[005/019] 40 - - 法務委員会 - 10

昭和370301

 

○赤松委員 官房長官にお尋ねをいたしますが、御承知のように、昨年は釜ケ崎事件が発生しまして、政府並びに国会におきましては、この事件の発生の背景なりあるいは原因というものを非常に重要視をいたしまして、その結果、政府当局も釜ケ崎の調査に着手して、国会におきましても、わが法務委員会、社会労働委員会及び地方行政委員会の三委員会が現地に調査団を派遣いたしまして、しさいに調査を行なったのであります。その結果得ました結論は、もとよりああした事件は望ましいものではないのであって、これを防止する治安上の措置はもちろん必要ではあるけれども、しかし、ただ治安対策を強化しただけで問題の発生を防げるものでもない。要するに、その原因をなすところのさまざまな社会的要因を一掃しなければならない。すなわち、問題は政治にある。政治の盲点としてあのようなものが起きたのである。池田内閣も、この事件につきましては深く遺憾の意を表すると同時に、これが是正のために、すなわち先ほど申し上げましたような社会的な要因を一掃するための政策を行なうということを当時言明したことは官房長官御存じの通りであります。

 そこでお尋ねしたいと思うのでありますけれども、昭和三十七年度の予算は、ただいま予算委員会において審議中でありまして、間もなく衆議院を通過する段階になっております。わが法務委員会といたしましては、現地の調査を行ないまして、そして当時委員長に対しまして、単に調査のしっぱなしでなしに、つまり血税を使って私どもが調査をして、調査のしっぱなしをするということは国民に申しわけない。従来、ややもすれば衆議院の調査が調査のしっぱなしになって、これが政治の上に反映をしない、あるいは行政の上に反映をしないという点を反省いたしまして、昨年の調査に際しましては、強くこのことを要求いたしまして、常任委員長会議におきましては、私の意見が採用されまして、政府に対して三十七年度予算の中にこれを織り込んでいくということを要望するという決定が行なわれたということを、私は社会労働委員長から報告を受けておるのであります。

 そこでお尋ねしたいのは、昭和三十七年度の予算の中には、これに対する対策、こういったものが予算上どのように出ているかということをお尋ねいたします。

 

○大平政府委員 労働省と厚生省、文部省、三省にわたりまして、それぞれ処置いたしましたが、労働省におきましては、大阪府の労働部の分室を現地に設けるというような措置とあわせまして、釜ケ崎における労働者は、その生活の環境等から見まして、公共職業安定所の利用におなじみが少ない、一般の日雇いの労働者に比べまして種々の困難がございますので、これらの地区の労働者の安定所利用を促進するために周知宣伝の活動、手配師利用求人者の調査指導を行なう一方、今申しましたように、労働部の分室を設置いたしまして、就業のあっせんを行なっているわけでございます。明年度におきましては、これら釜ケ崎地区労働者の就労の一そうの安定と福祉の向上をはかるために、この地区に公益法人を設置せしめて、無料の職業紹介及び生活相談を行なわせるとともに、食堂、宿泊施設等の福祉施設を付置いたしまして、労働福祉の施策を推進することといたしております。

 厚生省におきましては、事件発生前において、すでに今年度の事業として釜ケ崎地区に生活館一カ所を設置することといたしまして、事件発生後大阪府並びに大阪市当局と連絡をとって、地区住民の要望を取り入れつつ当初計画の規模を拡大いたしまして、現在建設中でありますことは、赤松委員も御案内の通りでございます。なお、昭和三十七年度におきましては、府及び市の要望に基づきまして、さらに生活館一カ所、第二愛隣館というものの建設を計画いたしております。

 

     赤松委員 釜ケ崎対策は社会保障の一環としておやりになるかどうか、また全国的なスラム街対策の一環としておやりになるのか、このことをお尋ねいたします。

 

     大平政府委員 私どもの基本的な姿勢は、先ほど赤松委員も触れられましたように、やはりこういった事態発生の社会的な要因の除去という点に重点を置いておるわけでございまして、そういう角度から施策を進めて参りたいと考えております。

 

     赤松委員 おそらく次の参議院選挙におきましては、社会保障に関する問題が、自民党と社会党の争点の一つになると思うのです。すなわち、政府与党と野党との争点の一つになると思う。従って、いよいよ社会党も四月から全国遊説を始めますから、その際に広くこれを国民の前に明らかにし、しこうして政府と社会党の社会保障に対する熱意あるいは施策の内容を説明する必要があります。従いまして、特に官房長官の出席をお願いいたしましたのは、この間予算の分科会で、大蔵大臣にこまかいことは聞きました。本来をいえば、これは内閣総理大臣に聞くべき性質のものでありますけれども、今予算の途上でありまして、多少遠慮いたしまして、総理の代理として官房長官にお尋ねしておるわけです。

      今お尋ねをすると、社会保障の一環としてやるのだという御返事であります。そういたしますと、社会保障の一環としてやるということならば、予算の立て方も、おのずから政府独自の予算というものが出てこなければなりませんが、それが労働省、厚生省予算の中にどこにございますか。

 

     大平政府委員 費目別の配置は、政府委員の方から承っていただきたいと思います。

     赤松委員 それは官房長官よりも私の方が詳しい。社会労働委員をやっておりますから、労働省予算も厚生省予算も私の方が詳しい。あなたに聞きたいのは、予算のこまかい内容を聞こうとしておるのではありません。その点は事務当局でもいい。それでは予算を紹介いたしましょう。厚生省予算は、スラム街対策として、三十七年度予算の中には三千百五十五万円計上されております。それから労働省の予算は千二百万円、これが計上されているわけですね。この内容につきましては、私十分存じております。従って、内容にも問題はあるわけなんですが、この予算を出すところの先ほどおっしゃった姿勢ですね。姿勢の問題なんです。姿勢の問題は、事務当局の役人諸君に聞きましても出てこないと思うのです。私は政治の筋を聞いておるわけなんです。こまかい予算上の数字でなしに、政治の筋を聞いておるわけなんです。つまり、昨年あの事件が発生したときに、再びこういう事件が発生しないように予算上の措置を講じます、こういうことを政府は言明しておる。そうでしょう。それならば、予算の上に、当時政府が国民に約束し、国会に約束したものが出てこなければならぬはずだ。出ていないじゃありませんか。政府独自の予算というものが出ていないじゃないか。その予算の内容は政府独自のものですか。うしろに事務当局の連中おるけれども、これはみんな補助金じゃないですか。補助金でしょう。労働省予算は四分の一負担、厚生省予算だって全部これは補助金なんですよ。政府独自の予算なんというものはないじゃないですか。スラム街対策の姿勢というもの、政治の姿勢というものは、今のように貧弱な財源を持つ地方公共団体に依存しておったのでは、再び第二、第三の釜ケ崎事件が起こるのです。だから当時私どもは、地方公共団体にまかせるのじゃなしに、政府みずからがスラム街を一掃するための社会保障の一環として大きな予算を編成して、政府みずからの手でおやりなさい、やりましょう、こう言ったが、どこにその予算が出ておりますか。−官房長官よくわからないから、僕が説明してあげる。いいですか。この厚生省関係のスラム街対策として出ておるのは、不良環境地区対策費三千百五十五万円、これについてこの間大蔵大臣に質問したら、大蔵大臣は事務当局に聞いて、そうして三千百五十五万円計上してあります、こういって大きな顔をして答弁しておる。じょうだんじゃありません。この三千百五十五万円で一体何の対策がやれますか。釜ケ崎一つだって三千百五十五万円で満足なことがやれますか。まして三千百五十五万円というのは、都市のスラム街全部です。官房長官よく聞いて下さいよ。都市のスラム街全部です。ドヤ街、パタヤ街、それからアイヌの集団地区及び部落民、いわゆる同和地区まで含んでおるのですよ。これら全部を含んだ不良環境地区対策費というものが三千百五十五万円。この予算でもってスラム街の一掃をやりますなんて大きなことが言えますか。そうして一体何を作るのですか。内訳は、生活館を作ります、その補助金は二分の一、そうして今全国に七カ所のものを十三カ所にふやす、六カ所ふやすだけだ。これがスラム街対策の実体なんです。共同浴場を作ります、これも補助金が二分の一、そうして八カ所を十一カ所にする、これも三カ所ふやすだけ。共同作業場を設置いたします、これは九十七万円、二カ所作る。それから共同炊事場、これも二カ所、二十八万円。共同井戸も作ります、百五万円、これは六カ所。下水排水路整備補助金として四カ所八十万円、これはなんですね、恐るべき池田内閣の社会保障費の一環なんです。スラム街対策の実体なんです。労働省予算はどうか。今あなたは職安の問題を言ったけれども、政府の無能と無策のために、あの釜ケ崎事件が発生して、大阪府の知事はあわてた。元来あの問題は労働省がやるべきものだ。それをあの事件が発生しましたために、大阪府は自分の予算で――本来大阪府の予算でやるべき性質のものではない。それを大阪府は、労働部の分室というものをあすこに設けて、そうして労働部の分室が職安事業を代行した。これは職安法違反ですよ。ただいいことだから、前向きの姿勢だから、われわれは目をつむってこれに文句を言わなかった。これはごまかしとは言いません。政府の無能、無策のために、やむを得ず地方公共団体が貧弱な財源から応急手当をしなければならなかったというのが、あの大阪府の労働部の分室になって現われておる。そして今も労働省予算なんて官房長官は大きなことを言っておるが、これは千二百万円じゃないか。千二百万円でもって何をやるかといえば、生活相談とか、食堂とか、宿泊施設をやる。出さぬよりは出した方がいいですよ。しかし実態を言えば、また今年第二の釜ケ崎事件が発生すると、予算をちっとも計上していないと困るというので、総理府の治安関係担当の諸君などが集まって、とにかくちょっぴりでもよいから予算の頭を出しておいてくれ、そうすれば第二の釜ケ崎事件が起きても、予算の手当はしてありますといって世間に申しわけは立つ、そういう考え方から出ておる。それでもって第二、第三の釜ケ崎事件を防ぐ、まことに遺憾であります。これは政治の貧困から生まれるところの欠陥であります。当時政府は言明しました、その反省というものは予算の上に現われておりません。そこで、私は特に法務大臣もおられますので、法務大臣と官房長官に言っておきたいことがある。それは当委員会が釜ケ崎を昨年調査した、これは同僚委員諸君がみな一緒に行った。行って、そうして大阪府におけるところの治安当局からいろいろ事情を聴取した。その席上で大阪高検の検事長はどう言ったか。いいですか、これは大阪高検の検事長の言葉ですよ。われわれが言っているんじゃない。その席上で、特に法務委員の皆さんに申し上げたいのは、一触即発、マッチの軸をすっとすって一本つければ、ばっと爆発するような地区は釜ケ崎だけではありません。もっと一触即発の地区があります。それは尼崎でありあるいは神戸のスラム街だ。われわれ治安当局としては、問題が発生してからそれを押えても、一時は押えがきいても、それは恒久対策にならぬ。従って、われわれが出動しなくてもいいように、治安当局が手を出さなくてもいいような施策を政府によってとらせるようにしてもらいたい。そうでなければ治安当局としては責任が負えないということを言っている。これをどう聞きますか、責任が負えないと言っている。今度の釜ケ崎事件は、共産党の扇動で起きた事件でもありませんし、社会党、自民党の扇動で起きた事件でもありません。これを科学的に調査するために、大阪市の依頼によりまして、和歌山大学を初めその他の若手教授が社会科学研究会というものを持って、約三カ月間にわたって、作業衣を着、ボロをまとって、そしてあのドヤ街に入って、三カ月の間あの生態をつぶさに調査をいたしまして、その調査の結果が一冊の本にまとまってここに出ておる。これを読んでごらんなさい。涙なくしては読まれない。釜ケ崎は、あそこの住宅は日本で一番高いんですよ。たとえばここに出ておるところの統計によれば、〇・八畳のそれが一晩二百円から二百五十円、これを今の高級アパートに直してみなさい。それからここでは、われわれ法務委員会の調査によって、またその当時大阪の社会科学研究会の学者諸君の報告によると、あそこに暴力団が二〇%いる。この二〇%の暴力団を一掃すれば、あとの八〇%は善良な人だ。たとえば働けない老人もおる、すでに労働能力を失った身体障害者もおる、あるいは未亡人、あるいは親のない子供、そういう者がたくさんいるけれども、しかし、これは全体としては政治によって救える人なんだ。問題は二〇%の暴力団だということをここで言っておるが、その暴力団の内容を申し上げますと、今、まだ公然とあの地区において大手を振って君臨している。われわれが行ったら、変な何か、僕はよくわからないけれども、こんな帽子をかぶって細いズボンをはいたぐれん隊がずっといるわけなんです。われわれの姿を見ると、すっと逃げてしまう、しばらくするとまたすっと集まってくる。法務大臣一ぺんごらんなさい。そうして何何組というのが入口に木刀をずっと並べて、鉄かぶとをずっと並べて、そしてちょうちんをずっと並べている。いざというときには、みなその鉄かぶとをかぶって木刀を持って、ちょうちんをかざして行くわけです。これはもうすでに戦時状態です。朝八時から夕方まで、弁当代として、大体子供を預けるのに一日二百円で預けていく、そうして母親は日雇い労務やその他に出かける。それから夕方から夜十二時までは二百五十円、別に住み込みの場合は月に九千円から一万円だ。それから子供を預けることのできない人は、子供に五十円食事代を渡して出ていく。これは子供がよくなるわけがありません。五十円もらって買い食いの癖を覚え、ふらふら遊んでいるからだんだん不良化していく、学校へは行かない、こういう状態だ。これを母親は監督するわけにいかない。先ほど申し上げましたように、住宅などは〇・八畳に対しまして二百円から二百五十円というような状態なんです。こういうように暴力団と、麻薬が香港から神戸経由で入ってくるけれども、この麻薬と暴力と売春と今言った窃盗、強盗、こういったものがあすこに入りまじっている。このスラム街です。釜ケ崎一カ所だけだって三千万円ぐらいの予算を投じたところでどうにもならぬ。それが厚生省の計上しておるところの予算というものは、全国のスラム街、さらにアイヌの部落、そうして同和地区であるところの部落民を含んだこういう地区全体にわたるところの対策が三千百五十五万円、これが池田内閣の実態なんです。そこで私は大蔵大臣に言った。参議院選挙の際に明らかにします。これでは池田内閣の独自のスラム街対策というものはないじゃありませんか、全部補助金制度じゃありませんか、こう言った。そうすると、大蔵大臣がこういう答弁をした。いやごもっともでございます。しかし、今の予算の立て方がこういうように、補助金制度になっておりますのでと、こういう答弁をしておる。これは昨年釜ケ崎事件が発生する以前の考え方なので、その以前ならばそういう答弁だって世の中は通用する。ところが、あの事件が発生をして池田内閣は、再びこういう事件が発生しないように政府はこれを三十七年度の予算において手当をいたします、その施策をいたしますということをちゃんと約束をしておる。地方公共団体に依存して、その貧弱な財源に依存して、労働省予算を一千万円ばかり、厚生省予算を、今言ったように全国に三千万円ばらまいて、これでスラム街対策でございます、不良環境地区一掃の施策でございますとえらそうなことが言えますか。私は、もうすでに今予算が衆議院を通過しようとしておるこの段階において、官房長官に、今追加予算を出せのあるいは予算の修正をやれのと言ってみたところで、実際は不可能でしょう。だからそういうことは私は申しません。そこで昭和三十八年度の予算の上に、昨年われわれに約束したように、補助金制度に依存をしないで政府独自のこれらのスラム街対策の予算を計上しておやりになるかどうか。今こういうシステムがあるならば、このシステムを改善して、そうして政府みずからが――たとえば大阪釜ケ崎におけるところの隣保館の問題だって、あれは大阪市にみなまかしておる。それにちょっぴり補助金をやっているだけじゃないですか。ところが、政府は、今度は国民にものを言うときには、政府は釜ケ崎に愛隣館を建てました、そういうなにを建てました、こう言う。何を言っているんだ。地方住民の負担でもってやっていて、そうして政府は、やりました、これはごまかしです。だから三十八年度予算ではどういう姿勢でお臨みになるか、よけいなことは要りません、こまかいことは要りません。その一点だけ私は聞いておきたい。

 

     大平政府委員 スラム街対策として必要な事業の経営あるいは施設の管理、こういったことは本年の今の制度では地方公共団体の固有の事務ということになっております。その制度がいけない、国が直接責任主体になってやれという御提言のように拝聴いたしましたが、この問題は、地方自治制度との関連におきまして十分検討を要する問題であろう。これはもう赤松委員も御了承願えると思うのでございます。ただ問題は、補助の形でやっておるが、補助金はあまり小さいではないかということでございますが、小さいながらこういう施設が芽ばえて参りました。これは本委員会の御慫慂等大へん力があったと思うのでございますが、せっかくこういった仕事に手を染めたでわけございますから、これを愛惜していただきまして、年々歳々充実して参るという方向に私どもも考えて参る。従って明三十八年度におきましても、今御提言ございました御趣旨をくみまして、できるだけ努力するつもりでございます。

 

     赤松委員 この委員会では大平調で通るのです。そのリズムでいいですよ。しかし、これがテレビ討論会や立会演説会であなたと僕とやった場合には通らぬですよ。徐々にとかあるいは次第にとか、少し芽がふき出したとか、これをだんだん芽ばえさせていくのだというようなことは、釜ケ崎の住人がそれを待ってくれればいいけれども、待ってくれなかったらどうしますか。今言ったように、検察当局が、釜ケ崎だけではない、尼崎でもあるいは神戸でも、そういう危険というものが内在しているのだ。だから政府の手で、これを早くそういう事件が発生しないようにやってくれ、こう言っているのです。だから大平調ではいけない。あなたがその程度の答弁しかできないならできないでよろしい。それを国民の前に明らかにして、大平官房長官は池田総理にかわって答弁をしましたが、こういう答弁でありましたということを率直に私は国民に訴えますから、それはそれでいいわけです。そうすると、三十八年度の予算の上では、あくまでも地方公共団体の補助金に依存しながらぼつぼつやっていくのだ、こういう考え方でよろしゅうございますね。

     大平政府委員 予算の立て方の問題は先ほど申しました通り、地方自治制度との関係で、直接政府の仕事にするかどうかという点については、ここで私が今どうするというようなことを申し上げられませんで、検討を要する問題だと先ほど申したわけでございます。

 

     赤松委員 僕は、一つ例をあげましょう。たとえば釜ケ崎のあすこに私鉄あるいは国鉄が通っておりますね。あの鉄道用地のところに、その辺の板ぎれを拾ってきてぽんぽんと小屋を建ててしまう。もう動きません。これを人に貸すのです。あるいはその中に十人なら十人というものを収容して、宿のかわり、まあバラック・ホテルになるわけです。それでずいぶんもうけているわけです。ところが大阪市の連中が行ったって立ちのきませんよ。下手にやれば、これをやられるのですから。だから吏員もこわいから無理には言わない。ただ、一つ届け出てくれ、こういうことを言うのです。届け出たら、もうこれは合法的に、地上権というのか、居住権というのか、そういうものができてしまう。そこで手をやいているのです。これは大阪市だけの力では何ともできないのです。こういうスラム街対策というものは大阪市だけの力では何ともできないのです。そこまできているからああいう事件が発生したのです。ですから思い切って、たとえば不良環境地区、スラム街の環境を改善するための法律案をお出しになったらいいじゃないですか。そうして住宅対策は建設省だなんて言っておらずに、別個にそういうスラム街対策というものを立てて、あの地区に八階建でも十階建でもアパートを、ずっとあの不良地区を一掃して、建てていくというようなこともおやりになったらどうです。僕らが見たらまだあき地がありましたよ。

      暴力団の一掃にしたって、大阪府の警察本部にまかしたってだめです。だから政府の中で総合的にこれを行なうところの姿勢というものが出てこなければだめなんです。それを私は言っているのですよ。あなたは、補助金制度になっておる、そのシステムは変えられないということならば、来年でも、若干予算がふえたって同じような姿勢しか出てこない、こういうことになるわけです。あなた禅坊主みたいなことを言う人ですから、何ぼここでやっても禅問答みたいになって、ぴんとこないのだけれども、この間大蔵大臣は、三十八年度予算では一つ考えますということを言っておりますから、一つ三十八年度予算ではよく大蔵大臣と相談し、さらに総理大臣とも相談していただいて、この夏再びあの事件が発生したら今度は承知しませんよ。ちゃんと大蔵大臣から言質を取っているのです。あなたに対しても、今私どもは言うべきことを言ったのですから、今度は相当覚悟してもらわなければならぬと思うのです。

      ついでに、法務大臣にお尋ねしますから、あなたもよく聞いておいてもらいたい。というのは、まだたくさんありますけれども、時間がありませんから多くを申し上げませんが、われわれは堺の大阪刑務所を視察した。そうすると、あそこの受刑者――今は僕はちょっと表を持ってこなかったのですが、二千人くらいいましたか、あの受刑者の中の四百人が暴力団で、暴力関係で入っている連中なんです。ですから、看守もその辺の初犯の受刑者を扱うのと違って、こいつらは百戦練磨ですから、十分鍛えられたやつですから、従って一つ間違えばやはり暴力事件が所内で発生をするということから、その看守の肉体的、精神的の疲労度というものは非常に強いわけです。こういう暴力団が多く入っていますから、四百人入っていますから、それぞれの組に属しておるわけでありますけれども、こういう連中を扱うのに大へん困っておる。しかも人員不足のために完全な週休制がとれない、労働時間がオーバーになるということから――まあ飯にもいろいろ問題がありましたが、食事のことはしばらくおくとしても、この刑務所、つまり法務大臣の管轄する方面の労働関係は、私は一番おくれていると思うのです。そして政府の方も、何か法務関係ということになりますと、まあじゃま者扱いはしないけれども、あまり重要視しないことだけは事実なんです。これは大蔵省のお役人もその頭があるんじゃないだろうかと私は思うのです。たとえば通産省方面の予算になってくると、いろいろな強力な陳情などもあって、そしてやる。あるいは労働省方面になりますと、これまた労働組合の突き上げその他があって、割合にその声が政治の上によく反映する。ところが法務関係になって参りますと、たとえば刑務所の職員は労働組合を作る権利を持っておりません。――権利を持っておるのでしょうけれども、それが奪われているという状態なんです。警察官の場合と同じなんです。だから、そこから出てくるところのいろいろな不平不満というものが、集中的に政治に反映するということが割合に希薄なんです。非常に薄い。それだけにああいう恵まれないところ働いておる諸君に対しましては、特別な配慮が必要ではないだろうか。私どもが大阪刑務所あるいは交野女子学院ですか、その他をずっと調べて参りましたけれども、ほとんど人員不足のためにオーバー労働をやって、そして極度の労働強化のためにみな非常に疲れておるし、労働条件が悪い。こういう点については政府の方でお考えを願いたい、こういうように思うわけであります。

      この点につきましては、法務大臣、今の釜ケ崎の問題でも、検察当局がそう言っているのですから、遠慮は要らぬから、閣議においてばんばんやってもらう。たとえば河野一郎君が農村問題で発言しても、農村よりもむしろこっちの方が大事なんだというくらいな気概を持って――どっちが大事かよくわかりませんが、それくらいの気概を持ってやってもらわないと、何か法務省の方がいつも片すみの方に追いやられて、そして実力者――実力があるのかないのかよくわかりませんが、と称する連中が閣内において大手を振って、そしてそういう連中のところには予算がたくさん行くというようなことになって参りますと、正直者がばかを見る。私のようなひよわい者が絶えず損をするということになるのでありまして、その点は法務大臣も大いに閣内でがんばっていただきたい。また官房長官もぜひそれをバック・アップしてもらいたいと思いますけれども、この点について官房長官、法務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。