55-衆-社会労働委員会-16号 昭和42年06月06日

 

昭和四十二年六月六日(火曜日)

    午前十時二十七分開議

 出席委員

   委員長 川野 芳滿君

   理事 佐々木義武君 理事 齋藤 邦吉君

   理事 竹内 黎一君 理事 橋本龍太郎君

   理事 河野  正君 理事 田邊  誠君

   理事 田畑 金光君

      天野 光晴君    菅波  茂君

      田中 正巳君    地崎宇三郎君

      中山 マサ君    増岡 博之君

     三ツ林弥太郎君    粟山  秀君

      山口 敏夫君    渡辺  肇君

      淡谷 悠藏君    枝村 要作君

      加藤 万吉君    島本 虎三君

      西風  勲君    八木 一男君

      山本 政弘君    本島百合子君

      浅井 美幸君    大橋 敏雄君

 出席国務大臣

        労 働 大 臣 早川  崇君

 出席政府委員

        警察庁警備局長 川島 広守君

        防衛施設庁長官 小幡 久男君

        防衛施設庁労務

        部長      江藤 淳雄君

        労働大臣官房長 辻  英雄君

        労働省労働基準

        局長      村上 茂利君

        労働省職業安定

        局長      有馬 元治君

 委員外の出席者

        外務省北米局安

        全保障課長   浅尾新一郎君

        専  門  員 安中 忠雄君

    ―――――――――――――

     ――――◇―――――

 

○西風委員 すでに新聞で御承知のように、ここ三、四日前から連続して大阪の愛隣地区、昔釜ケ崎といわれていたところで事件が起こっているわけであります。この問題は、あそこにたくさんの固定した職業を持たない、失業したたくさんの労働者が流入してきておりまして、これらの問題は当然労働政策の基本的な問題と関連した点でありますから、そういう意味からこの問題について労働省、政府の見解をただすために若干の質問をしたいと思います。

 まず第一に、今度の事件は一体どういう内容、どういう原因で起こったかという点について、説明をお願いしたいと思います。

 

○有馬政府委員 詳報はまだ書面で入っておりませんけれども、電話連絡等によりました状況によりますと、二日の日に東入船町の丸福という食堂で、労務者が三百七十円の食事をとったにかかわらず、三百円しか持っていないということで三百円を払ったところが、無銭飲食であるというふうになじられた。これがきっかけであの暴動が起こったわけでございます。二日、三日と起こりまして、四日は一応平静に返ったのでございますが、また再び暴動の様相が、昨日あたりから起こっておる、こういう状況でございます。

 そこで、この暴動といいますか、騒動自体は、これは警察当局の治安の問題とも関連する事案だと思いますが、私どもといたしましては、あの地区に、五千人をこえる日雇い労働者の日々の青空市場における就労という実態がございます。もちろん、安定機関の出先もございまして、約千五百人については、日雇い労働者に対する紹介をやっておりますけれども、五千人をこえる路上の紹介については、これは、就労秩序の上から見ましてもゆゆしき問題でございますので、私どもとしては、この地区に対する本格的な対策を今年度において講じてまいりたい。マンモス安定所を中心といたしまして、福祉施設を付置いたしまして、これに要する労働省の予算総額が四億二千七百六十九万円、これに地元負担として土地を提供する、こういうことに相なっておりますので、全体の予算規模は土地を入れればさらに数億ふえる、こういう規模の施設を講じました。これらをもってあの地区に対して本格的な対策を講じてまいりたい、かように考えておるわけでございます。

 

○西風委員 同じように、神戸の弁天浜で、港湾労働法に基づく問題と関連して、労働条件、賃金の条件が悪いというので若干の紛争が起こっておりますけれども、この実情についてもあわせて御報告いただきたいと思います。

 

○有馬政府委員 神戸港における弁天浜の日雇い労働者の問題につきましては、詳しい情報がまだ入っておりませんが、御承知のように、港湾労働者の賃金日額につきまして、現在労使間で交渉を重ねておる段階でございます。いままで大体平均して千三百円という日額であったものを千六百四十円に改定すべきであるという労働側の主張によって、現在交渉が重ねられておるということは承知いたしておりますけれども、弁天浜の、御指摘の事案が詳細はどういうふうな状態になっておるか、私いま承知いたしておりませんので、後刻調査いたしまして、別の機会に御報告さしていただきます。

 

○西風委員 労働大臣にお願いしたいのですけれども、やはり日本の労働行政の一番重要な点は、非常に恵まれた職場、雇用条件の中にある労働者の問題を取り上げることではなくて、恵まれない、底辺の中でまじめに努力しようとつとめている労働者に対して、どのように具体的な行政施策をやっていくかということが問題なんです。したがいまして、今度のような事件が起こった場合には、役所が下から上がってくる文書あるいは電話連絡によってその実態をつかむ、あるいは新聞によってその事実を知るというような消極的な態度では、これは問題解決に当たることはできない。愛隣地区の問題にしても、問題は政府が金をかけて若干の事業をするということも、あの地区の改善の問題について大きな影響力を持つわけですけれども、もっと重要なことは、疎外されておるあの地区の住民や労働者に対して行政がほんとうに裸であの地区に飛び込んでいくというような姿勢が、東京の山谷の問題なり、大阪の愛隣地区の問題を解決していく基本なんです。そういう点で、ああいう事件が起こったら、何千人かの人が騒いだわけですから、労働省なり関係機関は現地に行って事実調査なり、あるいは事実確認をやったかどうかということを聞きたいと思います。

 

○早川国務大臣 労働行政の基本に解れる問題でございますが、御指摘のように、いわゆる底辺といいますか、恵まれない勤労者諸君に労働行政の恩沢をあまねく及ぼしていくということは、私の労働行政の姿勢の根本でございます。そういう立場から今回御提案申し上げた五人未満の事業所の勤労者に対する失業保険あるいは労災保険の適用もその一環でございますし、本年の正月三日に、正月を返上いたしまして愛隣地区にみずから参りまして、つぶさに愛隣地区の実情を視察をいたしました。その結果、画期的な施設を設けることになりまして、先ほど有馬局長が御答弁しましたとおりに、マンモス職安を設けよう、それから建設省のほうで予算を十数億かけまして、同時に勤労者アパートをつくろう、いわゆる愛隣地区の福祉センターと称せられる計画がすでに予算が通りまして、本年から実施されることになりつつあるわけでございまして、そういう意味では、この人たちにもたいへん喜んでいただいておると思います。私が正月に行きまして、あの本田良寛さんなんかに会いましたときもずいぶん喜んでおられました。

 問題は、今回の事件ですけれども、三百七十円の飲食をして三百円より払わなかった。それがきっかけとなって、食堂付近に二千人寄ってきた、こういうことがきっかけの一つの暴動的なものでございますので、これが面接労働行政に結びつくかどうか、これは御指摘のようにむしろ別の観点から考えなければならない問題ではなかろうかと思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、御指摘のように底辺層の方々、たとえば炭鉱離職者とか、あるいは家内労働に従事する低賃金の方々とか、そういったものに対しましても、家内労働法の制定も審議会で二年かかるものを一年繰り上げて審議してくれというので一年繰り上げさせました。そういう方向で一生懸命やっておりますので、どうかひとつ御鞭撻を賜わりたいと思っておるわけでございます。

 

○西風委員 あれは丸福食堂で何十円か不足があったから起こったというのは、これは直接の部分的な契機であって、実際はやはりあそこの地区の人々が疎外されておることに対する抵抗、そういう潜在的にある底流が――行政なんていうのは大体信用していないわけですね。信用していないというのは、一般的な行政の責任という意味ではもちろんありませんけれども、あの人々が置かれている条件の中で疎外に対する抵抗として、そういう潜在的な条件があるわけですから、それが、八十円か七十円払わなかったためになぐられたというような問題を契機にして爆発するわけです。これは、労働大臣、今度の事件は政府がちゃんとした施策をしたにもかかわらず起こった、いままでの問題と異なった原因からこういうことが起こったというようにお考えになったら間違いではないか。やはり従来の事件の一環としてこういう問題が起こったというふうに私どもは考えるわけですが、そういう点でお聞きしたいのですけれども、三十六年に大きな事件が起こったわけですね。あの事件と今度の事件とどういうふうに違っているのか、それをまず聞きます。

 

○有馬政府委員 三十六年当時の暴動と比較して今度の騒動がどういうふうに違うかという点の分析は、まだ私どももやっておりませんけれども、昨日あたりの状況を電話等の連絡によって判断いたしますと、いままでの一般的な条件、原因のほかに、暴力団関係者が入り込んでおる、こういう情報も一部ございます。

 これらにつきましては、私どもの立場からいたしますならば、あの地区に、御承知のように港湾並びに建設、運輸関係の日雇い労務者の手配師というものが相当数おるわけでございます。これらの方々が、港湾労働法の施行に伴って最近バス輸送等も円滑に実施されるようなことになりまして、逐次生業を奪われるというふうな事態も一面においてございます。したがって、これらの暴力団に一部つながっておると思われる手配師層の介入ということになりますと、これは従来と違った場面が出てまいりますので、私どもとしては、あくまで実態をよく分析した上で、さらに万全の対策を講じてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。

 

○西風委員 神戸の弁天浜の事件は、湾港労働法ができたことによって、それが直接の動機かどうか別にして、従来よりも労働条件が非常に悪くなったという点でああいう事件が起きているわけです。前より労働条件が悪くなったという事実はありますか。その点はどうですか。

 

○有馬政府委員 港湾労働法の施行前後の比較はなかなかむずかしいのでございますが、私どもがずっと各港ごとに調査しておるところによりますと、従前、施行以前よりも悪くなったということはまずないと思います。ただ、技能程度の格づけが必ずしもうまくいっていない、したがって、賃金額が平準化されておるという点では、従来、よりいい技能を持っておった者が賃金において低い線に均一化されておるというふうな事例が施行当初にはございましたけれども、私どもも、その後の紹介方法の改善等によりまして技能程度をある程度重視していく、そして、従前の賃金を下回らないようにというふうな積極的な指導も加えておりますので、最近においてはそういった事例はないと思います。

 

○西風委員 局長、これは愛隣地区へ行きましても、弁天浜へ行きましても、あそこの現場の労働者は、大部分の人が収入が下がったと言っていますよ。だから、そういう点で、上がってくる報告はどうか知りませんが、現場で働いている労働者が、港湾労働法ができたことによって――全部とは言いませんけれども、そういう現象が起きているわけです。

 同時に、早川労働大臣が正月か何かに行かれたそうでありますけれども、そういう時に行かれる熱意を、私どもはこれは認めるものでありますけれども、問題は、こういう問題が起きたときに政府が単身乗り込んで、これに対して積極的にあそこの地区の労働者と話し合うというような態度が必要ではないかと思うわけです。現に、港湾労働法の問題をとっても前と同じ状態になっていますよ。西成でも築港でも同じですよ。手配師がおって堂々とトラック、バスを乗り入れまして、港湾労働法ができたためにそれが改善されたというような状況に現場はなっていない。そういう点から、一年に一回くらい行ってもたいして役に立たぬわけです。そのときの舞台というものはつくられるわけです。そういう予測した、つくられた舞台の上に乗っていくのではなく、突然行ってごらんなさい。同じ条件です。

 そういう点で、港湾労働法その他の問題についてはきょうの本旨ではありませんから、日にちを改めて、資料その他をそろえて聞きますけれども、そういう状況になっているということを御存じないですか。

 

○早川国務大臣 西風さんのお説のように、血の通った行政ということで、必要があれば現場に行き、また、私が行かなくても、出先の安定所はじめ労働関係の県庁の責任者がおりますので、お説の線に沿いまして、あくまで実態を把握していくということにつきましては、今後とも努力してまいりたいと存じます。

 港湾労働法の問題は、あれができましたことによる近代的労働秩序への前進だという長所があるわけであります。他方、あれに登録することによって、せっかく臨時の仕事があっても行けない、いろいろな支障の点も承知いたしております。まだあれが実施されて日も浅いものですから、そういう実態を見きわめまして、改むべきところがありましたならば、これは検討してまいりたいと思いまするが、港労法の問題につきましては、今後ともひとつよく実際の状況を調べて、労働者がそれによってむしろ不利にならないようにするのはもちろん当然でございます。大いに検討してみたいと存じます。

 

○西風委員 三十六年の事件が起こったときに、橋本官房長官ですか何かが提唱されて、あそこの地区の皆さんを含めた、あそこの問題を解決するための懇談会ですか、審議会ですか何か、正確に知らないのですが、そういうものができたと私記憶しているのですけれども、あれはその後どうなりましたか。

 

○有馬政府委員 橋本建設大臣の時代、昨年の夏だったと思いますが、大臣の懇談機関としまして、関係者を構成員とする懇談会ができまして、私どもも関係各省の一員としてこれに参画をいたしました。愛憐地区の対策について各方面から検討が加えられたわけでございますが、その結果、先ほど大臣から答弁がありましたような、総合的な施策を講ずる――建設省は不良住宅の改良という立場から、労働省は就労秩序の正常化という立場から、警察は警察、社会、民生部面は民生関係ということで、あらゆる角度から政府として全力をあげて対策を講じようという結論が出まして、懇談会はそのことによって解消いたしたかっこうになっておりますが、懇談の結果は、いま申し上げましたような具体的な施策として本年度の予算にも計上されておるわけでございます。

 

○西風委員 いつ解消したのですか。

 

○有馬政府委員 もともとこれは臨時のものでございましたから、橋本大臣がかわられてからは、私どもも懇談会の開催された記憶はございませんし、懇談会の目的は十分達成して、解消といいますか、解散されたのではないかと思います。これは建設省の所管でございますので、私どもは一構成員として承知している範囲のことを申し上げた次第であります。

 

○西風委員 労働大臣、万国博の建設がこれから急テンポで進むわけですね。そうしますと、いまならまだ秩序を持った労働者が、外からぐっと出てくる力によって、再び秩序を失うどころか、従来起こったよりもずっと複雑な事件が起こる可能性をいま内包しているわけですね。そういう点に対して、何かお考えを持っておられますか。

 

○早川国務大臣 愛隣地区の方々が五千人以上、港湾労働あるいは土木建築あるいは大工、左官等、たいへん日本の経済発展に寄与しているという事実ははっきりいたしております。現在、雇用関係では仕事にあぶれている者はほとんどありません。大体職安で千五百人ほど扱っておりますが、そのほかの方々もみんなそれぞれお仕事をされておるわけでございます。

 そこで、愛隣地区の問題は、一労働省を越える非常に大きな問題があるわけであります。一つは、住民登録をしたがらない人がたいへん多いわけです。したがって、有権者としての投票権を持っておらぬ方が非常に多い。そこで府会議員や市会議員のつながりというものがつい薄れてくる。そこで政治家がそこへ入り込んで、府会、市会で愛憐地区の問題と真剣に取り組むという点において、あるいは欠ける点が出てくるとか、しかし、いろいろの過去を持たれる方もおられまするし、前歴を知られることを好まない方もたくさんおられるわけでございます。そういった大きい問題をどうするかという問題もございます。

 それから医療関係にいたしましても、あそこに本田病院がありますが、非常に狭い。とてもさばき切れない。医療施設をどうするかという問題。しかし、万国博を控えまして、断然愛隣地区の方々の労働力というものを大いに活用しなければならぬことはもう明らかでありますし、これにつきましては、私はあそこの方々が労働者として非常に秩序がないとは思っておりません。非常にいい労働者だと思っております。したがって、今回の事件と直接結びつけて、愛憐地区の労働者は非常に無秩序だということは私は考えないわけでございまして、万国博は当然土建業者も、宿舎施設あるいは働く場へのバスとか交通機関をどうするとか、今後の問題といたしまして、この労働力というものが秩序あるりっぱな労働力として活用されることを指導してまいりたいと思います。

 しかし、結論から申しますと、理屈よりも目にもの見せるということですね。したがって、労働省といたしましては、正月に参りまして以来、目にもの見せる――りっぱなマンモス職安もつくる、それから労働福祉センターもつくる、アパートもつくるということで、もうすでに土地も確保して発足いたしております。この問題は厚生省も関係するし、建設省も関係するし、府、市の問題でもあるし、そういう前向きに目にもの見せていくということによりまして住みよい労働者の町にしようじゃないか、私はこういう点を提唱いたしておるわけでございますので、その事件を契機に、一そうそういう方面につきまして、労働省所管につきましては前向きにひとつ努力してまいりたい、こう私はお答えいたしたいと思います。

  〔委員長退席、佐々木(義)委員長代理着席〕

 

○西風委員 私が聞いているのは、労働大臣が言われたようなことももちろんですけれども、万国博で事業が拡大したときにあの地区がどの程度の大きさになるというふうに推定しておられるかということを聞いているわけです。

 

○有馬政府委員 愛隣地区は、御承知のように四万七千人ほど人口がございます。大臣から御答弁がありましたように、日雇い労働者の青空市場だけで五千人をこえるという労働者がいるわけですが、そのほか大工、左官等の技能労働者も相当住みついております。総数一万五千人の労働力の給源地帯となっておるわけでございます。

 そこで、これから三年間にわたる万博の工事に伴う労働者の確保の問題とつながるわけでございますが、私どもは八千億にのぼる工事計画をいま時期別、種類別に検討いたしまして、どの時期にどういう種類の労働力がどの程度要るか、それをどういうふうに確保するかという詳細な検討をいたしておりますが、総括的に見まして、ピーク時に現在近畿地区に入り込んでおる建設関係の労働者の総数プラス新規需要が三万人程度要るであろう、こういうふうな大ざっぱな推定はいたしております。これを受け入れる場合に、もちろん愛隣地区にも多少流れ込んでくると思いますけれども、やはり愛憐地区以外の正規の受け入れ施設を整備いたしまして、これによって所要の労働者を確保していくという基本的な対策を講じなければならぬと思います。愛隣地区の状況、御承知だと思いますが、土地柄からいっても、また簡易宿泊所の施設の数からいいましてもそんなに無限に流れ込めるような状態ではありませんし、また、無理にあの地区に割り込んでくるということになりますと、いろいろな問題が発生いたしますので、私どもとしては別の受け入れ態勢を整備いたしまして、そこで所要の労働力を確保していくということを基本線に考えてまいりたい、かように思います。

 

○西風委員 なぜそういうことを聞くかといえば、労働大臣が常日ごろ言われているように、先手先手と問題を解決していかなければ――あそこの労働者の人が言うておるわけですね。わしらが人間として扱われるのはああいう事件を起こしたときだけや、新聞もテレビも役所も初めてあのときにわれわれを認めてくれるんだ――こういう意見が正しいかどうかは別にして、そういうふうに言うておるわけですね。ああいうことがなければ、政府も府もなかなかわれわれに対してあたたかい手を差し伸べてくれないんだというふうなことを言っておるわけです。そういう点では万国博でかなり大きくふくれるわけですから、そのふくれることに対して、再び大きな事件が起こってから反省するのではなくて、多少金が要っても、そのふくれる規模に応じて、それを処理することのできるような施設とかさまざまな施策をやっていく必要があるわけですね。そういう点で、労働省は――もちろん労働省だけの問題ではないでしょうけれども、万国博その他で流入してくる諸問題に対して、自信を持って解決するというきちっとした見通しを持っておるわけですね。

 

○早川国務大臣 万国博を契機にして、さらに一そう愛隣地区の労働者がよき収入を得、また秩序ある労働者になるように、府の労働部長へもよく連絡いたしまして努力をいたしておりますので、十分自信を持っておるわけでございます。

 同時に、先手先手を打て、まさにそのとおりでございまして、現地に参りますと、健康保険にもなかなか入りたがらないようになっておるわけですね。そこであそこの愛隣病院はもう医療費はただでやっている。ほんとうの医は仁術だ。そこで府のほうから何千万か補助をもらっている。これではやっていけぬ。そこで、医療施設をもっと済生会でやってくれとか、いろいろ要望がございますので、よくそういうことを含みまして、先手先手とやってまいりたい。同時に、愛隣地区の人たちのいままでの考え方、住民登録もしたくない、健康保険にすると名前が出るとか、そういう根深い問題がございますので、粘り強くわれわれはそういうことを説得して、ほんとうに住みよい労働者の町にしようじゃないか、こういうことで努力をしてまいりたいと思っております。

 

○西風委員 労働大臣、最近は有権者の登録もだいぶ進みまして、政治的自覚が高まって、二万人ぐらいの人がおるわけですね。だから、従来のような状況じゃないのです。たとえば、健康保険でも入ろうという意欲を持っていても、これは労働省だけの問題じゃないでしょうけれども、役所へ行って申し込むという手続の時間がないわけですね。だから、たとえば郵便局へ払い込むことができるとか、一定の日にちをきめて路上で受け付けるとかいうようなあれが出てこぬと、なかなかあそこの人を一定の社会保険のワクの中へ入れて、政府がその中で徐々に解決していくということにならぬわけですから、そういう点では、これは役所の縦の系列ももちろん大事ですけれども、あそこの現場で仕事している、たとえば診療所とか愛隣館とかいうような心の友、生活の友になっている人々と皆さんが直接連絡をとってあそこの問題の処理に当たっていく。東京の山谷の場合も一緒だと思いますけれども、そういうふうなことをやっていますか。

 

○早川国務大臣 従来ともよく連絡をとってやっておるようでございます。特に、労働省の出先機関といいますか、地方事務官制をとっておりますので、府のほうの労働関係をはじめ、安定所はこっちの直属でございますが、そういうところはしょっちゅうそういうことで、関係者、特に社会事業関係の方は非常に一生懸命やっているのですね。これは厚生省の所管でございますけれども、相互によく連絡をとりながら努力いたしておるのが実情でございます。

 

○西風委員 大阪府、大阪市とこの問題について定期的な協議とか連絡とかいうのをやっていますか。

 

○早川国務大臣 定期的なのはやっておりませんが、正月三日に参りまして、大阪府の知事、市長、関係局、部長、それから出先のそういう社会事業家、愛隣病院の本田先生、その他幅広く寄っていただきまして、府庁で正月にもかかわらずいろいろな懇談会を催しました。そういう機会に常に現地の方の声を吸収いたしまして、それを直ちに実行に移すということをやっておりますが、定期的には、出先の機関がございますので、労働省としてはやっておりません。

 

○西風委員 何か、労働福祉センターの上に本田良寛さんなどが中心になって病院をつくるという話がありますけれども、これも何か大阪府と大阪市と政府との間に十分な意見の一致を見ていないというようなことを聞いているのですね。これは厚生省の所管かもしれませんけれども、そういう点で、やはり病院なんかも時期がおくれればおくれるほど意味がないわけですね。こういうものは、やはり一時間でも一日でも早いほど問題を解決していく上には役立つわけですね。そういう点で、そういう関係はどうなっていますか。

 

○有馬政府委員 いろいろ風評が立っておるようでもございますけれども、私どもとしては、昨年来建設省、厚生省、それから現地の府、市当局と打ち合わせた線で、いま土地の買収方針を決定しつつあるわけでございます。マンモス安定所、福祉施設の上に住宅を積み上げるという線は既定方針でございますので、できるだけその線は貫いていきたいと思います。

 問題は、あの地区に大体三千坪は必要だと思いますが、その土地をどうやって即刻確保するかという点にかかっておるわけであります。これはやはり府、市の緊密な連絡によってこの問題を解決する以外にはないということで、現地当局を督励しておる状況でございます。

 

○西風委員 これはいつごろまでにその話が終わって、いつから着工できますか。

 

○有馬政府委員 これは正月に大臣が現地に行かれたことを契機といたしまして、府、市の連絡体制ができたわけでございますが、その間選挙等がございまして、最近ようやく具体的な問題について府、市の協議が開始されておるようでございます。私どもは、施設の性質からいいまして、期限としては、来年の下期からはマンモス安定所の機能が開始できるようにしてもらいたいという時期的な条件を現地側にはつけております。それ以上のことは、やはり現地で土地の確保についてはいろいろな問題がございますので、現地当局にまかせる以外には方法はないと思いまして、そういう時期的な目標を置きながら現在督励をしておる段階でございます。

 

○西風委員 警察庁は来ていますね。――今度の事件はどういう原因で起こったのですか。

 

○川島(広)政府委員 新聞等にも報道されておるわけでございますが、六月二日に、丸福食堂というところで、労務者の飲食代が六、七十円か少ないために、食堂経営者との間に口論が起こってなぐり合いが始まりまして、それが騒動の原因であるというふうに聞いております。

 

○西風委員 警察は、この事件を解決するために、どういう対策、どういう方法で処理に当たったわけですか。

 

○川島(広)政府委員 昨年のそれと比較して申し上げますればおわかり願えるかと思うのでございますけれども、幸いにして、今回の場合は昨年と違います。昨年は放火事件がございましたし、さらに拳銃奪取事件、警察官に対するいろいろな抵抗も、投石等は雨あられのごとく降るというような次第でございましたが、今回の場合は、第一日目第二日目とも、初動体制はきわめて迅速に行なわれたものと考えておりますし、さらにまた、検挙者も初日が十六名、二日目が十四名というふうなぐあいでございまして、なかんずく昨年と比べて違った体制をとりましたのは、制服だけではなく、私服員を群衆の中に入れまして、そこで最初検挙するということを徹底して行なったわけでございます。したがって、これまた御案内のとおりでございますけれども、大体二百名から三百名程度の暴徒が国道二十六号線を渡りまして各地であばれ回るというふうな事件が不幸にして起こったのでございますが、そこで十五名の検挙をいたしまして、第四日目は、三日目の経験に照らしまして警察官も大量に動員いたしまして、現場に四千八百名の警察官を配置し、そのうち千三百名を私服特科隊といたしまして、先ほど申しましたように群衆の中にばらまいて、制服はそれぞれ要所要所にグループで立てまして警戒に当たる、こういうことで昨晩は終わったわけでございます。したがって、今後の見通しはなかなか困難でございますけれども、今晩も、昨晩とほぼ同様の警備体制をとって問題の解決に当たりたいというふうに考えておる次第でございます。

 

○西風委員 組関係、暴力団、そういうものが組織的にこれに関与しておるというようなことはありませんか。

 

○川島(広)政府委員 そういうふうな事柄が新聞等にも一部報道せられておるわけでございますけれども、警察といたしまして、今日まで逮捕いたしました者を取り調べましたが、そのうちに元極東組の者が一名だけ入っております。それ以外には、西成地区の住民以外の者が相当数参加しておったという事実はございますけれども、いわゆる暴力団が組織的、計画的に事を運んだというようなところは、目下の段階ではまだはっきりしておりません。したがって、今後さらに諸般の過程を通じましてその問題を徹底的に追及してまいりたいというふうに考えております。

 

○西風委員 向こうの労働者は、警察官は顔を見ただけで腹が立つ、顔を見ただけで石を投げたい衝動にかられる者もおるわけです。それが正しいかどうかということは別にして、そういう者がおるわけです。そういう考え方、疎外感を持っておる労働者は、警察官に対してもう本能的な嫌悪感を持っておるわけですね。そういう人々に対して、警察としてはああいう事件が起こってから処置するんではなくて、それを未然に防ぐために――これは警察の問題じゃもちろんないと思いますが、警察として事前にどういうふうな調査とか体制をとっておりますか。

 

○川島(広)政府委員 先ほど私ちょっと会議でおくれましたので、あるいは関係各省のほうからお答えがあったかもしれませんが、警察といたしましても、現地でそれぞれ関係機関の協議会というようなものもございまするし、その中でいろいろと関係機関に対して申し上げるべきことは申し上げておるつもりでございます。さらにまた、いま御指摘のように、警察独自としては、その中におりますいろいろな問題を起こすような、いわゆる扇動者、首謀者と申しますか、そういう者に対しては、過去の事案の経験の中でたまたま資料もございますので、それぞれ適当な方法あるいは機関を通じて対策を事実上立てておるというようなことになろうかと思っております。

 

○西風委員 これは、労働大臣、いま警察の発言でも明らかになりましたように、丸福食堂で金を払ったとか払わなかったとかいうようなことじゃなしに、潜在的に労働不安、生活不安というようなものからこういうものが起こっておるわけですね。だから、そういう点で、政府としては、労働省としては、もっと抜本的な対策を講じる必要があるわけですね。いまやっておる事業を着実にやっていけばそれで問題が解決するという問題じゃないのです。そういう点では、この前の橋本官房長官ですか、建設大臣ですかのときにつくられた審議会を、恒常的な機関としてつくられて、単に大阪の問題だけではなしに山谷の問題も含めて、こういう問題を根本的に解決していくような総合的な施策をつくるような、あるいは民意を反映するような、そういうものをつくる意志はありませんか。

 

○早川国務大臣 御承知のように、同和対策協議会というのがございますけれども、これは全国的な広がりを持った同和対策として設けておるわけでございます。愛隣地区だけについて特別なそういう審議会をつくるという考えはいま持っておりません。要は、先ほども申しましたように、どんどん実行することなんで、すでにそういう面では、労働省といたしましては、思い切った対策を今年度予算に盛りましたし、そういうことをまず実行するということを主に考えてまいりたいと思っております。

 

○西風委員 それじゃ有馬局長にお尋ねしますけれども、先ほどちょっと部分的には聞いたのですけれども、愛隣地区に対する事業とそれに対する予算の内容ですね、それからその事業は大体いつからかかっていつごろ完成するかというような点をできたら報告してほしいと思います。

 

○有馬政府委員 先ほど概略申し上げましたが、内訳について申し上げますと、いわゆるマンモス安定所、これは労働安定所というのが正式の名称でございますが、この施設に要する経費が三千百一万円、それから労働福祉センターを新設いたしまして、併設するわけでございますが、この施設が三億五百万円、それから建設省で建てる住宅のほかに、労働省におきましても簡易宿泊所を増設いたしたいと思いまして、この経費が九千百六十八が円、こういったものが施設費の概要でございます。このほか、行政事務費といたしまして、実地指導に要する経費が三百十六万円、それから安定協力員、四百五十名ほどの協力員の活動を期待いたしておりますが、この活動費が百二十五万円、合計いたしまして四億三千二百十一万円という金額に相なるわけでございます。

 

○中山(マ)委員 関連質問をさしていただきます。

 いまは釜ケ崎、いまの愛隣地区でございますが、これはそういう騒ぎの労働者のためにのみの質問が多かったように思いまするが、私が聞き及ぶところによりますと、ちょうどあすこは休火山みたいなものでございまして、ときどきああいうふうなことが勃発いたしますと、それを取り巻くところのいわゆる商売人――私も大阪の人間でございまして、あの近くに住んでおりますので、よくわかっておりますが、その人たちの被害というのが非常に甚大なものでございます。それでその人たちの声を聞きますと、警察に連絡をとってもなかなか来てくれなかった。事が大きくなってから来てもらったので、もっと早く来てもらったらこれだけの騒動にはならなかったであろう。われわれは店をつぶされても、それを言うていくところがないのだと言って嘆いております。いわゆる中小企業者の店でございますので、一度店をつぶされたりしますと、立ち上がりがたいへん困難であるということをしきりに訴えておるのでございますが、労働省にこれをお尋ねするということは、あるいは筋が違うかもしれませんけれども、再々起こるこういう労働者の、わずかのお金を払ったとか払わなかったとかいうようなことから大事件になっておりまするが、こういう被害者の嘆きというものは、政府としてはどういう対策をとっていただくか。そういうものは全然いわゆるつぶされ損になるのでございましょうか。もしそういうようなことになりますると、やはり警察に対する不信もございましょうし、いろいろな面で自分たちの生計を立てていく面での困難から、いわゆる一般的な政治不信が起こるのではなかろうかということを私は気づかうものでございますが、労働者のこういう事件によってこうむった顕著な損害に対する何かの手だてというようなものがあるのでございましょうか、ないのでございましょうか。いわゆるつぶされ損のなぐられ損で、善人が弱い立場に立たされておる。このごろ参議院のある先生が「善人よ強くなろう」というパンフレットまで出していらっしゃるのでございますが、善人を強く守ってあげるという方法があるものかないものか。あまり大阪の声が私にじゃんじゃん響いてまいりますので、ちょっとそれを参考のためにお聞きしておきます。

 

○川島(広)政府委員 いまの最初のお尋ねの、警察に連絡してもすぐ来てくれないというお話でございますが、先ほど西風委員の御質問のときにもお答えしたのでありますが、大阪の府警察本部といたしましても、愛隣地区治安対策委員会というものを部内につくりまして、いろいろと過去の経験等を資料にいたしまして、常時調査研究を実は進めてまいっておるわけでございます。その中の第一の問題といたしましては、何と申しましても、いま御指摘のような迅速なる初動体制をとること、これ、かまず何よりも住民に対して安心感を与えることでありますから、それを目途としていままで努力してまいっておるわけでございます。いま御指摘のような問題も過去にあったかもしれませんが、警察といたしましては、そんなことのないように努力してまいっておる次第でございます。

 ただ、もう一つの問題は、いまの問題とうらはらあるいは逆になるかもしれませんが、従来とかく、愛隣地区のみならず山谷の場合も同じでございますが、いま申されましたような商店街の人たち、こういう人たちの言動というものが、えてして住民に疎外感を与える端緒になっておる。でございますから、それは警察だけの問題ではございませんけれども、むしろそういうふうな方々に住民に対しまして、より親切に、あるいはまたより身近な態度で接していただけるよう、ふだんから、実は警察としましても、防犯協会その他の民間機関を通じまして、連絡をとっておる次第でございます。御参考までに申し上げておきたいと思います。

 

○中山(マ)委員 損害はどうです。

 

○川島(広)政府委員 損害につきましては、もちろん、だれがそういうことをしたかということが捜査の過程ではっきりいたすことになろうかと思うのでございますけれども、そういう場合には、私、実際のこと実は詳しく承知しておらないのでございますが、それぞれいわゆる関係機関と相談の上で適当な措置がとられるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。

 

○中山(マ)委員 済みませんけれども、もう一点だけ言わせていただきます。

 それで、言うていくところがないと言うておるのです。だから、言うていくところはどこかということをここで聞かせていた、だけないでしょうか。どんな損害を受けても損害の受けっぱなしだ、言うていくところがないと声を大にして言うております。だから、いわゆるああいう騒動の最中ですから、戦争と同じで殺された者が損だとかいうことで、そういう状態のことを言いに行って何とか処置してもらえるかどうか、そういう機関はあるのかないのか、それが聞きたいのです。

 

○早川国務大臣 理屈から言いますと、器物破損という問題は刑事事件でありまするし、損害賠償は民事事件で、その加害者に損害賠償させるのが本筋でございますけれども、御承知のように、愛隣地区の方はとても賠償するだけの力もない、そこにむずかしい問題があるわけでございます。したがって、これは法律上の理屈だけでは解決しない。そういう場合に国なり自治体が持てといっても、それは無理な話でございます。要は、私は愛隣地区を二回、自治大臣のときにも参りましたし、労働大臣のときにも正月に参りまして感ずることは、これは全国からいろいろな過去を持った人が来てやっているわけです。たとえばお相撲さんのあまり出世しなかった人がずいぶん来ておるのですね。あらゆる層の複雑な人が来ておるわけです。そこで問題は、国なり市なりでいろいろな施設をやりますよ。どんどんやっておるし、職業紹介もやって、とにかく雇用はあるわけですが、問題はやはり心の救いというもの、これは私はそれこそ宗教団体の活動分野はここだと思うのです。キリスト教にしても、本願寺にしても、創価学会もちょっと出ておりますけれども、これは社会事業、いわゆる宗教団体、そういう面の活動が、はっきり、言ますと非常に鈍い。ですから、そういう魂の問題、心の問題と物質的な施設の問題、こういうものが全部からまなければなかなかこの問題はむずかしい問題で、私は宗教団体に、本来の宗教活動ならもっとこういうところで活躍しないとどなりつけたことがあるのです。ですから、みんな寄って、政治だけの問題では解決しませんとはっきり申します。これは心の問題。ですから、労働大臣が、たとえばどこへ行け、どこへ行けと労働力を移動する独裁政治みたいな権限を持っておるとすれば、また方法はありますよ。それを分散させてやることもできましょう。しかし、自由民主主義におきましてはそういうことはできない。自由な意思というものを尊重しなければならない。ですから、この問題は、先ほどから申しましたように、労働省としてやり得る、政府としてやり得る限界というものはあるわけです。

 それから、器物を破損したときには損害賠償と法律だけでいっても、ない人は賠償しようがないわけですから、したがって、私は現地をつぶさに見ましたが、厚生省の関係、労働省の関係みんな大いにやっております。それから、さらにもっと深いところは、宗教団体にも活動をお願いする。それから済生会もよくやっておりますよ。済生会病院も、本田さんもよくやっておられます。ですから総合的にひとつやる。先ほど住民登録二万ほどできたと西風さんは言うけれども、無籍者というものが過半数を占めておるということは、たいへん問題のむずかしさを証明しておるんじゃないでしょうか。そうすると、政治というものとは結びつかない、投票権とは結びつかないこの問題の深刻さを私は痛感しておりまするが、先ほども申しましたように、もう理屈よりも労働省としてはやることはやる、目にもの見せるということでやっておりますから、ほかの問題はひとつ所管の大臣に御質問いただいて、総合的な御検討を賜わりたい。

 

○中山(マ)委員 くくりにひとつ……。それじゃ処置なしということなんですね。もういわゆるそこの人たちを相手に裁判するわけにもいきませんし、また家をつぶされて裁判の費用もないでしょうし、それじゃ処置なし、あきらめろということなんでしょうね。

 

○早川国務大臣 処置なしじゃございませんので、そういう方法はあり得るわけですけれども、そういう損害賠償の方法は法律上ありますけれども、根本のことは、そういう乱暴をしないような愛隣地区に侍っていく。迂遠のようですけれども、それ以外にちょっと名案が私も――処置は法律上はございます。ございますけれども、根本はそういう無法なことをやらぬような仕組みにしてまいりたいと、かようにお答えするよりお答えはございません。

 

○中山(マ)委員 それじゃ解決はできないということにさせていた、だきましょう。そうしないと、御回答が、いわゆる労働者の精神問題に結局――あの人たちは精神問題なんか考えるだけの余裕がないと私は思うのです。ですから、流れてくる人たちが多いし、あれは犯罪の温床になったり、いつかの人殺しの歯医者さんもここに隠れて長いことわからないでおったところでございますし、それじゃもう被害は受けっぱなしといってあきらめなければならぬということに解しておきます。

 

○早川国務大臣 たいへん誤解を招くことになりますので……。無法なことをやる、法律を犯して器物破損あるいは傷害は、警察当局は法に照らして断面として処分をしておるわけでありまして、その点は決してもうほうりっぱなしているというわけじゃございません。ただ、民事訴訟、損害賠償となりますと、当然これもできるわけでありますけれども、相手がその支払い能力がないとかいうような問題がからみますので、なかなかむずかしい問題だと思います。

 

○西風委員 私は、中山さんのように、善玉、悪玉ということで二つに分けておりませんから、誤解のないようにしておかなければいかぬと思うのですけれども、やはり宗教の手をかりなければいよいよの問題は解決しないんじゃないかというようなことを、労働大臣が、一国の労働行政の責任者がかりそめにも口にすべきことではないと思う。やはり政治の責任にある者が、その政策とその政治の姿勢において、この問題を根本的に解決するというような積極的な意欲を持ってもらわぬといかぬ。端々にもそういう考え方が出るということは、たとえば私がきょう皆さんに質問いたしましても、あの問題に対する深刻な反省というものが全然ないですね。やはりああいう問題が起こったらいち早く何とかしなければならぬ、われわれが要求する先に、労働省なり厚生省なりが、こういう事件が起こりましたのでこういうように処置します、社会労働委員会で皆さん何かいい知恵があったら出してくださいというような、積極的な政府の姿勢というものが必要なんです。そういう決意が全然見られなかったですね。そういう点どうですか。

 

○早川国務大臣 私は、宗教団体の助けをかりなければ救えないと言ったんじゃないのです。みんなが力を合わす問題である。労働行政としてやれることは、魂の救済なんかできません。われわれはあくまでも施設の問題で、その心の問題まではタッチできないということを言っているのです。ですから、いろいろ過去を持った方の気持ちをいやすというようなそういう面は、宗教家の活動に期待すると申し上げたので、決してたよらなければ解決できないという意味ではございませんので、その点は誤解を招かないようにはっきり申し上げておくわけであります。

 それから、愛隣地区の問題ではたびたび申しましたように、先手を打ってやっておるのです。そのやっておることがまだ足らぬというおしかりならわかりますけれども、少なくともあの地区に私も参りましたし、そうして府や市のやることより率先して――このほかに建設省予算が十五、六億あるわけです。あの一地区にそういうことを先手を打ってやっておる。これでもまだ足らぬのだ、こういう御批判ならわかりますけれども、やっておらぬという御批判は、私はどうかと思うわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、当委員会でこの問題を契機としていろいろ御意見が出ましたことは、行政の大いなる一つの参考として、今後ともこの問題は真剣に取り組んでまいりたいということはお約束をいたします。

 

○西風委員 労働省がいろいろ施設をつくって問題解決のために当たろうという熱意は買いますけれども、そのことだけで問題が解決するという考え方をしていたら、これは間違いなんです。あそこは、たとえばマンモスアパートをつくったら、極端なことばでいえば、その近代的なマンモスアパートがそのまま釜ケ崎のあれになりますよ。建物がきれいになるだけです。問題は、やはりそれに照応した行政の側のあの人たちに対する精神的な対応のしかたといいますか、もっとあの人たちが労働者として、ほんとうの新しい労働者としてやっていくことのできるような行政の積極的な姿勢、そういうものが必要なんです。だから、そういうことと照応して、施設とそれとが一体になったときに、労働大臣はそれを宗教的なんとかいうことで一部分表現されたのかもしれませんけれども、こういう事件が起こったときに、われわれが率先してそういう姿勢を示すことが重要ではないか、こういうことを言うておるわけです。どうですか、そういう点、間違っていますか。

 

○早川国務大臣 こういう事件を契機に、社労委員会で真剣な対話がなされるということは、まことに私もけっこうだと思います。

 

○西風委員 時間がないようですからあと二、三問で終わりたいと思うのですけれども、愛隣地区の問題は、労働大臣が言われたように、単なる大阪の問題じゃないのです。全国的な問題なんです。だから、できましたらこの問題について、審議会とかいうむずかしいものが困難であれば、この前、橋本さんがつくられたような機関をつくって、恒常的に、特に万国博を契機にしてこういう問題が解消される――あの千里の丘でどんなお祭りがあっても問題にならぬわけですから、そのことを通してああいう大きな問題が解決されていくということが必要なんですから、そういう点で懇談会でもけっこうですから、常設の連絡機関、ああいう問題を扱う機関、この機関には現場で実際苦労している人を入れなければいかぬと思うのですけれども、そういう機関をできたらつくってほしいと思うのですが、検討の余地は全然ありませんか。

 

○早川国務大臣 よく関係閣僚とも御相談をいたしまして、検討をいたしたいと思っております。ただ、私が先ほど申し上げましたのは、審議会をつくるということで、もう何かそれだけで済んだような気になることを私は好まない。ですから、そういう意味じゃない意味での審議会ということでありましたら、よく関係団体とも御相談いたしまして、検討をしたいと思います。

 

○西風委員 これは愛隣地区の現場で働いている政府出先、大阪府、大阪市、それから民間の機関ですね、こういう機関で働いている皆さんは、たとえば政府の出先では、超過勤務手当とかなんとかいうことを度外視して、かなりな奉仕をやっているわけです。そのことによってこれらの係官が労働者の信頼を得て、問題が起こったときに解決するかてになるわけですね。そういう点で政府は特にこういう現場で実際にこの人たちと接触している人たちをもっと大事にしてもらいたい。この人たちに対して仕事がしやすいような条件をぜひつくっていただきたいというふうに思うのです。

 それからもう一つは、先ほど有馬局長から報告されました事業計画については、先ほども申し上げましたように、すみやかにこれを実行してもらう。同時に、こういう施設をつくるときにも役所だけで机上プランをつくるのじゃなくて、たびたび申し上げますように、現場でやっている人の意見を聞いて、あそこにおる労働者が愛情を持ってこの施設に来ることができるようなものをつくってもらう必要があるわけですから、そういう人との連携を密にしていただきたいというふうに思うのです。特にこの地区にはたくさんの病人がおるわけですから、社会保障の外側におる人がおるわけですから、病院建設その他については、大阪府、大阪市を督励して、すみやかに計画を立て、この病院がつくられるように善処していただきたいと思うのです。再びこういう事件が起こって、この社会労働委員会でまたこの問題でこういう質疑が行なわれるということは、日本の政治にとって大きな悲劇になるわけですから、こういうことが再び起こらぬような処置を労働大臣に特に要請したい。その点に関する決意を伺って、質問を終わりたいと思います。

 

○早川国務大臣 現場で働いておる職安の所長にしましても、厚生省関係あるいは社会事業関係の方々にしましても、ほんとうに涙ぐましい社会奉仕の気持ちでやっておられることは、よく承知いたしております。これらの人たちにさらに愛隣地区のために働いていただくために、処遇その他では十分検討いたしまして、配慮をいたしてまいりたいと思っております。

 なお、本日の御意見に沿いまして、愛隣地区という問題につきましては、一そう政府としても真剣にこの問題を検討してまいりたい覚悟でございます。

     ――――◇―――――