151-参-厚生労働委員会-9号 平成13年04月12日
平成十三年四月十二日(木曜日)
午前十時開会
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出席者は左のとおり。
委員長 中島 眞人君
理 事
亀谷 博昭君 斉藤 滋宣君 柳田 稔君
沢 たまき君 井上 美代君
委 員
阿部 正俊君 海老原義彦君 大島 慶久君 狩野 安君
釜本 邦茂君 木村 仁君 久野 恒一君 田浦 直君
鶴保 庸介君 今井 澄君 小川 敏夫君 川橋 幸子君
木俣 佳丈君 長谷川 清君 木庭健太郎君 山下 栄一君
小池 晃君 大脇 雅子君 西川きよし君 黒岩 秩子君
国務大臣
厚生労働大臣 坂口 力君
副大臣
厚生労働副大臣 増田 敏男君
大臣政務官
厚生労働大臣政務官 田浦 直君
事務局側
常任委員会専門員 川邊 新君
政府参考人
法務省人権擁護局長 吉戒 修一君
文部科学大臣官房審議官 田中壮一郎君
厚生労働省労働基準局長 日比 徹君
厚生労働省職業安定局長 澤田陽太郎君
厚生労働省職業能力開発局長 酒井 英幸君
厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 岩田喜美枝君
経済産業大臣官房審議官 北村 俊昭君
中小企業庁長官 中村 利雄君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進
するための雇用対策法等の一部を改正する等の
法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○小池晃君 結局、新たな考え方でそれを示すんだと、そういう程度のお話だと思うんですけれども、実効性を伴う措置というのは具体的には余りないということになるわけです。結局、法律そのものに立ち返ってみても、これは年齢制限禁止じゃないわけで、制限の緩和であります。しかも、それは努力規定だということにすぎないわけでありまして、やはり本当にこれが中高年の雇用危機を打開するものになるのかどうかという点では、私、甚だ疑問を持っているわけです。
さらに、引き続きちょっと別の問題について議論をしたいと思うんですが、雇用をどうやってふやしていくかという問題であります。
政府は四月六日に緊急経済対策を発表いたしましたけれども、この緊急経済対策の中で、新たな雇用を創出するということについて、一体どのような対策を厚生労働省としてうたっていらっしゃいますでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今回の緊急経済対策では、新たな雇用創出という観点では、長期的な経済活力を引き出す規制・制度改革等への取り組みというのがあります。
厚生労働分野では、具体的には保育分野におきまして、公立保育所の業務の委託先を社会福祉法人以外の民間事業者とすることが既に可能である旨の周知徹底を図ることとか、介護分野におきまして特別養護老人ホームと同様の要介護者に対応できるようなケアハウスについて、一定の要件を満たす民間企業等が都道府県知事の許可を受けて運営可能となるよう検討を進めることということが盛り込まれております。
○小池晃君 今のが一体どうして雇用創出なのか、私全然理解できないです。だって、厚生労働省の雇用創出の項目で言っているのは、一つは医療のIT化です。それから今おっしゃった介護、保育の民間委託だと。
医療のIT化というのは、これは人減らしですよ。結局一時的には人減らしになっちゃうんです。それからさらに、介護も保育も民間委託だと。これは、公的サービスから民間委託していけば実態としてどうなっているかといえば、介護現場でも常勤職員がどんどん首切られて、そしてパートにどんどんかわっているんです。だから、この雇用対策というのは本当に私は見てあきれてしまった。一体何でこれが雇用対策かと、雇用創出じゃなくて、これは逆に雇用減らしだというふうに言わざるを得ないような中身、そんなものしか出ていないわけです。
私、本気で雇用創出と言うのであれば、こんな民間委託とIT化なんということじゃなくて、やっぱり本腰を入れて社会保障対策を進める、公共事業から社会保障に予算配分を大きく変えると。これがなければ雇用創出とはとても言えないというふうに思うのであります。
一方、じゃ具体的に雇用創出ということで、さらにやっていることはどうかということで、ちょっと取り上げたいのが緊急地域雇用特別交付金の問題であります。
九九年六月の緊急雇用対策で緊急地域雇用特別交付金が創設されております。総額二千億円の基金なんですね。これを地方自治体に交付して、地方自治体が独自の工夫で事業を起こす、雇用創出効果があって、かつ住民に役立つ事業を行うと。これ全国の自治体で活用して失業者の就労事業が行われているわけですけれども、九九年六月の緊急地域雇用特別交付金、この制度をつくった理由を御説明願いたいと思います。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 平成十一年六月の緊急雇用対策、図らずも今回と名称が同じでありますが、当時の緊急雇用対策は、やはり当時として厳しい雇用失業情勢があったということが背景であります。そうした中で、地方公共団体が地域の実情に即して創意工夫に基づく事業を実施すると。その場合に、ポイントは臨時的な雇用就業機会を図るということが目的でございました。したがいまして、平成十三年度末までの臨時応急の措置ということでこの二千億の基金ができた次第であります。
○小池晃君 非常に景気が悪いので、臨時的であったけれどもやったんだと。これは失業者からも住民からも大変歓迎されています。
京都では二〇〇〇年度に交付金を使って何をやっているかというと、地下鉄の駅の放置自転車の防止啓発事業というのをやっているんです。一駅に二人から六人配置して、自転車を持ってきてとめようとする人に、近くの駐輪場に置きなさいと案内したりあるいは放置された自転車にチラシを配ったりする。これをやって、それまでは歩道に自転車がいっぱい散らかっていたのが歩けるようになったということで、住民からも大変好評だと。ところが、事業期間が終わったらもとどおりになってしまったというんですね。これは引き続きやってほしいという要望があって、二〇〇一年度は対象となる駅をふやす、一日当たり七十二人新たな仕事がふえると。これは大体高齢者が応募してきているんです。ある委託先では、十六人の募集に五十人以上が応募した。その半分は六十歳代だったそうです。
この緊急地域雇用特別交付金、金額が少ないとか期間限定が六カ月だとかいろいろ問題点はあるんですけれども、でも全国で二〇〇〇年度までに二十三万人が就労の見込みだと。地方自治体がさまざまな工夫をして交付金を使った事業を行って住民にも喜ばれている、失業者の臨時的なつなぎ就労という点でも一定の役割を果たしているんじゃないかと思うんですが、この評価、いかがでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) この二千億基金は、十三年度末までに三十万人の臨時的な雇用就業機会をふやすという目標でございます。今、小池委員おっしゃるように、二十数万人、十二年度で見込まれますので、そうした意味では着実に取り組みが進められていると私どもも考えております。
○小池晃君 ところで、九九年六月の緊急雇用対策というのはこれだけじゃない、いろんな施策があるわけです。四つぐらい雇用の奨励金、交付金があると思うんですが、それぞれの事業の目標と到達をお示し願いたいと思います。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 四つございまして、一つが新規・成長分野雇用創出特別奨励金でございます。これは十三年度末までで十五万人を対象にしておりますが、本年二月までで奨励金の支給申請が約二万六千人という状況でございます。二つ目が緊急地域雇用特別交付金、これは先ほど申しましたように三十万人目標に対し十二年度の見込みを合わせて二十三万人。三点目は人材移動特別助成金でございまして、十二年度末までのこれは助成金でありますが、対象者七万人想定のところ、十三年二月現在、支給決定一万一千人。四点目が緊急雇用創出特別奨励金、十三年度末までの対象者二十万人を想定しておりますが、十三年二月現在、支給申請ベースで七千人となっております。
この四つの奨励金等でございますが、それぞれ性格が違いまして、常用労働者を雇い入れることを目的とするもの、あるいは六カ月以内の短期の雇用就業機会に限り対象にするもの、さらには地域の完全失業率が著しく悪化した場合に限り発動されるものと種々ございますので、目的に応じてこの実績等が出ておりますから、その活用度合いを横に並べて一概に評価はしがたいと、こう思っております。
○小池晃君 いや、でも性格の違いはありますよ。それはありますけれども、でも目標に対する到達という点では、今おっしゃったとおり、四つの中では緊急地域雇用特別交付金がその目標に照らす実績という点でいえばこれはやはり一番目標に近い、一番言ってみれば活用されているということはこれは事実として明らかじゃないかと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 六カ月以内の臨時応急の雇用就業機会の創出という目的三十万人に対して二十三万と、これは目的にかなり近づいていると思いますが、四番目に申しました緊急雇用創出特別奨励金、これは例えば失業率が五%を超えたときに発動するという要件でございますので、現在、幸いにも失業率が五%に乗っていないという状況では発動されないので実績が伸びないということで、これは非常にいいことではないかと、こう思っております。
○小池晃君 目標に対して達成していると珍しく褒めているんだから、そのくらい素直に認めてくださいよ。
〔委員長退席、理事亀谷博昭君着席〕
なぜこの交付金が活用されているのか、私はこの交付金の性格にやはりポイントがあると思うんです。ほかの補助金というのは、既存の事業、既存の仕事を対象にして、雇用したその事業主にお金が渡されると。それに対してこれは全然違うんですね。これは新たに就労事業を起こした自治体に交付するんだと。だから、ただ単に事業主にお金を渡すんじゃなくて仕事起こしがあるわけですよね。ここがほかの制度と決定的に違うと。雇用のミスマッチが言われているわけです。特にやっぱり中高年に厳しいと。そういう中で、最もそういう厳しい層に合わせた職起こしがやられている、だからこそ私はこれの達成率が高いんじゃないかなというふうに思うんです。
実際、大阪で私が見てまいりましたのは、西成区の高齢者の特別清掃事業という釜ケ崎地区の事業です。これは釜ケ崎地区、いわゆるあいりん地区の労働者の平均年齢は五十四・四歳、高齢化しているんですね。その上、不況で職がないと。生活道路の清掃事業とか公園の掃除とかペンキ塗りとか、こういう作業で一日五千七百円の賃金だというんです。これは、昨年度二千八百十五人の登録だったのがことしは三千三十人ということで年々ふえている。これ最初は地方の単費事業でやっていたんだけれども、九九年から先ほどの特別交付金、これを使ってNPOに事業委託をすると。規模を拡大しているんですね、一日百二十五人分ふえたと。生活が少し変わったんだという声も上がっています。これだけやってもようやく一人の労働者が月に二、三回しかできないそうであります。それでも非常に歓迎されていると。
ところが、特別交付金というのは、今まで議論してきましたけれども、実は先ほどから強調されているように来年の三月で終わりだと。これがなくなると一体どうなっちゃうんだという声が上がっているわけです。先ほど局長も、これを始めた理由というのは大変雇用情勢が厳しかったから始めたんだと。その始めたときに比べて雇用情勢がじゃよくなったのか。これは全然よくなっていないわけで、むしろ悪化している。それなのにこの特別交付金事業はこのままでは来年の三月までに終了だと。
雇用対策を本当に強めるというのであれば、これをやめるなんというのはとんでもない、これはやはりもっと使い勝手をよくして、期間を延長して、金額もふやすべきでないかと、そう思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 臨時応急の措置としてできたものであります。したがいまして、当初決められた来年三月末までの期間、あと一年弱ございますので、その間にこの制度が当初の目的を十分達するようにその活用を促進していきたいということが現在考えていることであります。
○小池晃君 臨時応急でやったということは百も承知なんですよ。それでも雇用情勢がよくなっていないんだから、それを続けなさいと言っている。いまだ雇用情勢が改善していない、むしろ悪化しているわけです。本当に実効性のある、やはり空手形じゃない、本当に雇用を生み出す力のある雇用対策が今求められているんじゃないか。
この交付金事業の改善、継続の決議というのが全国の地方自治体で上がっているんですね。例えば、福島県では三月末までに九十の市町村のうち五十三自治体で意見書が採択されている。北海道では二百十二市町村のうち六十一自治体で意見書が採択されています。それから、三月には高知県議会、福島県議会でもこれを継続せよという決議が上がっております。
今年度いっぱいの制度ということなんだけれども、じゃもうそれは終了したとして、この交付金制度が終了しても、緊急のつなぎの制度として、つなぎの公的就労制度として、別の形でもいいからやはりこういう仕組みの、地方自治体に補助金を出して、そして地方が創意工夫を生かして就労事業を起こすと、こういう仕組みのやはり雇用対策を、これは今のが終わるんだということであれば、別の形でもいいからこれはやはりやるべきでないかと思うんですが、いかがですか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 私どもが基本的に追求し、また期待したいのは、地方におきまして地域の実情に即しつつ安定した雇用就業の機会がふえていくということであります。したがいまして、今回御提案しております雇用対策法等の一部改正法案の中でも、地域法を改正いたしまして、地方自治体主導の形での雇用創出という仕組みをつくって、国もそれに協力をしていくということを提案しているわけであります。したがいまして、本法案を成立させていただきまして、十月一日からその仕組みで本格的な安定した地方におきます雇用就業機会の創出に邁進していきたいと、こう思っております。
○小池晃君 私が言っているのは、雇用情勢は九九年六月にこれを始めたときに比べればむしろ悪化をしているじゃないかと。大臣は衆議院の委員会で何と言ったか。この交付金は緊急のときの当座の手当てだとおっしゃったんですね。
そういうことでいえば、今はむしろそのときに比べれば緊急性は高まっているんじゃないですか。今こそ緊急のときなんじゃないですか。恒久的な措置をもちろん考えていただくのは結構だけれども、臨時でやったけれども結構成果が上がっている。そういうものであれば、これは今まさに緊急のときで、九九年六月つくったときよりもさらに悪化しているわけですから、これはやはり形を変えてでもこういう就労を起こすと。今もう本当に何でもやらなきゃいけないときじゃないですか。これだけ深刻な雇用不安が広がっている、そんなときに格好をつけていられないでしょう。せっかくこれだけうまくいった制度があるのであれば、これをぜひやるというふうに、大臣、何でできないんですか。どうですか。
○国務大臣(坂口力君) 先ほどから議論が続いておりますように、この制度そのものは応急臨時に行われたものでございます。これは一応期限を切ってスタートしたことでございますから、この制度は制度として、一遍これはその制度で終わらざるを得ないんだろうというふうに思います。
〔理事亀谷博昭君退席、委員長着席〕
しかし、これからのこの雇用動向というものを見て、そしてどういう雇用対策がこれから一番適切なのかということを考えてまた新しい何か対策を立てるか、そして過去のものも参考にして考えるか、その辺のところはこれからの検討になるだろうというふうに思います。
○小池晃君 そんなのは何も言っていないのと同じですよ。
私は、実例でちゃんと検証されている、実際にこれだけやってきているじゃないか、目標に照らしたって結構いい線いっているじゃないかと。だから、これを参考にして、これをモデルにしてさらに続けるということは、何も私、全然理不尽なことじゃないと思いますよ。
そのことを検討しないのか。一般的にいろいろある中で検討していきたいというのではなくて、やはりこの緊急地域特別交付金、これを参考にしてやはり検討していく必要がある、そのくらいのことは言えないんですか。
○国務大臣(坂口力君) ですから、先ほど精いっぱいのことを申し上げているわけで、この制度そのものはこれは一応終わるわけですから、この制度をこれから継続するということは申し上げるわけにもいきません。
これから新しい対策が必要ならば必要に応じて練られるわけであります。ですから、過去のいろいろやられたことの中で非常によかったものはそれは参考にしながら新しいものがつくられるでしょうということを申し上げているわけで、それ以上のことは申し上げられませんけれども、しかし、かなりお答えをしているように思いますが。
○小池晃君 私も、本当に本気で雇用対策というのであれば、やっぱりこういう公的就労事業を起こすというやり方をぜひ続けるべきだというふうに考えます。
最後に、残された時間で職業能力開発促進法の改正の問題について何点かお聞きをしたい。
これは法の基本理念が変わるわけですね。「この法律の規定による職業能力の開発及び向上の促進は、」「経済的環境の変化による業務の内容の変化に対する労働者の適応性を増大させ、及び円滑な再就職に資するよう、労働者の職業生活設計に配慮しつつ行われることを基本理念とする」と。これは、本来、職業能力の開発というのは、これはもう転職しようがしまいが個々の労働者にとって大変大切なものだと。私は、労働者の適応性を増大させ円滑な再就職のために行うということでは、職業能力開発の基本理念がゆがむことになるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。