52-衆-運輸委員会-2号 昭和41年07月29日

 

昭和四十一年七月二十九日(金曜日)

   午前十時四十分開議

 出席委員

   委員長 古川 丈吉君

   理事 壽原 正一君 理事 關谷 勝利君

   理事 田澤 吉郎君 理事 田邉 國男君

   理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君

   理事 肥田 次郎君 理事 矢尾喜三郎君

      有田 喜一君    浦野 幸男君  小渕 恵三君    川野 芳滿君

      木村 俊夫君    高橋 禎一君  南條 徳男君    松浦周太郎君

      井岡 大治君    小川 三男君  勝澤 芳雄君    野間千代三君

      山口丈太郎君    内海  清君  竹谷源太郎君

 出席国務大臣

        運 輸 大 臣 中村 寅太君

 出席政府委員

        運輸政務次官  福井  勇君

        運 輸 技 官(港湾局長)  佐藤  肇君

        運輸事務官(航空局長)  堀  武夫君

 委員外の出席者

        運 輸 技 官

        (航空局監理部新国際空港計画課長)     塘  恒夫君

        労働事務官(職業安定局雇用調整課長)  広政 順一君

        専  門  員 小西 真一君

    ―――――――――――――

 

本日の会議に付した案件

 閉会中審査に関する件

 航空に関する件(新東京国際空港に関する問題)

 港湾に関する件

      ――――◇―――――

 

○田澤委員長代理 次に、港湾に関する件について調査を進めます。

 質疑の通告がありますので、これを許します。井岡大治君。

  〔田澤委員長代理退席、委員長着席〕

 

○井岡委員 さきに当委員会で港湾運送事業法を審議をする際に、港湾労働法が施行後港湾運送事業というものの関連ということでお尋ねをした際に、十分そのことは配慮をしてやらなければ運送事業というものは円滑にいかないし、同時に近代化しない、ですからわれわれとしては十分その点を考慮してやります、こういう御答弁があったと思います。実は当時十五分ということだったものですから、私はそれ以上問題を追及しようとしなかったわけです。ところが現実にやはり私たちが一番心配をしておった問題が出てきておるわけです。

 そこで労働省の調整課長おいでになっておりますね、お尋ねしますが、現在の港湾労働法施行後における状況等について一通り聞かしてください。

 

○広政説明員 港湾労働につきましては本年の七月一日から全面的に施行いたしたわけでございますが、まず登録の状況について申し上げますと、日雇い労働者につきましては、現在登録が出ております者が全国を通じまして一万八千人、それから常用につきまして四万九千九百五十八人、合わせまして、八万一千に対しまして六万七千九百六十五ということで、私どもの予定いたしました数字の約八四%という現状に相なっております。私ども大体この八四%という数字で、荷役に特別の込み方というものがない限りは、通常の荷役作業はこれで処理するに足りるのではないかというふうに判断いたしておりますが、施行当初若干の問題がございまして、ただいま鋭意私どものほうで問題点の整理並びにこれの是正方ということで進めております。せんだって二十六日に、大臣からこの点閣議でも申し上げまして、各閣僚の方々の御了解を得た、こういう状況になっております。

 

○井岡委員 八四%で特別の事情がない限り支障がない、こういうことですね。

 そこで港湾局長にお尋ねしますが、現実に今日かなりこれで混乱が起こっておるわけです。あなたのほうは御存じだろうと思うのですが、労働省はだいじょうぶだ、こう言っておりますが、この点どうです。

 

○佐藤(肇)政府委員 港湾労働法の施行を控えまして、先ほどお話がございましたように、定数に満たない、登録がおくれておるということで、私どもも労働省と協力いたしまして、業界並びに出先の海運局に協力方を強く要望したわけでございます。その後の情勢を見ますと、若干労働者が不足だ、そのために滞船時間が多少延びたということもございますし、またギャング数につきまして人数を調整したために荷役がおくれたということはございますが、特に不荷役船が出たというような実績はございません。何とかやっているという実情でございます。

 

○井岡委員 いかにして労働省と口を合わそうかというのでだいぶ苦労されておる御答弁ですが、私はそういう答弁では了解しがたいわけです。

 そこで労働省の調整課長にお尋ねしますが、定員が集まらない原因というものはどこにあるのか、それをひとつお聞かせ願いたい。同時に、いままでいろいろ原因を究明しているとおっしゃったわけですが、どういうことがいま問題になって、どういうことが結果になっておるか、これを全部教えてください。

 

○広政説明員 私が先ほど若干問題がございますと申し上げましたのは、先ほど申し上げました数字そのものがそのままで動いているという意味ではございませんで、労働者の安定所への出頭状況という点を考えますと、いまだ十分ではない、したがいましてかなりの求人未充足というものが見られることは事実でございます。そこでそれの原因といたしまして、いま先生どういう原因だと、こういうお話でございますけれども、いろいろの原因が重なっておるのではないかというふうに思います。私ども、港湾労働法の施行にあたりましていま一番問題にいたしておりますのは、一部の港におきまして、公共職業安定所への求人の内容となります賃金が、法律施行前に比べて若干下がった、そういう港があるというところでございます。この下がったという点につきましては、私どもの日雇い港湾労働者の紹介のしかたというものを、いままでのようなギャング編成ではございませんで、輪番ということで次々に回していくという形でいたしております。むろん十ぱ一からげに何もかも輪番ということではございませんで、ある程度の職種別というものも考慮しながらの輪番でございますけれども、それだけにどういう労働者が来るかわからないというような問題点もそこにあるかと思います。港湾労働法施行上の問題としては、輪番というのはどうしてもやっていかなければならない筋道だろうと私ども思っております。できるだけきめのこまかい紹介ということをただいま行政指導もいたしておりますし、また業者の方々ともいろいろお話し合いもしておる。こういうことで、この大原則に即しながら進めてまいりたい。その過程で賃金が下がっているという事実も逐次直ってまいっておりますが、いずれにいたしましても、労働者が集まらなかったということの原因の一つとして賃金の問題というのがあるのではないか、あと、そのほかにいろいろ言われておりますけれども、拘束されるのはいやなんだという感覚も一部の労働者にはあるようでございます。いろいろな原因が集まって、先ほど申し上げました一万八千人というものが、現実には安定所へ顔を出してこない場合がある、そういうことかと存じております。

 

○井岡委員 この施行にあたって、では業者並びに労働者にどのような指導をなさったか。集まらないということが、私自身わからないのです。いままで集まっておったものが法を施行したために集まらない、ここに何か欠陥があると思うのです。したがって、いまこれを施行するにあたってどのように業者に説明をし、理解をさせ、あるいは労働者にどのように理解をさせたか、これが一つ問題だと思う。何のために賃金を下げなければいけないのか、しかも集まらなくなってきたからといって、この原因を究明していくうちに、逐次賃金の問題も戻ってきた、こういうお話ですね。そういうことであるとするなら、なぜ最初からそういうことを指導しなかったか、これが問題だと思うのです。この点をひとつお聞かせを願いたい。

 

○広政説明員 私ども、御承知のとおり四月一日から実はこの登録という問題を開始いたしました。四月から七月まで三カ月間というものは、登録はしていただくけれども、実際にこの法律に書いてございます雇用規制という点は七月一日から動くのだということで、その前提のもとに各港湾の業者の方々あるいは労働組合の方々と何回となく打ち合わせもやりました。また現地におきましては各種のPRの手段を講じて万全を期してまいったわけでございますけれども、七月一日を迎えまして遺憾ながら先ほど申し上げた事実があったということでございまして、私どももできるだけこのPR、あるいは理解していただくということについては力をいたしたつもりでございます。

 

○井岡委員 そうしますと、私ちょっとお尋ねをしたいのですが、社内臨時とか門前雇用とかいうのがあるようですが、これはどういうものですか。

 

○広政説明員 先生ただいま御指摘の社内臨時ということば、実は私どももこれは労働組合の諸君から伺ったことばでございますが、労働組合の方々のおっしゃっている意味から判断いたしますと、特に神戸の場合でございますが、新たに港湾労働法ができまして、港湾労働法の本来のねらいといたしております常用化の促進ということと関連いたしまして、いわゆる常用ということで届け出が安定所へ出てまいります、その常用というものの実態が実は臨時みたいなものじゃないか、こういう御指摘が昨日総理府の港湾調整審議会におきましてもございまして、そのことをさしておられるものというふうに考えております。それから川前雇用と申しますのは、安定所を通さないで雇用するというのを、俗称門前雇用あるいは直接雇用というようなことばで呼んでおるわけでございます。

 

○井岡委員 それでは社内臨時という実態について、あなた方は労働組合が指摘したとおりだというように、理解されておるのですか。

 

○広政説明員 何ぶんにも法律が施行されました直後でございまして、常用化促進というその筋道は私はそれで了とすべきじゃないか、非常にけっこうなことじゃないかと存じております。問題は、常用の実態が一体どうなんだろうかという点にあるわけでございます。この点、いましばらく時間をおかしいただきまして、私どものほうではこれについて中身を調べてみたい、このように考えております。

 

○井岡委員 それは十六条の二項に該当する常用、こういうように理解していいのですか。

 

○広政説明員 十六条とは直接、常用の問題は関係ございません。法律の十三条に常用港湾労働者証の交付というのがございます。この常用港湾労働者証の交付というのは、事業主が労働者を自分のところの常用として使っているというときは安定所へ届け出る。この常用だけでは処理し切れないという荷さばき、これは波動性がございますので、そこで処理し切れないという場合に日雇いいうものを使う。その日雇いにつきましては、安定所に労働者が登録していただくということで処理いたしておるわけでございます。十三条に言う常用労働者というのをお考えいただければよろしいかと存じます。

 

○井岡委員 そうすると、社内臨時というのは十三条による常用、こう理解していいのですか。

 

○広政説明員 法律の条文では十三条に常用労働者証の交付ということで書いてございますので、事業主が自分で使っておりますいわゆる常用というものをお考えいただければよろしいのではないかと思います。

 

○井岡委員 ぼくの言っているのは、それだと、なぜ社内臨時という名前を使うのですか。常用であれば職員であるはずです。その会社の従業員であるはずです。それをなぜ社内臨時ということばを使うのか。これはおそらく私は十三条じゃないと思う。十六条の二項の問題からここへひっかけてきているのだろうと思う。この点どうですか。

 

○広政説明員 先ほど申し上げましたように、私どもは常用と日雇いということで港湾労働法に基つきまして仕事を進めておるわけでございますが、この過程で、労働組合のほうで社内臨時ということばで呼んでおられる、その実態は港湾労働法で言っている常用ではないじゃないか、こういう言い方を労働組合はしておられるわけでございます。それだけに、私ども、先ほど御答弁申し上げましたように、いましばらく時間をかしていただいて、この点の実態をはっきりさせてまいりたい、こういうことでございます。

 

○井岡委員 私のお尋ねをしているのは、あなたの言われる十三条の常用ということであるならば、これは運送事業法に基づく従業員――ある一定の従業員を持たなければ運送事業を行なってはいけない、こういうように法律を改正したわけです。私はそれがいわゆる常用だと思うわけです。ですから私は港湾運送事業法の審議のときに、港湾労働法の常用とこの従業員は同一であるのかどうかということを聞きました。そうしたら港湾局長は同一のものだ、こう私は理解をしております。またそうでなければなりません、こういう御答弁であった。そこで常用としての実態を備えておらない、だからこの点について検討するのだ、こういうことだと、これは常用ではない、私はこういうように理解をするのが正しいと思うのです。運送事業法にはそうなっていないのですから。常用というものはあくまで常用ですし、社員であるし、あるいは従業員でなければいけない。これが常用です。その内容がそういうものでないとするならば、これは常用とみなすことは私は間違いだと思うのです。そう思いませんか。

 

○広政説明員 港湾労働法におきまする常用が、ただいま先生御指摘のとおり、運輸省でおやりになっておられます港湾運送事業法の免許にあたっての労働者、これと同じものであるということにつきましては、当時法案を御審議いただいたときに御答弁申し上げているとおりでございます。問題は、私の御説明があるいは足りなかったかと存じますけれども、常用ということで事業主から届けが出てまいります以上は、その常用として当然中身を備えたものであるべきであり、また現実そうだというふうに私どもは存じております。

 ただ問題は、賃金の支払いのしかたが、いわゆる常用といわれる人たちの中にありましても、日給月給という形の支払い形態をとっておる場合もございます。それだけにおそらくこの人たちが――私どもも実態的にはまだ七月も終わっておりませんので、よくそこいら調査いたしておりませんが、あるいは日給制で払っておる形の方々もあるのではないだろうか。そういうようなところから臨時といいますか、社内臨時ということばを労働組合の方もお使いになっておるのではないか、このように私申し上げておるわけでございます。

 

○井岡委員 そうすると、まだ一カ月しかたっていないからということですから、私も正確にあなた方にお答えをいただくわけにはいかないのですが、あなた方のところに常用として届けをしておる、しかし実態はそうでないから組合のほうは臨時だ、こういっておるのだ、こういうことですが、届け出をされたその内容というものはどういうものなんですか。やはり常用としてのなにははっきりしておるのかどうか、この点をお尋ねします。

 

○広政説明員 私ども常用として届け出がきた場合に、これは常用の届け出証の中で、たとえば社会保険の問題という点につきましては、これは厚生年金あるいは健康保険あるいは失業保険という点については、常用の線でやっていただかなければならぬ。御承知のとおり、健康保険については日雇い健保がございますし、失業保険についても日雇いの特例がございます。そういうものを全部総合的に見まして常用だということで受けつけているわけでございます。したがいまして、まずその面においての指導ということは当然いたしておりますし、またそういう形で届け出が出ているのではないか、こういうふうに私どもは考えております。しかしなお実態につきましていろいろ労働組合の御指摘もございますし、私どもとしてはその点もう少し時間をいただいた上でひとつ中身をさらに調べてみたい、このように存じております。

 

○井岡委員 もう一つこの点についてお尋ねしますが、その場合の賃金は個人とそれから会社、こういうような条件になるのですか、それともいわゆる労働組合と会社が団体交渉して賃金の決定をするのか、この点はどうですか。

 

○広政説明員 労働組合がある場合には当然、団体交渉ということで賃金はきまっていく場合が多いと存じます。しかし労働組合がない場合にどういうふうに賃金がきまるかということは、ほぼ一般の労働問題と同じというふうに私どもは考えております。

 

○井岡委員 それではもう一つお尋ねいたしますが、さいぜんのお話の中に、職業安定所を通さないで直接雇うのがある、こういうようにおっしゃったのですが、それはどういうことですか。それはどれに基づいておやりになるのですか、法律のどの項に基づいて。

 

○広政説明員 直接雇いではただいまどの程度あるかということは、私ども調べておるところでございますが、先ほど先生御指摘の十六条で、本文は、安定所の紹介を受けた者でなければ港湾運送の業務に日雇い労働者を使ってはいけないのだ。これにただし書きがあるわけでございまして、「適格な求職者がいないためにその紹介を受けることができないとき、その他公共職業安定所の紹介によっては日雇港湾労働者を雇い入れることができない」、そういう場合に届け出ということで直接雇い入れということも可能だという法律上の仕組みにはなっております。ただ私ども十六条につきましては、これはよほどの例外の場合ということでございまして、十六条のただし書きが常時発動されているという状態は港湾労働法そのもののねらっているところではございませんので、この十六条については厳重に運用をしていきたい、このように考えております。

 

○井岡委員 法律の一般論はそのとおりなんです。私は原則としてはこういうものはあってはならないものだと思うのです。しかし現実に波動性等があって、ぱっというようなときに、これは要る。こういうときには何とかしなければいかぬということだろうと思うのです。そのためにこれがこしらえられたんだろうと思うのですが、私がお尋ねをするのは、この項を非常に悪用しておるのじゃないか。たとえば腕章をつけて、連絡員というのですか、あれをつけておりますと自由にできる、こういうことなんでしょう。その点どうなんですか。

 

○広政説明員 先生いまおっしゃいました連絡員と申しますのは、会社の人間のことをおっしゃっているのでございましょうか。

 

○井岡委員 会社が従業員が集まらない場合、日雇いを集める場合、どうしても安定所から回ってこない、でも何とかやらなければいけない、その場合に、安定所の許可ですか何かもらって、腕章をもらうと自由に集めることができる、こういうようになっているのじゃないですか。

 

○広政説明員 安定所が許可をしてこの連絡員という人たちが集めることができるようにするということはないと存じますけれども、ただ問題は、適格な労働者がどうしても得られないという場合に、安定所といたしましては一定の数を――これは事業所から求人申し込みを安定所にいたします、その結果安定所で求人に対して労働者を紹介する。紹介できる範囲の数と求人の数との差というものにつきまして、厳格にこれはその差だけということで十六条に基づきましてやっている、こういう例はあるかと存じますけれども、いま先生御指摘のように安定所の許可を受けて、それで連絡員がかってにやっておるということはないものと存じております。

 

○井岡委員 ところが現実にあるのです。たとえばこの間大阪府の労働部長が私の部屋に来まして、港湾労働者の日雇いのほうにいかないで、釜ケ崎のほうに集めにいって直接雇用をしている。そうでなければ集まらないんだ。これなどは解決しなければいけない問題だと思う。そのためにはこういうような方法を講じなければいかぬということを、私のところに言っておいでになった。それはどういうことなんですか。

 

○広政説明員 施行当初におきまして、特にこの釜ケ崎が一番問題であろうということは、私ども実は考えておりました。大阪の労働部とも十分連絡をとりながらこの仕事は進めてまいったつもりでございますけれども、先ほど申し上げましたような、賃金が下がった、あるいは労働者が安定所へ集まってこないというようなことから、若干釜ケ崎について直接雇い入れをした例があるということは、私もその点は聞いております。ただ、安定所で釜ケ崎で募集することを許可したということについては、実はまだ私どもとしては聞いておりませんで、安定所が中へ入り込んでそれでオーケーだという姿はないはずじゃないか、こういうふうに思っております。

 

○肥田委員 関連して簡単にお伺いしますが、横浜でもそういう事実があるということの報告がきている。職業安定所の公認の判こをついてもらって、その判こかどうかわかりませんけれども、職安の公認の判こをついてもらった連絡員という腕章をつけて、そうしてその腕章をつけた男がアンコ集めをやっておる、こういうのです。こういう事実はあなたのほうでは御存じないですか。

 

○広政説明員 横浜につきましては、先ほど私御答弁申し上げましたようなことで、実際に求人数と充足数との差というものを明示いたしまして、その分だけ十六条のただし書きに基づいて直接雇い入れるということについて認めたということはございます。ただその場合に、安定所が許可をしたからどうこうということではなくて、安定所といたしましては、この何人かの分だけを直接集めてもけっこうだと申しております半面、いわゆるやみと申しますか、もぐりと申しますか、そういうものがないようにという配慮のもとに、横浜の場合そのようなことをいたしたということはございます。

 

○肥田委員 そうすると、そのこと自体は違法ではないという解釈に立っておるわけですね。違法ではないという解釈に立っておられるから例外を認めたということになるのでしょうが、そうすると一つの手段として、職安公認というような腕章を使用することを公然と認めておるということになるのですね。そうすると、それは制限がむずかしいんじゃないですか、実際にそのこと自体を制限するということは。だからそのやっていることは十六条の例外ということになるけれども、しかしその内容自体は、この港労法自体の運用を危うくするような、そういうふうに発展するというふうには考えられませんか。このことは重大な問題だと私は思うのです。

 

○広政説明員 ただいま先生御指摘のとおり、私どもも十六条ただし書きが常態として動いていくということになりますれば、これは港湾労働法本来の精神というものから考えましてまことに適当でないというふうに存じております。ただ、問題は横浜の場合、特にいわゆるやみ雇用というふうなことがないようにという配慮のもとに、何人という人数の限定をいたしまして、それを関係の安定所に必ず届け出てもらうという形で運用せられているわけでございまして、私どもも決してこれが常態としてあるということであってはならないという点は、先生と全く同感でございます。

 

○肥田委員 趣旨は了解できますが、集まらない人を集める非常手段として、現実にやみ雇用を認めるというそのやり方、そのことにこれは問題があるのですね。これを常態化するということについてはこれは問題があるというふうにおっしゃっておるから、それは了解をいたしますけれども、いわゆるやみ雇用、直接雇用というものがやり得る手段をそこに残しておくということになると、これは結局は港労法そのものが無視されることになるのですから、そういう手段であっても、私はやはりおやめになったほうがいいと思う。公然と腕章を巻かせて、そうしてそれによって人を集めさすということは、これは直接職安の職員がやるわけじゃないのですからね。これはもう制限を加えようとしたって加えられないはずなんです。私は、これはおやめになったほうがいいと思います。

 

○野間委員 関連。いま肥田先生の言われるとおりなんですが、問題は、いま先生が指摘されたように、やや公認的なやみ雇用ということになりますね。そしていま課長のお答えですと、それが常にあるというふうにあってはならないというふうに言っていらっしゃる、それはそのとおりだと思います。問題は、それでは常にそうあるべきではないということにするために、どういう手段をとったらいいか。つまりそれは、十六条ただし書きのような状態があればやむを得ない、それはぼくも認めます。その場合もあるでしょう。しかしその場合は、これがあるためにやみで手配をして、それを使っていったほうが安易ですから、そういうふうになる可能性を持っているわけですね、このただし書きは。したがって、どうしてもやむを得ないのだということに、つまりチェックして、そのチェックを常に狭めていって、そういうことが常態化されない、たまにはあるということにするには、やはり相当強い監督なり、あるいはチェックの方法なりがなければならぬと思うのですね。それはいまのところ、肥田先生が言われるように欠けているのじゃないかと思うのですね。したがって、チェックの方法について近いうちにきちっとして、これがなるべく常態化しないように、たまにやむを得ずというようなことにして、それを職業安定所がつかんでおくというかっこうにしなければならぬと思うのですね。それはどういうふうに考えておりますか。

 

○広政説明員 先生の御指摘ごもっともでございまして、私どもも、先ほど御答弁申し上げましたように、十六条は常態化するということがないように、行政運営のポイントをそこに置かなければならないというふうに存じております。そこで、実際問題といたしまして業界の方々にもこの点は十分浸透いたしておりますけれども、原則として直接雇いではやれないという港ごとの業者間の協定と申しますか申し合わせと申しますか、というものが実際にはございます。その申し合わせを守ろうじゃないかという点について、業界の方々自身もその点自覚しておられますので、私ども、さらにその協定の順守ということについて御指導申し上げたい。と同時に、私どものほうで、安定所の紹介機能という点についても現段階におきましては反省すべき点がございますので、この点は十分、紹介というものをもっときめこまかく進めるという形、さらにまた賃金水準の指導と申しますか、そういう点を含めまして、総合的にこの問題の前向きでの推進ということをさらにはかってまいりたい、このように存じております。

 

○井岡委員 私たち三人が言っているのは、これには「当該日雇港湾労働者の雇用期間その他労働省令で定める事項を公共職業安定所長に届け出なければならない。」したがってその連絡員なるものは、集めて、そしてこの人間は二カ月――この法のいう二カ月ですね。二カ月なら二カ月これを雇用します、こういう形をとっているのです。そうして日雇い労働省はできるだけ職業安定所に行かないのです。ですから足らないわけですね。これだけ要る、とこう言っているのに、職業安定所に行かない。行かないから、会社のほうは足らない。そこでその連絡員なる者は――この十六条の項で直接雇用をおまえのところは認めてやろう、こういうようにする、そしてそのもとの手配師がそこいらをかけずり回って集めている、これがいまの実態なんです。ですから私は先ほど、連絡員というのは何ですかとこう言っておるのです。そういう項があるために、依然として手配師が温存され、その手配師は依然として暴力団員ですよ。ここに問題があるのですね。ですから、この十六条、しかもこれは雇用期間というものがある。二カ月間は、その人間は自由に行けるわけですね。AならAの会社で、自分は二カ月間この人を雇いますということを会社が届け出れば、毎日日雇いに行かなくてもいいわけです。そうしてその二カ月の間、おまえはおれが雇ったのだから金を出せということで、ピンはねをやっておる。会社からも、これだけ人を集めてきたのだから金を出せ、両方からやっておる。現にそれが実態ですよ。ですから、この点は、単に法の、そういうものがあってはならないのだというのでなくて、そのためにこれをどうして撲滅するかということが先に考えられない限り、依然としてこれはどうにもならぬということですよ。

 

○広政説明員 私ども先生御指摘の二カ月いっぱなしというのが、いまどういう実態をおさしになっていらっしゃるのか、実は報告も受けていないのでございますけれども、有期紹介という形で安定所に登録した労働者が安定所から紹介されて、ある一店社に行っておるという事例はございます。日々紹介をたてまえにしておりますが、有期の形で行っておる例はあると思います。登録の労働者が、いま先生御指摘のような形で、有期紹介の紹介票を切ってもらうことなしに直接に会社へ行っておるという事例は、いまのところ私としては報告を受けておりませんけれども、もしそのようなことがありますれば、これは明らかに港湾労働法違反の事実でございます。その点は、私どももさらに実情を調べてみたいと存じます。なお、私どもとしては、行政指導という面の強化と、どうしても一部には悪質と目されるような業者も中にはあるかと存じますが、もしそのようなことがございますれば、私どもとしては、これは法に照らして厳正に、ひとつ関係御当局ともお打ち合わせを申し上げて、法の施行が曲がらないように進めてまいりたい、このように存じております。

 

○井岡委員 言われるとおり、私は港湾日雇い労働者が職業安定所に登録を渋っておる原因というものは、あなたの言われた第二条の五項に日雇港湾労働者の定義として「日日又は二月以内の期間を定めて雇用される港湾労働者をいう。ただし、同一の事業主に二月をこえて引き続き雇用されるに至った者を除く。」ここに問題が依然として残っておるわけですね。これが十六条の二項のところに悪用されておる。ですから、この点は、やってからまだ一カ月ぐらいだからということでなしに、早急にこの問題を解決をしないと、依然として港湾のあの非近代的ななにが続くのじゃないか、せっかくこの法律をつくり、あるいは運送事業法を改正しても何にもならぬことになるのじゃないか、こういうふうに言っておるわけです。この点を特に考えていただきたい、こう思うのです。

 その次に、そこでこの問題が、いわゆる賃金の問題にひっかかってきておるわけです。同時に、専門家が入ってこない。専門家がみな日々のほうに行っちゃっている。だから未経験者ばかりやるものだからなにのほうは困っている、こういうのと違うのですか。これは港湾局長でもよく御存じだと思います。

 

○佐藤(肇)政府委員 この賃金問題につきましては、先ほど労働省のほうからもお話がございましたように、業者といたしてましては従来と異なって、だれが来るかわからない、こういうことがございます。従来の港湾運送事業におきましてはワン・デイ幾ら、ハーフ・ナイト幾ら、オール・ナイト幾らということでございまして、八時間労働でどういう職種のどういう能力のある者が幾らというやり方をしていなかった。ここに一つ問題があるかと思います。そこでだれが来るかわからぬということになれば、いわゆる平人と称するような非熟練労働者の賃金というもので求人をした。それで安くなったのではないか。片方の業者のほうからすれば、八時間たつと、仕事がどうあろうとさっさと帰ってしまう、これでは仕事になりませんという不信感があったと思います。これはわれわれも実はそこまで思い至りませんでしたが、やはりこういう新しい制度に移りかわるときに、現実とわれわれが考えたことの違いとして出てくるものだと思います。これにつきましては労働省も、基準局もさらに加わりまして、一体賃金というものはどういうようにきまるものか、それから時間と職種というものを明示してはっきり求人の賃金というものを掲げる、こういうように指導してくれておりまして、最近はこの問題はだいぶ改善されたようでございます。私といたしましてはやはり正直に申しますと、この制度が船主その他も非常に不安を持っていたわりにはうまくといいますか、さしたる支障なく荷役ができているというように考えているわけでございます。ただここで安心してはいけないので、さらに前向きに港湾労働法の精神というものが真に生かされるように、われわれも労働省とともにやっていきたいし、業界も一部にはやはり昔をなつかしむと申しますか、そういう考えもなきにしもあらずでございますが、大多数はこの際すっきりした新しい姿になっていきたい、かように考えておりますので、一緒に努力をいたしましてこの法の精神が生かされるようにやっていきたいと思います。

 

○井岡委員 最後に要望だけを申し上げておきます。

 いわゆるこの二条の五項、これと十六条が悪用される一つの関連を持っているということ。しかも現実にそれが悪用されているということ。この点を十分注意をして御指導をいただきたいということ。同時に、港湾運送事業法が、あれはたしか施行は二年後だったですか。

 

○佐藤(肇)政府委員 十月でございます。

 

○井岡委員 それを十月に厳格におやりいただくということだと思うのです。前の港湾運送事業法の改正のときに失敗をしたのは、三年ということを置いた。そのために依然としてこれがこうやられたわけですね。ですから、十月に厳格に企業合同をやらなければやれないようになっているから、それをやりますと、そういう手配師等についてこれは十分防止することができる。十分とは言いませんが、ある程度防止することができるんじゃないか、こういうように考えますので、この点をひとつ強く要望しておきます。

 

○佐藤(肇)政府委員 港湾運送事業法の改正は十月一日からの施行でございますが、集約合併につきましては二年の猶予があるわけでございます。これをやっていく上には、港湾審議会の中に港湾運送部会を設けました。これは総会でその部会の設立が認められましたので、第一に諮問いたしましたのはこの集約の具体的方法でございます。審議会にもお願いいたしまして早急に具体案をつくって前向きに近代化を進めていくようにいたしたいと思います。

 

○井岡委員 もうやめますが、やっぱり二年だったと思う。これが二年待ちます、こうやられると、また同じことになりますから、できるだけ早くこれをやっていただく、こういうようにひとつ要望しておきます。