140-衆-予算委員会第四分科会-1号 平成09年03月03日

 

本分科会は平成九年二月二十五日(火曜日)委員

会において、設置することに決した。

本日の会議に付した案件

 平成九年度一般会計予算

 平成九年度特別会計予算

 平成九年度政府関係機関予算

 (厚生省所管)

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○田端分科員 ありがとうございました。

 次に、日雇い労働者の健康保険の問題についてお尋ねしたいと思います。

 健康保険法の改正、つまり医療費の負担増というものは大変な問題だと思いますが、その中で、老人医療の負担増等ももちろん問題ではあるわけですけれども、別の視点から少し問題を提起させていただきたい、こう思います。

 それは、健康保険法六十九条の七にある被保険者、つまり日雇特例被保険者、日雇い労働者とか季節労働者、あるいは臨時の、港湾とか山林等における現場の労働者、こういう人たちが対象になる保険でありますけれども、つまり、これも一緒に負担が強化されるという点について非常に矛盾を感じるわけであります。

 私の地元、大阪市の西成区というところは、非常に庶民的で人情豊かな町でありまして、今NHKの朝のドラマの人気番組である「ふたりっ子」というのは私の地元が舞台になっている。天下茶屋というところでございますけれども、この西成に愛隣地区というのがございまして、ここに労務者が約二万数千人います。このうちの約半分、九千人が、今申し上げた六十九条の七の被保険者に入っているわけであります。こういう特例を受けているということになるのですが、これは間違いございませんね。ちょっと確認させていただきます。

 

○高木(俊)政府委員 今先生がお尋ねの健康保険法六十九条の七の被保険者、いわゆる日雇特例被保険者と呼んでおりますが、これは、かつては日雇労働者健康保険法という独立した制度がございましたけれども、現在は健康保険法の一般の被保険者と同様の形で健康保険に適用されているわけでございます。

 今、西成区の愛隣地区の方が何名入っているかというのはちょっと手元に数字がございませんが、まさに日々雇用される方あるいは季節的業務に就労される方等がこの日雇特例被保険者ということでございまして、今、大体五万人ぐらいが全国で適用されております。

 

○田端分科員 今回の被保険者の負担増というのは、私としては素直にどうかなと思います。中でも、こういう日雇い労働者たちのことを考えますと、この人たちが、現行の一割負担が二割になる、あるいは外来としての薬剤についても一種類一日十五円ということで負担がふえる。同一保険医療機関に一カ月二・一回通院して一回三種類の薬を七日分もらった場合、現行でいけば千四百七十円であるにもかかわらず改正に伴って三千六百円になる、こういう数字の資料を厚生省からいただいております。つまり、二千百三十円の負担増になる。これはこういう日雇い労働者にとっては、例えば西成で二千円あれば一日生活できるわけですから、そういう意味では大変な負担になる、こう思います。こういう今日のような不況の中で仕事も毎日あるわけではありませんし、そういう意味では、こういう人たちに同じ率で負担が強化され

るということについては非常に矛盾を感じるわけであります。この人たちも、そういうことから病院に行く回数を減らしたり、あるいは健康管理に対して少し無理をしたり、こういうことにもなりかねないと思うわけでございます。

 そこで、私が言いたいことは、つまり今回の改正案の中からこの六十九条の七に該当する対象者、こういう人たちを思い切って除けないか、こういうことです。先ほどお話がありましたように全国で約五万人ということで、政管健保の対象になっている被保険者は全国で二千万人、そして被扶養者が二千万人と聞いております。この政管健保の、現状のままでいった場合に平成九年度で予想される赤字が八千三百億円ということになれば、それを解消するために今回の改正があるのだろうと思いますけれども、そういう全体的な数字から見ればこの六十九条の七に該当する対象者というのはごく一部であるわけですから、そういうことを思うわけです。

 この六十九条の七に該当する人たちの負担分というのは今回の改正でどのぐらいふえるのか、わかりますでしょうか。

 

○高木(俊)政府委員 平成九年度について試算をしてみますと、いわゆる一部負担の増に伴うものが約九億円ほどふえる格好になります。

 

○田端分科員 今お話しございましたようにわずか九億円でございますから、八千三百億円という数字から見れば正直言って何とかならないのか、こういう思いがいたします。

 そこで、厚生大臣にお尋ねしたいわけですけれども、大臣は一昨々日ですか、郵政三事業の民営化に熱い情熱をお持ちの政治家として、わずか九億円ぐらいの負担がこの人たちにかかってくるこういう問題に対して、一緒くたにするということじゃなくて、何か温かい配慮なり、そういうことは政治家としてできないのだろうか、こういう思いがするわけでございますけれども、大臣、いかがでございましょうか。

 

○小泉国務大臣 保険の仕組みとしてこうなっているわけで、これだけ除外するとなると、私は、またほかにもいろいろな影響が出てくるのではないか。国保は三割、健保は二割、そして高齢者に対しては定額ということになっておりますけれども、確かにお気持ちはわかりますけれども、制度としてこれを除外するというのは私は無理があるのではないか。当然、低所得者に対しては特別の配慮もありますし、高額療養費についてはまた特別な配慮がなされているわけでありますので、そういう点で御理解をいただければなと思っております。

 

○田端分科員 もちろん制度として、仕組みとしてそうでございますけれども、しかし、そこは政治の力でやはり弱い立場の人々に対して手を差し伸べるというのが本筋ではないか、こう思います。今直ちにということは無理であったとしても、ぜひひとつ、そういう現実、矛盾もあるのだということもお酌み取りいただいて、またこれからもそういうことも頭の片隅に入れていただいて御検討願いたい、こう思います。

 次に、准看護婦の問題についてお尋ねしたいと思います。

 先日、テレビのドキュメント番組を見ていましたら、この問題が大変詳しく報道されておりまして、私も驚きを持ってつい見てしまったという番組がありました。それは准看護婦の実態についてレポートした報道番組でございましたけれども、一つは、准看護婦と正看護婦というのは相当差があるのだなということを、現場の違いというものを改めて思い知ったわけでございます。特に、准看護婦の生徒さんたちはまことにけなげに一生懸命働き、仕事し、学んでいる、こう思いました。例えば、午前中、診療所で働いて、もうお昼の食事も時間がないぎりぎりまで働いて、そして、病院の先生に、行ってきますとごあいさつして、学校に走っていって飛び込む。それで夕方まで勉強して、そして夕方、診療所に戻ってきてまた働く。八時、九時まで働いて、夜は寮に帰ってまた勉強する。こういう生活の実態がその番組で浮き彫りにされておりました。我々の知らないところで非常に努力されているのだなということを感じたわけであります。

 厚生省の方から准看護婦問題調査検討会報告書というのをちょうだいしまして拝見いたしました。平成八年十二月二十日付でまとめられた報告書でございますが、これを読んでも、そういう中身が明確に指摘されています。

 一つは、例えば准看護婦養成所に入学するに際して、特定の医療機関で働くということを義務づけられているといいますか、そういうことがやはり問題のようでございます。つまり、労働基準法とのかかわりになると思いますが、それが入学に際しての契約事項になっているとすれば問題であろう。

 それから、それと表裏の関係になるのですが、奨学資金の貸与を受けるから、三年間なり二年間なり、お礼奉公といいますか、その病院で働く、こういうことが、つまり、雇用と奨学金の貸与とがごちゃまぜになったような実態が全国でいろいろあるようでございます。

 それから、長時間労働といいますか、あるいはお給料も大変安いようでありますし、そういう労働条件が非常に厳しいということもこの報告書の中にいろいろ指摘されている現実だ、こう思うわけです。

 例えば、一人の生徒が特定の医療機関から百万なり二百万なりという奨学金を受けることによって准看護婦の学校に通う、そして一生懸命勉強して資格を取って、その後今度は、借りたためにその借りた医療機関で二年とか三年、お礼奉公といいますか、そういうふうな口約束なり契約なりというものが今までの慣習でどうもあったということがこの報告書の中でも言われているわけであります。奨学金を、借りたものは返すのはこれはもう当たり前のことですが、しかし、それと働くこととをセットにしたそういうことというのは非常に問題があろうか、こう思います。

 そこで、厚生省の方でもいろいろ御検討されて、そういったいろいろな矛盾のあるこの准看護婦の養成所の問題について、四月一日から思い切って指定基準を改正するというふうなことをお決めになったという報道を先般見ましたけれども、これはどういうふうに改正するのか、本当にそういう矛盾が解決されるのだろうか、いつからそういうことになるのだろうか、こういうことを感じますけれども、いかがでございましょうか。