしている間ではなくて、失業保険をもらって郷里へ帰る、この時間にそういう訓練の時期を設定して考えるということは、その人たちはぶらぶら遊んでいる人ばかりじゃないけれども、そういう人たちが往々おる。その人たちは人材の一つの浪費です。そういう意味で、家へ帰っているときに、そういう訓練の設備なり機関を集中して考えてみるとか、いろいろな方法があると思います。そういうふうな建設労働者、特に臨時と思われる人たち、出かせぎ的な人の教育という問題を、もっと総合的に考えていただきたい、こういうことなんですが……。

 

○加藤国務大臣 政府委員をして答弁させます。

 

○遠藤(政)政府委員 和田先生御指摘のとおり、建設労働者、なかんずくこの中でも出かせぎ労働者といわれる人たちが、日本の経済の成長発展をささえた大きな原動力であることは、もう申すまでもないと思います。こういう人たちが確かに今後ともさらに重要な役割りを果たすであろうことは、自明の理でございます。昨年私どものほうで調査いたしました技能労働力不足状況によりますと、全体の技能労働者不足が百二十五万人といわれております。その中で建設関係の技能者の不足が約二十四万、非常に大きな割合を示しております。そこで私どもは職業訓練の面におきましても、こういった建設関係の技能者の養成に重点を置いて推進いたしてまいっておりますが、ただいま御指摘のような、主として出かせぎ労働者の人たちがいろいろな資格を取れるような方策を講じる。あるいは臨時的な職業というような考え方を捨てまして、本来的な建設関係に必要な技能者という観点から、こういう人たちの一そうの技能の向上といいますか、さらにそういった人たちにいろいろな資格を取得させる、こういう方向でいろいろな施策を講じてまいっておりますが、四十八年度におきましては現在あります全国三百数十校の県が設置しております職業訓練校あるいは事業団の職業訓練校におきまして、こういった出かせぎの、いま御指摘のようないなかへ帰って遊んでおられる時間を利用しまして、無料で訓練校に入って訓練を受けられる、あるいは出かせぎをして働いている時間中にも成人訓練で一週間程度の訓練を受けて、それによって一定の資格をとり得るような、こういう方向でそれぞれの技能者の地位の向上をはかるような施策を進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。

 

○和田(耕)委員 この問題を私もいろいろ考えてみたいと思います。この問題は単に出かせぎの問題だけでなくて、たとえば、これは私は厚生大臣にも三年ほど前にも申し上げたこともあるし、文部大臣にも申し上げたことがあるのですけれども、つまり働きながら資格の取れる階段というものは、看護婦さんの場合――医者なんというものは三、四年働いておるから全く人とは違った技術を持っているということを考えるのはあつかましいので、やはり医者でも医者に準じた資格というふうなものがあり得るだろうと思うのです。看護婦さんは十年、十五年もやってその範囲の仕事は医者がなくても処置できるような資格を与えたほうがいいと思う。第一、お医者さんの必要なところには彼らは行かないのですから、そういうようなところにはそういう人がおって、本務の人と連絡をとって処置することも必要だし、つまり働きながら相当の経験を持っている人が、医者を含めて、あるいは先生を含めて――先生でもそうですけれども、たとえば特殊学級なんかの教育を見たらよくわかる。特殊学級の教育を見ますと、ものを言っても黒板に書いてもわかる相手じゃないのです、知能の薄弱な人は。あの教育を見ていると、遊戯をさせて、たま遊びをする、ころんでいったたまを拾って持ってくるというのが先生の役目なんです。こういうふうな先生は、普通の資格のある先生でなくていいのです。十人要るものなら十人資格のある先生を集めなくても、三人の資格のある先生で、あとの七人はその教育の補助者としての地位を与えるというような教育制度をつくったらいいのです。その補助者の資格をつくるとか、そういうふうな考え方、これはいまの実際の労働をしている人の全般的な問題だと思うのです。特にいまの建築労働者、こういう人にはそういうことがなかなか与えにくい。これは特に政府が考慮してあげないと、なかなかやれないという問題がありますから、ぜひともそういうふうな、総合的に訓練をし、組織的に一つの階段をのぼらせてやるような制度をつくって、一つの励みあるいは希望を持たせていくという観念が必要だと思うのです。そういうふうな問題もぜひとも考えていただきたいと思うのです。

 

○加藤国務大臣 声なき声というか、声なき民の要望というものはやはり政治家がよく考えなければならぬ。これは批判ではありませんけれども、実際に試験勉強までは一生懸命やるが、入ってみて何を学校でやっておるのか、こういうような問題は言いにくいのですが、御承知のとおりで、建築なら建築で働いておる、実際ここにおってその建築がいろいろな学問的な足らないところをやりたい、こういう方はだてやおろそかでそういう訓練なり学校に行くのでありません。そういう意味からいってもこれはほんとうに、先ほどの住宅対策と同じように、私は心から和田議員の御意見に同感でございます。

 

○和田(耕)委員 最後に、関連した問題なんですけれども、この人たちが仕事につくまでの労働紹介の問題は、これはその必要がある、あるいはそういうしきたりがあるという問題もありますけれども、これは安定局長、もっと政府として積極的にまともな紹介の路線に切りかえていくことが必要だと思うのですけれども、どうでしょうか。

 

○道正政府委員 おっしゃるとおりでございます。いわゆる出かせぎ労働対策の出発点は就労経路の正常化、要するに職業安定所を通していただくということであろうと思います。われわれといたしましては県あるいは市町村の協力を得まして、極力その方向でやっておりますが、県により、それから業種によりまして、かなりなアンバランスがございますので、就労経路の正常化というのにはほど遠いのが現状でございます。しかしながら、たとえば賃金不払いであるとか、あるいは災害のデータを見ましても、職業安定所を通して就職していただいた方は、やはり全体としては少ないのでございます。そういう意味で、私は出かせぎ労働者の皆さんの就労経路の正常化を一段と努力したいと思いますが、そのために、たとえば安定所を通すと税務署に所得が申告されて不利になるとかいう根も葉もないことが、案外ネックになっておったりいたしますので、徐々には高まってきておりますけれども、これを何とか飛躍的に、極論すれば全員が安定所を経由して就職していただくようなふうに、一日も早く持っていきたい。そのために四十八年度は四月から夏方の出かせぎの予算が出かけるわけでございますから、そういう時期にも間に合うように検討いたしたいというふうに考えております。

 

○和田(耕)委員 ぜひともひとつお願いしたいと思います。そのためにも、いまの住宅の問題とか総合的な教育の問題とか、そういうことを完備して、そこを通じて来た人はそういうふうな条件が得られるというようなことになりますと、そういうことが実際に実ってくるわけですよ。そういうことをぜひ総合的に考えていただきたいと思います。

 最後に、今度の、例の通勤途上の問題ですね、あれは日雇いの人たちには適用されますか。

 

○渡邊(健)政府委員 日雇いの人たちでございましても、労災保険に加入しております事業場の人たちには全部適用になるわけでございます。

 

○和田(耕)委員 そういう問題で、いまの一般労働者が享受しているいろいろな福祉が日雇いの人たちにいろんな理由であたらない問題がたくさんあると思うのですね。そういう問題を含めて、必要があれば、屋外労働あるいは臨時の肉体労働者に対する特別の法律的な措置が必要であるかどうかわかりませんけれども、それなしにできるかどうかわかりませんが、そういう問題を含めてひとつ御検討をいただきたいと思うのです。

 

○道正政府委員 建設労働法――出かせぎを中心といたしましてそういう法律をつくったらどうかという御意見は、各方面から実はございます。私どもも中央職業安定審議会で御検討をいただきまして、現在は、雇用審議会――これは建設行政とかいろいろほかの行政部門にもわたりますので、雇用審議会の場で検討するのがいいだろうということで、すでに雇用審議会におかれましても検討をお始めいただいております。そういう検討の結果を見まして、所要の措置を講じたいというふうに考えております。

 

○和田(耕)委員 これで終わりますけれども、最初に申し上げました。室内労働者とあまり区別がないような状態に近づけていかなければなりません。その場合に、たとえばどうしても屋外に働く場合には、冷暖房をつけるというわけにいきませんから、やはり一定の酷寒あるいは酷暑という条件のもとにおいての労働というものをどういうふうに扱うかという問題ですね。それと、いまの住宅あるいは生活環境の問題、これも普通の労働者と同じような、あるいは近づいたような条件をつくるという問題、そしてまた教育訓練を総合的、組織的にやっていくという問題、その他のいろいろな労働法規、福祉法規が他の労働者と同じように享受できるような問題、そういうふうな幾つかの問題があると思いますけれども、私どもいろいろ検討してみますけれども、ぜひともひとつ御検討をいただきたいと思います。また、同じ屋外労働者といっても、最初に申し上げたとおり、出かせぎを基盤とした労働もあれば、あるいはりっぱな企業に雇用されておる労働者もおります。国鉄とか私鉄の工事、線路工夫のような人はそういうものですね。あるいは電気工事、ガス工事の人もそういう人ですね。いろんな職場によって違った対策が必要だと思いますけれども、いずれにしましても、急いでやるべきことは、労働組合もない、いろいろな法的な援助も非常に少ない出かせぎの不安定な人たちに対しての援助というのは非常に急ぐことだと思いますから、ぜひともひとつ御検討をいただきたいと思います。