52閉-参-運輸委員会-2号 昭和41年10月11日

 

昭和四十一年十月十一日(火曜日)

   午前十一時四分開会

    

  出席者は左のとおり。

    委員長         江藤  智君

    理 事

                岡本  悟君   谷口 慶吉君  岡  三郎君

                吉田忠三郎君

    委 員

                金丸 冨夫君   木村 睦男君  津島 文治君

                平島 敏夫君   相澤 重明君  大倉 精一君

                木村美智男君   瀬谷 英行君  浅井  亨君

                中村 正雄君   岩間 正男君

   国務大臣

       労 働 大 臣  山手 滿男君

   事務局側

       常任委員会専門員        吉田善次郎君

   説明員

       警察庁刑事局捜査第二課長    林  康平君

       防衛政務次官   長谷川 仁君

       防衛庁長官官房長        海原  治君

       防衛庁経理局長  大村 筆雄君

       運輸政務次官   金丸  信君

       運輸省港湾局長  佐藤  肇君

       運輸省自動車局長        原山 亮三君

       気象庁長官    柴田 淑次君

       労働省職業安定局長       有馬 元治君

    ―――――――――――――

  本日の会議に付した案件

○派遣委員の報告

○運輸事情等に関する調査

 (自動車行政に関する件)

 (航空に関する件)

 (港湾荷役に関する件)

 (気象観測に関する件)

    ―――――――――――――

 

○委員長(江藤智君) ただいまから運輸委員会を再会いたします。

 休憩前に引き続き、質疑を行ないます。

 質疑のおありの方は、順次御発言願います。

 

○大倉精一君 運輸次官にお尋ねしますけれども、港湾行政のかなめになるのは、やはり港湾労働事情だと思うのです。そこで、ことしの七月一日に新しい港湾労働法ができました。その後における適用港の労働事情、これはどういうようになっておるか。これを運輸省として把握しておいでになる現況について御報告を願いたいと思います。

 

○説明員(金丸信君) 私も運輸行政はずぶのしろうとで、いま勉強中でありますが、常用のほうは間に合っておるような状況に聞いておるのでございますが、日雇いのほうは非常に不足しておるというような話も聞いておりまして、担当官もおりますことですから、担当官から御説明申し上げたいと思います。

 

○説明員(佐藤肇君) ただいま次官からお話がございましたように、常用についてはおおむね充足しておるようでございますが、ただ、常用の中でも新規に常用としたものにつきましては、出勤状態が必ずしもよくない。また、当初から、この日雇いにつきましては定数に満たない登録数でございましたというようなことで、各港とも前年同期に比べますと、若干の滞船がふえておる、こういう実情でございます。

 

○大倉精一君 冒頭に委員長にお願いするのですが、港湾問題は、非常に奥の深い、幅の広い問題でありますので、特に新しい港湾労働法、港湾労働運送事業法もできました。この問題、時間をかけてやりたいと思いますが、きょうは時間がないようでありますから、総論的なことをお伺いして、そうしてさらに、自後の進め方については、委員長理事会において相談してもらいたいと提案をしたいと思っております。そこで、運輸省にお尋ねしたということは、ともすれば、港湾労働の面は労働省の問題だ、おれのほうの考え方は違うのだ、こういうような意識が従来、現在もあるのではないか、こう考えて、あなたのほうに質問をしたわけなんです。いまの御答弁でみるように、港湾における労働事情というものを十分に把握しておられぬらしい。常用は間に合っている。それから新規常用は出勤率がよくないとかいわれる。日雇いはどうなっているかというようなこと、港湾の事情そのものについて、運輸省として労働事情を把握しようという努力がないのじゃないか、港湾行政のかなめは、将来機械化され、コンテナーがあれば別ですけれども、現在の場合においては、人間の力がかなめなんです。でありまするから、人間の力、人間というものの事情というものを把握されなければ的確なる港湾行政というものはできぬと思う。いわゆる港湾労働等審議会の三・三答申、これも港湾運送の事業の面と、それから労働の面と、両方一緒にしてある。ですからもう少し運輸省として把握しておられることを聞かしてもらいたい。大臣に聞きたいと思ったのです。こういう重要な問題を大臣みずからもつかんでおらぬというと、それは港湾行政はうまくいきません。前の委員会でも言ったとおりに、港湾問題を近代化しよう、こういうことは容易ならぬ努力です。並みたいていの努力ではない。にもかかわらず、いまのような答弁であれば、まだまだ港湾労働条件というものを十分把握されていない、こう思うのですが、どうでしょうかね、ひとつ佐藤さん。

 

○説明員(佐藤肇君) おっしゃるとおりで、港湾の労働事情というものは非常に重要な問題だと思っております。私どもも一応資料は整えておるのでございますが、労働省の方がおいでになりますのであまり詳しいことは実は申し上げなかったということでございます。もう一つは、私のほうは労働省といろいろ連絡をとりまして、現在の港湾労働法施行後の実態にいかに荷役を合わせていくかということをやる一方、私どもといたしましては、やはりこの問題は企業規模というものを拡大して、企業が強くなって常用化を進めていくということが基本的には一番大きな問題だと思いまして、現在私どもといたしましては港湾運送部会におきまして集約合併の問題を審議していただいておる、こういうような段階でございます。

 

○大倉精一君 ちょっといま聞き漏らしたんですけれども、この港湾労働事情に対する資料は整えておると、こういうことなんですか。労働省がいるようだから、労働省のほうだからきょうは遠慮すると、こういうことなんですか。それは労働省がおられてもかまわぬから一かまわぬと言うとへんですが、運輸省として出してもらいたいと思う。というのは、これは名古屋へ行きましたときに、何か事前の情報では――情報の程度ですからわかりませんけれども、県の労働部のほうは、きょうは運輸委員会の視察だから私のほうには関係ないというようなことで、どうも出席したがらないというような傾向があったらしい。ここに一つ盲点がある、こう思う。ですから、あなたのほうで資料を持っておるならひとつ御披露願いたい。

 

○説明員(佐藤肇君) 常用労働者について申上げますと、船内でございますが、三十一年の三月末におきましては、名古屋の例で申し上げますと千六百九十五人でございましたが、四十一年の八月末では千八百七十一人と、大体一割程度ふえております。同じようなことを各港にやってまいりますと、八月末では、船内につきましては一三〇%ということで三割ふえております。なお、沿岸につきましては、同じようなことをやってまいりますと関門港では一〇七%ということでございまして、沿岸の常用化というものは進んでおらないわけでございます。また、稼働率について申し上げますと、名古屋の例で申し上げますと、昭和四十年における稼働率は二五・二日でございますが、港湾労働法の施行後の四十一年七月におきましては二四・四日と、九六・八%を若干下回っております。これが神戸について申し上げますと八四・一%ということで、相当新しくふやした常用化稼働率が悪いということになっております。なお、六大港の平均で申し上げますと九七%でございます。また、八月におきましては若干改善されまして、名古屋は九九・六%になっておるのでございますが、神戸は依然として八二・一%ということで、平均いたしますと、六大港では大体常用の稼働率というものは、四十年の同じ期と比べて大体同じ稼働率まで上がってきておる、こういう状態でございます。

 

○大倉精一君 そういう数字も大事ですが、私の聞いておるのは中身ですよ。つまり日雇い労働者が登録をしぶって思うように登録が出てこないと、こういう状況がありますね。その原因は何であるか。あるいは新規常用者ということがありましたね、新しい常用。新規常用者の中身は一体何であるか。擬装常用というのがあります。そういうのを皆さんが調べて把握しておられるかどうか。数字だけだったらこれは下から上がってくるやつをずっと計算すればいい。問題はその中で実態を把握しておられるかどうか、こういうことなんですよ、私の言うのは、どうでしょうね。

 

○説明員(佐藤肇君) 実態は非常にむずかしいと思いますが、新規常用につきまして、これが擬装常用その他というようなことを労働組合側から言われておりますが、業界にこの件についてただしましたところでは、業界といたしましては、やはり以前においても新規に雇う場合には、試用期間というものをおいておった。したがって、今回の常用化にあたりましても、当初は試用期間として使っておるのであって、これが従来の常用と待遇その他に違いがあるのはやむを得ない。決して擬装常用ではありませんということを言っているわけでございます。もう一つ、日雇いの充足、登録が悪い、なおまた出勤率が悪いということにつきましては、当初業者間協定で千三百円という日雇いの賃金を出したわけでございますが、それが低過ぎるということが非常に言われておりまして、したがいまして、業者といたしましても、これを上げるという方向に向かっておりますが、なぜその当時千三百円というような安いものを出したかと申しますと、従来の格づけにおきまして三級、四級というのは大体千三百円であったわけでございます。したがいまして、当初日雇い労働者の質というものが職業安定所を通して手に入れます場合に、はっきりしなかった。したがって、三級、四級程度のものについて、業者間の協定があったので千三百円というのが出たわけでございますが、職安その他ともいろいろ協議いたしまして、作業能率というものを勘案して格づけをしていくということが進んでまいりましてから、日雇いの就業率も若干ずつよくなりつつある、かように聞いております。

 

○大倉精一君 そういう日雇いの問題とか、擬装常用の問題とか、そういうことが出ましたけれども、これは港によって違うだろうと思います。いろいろ違うだろうと思います。問題は、今度の法律でもって労働者の労働力を確保するということですね。それには登録制度をしく、こうですから、日雇い労働者が喜んでとまでいかなくても、希望を持って登録しに来なければいかぬと思うんですね。ところが、いまでは全然希望がないということなんです。どこにその原因があるか。たとえば千三百円というお話ありましたけれども、これはこまかい例ですけれども、これは最高賃金ですからね、千三百円というのは。どこの港でもこれ以上やっちゃいかぬというのですね。最低賃金の業者間協定ならこれはわかるかもしれないけれど、最高なんですよ。ですから一つの例が、通勤費ぐらいは支給してやろうかと、そうして支給してもこれでもって罰金とられてしまう。そういうところに魅力がない。あるいはまた、従来は沿岸の荷役でもって肩の荷役をやっておった連中が、二千六百円から三千円もらった。今度は新しい法律ができてこうなったものだから、千三百円きりもらえない、こうなんですね。ですから、そこに一つの大きな問題があるのであって、あとから労働省に聞きますけれども、日雇い労働者が希望を持って登録をしに来るようにするにはどうしたらいいか、ここがポイントです。これがポイント。その努力がなかったら、あの法律をつくっても何にもならない。これは運輸省としてどういうぐあいに考えておられますか、どうやったらいいと思うか。

 

○説明員(佐藤肇君) ただいまおっしゃられましたことは、私どももたびたび考えたわけでございますが、非常に大きな問題だと思います。もう一つ、千三百円は最高というきめ方ではないと思います。これ以下ならいいということではありません。そこで私ども考えますのに、従来の一級、二級、三級というような格づけをした労務者の日雇いの賃金に比べまして、もし労働法施行前にいわれておりましたように手配師というものがあって、ピンはねをしていたと、それがピンはねがなくなれば当然職安に喜んで来るのが普通ではないかと思うわけでございますが、それが逆にピンはねがなくなるといいますか、手配師がいなくなったらば労働者が来ない。それから一方で送り迎えにバスを、バスといいますか、トラックといいますか、そういうものを手配師が使っておったと、そういうことをやれないかわりに電車賃を出そうと言っても来ないと、いろいろなことで、私ども考えまして、われわれの考え及ばない点が多々あるんではないかという気がするわけでございます。私どもといたしましては、日雇いが喜んで来るようにするにはどうしたらいいかということはもちろん考えなければならないことでございますが、これは非常に複雑な社会的な問題の中で考えていかなければならない問題だと思いますので、私どもといたしましては、それはそれといたしまして、やはり常用化というものをなるべく促進していくと、これ以外には手がないのではないかというのが現在の考え方でございます。

 

○大倉精一君 結局、むずかしいということですね。むずかしいということで、どうにもわれわれ考え及ばぬところがあるというお話でありますけれども、考え及ばぬところがあっては困るんですよ、みんな考え及んでもらわなきゃ港湾行政できませんよ。ですから、こういうけっこうな――けっこうと言うと変ですけれども、画期的な港湾労働法ができた。これを実際実施していく上において、何を把握して、どこへ一体改革のメスを入れたらいいかと、こういうことを検討してもらわないというと、単なる文章を変えていっても何にもならぬ。現に港湾によっては、どうせこういう法律はざる法だから、そのうちなくなってしまうんだから、おまえ一応向こうへ行っておれと、なくなったらおれのほうで引き戻してやるからということで、業界も熱意がない。あるいは役所のほうも熱意がない。こういうことで、せっかくできた港湾労働法というものが雲散霧消してしまうというおそれがあると思う。そういう実態はどうでしょう、そんなことはないと思いますか。

 

○説明員(佐藤肇君) 私どもは、この法律の施行前におきまして業界が消極的であるということを聞いておりますし、この法律の成立前におきまして時期尚早であるというような反対のあったことも聞いております。しかし、この法律の施行後におきまして業界がこれをざる法にしたいというような考えは聞いておりません。この法律によって荷役というものが円滑に行なわれるようにするにはどうしたらいいのかということを積極的に検討しております。

 

○大倉精一君 どうも答弁から聞いておるというと、労働省のほうはどうかわかりませんけれども、あなたのほうは、この港湾労働法に対する熱意というか、そういうものが足らぬような気がする。ということは、管轄が違うからというせいでもあるかもしれないけれども、これはやっぱり重要な問題ですよ。ああいう法律をつくったならば、その法律を実施するについては、運輸省も労働省も一体となって異常な努力をしなければ、あの法律の実施はできない、私はいつかそういうことを言ったことがあると思う。ところが、いまお話を聞いておりますと、千三百円でも、業者間に聞いてみればそんなことはないとおっしゃる。それが働くほうから聞くと、ある。横浜でもどこでも、千三百円以上払っちゃいかぬ、それを払うと罰金を取られる。あるいは新規常用にしても、以前にも試用期間があったと言いますけれども、今度は、試用期間というのは変なんですよ。それで新規常用に入る条件として、労働組合に入っちゃいかぬとか、あるいは労働組合と協定をしている協約は適用しないと、こういうことですね。そのかわりおまえに千三百円やろうと、それから調整金ですか、あぶれ賃の日割り計算をやろうと、プラス何とかやろうと、大体千三百円になるらしいですね。これを労働組合は擬装常用と言っておりますけれども、そういうことばが当てはまるかどうかわかりませんけれども、業者のほうでも常用にしようという熱意はない。常用のほうは一〇〇%いっていない。ところが、日雇いの登録のほうは全然目標を達成していない。しかも、最近はむしろ土建屋さんのほうに流れてしまう。そこで今度は、しかたがないから例外規定を乱用といいますか、これをいいことにして、どんどん直用しておりますね。名古屋あたりでも、熱田の職業紹介所、白鳥の職業紹介所、お役所みずからが、あそこに行って連れてこいということを言って何とか間に合っている。私無理は言いません。七月一日からこういう画期的な法律かできたんだから、そう短時日にできるとは思っておりませんけれども、こう熱意がないということでは何にもならぬ。それを私は言っている。ですから、いま佐藤さんの言われたことは、業界からいろいろお聞きになったことであると思いますけれども、これはひとつ実態をつかんでおかなければならぬ。そういう努力もしてもらいたいと思う。労働省としても、これは担当省であるから相当検討もしておられると思うのです。特に港湾労働あたりは必ずやられたと思うのだが、まことにやっかいなものですよ。特に七月一日から施行した労働法というものと、現在の港湾労働事情というもの、これは法律とだいぶん食い違っておると思うのですが、その辺の労働省として把握しておいでになることを御報告願いたいと思う。

 

○国務大臣(山手滿男君) 先ほど来運輸省のほうから御答弁がありましたように、法の施行以来まだ日が浅いのでございまして、必ずしも軌道に乗っておるとはいえませんけれども、大体計画の八五%以上を達成しているように思っておりまするし、法の目的は順次軌道に乗ってうまくいきつつある、こう考えておるわけでございます。ただしかし、先ほど来お話しのように、労務者諸君の中にはいわば一種のアンコウ気質というような独特な気風もございまして、必ずしもかた苦しい考え方になりたくないというような風潮も見られておりまして、まだまだ改善の余地もあろうと思います。われわれの労働省のほうの関係においても順次改善をしてまいりたいと考えております。

 

○大倉精一君 あなたのほうで七月二十六日の閣議報告の文書がここにありますけれども、これは御存じですね。これを見てもわかるように、非常に憂慮すべき状態が報告をされております。参考のためにちょっと読んでみますと、「一部の港湾において、安定所への求人の内容となる賃金が法施行前と比べて低下したという事実があり、」ということですね。低下したという事実がある。これは運輸省の報告じゃ、以前の賃金と比較検討して妥当なものとしてきめておると、こういうお話がありましたけれども、労働省のほうでは、一部の港湾においては、安定所への求人の内容となる賃金が法施行前と比べて低下したという事実がある。「また、一般に登録日雇港湾労働者の安定所への出頭状況が十分でないため、かなりの求人未充足数がみられ、その結果、これら未充足の分を事業主が直接雇入れによって充足するという事態がみられる。このような状態がもし慢性化すれば、港湾労働法制定の趣旨は没却されることになりかねない。」こういうような報告ですね。私ども同じようなことを心配しておる。「そこでまず、紹介方法の改善その他安定所の紹介機能充実のための体制の強化を図る一方、事業主その他の関係者に対しても、賃金水準の維持、安定所利用の促進等新秩序に対する協力呼びかけを行ないつつ、万一法の違反があれば厳正なる態度をもって臨む方針である。」と、こうなっておる。こういうことを報告しておられますけれども、具体的にはどういう施策を進めておられますか。これをほうっておいたらたいへんなことになるのだ。で、紹介方法も改善しなきゃならぬ、事業主が違反をすれば厳正なる態度をもって臨むのである、こういうことを閣議報告せられておる。これが港湾調整会議に労働省として提出せられておる内容ですね。具体的にどういう措置をとられようとしておるのか、お聞かせを願いたい。

 

○国務大臣(山手滿男君) 先ほどお話がございましたように、土建業関係などというのは非常に高い。千七、八百円も出しておるような状況もあるようでございまして、したがって、さっき言ったようなアンコウ気質やなんかもございまするし、そのときどきの情勢によって、必ずしも港湾に向いていかないというようなことで、十二分にいかないきらいもあるやに思っております。しかし、先ほど来お話が出ておりまするように、そういういろいろな経済情勢の変化等にもよりますけれども、誤解などを解きましたり、いわゆる安定所の紹介の業務のぎこちなさ等を改善するように、積極的に労働省から指示をいたしておりまして、賃金の低下といいますか、実情に合わしたような賃金等についてもいろいろなくふうをこらしてまいりたい、こういうことを考えております。

 

○大倉精一君 そういう点と、それから違法を犯した業者に対しては厳正なる態度をもって臨みたいというのは、中身はどういうことなんですか。

 

○説明員(有馬元治君) これは御指摘のように、港湾労働法は関係者の何といいますか、この法律を守るという熱意がなくなれば、ざる法化することは明らかなことでございますが、私どもとしましては、関係事業主、労働者に対するPRをさらに一そう強化いたしまして、港湾労働法を関係者がそろってもり上げて、打ち立てていくというふうに指導をしておるのでございますけれども、一方におきまして、港湾労働法をまあ極端にいえば無視するような立場で、初めから港湾労働法に関係なく、直接募集を釜ケ崎あるいは山谷等に出向いて実施するというふうな業者もございます。私どもは、これらの業者に対しまして港湾労働法の趣旨を十分徹底させるように現在努力いたしておりまするけれども、どうしても港湾労働法にのっとった事業運営をしない、したくないというふうな事業主も一部にはございますので、私どもとしましては、これらの悪質な事業主に対しましては、港湾労働法に照らし、あるいは職安法に照らし、基準法に照らして、厳正な態度をもって臨む方針を現在着々と進めつつあるのでございます。しかし、これ御承知のように、釜ケ崎一つをとりましても、あの地区が従前無法地帯といわれるほど放置されておった一面もございますので、これらの就労秩序を全般的に正常化するという施策と相まって、違反業者の取り締まりの徹底を期するという方向へ持っていきたいと思っておりますので、この辺は、具体的に違反の摘発に乗り出すまでにはなお若干の日時をおかし願いたいと思っておりますが、いま申しましたような手段でもって、違反に対しては厳正な態度で臨むという基本方針を立てておるわけでございます。

 

○大倉精一君 これはいろいろな事情もあろうかと思うのですけれども、せっかく法律ができたんですからね、お役所がむろんこの法律に対する非常な決意と厳然たる態度がないとこの法律はだめなんです。ですから、業者を集めて訓示だけじゃだめです。これもひとつ調べてもらいたいと思うのだが、名古屋においてはいまの、さっき申しましたように、熱田の職業紹介所、あるいは白鳥の職業紹介所、ここへ行って集めてこい、連れてこいということも職安自体が慫慂しておるということも聞きましたが、そういう事実があるとするならば、これはどうも好ましくないと思うのですね。これは聞いただけで実態を見ておりませんからよくわかりませんが、これも一ぺん念のために調査をしてもらいたいと思う。

 それから千三百円という業者間協定、これは最高じゃないとおっしゃるのだが、これは一ぺん具体的な事実を調査していただいて、業者間でもって最高を自主的にきめておるということになれば、これはこの法律違反ですよ。そういう点もひとつしっかり調査を願って、実質的にこれは最高のものであるとするならば、労働省としてやはり何らかの措置を講じなければならぬと思うのですよ。その点はいかがですか。

 

○国務大臣(山手滿男君) いまの千三百円を最高にきめているということは、私は事実でないと考えておりますが、御指摘でございますから、一度よく調査してみたいと思います。

 それから熱田その他の紹介所におきまして、どこそこへ行って集めてこいというようなことをやっていることにつきましても、よく御指摘のとおり調べてお答えしたいと思います。

 

○大倉精一君 これもひとつ調べてもらいます。たとえば名古屋においても、交通費の名目でもって何か出そうとすれば、業界からすぐ文句を言われて、実際やっておれば罰金を取られるのです。こういうような問題もあるから、はっきりとひとつ調査を願って、実際そうであれば厳重に警告して訂正してもらうようにしてもらいたいと思います。

 それから従来の手配師、ボスの問題、これは現在どうなっておりますか。これは各港によって違うと思いますが、どういう状況になっておりますか、わかっておったらおっしゃっていただきたいと思います。

 

○説明員(有馬元治君) 手配師の実態は、これはなかなか私どももつかみかねているのでございますが、港湾労働法が施行になりました今日においては、手配師の存在は法制上も許されない存在に相なっております。したがいまして、現在従前の手配師がどういうふうな形になっているのかという分析は、数字的にはなかなかむずかしいのでございますが、大体会社の労務担当者に転身しているものと、それから港湾労働以外の建設あるいは陸上輸送といった方面でなお従前どおりの手配師活動が存続しているというふうな実態がございます。私どもも、従来の手配師がほんとうの意味で会社の一労務課員として更生するという者については、これを妨げるといいますか、そういう更生のしかたは悪いというふうな指導はいたしておりませんが、従前の手配師が何らかの形で正業に更生するように現地では指導いたしているわけでございます。

 

○大倉精一君 これも率直に言いまして、一ぺんにずばっとこれを一切なくしてしまうということはできないかもしれない、港湾の実態からいってできないかもしれないけれども、しかも依然として残っている。たとえば名古屋において従来のボスが二人くらいいるらしいのですが、その人が大体百人くらいある業者へ引っぱっていって報酬を毎月三十万円ずつもらっているらしいが、あすこは輪番紹介をやっているから、名古屋は。ですから、そこで班長という名前になった、班長という名前になって、ほんとうならば一人一人が出頭して紹介するのがほんとうだけれども、輪番、組紹介ですから、きょうはこれだけやると言って何か持っていけば認めるので、かえ玉ができる、水増しがある、こういう実態がある。ここにやはり一つの手配師の温存があるわけです、あるいは八幡においてもあるらしい。港湾下宿かなんかあって、そこからバスでもって通う、そしてバスの中で港湾手帳をよこせと言っている、こういう状態である。こういう実態をひとつしっかりつかんでもらいたい。ですから私がいま申し上げましたように、急にぴっちりなくするということはなかなか困難であるかもしれないが、そういう実態を把握してもらいたい。しかも、それを直すには相当な勇気と熱意と努力が要りますが、そうでなければ、これを直さなければ港湾労働法をつくったという意味が全然なくなってしまう、こう思うのですが、こういう点について皆さんから考え方をお聞かせ願いたいと思います。

 

○国務大臣(山手滿男君) 発足以来まだ日も浅いものですから、御指摘のようないろいろなことが多少あろうかと思いますが、御承知のように、班長制度を採用をいたしまして、グループ単位に編成をして、その中でリーダー格の者をつくって、そうした手配師やなんかのはびこるのを防ぐような合理的な制度を育てていこうというようなことで一生懸命努力をいたしておるところでございますけれども、必ずしも、日が浅いものですから、まだ全面的にうまくいっているとは言い切れない面もあろうかと思います。よく調査をし、改善をしていきたいと思います。

 

○大倉精一君 これはひとつ大いに調査していただきたい。特にこれは朝早く職安に行って現状を見なければわかりませんよ、現状を見なければ。私も一、二回行ってみましたけれども、職安に行くと、きょうはこういうところがあるぞ、千三百円。ところがボスがおって、ウインク雇用ですな――こうウインクして、こういうところに行けよと、ボスのところに行けば千五百円になる。そういう実態を知らないというと、なかなか容易に把握ができないと思います。こういう点もひとつ大いに検討を加えてもらいたいと思いますね。

 それからもう一つは、冒頭申しましたように、日雇い労働者が安心してといいまするか、若干希望を持って就労するためには、いろいろなことを心配してやらなければならぬ。これは一つの例が、いままでは盆暮れに幾らか出たのですね。盆暮れに名古屋あたりでも、業者と市と県と三者が共同して、そうして盆暮れには一万円か二万円ずつやる。東京あたりになると五万円か六万円出る。それが今度出なくなった。だからああいう労働者諸君は、たとえ二万円でも三万円でもまとめてぱっともらえるというのが魅力があるのであって、それがもらえぬとなったらこれはもう来ませんよ。これは大臣どうですかね。これは運輸省とよく協議していただいて、何らかの方法において盆暮れの楽しみというものを出してやるという、そういうことを考える必要があるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうかね。

 

○国務大臣(山手滿男君) この法律をつくりました魅力は、労務者の側におきましても、職にあぶれたようなときでも手当がもらえて何とかやっていけるというようなところに魅力が労務者側にもあるということであろうかと思いますが、御指摘のように、やはり盆とか暮れとかというのは、わが国のいわゆる楽しみな時期でございますから、そういうようなことがあればそれにこしたことはないと考えまするけれども、いろいろ事情もございまするし、よくこれは検討しなければ、こうするんだということはなかなか結論が出ないだろうと思います。

 

○大倉精一君 それは運輸省のほうはどうですかね。業界のほうなり、あるいは地方自治体のほうなりにいろいろ働きかけて、そういうものを復活と言っては変ですけれども、そういうことができると思うのですが、そういうことができませんか。そういう楽しみを取っちまって、さあ登録せいと言ったって、これは無理ですよ。大臣、これはどうですかね。

 

○説明員(佐藤肇君) この問題は当初から言われておって、登録のときから問題になったことでございまして、先ほど労働大臣からもお答えがございました御趣旨に沿いまして、労働省と十分話し合いをしたいと思います。