147-衆-予算委員会第四分科会-2号 平成12年02月28日
平成十二年二月二十八日(月曜日)
午前十時開議
出席分科員
主査 自見庄三郎君
中川 秀直君 桧田 仁君 松本 純君 山口 俊一君
大畠 章宏君 小林 守君 五島 正規君 春名 直章君
吉井 英勝君
兼務 鍵田 節哉君 兼務 藤村 修君 兼務 上田 勇君 兼務 保坂 展人君
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厚生大臣 丹羽 雄哉君
労働大臣 牧野 隆守君
厚生政務次官 大野由利子君
労働政務次官 長勢 甚遠君
政府参考人
(警察庁生活安全局薬物対策課長) 折田 康徳君
(外務大臣官房審議官) 赤阪 清隆君
(外務省経済協力局長) 飯村 豊君
(厚生大臣官房審議官) 堺 宣道君
(厚生省健康政策局長) 伊藤 雅治君
(厚生省保健医療局長) 篠崎 英夫君
(厚生省保健医療局国立病院部長) 河村 博江君
(厚生省生活衛生局水道環境部長) 岡澤 和好君
(厚生省医薬安全局長) 丸田 和夫君
(厚生省社会・援護局長) 炭谷 茂君
(厚生省老人保健福祉局長) 大塚 義治君
(厚生省児童家庭局長) 真野 章君
(厚生省保険局長) 近藤純五郎君
(厚生省年金局長) 矢野 朝水君
(労働省労働基準局長) 野寺 康幸君
厚生委員会専門員 杉谷 正秀君
労働委員会専門員 渡辺 貞好君
予算委員会専門員 大西 勉君
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本日の会議に付した案件
平成十二年度一般会計予算
平成十二年度特別会計予算
平成十二年度政府関係機関予算
(厚生省及び労働省所管)
午前十時開議
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○吉井分科員 日本共産党の吉井英勝でございます。
私は、きょうは、ホームレス、野宿生活者の人々の問題、これは、国民の基本的人権をどのようにしっかり守っていく国をつくっていくか、そういう非常に大事な問題だと思いますので、これを質問したいと思います。
最初に、今月の八日に宇都宮市のアパートで、住んでいた二十九歳の母親と二歳の女のお子さんが、収入がなくなって、水道、ガスなど、すべてをとめられて、食べるものもなく、子供は衰弱した体で凍死をしてしまった、母親の方も衰弱して危険な状態だったという本当に痛ましい出来事がありました。アパート代の滞納で追い出されていたら、文字どおりホームレスとなり、行旅死亡者ということになっていたわけです。
私は、この痛ましい出来事というのは、今日ホームレス予備軍が全国でたくさんいらっしゃる、こういうことを示しているというふうに思うわけです。
そこで、現在、ホームレス、野宿生活者の人々は全国で何人いらっしゃるのか、まずその実態を把握しておられるかどうかを伺いたいと思います。
〔主査退席、山口(俊)主査代理着席〕
○炭谷政府参考人 現在、全国のホームレスの人数につきましては、昨年十月に各地方自治体から現在把握している直近の数字について集計いたしました。その結果、約二万人でございます。これは、およそ一年間で四千人程度増加しているということになっております。ただ、この中には、大どころの大阪市は一年前と同じ数字を挙げてきておりますから、大阪市はもっとふえておるだろうと推測されますので、その増加分は入っておりません。
なお、独自に人数を把握している東京都の推移を見ますと、平成八年三千五百人、九年三千七百人、十年四千三百人、平成十一年には五千八百人という形で増加しているわけでございます。
また、私ども、ホームレスの状況を把握いたしましたところ、単に大都市だけではなくて、いわば主要な地方都市までふえているというような状況を把握いたしております。
○吉井分科員 把握しているとおっしゃるのだけれども、しかし、現在の状況をきちっとつかめていないわけですよ。
これは、大阪市大の木下教授が昨年、毎日新聞の「オピニオン」で述べておられますが、第一に、野宿生活者の実態すらきちんと把握できていない、厚生省は全国で二万人ぐらいだろうと言うだけで、積極的なイニシアチブをとろうとしていない、そこが問題だという指摘がありますが、私は、これを重く受けとめて、早急に本当の状況はどうなのかということをまずつかむということをやってもらわなきゃならぬというふうに思います。
日本でホームレスが急増したのはバブル崩壊後の九〇年代不況の始まりからでありますが、実は、大阪のあいりん地区、西成の状況で見てみましても、これは大臣に見てもらえるように本当はもっと拡大したものを持ってきたらよかったのですが、西成労働福祉センターのデータでは、日雇い(現金)求人数の推移というのが、八九年をピークにして、ここからバブル崩壊後どんと半分に減るのですね。現在、四分の一なんです。
つまり、これはどういうことかといいますと、まず、こういう地域では、これまではとにもかくにも日雇い仕事、現金収入があったから、それで簡易宿泊所へ入れたんですね。収入がなくなったから、そこへも入れなくなった。それがホームレスということにつながっていっているという、九〇年代不況の中での一断面を見ることができると思います。
こういう動きについてはつかんでいらっしゃいますか。
○炭谷政府参考人 ただいま先生おっしゃられましたように、私ども、地方の実情、いわば数字だけではなくて、もっと実態面というものも把握しなければいけない、そのようにできるだけ努力をしているわけでございます。
そこで、なぜホームレスがふえてきたか。私ども、先生のおっしゃいました、いわば日本の経済構造、産業構造の変革がホームレスの増加の主要な一因であろうというふうには把握いたしております。先生今披露されました大阪市立大学の森田先生も私どもの委員会の中に入っていただきまして、その分析に努めております。
したがいまして、今先生が言われました西成区の状況、私も現地に行ったり、また西成の住民の中には私の知人、友人がかなりおりますので、そのような人たちを通じてよく実情を把握いたしております。
○吉井分科員 今おっしゃった、経済構造、産業構造という点では、この点でも木下教授も指摘しておられますが、「市場原理や規制緩和で社会全体を組み立て直そう、という動きが加速しているからだ。」「つまり“弱肉強食”の競争原理が大手を振ることにほかならない。」その典型が野宿生活者の急増であり、そして最近では、「長引く不況でリストラによる失業が普遍化し、正規の労働者も野宿に追い込まれるケースが増えている。」と。そして、それに対してセーフティーネットをきちっと張るということがされていない、こういう今日のいわゆる市場原理主義、規制緩和万能論で行き着いた一つの問題がここにあるということを指摘しております。
実は、先ほど東京の例をおっしゃいましたが、厚生省の東京二十三区、横浜、川崎、名古屋の合計で見てみますと、九六年、九七年、九八年、九九年と見たときに、対前年比で、九七年は七・九%の増、九八年は二一・四%の増、九九年は三六・四%の増。つまり、これは、九七年で見れば、やはり消費税の増税など国民負担がふえて消費不況が深刻になった、その不況の中でふえてきた上に、九九年からは大企業のリストラがさらに加速をしているということを見ることができます。
大阪市大の都市環境問題研究会の調査中間報告を見ましても、八カ月未満と八カ月未満から一年八カ月未満というのを見ますと、八カ月未満というのは、ちょうど調査をしたのが昨年八月ですから、おととしの十二月末から昨年八月までなんです、それからさらに以前の一年八カ月未満というと九七年四月から九八年十二月末までの間で、この期間を合わせると五八・三%。つまり、六割近い人が、九七年の消費不況が深刻になってからのホームレスの方の急増なんだということを見ることができると思うのです。
この点では、私は、木下教授が言っておられるように、経済構造の問題とあわせて、今日の消費不況が深刻になってからの問題がここにはっきりと出ていると思うのですが、こういう点はきちっとつかんでおられますか。
○炭谷政府参考人 現在の全国的なホームレスの原因というのは、一つは、経済、産業構造の変化ということが、先ほど申し上げたとおりあろうかと思っております。それと、もう一つ主要な原因というのは、家族の崩壊といいますか、実際、ホームレスの内容を見てみますと、やはり離婚している人もしくは単身の問題という社会的な要因というのが二大要因だろうというふうに、今まで私どもいろいろな学識経験者の方々から御意見をお聞きしますと、主要原因としてはそのようなところにあるのではないかなというふうに思っております。
それに絡みまして、例えば、ホームレスの方々自身がアルコール中毒、依存症の方とか、精神障害等の疾病を有している方とか、また、サラ金に追われているというような他の要因も付随的に絡み合っておりまして、いわば現在のホームレスの要因というのは、大体日本では複合的な要因で生じているのではないのかなというふうに思っておりますので、先生今御指摘されました事項について、直接的なものは私どもまだわかりませんけれども、大体今の識者の意見というのは、このようなところから生じているのではないかなというふうに思われております。
○吉井分科員 深刻な不況の中で、経済状況が個々の家庭に直撃してきて家庭崩壊につながっていっている。家庭崩壊というのも、そういう社会的背景をきちっととらえて言わないと、非常に不正確な見方になります。
それから、六割の方は最近なのです。これは特に九七年以降のことであって、それは、アルコール依存だとかなんだとかいうことでは説明がつかない問題です。やはり、本当の原因というのはそこにあるということをきちっとつかんだ上でどういう対策をとっていくかということを見ておかないと……。だから、そこが大事だからここまで議論を進めてきたわけです。私は、家族崩壊が全くないとか、アルコール依存がないとか、そんなことを言っているのではないのです。しかし、そこに至る経済社会の背景というものをきちっとつかまえておかないと、本当の対策はできないよということを申し上げておきたいと思います。
一昨年暮れ、衆議院の決算委員会の大阪・あいりん地区調査に私も行きましたが、冬場に入って赤痢が集団発生しているときでした。地元行政関係者が私たちに、赤痢に感染しないように注意してほしいと言ったぐらいでした。
ところで、ホームレスの中で、病気と冬の寒気による凍死者など、行旅死亡者、緊急入院による生活保護者が今どういう状況になっておりますか。
○炭谷政府参考人 現在、行旅病人及行旅死亡人取扱法という法律がございまして、このような事項を扱っているわけでございますけれども、行旅死亡人の人数については、正式の統計はございません。ただ、同法の第九条には、身元のわからない行旅死亡人については、市町村が掲示場に告示し、かつ官報や新聞に公告することが義務づけられておりますので、私ども、昨年度、平成十年度の官報に公告されました行旅死亡人の数を数えてみましたら、千百五十二件でございました。ただ、数えただけでは、今先生の御指摘されましたホームレスがどれだけ含まれているかということはわからないわけでございます。
そこで、先生の御質問もございましたので、近県の東京都、千葉県の担当者にどういう感覚なのだろうかということをお聞きしました。そうしましたところ、東京都では二百三十件、これはたまたま偶然なのですけれども、平成九年度、十年度とも二百三十件前後の行旅死亡人がいらっしゃったということでございます。この一般的な傾向を見ますと、東京都の感覚は、やはりホームレスの人が、特に台東区、新宿が多うございますので、かなり含まれているのではないか。ただ、奥多摩の方にもいらっしゃる。これは自殺者でございます。そういうものが含まれている。それから、千葉県では十数件でございました。ただ、千葉県の場合は、自殺者などがかなりありまして、ホームレスがどの程度含まれているかということについて、実務者の感覚としては少しわからないというようなことでございました。
○吉井分科員 行旅死亡人というのは、もともとどういう方かわかっておれば、家族の方が行ったりして、割ときちっとわかるわけなのです。これは基本的にはやはりホームレスの方を中心とした死亡者であるわけです。
今全国で、年間千百五十二名とおっしゃいましたが、大阪における推移というのは、大阪市民生局資料などをもとに見てみても、行旅死亡人の数と、行旅病人で緊急入院して生活保護をかけたのだが亡くなられたので保護を廃止した、この数を合わせた方が、本当はもっとホームレスによる行旅死亡あるいはそれに類するものをきちっと把握することができると思うのです。これで見てみますと、最近、大体年間四百人台ですね。これは大阪市だけで見ることができるのです。
これは新聞等でも紹介されておりましたが、寒い日の夜は寝たら危ない、一晩じゅう歩き続けることがあると。実際この冬も、大阪だけでも、二月八日、九日の雪の積もった日に三人の野宿者の方が亡くなりました。一月十九日には五人亡くなり、二月二日には四人が寒さの中で命を失っていっている。
憲法二十五条では、生存権の保障を定めておりますが、私は、基本的人権の中でも重要な一つだと思うのですね。
そこで、厚生大臣、このようなホームレスの凍死などということは、これは厚生省が、ホームレスになった方の一人一人の状況をつかんで、健康管理を、厚生省が直接でなくても地方自治体と連絡をとってやっていった上でなおかつ凍死という事態になってしまったのか。それとも、手を尽くし足りなかったという問題がやはりあるのか。その上に立って、厚生省としては、やはり大臣としてはどういうふうに臨んでいかなければいけない、こういうホームレスの方の凍死とかを防ぐためにどういうことをやっていかなければいけないというふうにお考えなのか。この点については、大臣のお考えというものをここで聞いておきたいと思います。
○丹羽国務大臣 近年、東京とか大阪とか大都市を中心にいたしまして、路上生活者、ホームレスが大変ふえております。私も、地元が茨城県でございますが、高速道路から隅田川のところのずっと青いテントを見ていまして、これが最近になって大変ふえてきておる状況について、大変大きな社会問題である、このように認識をいたしておるような次第でございます。
それで、要因がどこにあるかということは、ただいま局長の方からお話を申し上げましたように、確かに主要な要因は今日の経済不況というものを受けていると思いますが、どうもさまざまな形で、私などもこれまで新聞であるとかテレビなどで拝見いたしておりますと、必ずしもそうとばかり言い切れないという面もなきにしもあらずだ、こう思っております。
ただ問題は、先ほど冒頭に委員が御紹介なさったような痛ましいことがあるということは、社会の大きな病巣の一つだ、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、この問題につきましては、関係省庁とも十分に協議をしながら、どういうような様子か、まず原因がどこにあるのかということ、それから、それに対して私どもがどういうような対策が講じられるかにつきまして、率直に申し上げてこれというものがなかなかないような気もしますけれども、しかし放置しておくわけにいかないわけでございますので、ひとつきめの細かな調査というものを検討していきたい、このように考えているような次第であります。
○吉井分科員 まず、ホームレスの急増、六割は本当に最近だということを御紹介しましたが、これは失業とか自営業者の場合は経営の行き詰まり、それから商工ローンその他の追い込みをかけられてということなどもあって住宅家賃も払えない、家を出てホームレスということになるわけです。あるいは簡易宿泊所に入る日雇い現金さえ入ってこなくなってホームレス。
しかし、本来こういうときに、最後のセーフティーネットというのは生活保護であるはずなのですね。二歳の女の子が凍死したり、ホームレスの凍死。なぜ生活保護法が機能しないのか。私は、今そこが、根本が問われていると思うんですね。
その点では、八一年の百二十三号通知、八五年の保護基準算定方式の見直し、八六年の補助金等臨時特例法、保護費の国庫負担率を削減していったこと、この結果、生活保護受給者が一九八五年の百四十三万人から八十八万人へと、その後の十年間とっただけでも五十万人以上、四割の人が保護を打ち切られていっているわけですね。
その中で、この運用については、住所が不定だったらだめだ、住民票がないとだめだよと。それから稼働能力のある者、働く能力はある、働く気もあるんだが働く場がないんだ、そういう人たちに対して現行の運用によってセーフティーネットがなくなっちゃっている。これは私は本当に深刻な問題だと思うんですよ。
そこで、厚生大臣、ホームレスの人が凍死したり行旅死亡者とかあるいは緊急入院となる前にやはり救出して自立できるように是正する。一番基本的なところは、まずセーフティーネット、生活保護によってでも緊急にホームレスにならなくても済むようにする、あるいは凍死する女の子が生まれるようなことのないようにする、私は、このことについては厚生大臣として基本的なところできちんと方向を打ち出して取り組んでもらう必要があると思うんです。これは大臣に伺いたいと思います。
○丹羽国務大臣 ホームレスの方々につきましては、先ほど来議論があるところでございます。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、ホームレスの方々にも自立をしていただいて、そしてホームレスの方々が自立できるための相談体制というものを整えながら、そして今委員から御指摘があったような、職場がないのか、あるいは率直に申し上げて就労意欲がないのか、その辺のところも含めて、やはりきめ細かくその実態というものを調査する必要があるんではないか、このように考えております。
いずれにいたしましても、大変こういう方々がふえておりますことはゆゆしき事態でございますし、この問題につきまして、ひとつ総合的に検討、調査をしてみたい、このように考えているような次第であります。
○吉井分科員 先ほど御紹介しました大阪市大の調査ですが、ホームレスの人たちは怠け者とかやる気がないなどという偏見は全く当たらないことを示しております。
それは、ホームレスの八割の人が現に仕事をしているんです。仕事の九割近くは廃品回収です。厚生省が今力を入れている環境、資源リサイクルに一番貢献しているわけですよ。一番か二番かはおいておくとして、本当に貢献しているんですよ。約八割の人が月二十日以上就労しているんです。それから、仕事の時間帯というのは、夜間でないと今は凍死してしまいますから、午前一時から午前九時が最も多いんですよ。夜間凍死しないように起きて働く、そして朝早く回収業者のところへ持っていって生活費を得ている。
昼間は背広に着がえて職安へ行ったりする人も多いんですよ、仕事を求めて。住所がホームレスで、求職難の時代ですから、見つからないんですよ。中には、子供さんがテントから通学するという家族もいるわけです。月収は大体、一日アルミ缶を集めても千円になるかならないかという方が多いものですから、三万円未満が半数、五万円を超える者は二割未満だ。食事は圧倒的多数の方、六割の方は自炊をしていらっしゃるんですよ。だから、その点では本当に自立しているんです。自立意欲もあるんです。転職希望者は八四%で、仕事を探しているという人は四六%、その四人に三人は公共職安や労働福祉センターを利用しているんです。しかし、求人減で仕事がないんですよ。
だから、そのときに、私は調査はしっかりやってもらいたいと思うんだけれども、しかし調査すると同時に、セーフの制度がどんどん切り縮められてしまって、ネットが破れちゃって、セーフティーネットにならなくなっている、ここをやはりきちっとセーフティーネットにするということと、労働省の職業あっせんじゃだめなんです、就職がないんだから。だから、例えば環境、資源リサイクルとか福祉の分野でやはり公的就労事業を具体的に起こしていく、このことに取り組まないと、現実には解決できない。
そして、国の方でも一応、自立支援センターというお考えはあるんですが、おおむね一カ月という考え方ですね、最長六カ月になりますが。しかし、これじゃ職場も住宅も解決できないんです。それから、これは全国八カ所で定員千三百人という予算ですが、二万人という見積もり、本当はもっと数倍規模でいらっしゃると言われているんですが、ホームレスの方二万人としても六、七%なんですね。全然実態に合わないわけです。
フランスでは約三万人のホームレスに対して一万三千世帯のセンターを用意している。構成も内容も随分進んでいるわけですね。
私は、海外の研究もし、国内の調査も進めるとともに、やはり住宅とか基本的に凍死しなくてもいい暮らしについては生活保護などでセーフティーネットをきちっと張る。それから、仕事については公的就労を起こしていく。厚生省が取り組んでいる資源リサイクルとか環境、循環という問題、現にやってもらっているわけですから、それをもっと大規模に進めていくということなどをして、本当に一人たりとも凍死する人が出ないように、行旅死亡人が出ないように全力を尽くすというのが、これは憲法二十五条に立った厚生大臣の責務ではないかと私は思うんですね。
もう一度、大臣に伺いたいと思います。
○丹羽国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、こういうようなホームレスの方々が大変ふえておるということは大きな社会問題であるという認識に立ちまして、ただいま委員からもさまざまな御提言、御意見を拝聴したわけでございますが、そういうことを踏まえまして、できるだけ早く、関係省庁とも相談をしながら具体的対策というものを、なかなか難しい面もございますけれども、打ち立てていかなければならない、こう考えているような次第であります。
○吉井分科員 それで、私は今の事態を見ていますと、大震災のときのように、あのときのように政府が本気で取り組んでいくということが必要だと思っているんです。少なくともセーフティーネットという点では、これはいろいろな運用によって実際にセーフティーネットを張っていくことができるわけですから、まず緊急には生活保護法を生かしてやっていくということ、それから厚生省の分野でも公的就労の分野がありますから、これは早急によく研究して取り組んでいただくということが大事だと思うんです。
もう一度、大臣に伺っておきます。
○丹羽国務大臣 御意見として承りまして、先ほどから申し上げておりますように、このまま放置しておくような問題ではない、こういう認識のもとに、この問題につきまして前向きに検討させていただきたいと思います。
○吉井分科員 次に、財団法人結核予防会結核研究所の森亨所長が、最近の結核患者の急増には二つのタイプがあると指摘しておられます。一つは糖尿病など発病を促しやすい病気を持つ人や高齢者、もう一つがホームレスなど社会的、経済的弱者なんだと。実際に、特に大阪の西成の方では、全国平均の五十倍の結核の罹患率という状況が示されております。
そこで、結核というのは栄養状態の不良とか集団的劣悪環境の中で感染が進んだり、あるいは罹患した人が治癒しないという問題がありますから、この点でも、全国二万人、本当は数倍と言われるホームレスの人たちの中で、厚生省としては、まず住宅、生活環境、健康管理、栄養と暖かいところでの休養ということを保障して、この国の中から結核を本当になくしていく、とりわけ今問題になっているこのホームレスの人たちの中ではなくしていくということで取り組む必要があると思いますが、現在、厚生省として、ホームレスの方たちに、約二万人の中で何人の人にこのような対策をとっておりますか。
○篠崎政府参考人 今先生が御指摘のように、結核についてでございますが、我が国は結核の有病率、人口十万対三十四という数字で、先進国の中でも極めて高いということでございまして、昨年、結核については厚生大臣の名前で緊急事態宣言を発したところでございます。
それで、今先生御指摘の数字はちょっと持ち合わせておらないのでございますが、大都市における結核の治癒率の向上のために、特に、直接監視下投薬、DOTSと言っておりますが、WHO等でも推奨している事業でございますが、それを平成十一年度から実施しているところでございます。
○吉井分科員 私は、マハティールさんがことし一月十日付の毎日新聞に書かれたのを読みまして、大臣も読んでいらっしゃったら本当に胸をつかれた思いかと思いますが、私も思いました。「マレーシアがルック・イースト政策を採用したのは、戦後の荒廃から立ち直った日本のやり方に感銘を受けたからだ。」「ところが、日本は西側システムに合わせようと、こうしたこれまでの長所を突然、すべて捨てた。 日本をたびたび訪れ、目覚ましい発展ぶりを見てきた。しかし、前回の訪日時、青いビニールシートの下で暮らす失業者の姿に胸をつかれた。これが終身雇用を廃止した終着点だ。外国企業が日本の会社を買って、まず最初に手をつけるのが合理化と称する、解雇と工場閉鎖である。」
マハティールさんも胸をつかれたと言うのですが、私は、本当に大臣も同じように胸をつかれると思うのですが、この問題の解決の基本は憲法二十五条にあるし、また、憲法二十七条の勤労の権利を有しているわけですから、これを保障すること。我々は、国会議員も国務大臣も九十九条で憲法尊重の義務を負っているわけですから、この立場に立って、私は、この問題について本当に全力を挙げて取り組んでいかなきゃならぬということだけ申し上げまして、ちょうど時間になりましたので、質問を終わりたいと思います。
○鍵田分科員 では、労働省としては非常に前向きに検討していただいておるということでございますので、ぜひとも頑張っていただきたいし、我々も頑張らなくてはならぬと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
次に、ホームレス問題についてお聞きをしたいと思います。
特に、大阪のホームレスの問題は非常に深刻でございまして、東京などに比べましても倍ぐらいの人数がおりまして、それも全国から集まってきておるというふうな実態がございます。
当初は、ホームレスの方々の高齢化ということが問題になりまして、例えば体力も落ちてきて、そして病気になられる、結核の罹患率も非常に高いとか、そういう深刻な問題が言われておったわけでございますが、最近ではむしろ、若年化とは言いませんけれども、随分若い人までホームレス化してきておる。これはやはり雇用問題が非常に深刻であるということの証左ではないかというふうに思っておるわけでございます。
そこで、昨年、ホームレス問題連絡会議が設置をされました。いろいろ対応策の取りまとめも行われておるところでございますが、昨年に比べましても、また現在ホームレスの人数はどんどんふえつつある、こういう実態でございます。
今、自立支援に向けまして、いろいろな施策が取り組まれておりますけれども、しかし、今の緊急対策というのも三年間という限定つきでございますので、これを三年間で限定せずにさらに期間を延ばしていく、こういうふうなことにつきましても積極的な努力をしていただかなくてはならないのではないか。今、大阪市、大阪府などが協力し合って一生懸命雇用問題に取り組んではおりますけれども、しかし平成十三年までという今の緊急対策の措置になっておるわけでございます。
これをやはり早い時期にさらに延長して取り組んでいく。当分、この問題が一定の解決という方向に進んでいくまで、そういう道筋が見えるまでの間はひとつ延長してもらうようなことで頑張っていただきたいというふうに思うわけでございますが、それらにつきまして、いかがなものでしょうか。
○長勢政務次官 緊急地域雇用特別交付金事業についてのお尋ねと思いますが、先生に御理解をいただきたいのは、この事業は、深刻な雇用情勢の中で、情勢が好転するまでのつなぎの雇用機会を確保するために、地方公共団体の創意工夫に基づいて臨時的な雇用就業機会の創出を図る、このことを目的にしておるものでございます。したがって、これは臨時応急の措置でございますので、一応は平成十三年度末までということにいたしております。
大阪市におきましては、この制度の趣旨にのっとって、臨時の、つなぎの雇用を確保する場として、ホームレス対策にも活用されておられる、こういうことでございまして、ホームレス対策のためにこの事業を実施しておるわけではないということは御理解をいただきたいと思います。そういう意味で、この交付金事業は、現時点ではこの限りというふうに一応考えておるわけでございます。
また、今後大阪市において、ホームレス対策をどうなさるかということは別途お考えになるでしょうし、国としても、先生今お話しになりましたような連絡会議に基づく決定に基づいて、その対策はこの事業とは別に進めていかなければならぬ、このように思っております。
○鍵田分科員 確かにこれは雇用問題全般を改善するために、特に大阪などの雇用問題が深刻だということでやられていることは間違いないのです。しかし、ホームレスになる寸前の方々もやはり何とか救済をして、仕事についてもらおう、こういうことでやっているわけですから、やはりホームレス対策にもなっておるわけでありますし、では十三年になったらそれは解決するのかというと、恐らくそんな簡単に解決するものではないというふうに私は思いますから、見通しが立つまでの間はそういうことを真剣に考えてもらいたい。これはやはり大阪府や市の関係者も同じ思いだというふうに私はとらえておりますので、ぜひともその辺は考えていただきたいというふうに思います。
それともう一つは、ホームレス対策というのは主に厚生省それから労働省が中心でございますけれども、どうも所管がもう一つはっきりしないということでございます。ホームレス問題の予算は幾らですかと聞いたって、片方のあれでは厚生省に聞いてくれ、片方は労働省に聞いてくれというふうなことで、結局ばらばらに予算なんかも出てくるというふうなことでございまして、いろいろな施策にしましても、一応協議会ができてはおりますけれども、しかし、やられていることはばらばらにやられているというような傾向もあるわけでございます。
来年から厚生労働省ということで一本の省庁になるわけでございますけれども、ホームレス問題について、これはこの局だ、これはこの局だというふうなことではなしに、やはり一本の窓口になってやっていただけるというふうなことが大事なのではないかなというふうに思いますので、その辺のことにつきまして十分配慮をしてこれから進めていただきたいというふうに思っておりますが、それらにつきまして、いかがでしょう。
○長勢政務次官 御案内のとおり、ホームレス問題連絡会議におきまして、ホームレス問題に対する当面の対応策というものを取りまとめまして、地方公共団体が行う自立支援事業について国が一定の補助を行うということで進めさせていただいております。現場におきまして、先生もいろいろ御指摘の点があろうかと思いますが、もちはもち屋でございまして、生活の支援、相談、宿泊その他のお話と、その中で職業相談なり就職援助という部分を労働省も一緒になって連携をとってやっているのが実態だと思っております。できる限り、ばらんばらんという印象を与えないような、連携をとった流れの中で、それぞれの行政の特色、役割を果たしていくように指導してまいりたいと思います。
○鍵田分科員 この問題につきましては、法律的な根拠というのですか、そういうものももう一つ、一体となった法律の体系があるわけではありませんで、厚生省は厚生省なりの法律的な根拠に基づいてやられるでしょうし、労働省もそういうことでありまして、現状においてはやはりばらばらにならざるを得ないというのはわからないでもないのですが、しかし、将来の問題として、これは二万人そこそこの問題だから、そんな法律をつくったりなんかしなくても、予算の措置さえすれば何とかなるのだというふうな議論もあったやに私は聞いてはおるのですけれども、その中心になってやらなくてはならない都市の人たちに非常に大きな負担が来ておるわけでありまして、その人たちがもっといろいろな施策をとりやすい方策を考えた場合には、やはり法律というものが整備をされているということが大切なのではないか。
そういう意味では、特別立法というふうなことも視野に入れて考えていただきたいなというふうに思っているわけです。これらにつきましては、特に自民党の皆さんでも、地域の人もおりますし、関係する地域の選出の議員の方もいらっしゃって、議員立法ででもやろうかというふうな話も出ておるやに聞いておるわけでございまして、私は、できればそういう人たちと協力をして、これはもう与党とか野党とか言わずに、一体になってやらぬといかぬ問題だと思っておりますが、やはり政府の方においてそういう特別立法というふうなことをぜひともやっていただければ、それぞれの関係する地元といたしましても大変助かるのではないかというふうに思っております。
そういうホームレス問題に対する一つの法的な根拠というものをきちっと位置づけるということが大切なのではなかろうかと思いますが、それらにつきまして、いかがでしょうか。
○長勢政務次官 ホームレス対策を強力に、また一体的なものとして実行していくためには特別立法が必要なのではないか、こういう御意見だと伺いました。
そういう御意見も十分根拠のあることだと思いますが、果たして、例えば今ある制度をただ屋上屋を積み重ねるという立法だけで十分であるのかないのか、また、そうであるとすれば、どのような内容のものを考えていくのか、まだまだ議論のあるところだと思っております。
当面は、政府としては、先ほど申しました連絡会議で決めました当面の対応策を着実に、また先生御指摘のような連携、ばらんばらんということのないように実行していくことが必要なことだと思っておりますし、その推移を見ながら、また議論の成果を見ながら、先生の御意見も十分承ってまいりたいと思います。
○鍵田分科員 もちろん、いろいろ法律をつくる場合には関係する法規との調整などもありましょうし、簡単にはいかないのはよくわかってはおります。しかし、やはり関係する市町村なり、また都道府県なりがいろいろな施策を進めていく上において、その根拠となる法律が一本化してくるということは、施策を進めるに当たって非常に必要としておる内容でございますので、これは関係省庁とも連携をとって、ぜひとも特別立法ということで支援をしていく、そういうことを早急にひとつ研究をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
最後に、これも私、労働委員会でも、また建設委員会でも取り上げさせてもらってやっておるのですが、建設労働者の退職金共済制度の問題でございます。
中小企業退職金共済法第六十二条に、特定業種ごとの運営委員会の設置が定められておりまして、他の業種でも退職金共済制度があるわけでございますけれども、特に建設労働者の共済制度は非常に多くの対象者を抱えておりまして、同条の二項に、共済規程の変更、毎事業年度の事業計画、それから業務の運営に関し特に重要な事項などについては運営委員会の議を経なければならないというふうに定められておるわけでございます。
この運営委員会の委員の人数につきましても、この法律の六十三条で、二十人以内ということで、選出につきましても、同法六十四条によりまして、「共済契約者及び機構の業務の適正な運営に必要な学識経験を有する者のうちから、労働大臣が任命する。」というふうになっております。
実際には、共済契約者というのは建設事業者ということになっておりまして、労働省所管の法律に基づきます運営委員会でありますけれども、そこに入っておるメンバーというのは全員が建設業者で、いわゆる有識者というのですか、そういう方も入っておられない。
そして、共済の原資というのは、政府が行います公共事業の土木事業とか建設事業の請負金額に一定の率をかけた共済金が積算をされて事業者に払われておる。それを原資としてこの共済制度があるわけでございますけれども、それが適正に労働者に交付されておらないということで昨年も大変問題になったわけでございまして、それらを建設委員会や労働委員会でも私も指摘をさせていただいたわけでございます。やはり、この運営委員会の健全な運営ということが大変重要ではないかというふうに思います。
そういう意味で、この運営に向けての委員会の構成の問題として、労働者の代表をぜひとも加えていただきたい。そういうことを今までも指摘をしてきましたし、またこの委員会の運営なり、さらには制度そのものの改善についてもいろいろ見直しをされてきつつあるわけでございますけれども、その見直しの重要な目玉として、やはりそこに労働者の代表を入れていくということが大切なのじゃなかろうか。ゼネコンさんの会長さんとか社長さんとか、おおよそこの運営委員会に余り関係のないような人たちが名前を連ねておるというような委員会では、実際に実効は上がらないわけでございます。
証紙の貼付から今度はIC化に向けて、また掛金の先払いといいますか、そういうものの実施をずっとしていくためにも、やはりそれらの見直しが必要でありますから、運営委員会のあり方を見直すという意味で、ぜひとも労働者の代表を入れていただくようにお願いを申し上げて、もう一問お聞きしたかったのですが、時間も参っておるようでございますので、その辺のお答えをいただいて、終わりたいと思います。