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衆
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社会労働委員会 -
13号
昭和36年12月08日
本日の会議に付した案件
厚生関係及び労働関係の基本施策に関する件
派遣委員より報告聴取
○ 中野委員長 次に第三班、吉村吉雄君。
○ 吉村委員 第三班の調査概要を御報告申し上げます。
○ 当委員会の決定に基づきまして、大阪、京都両府下における厚生労働行政の実情調査のため、中野委員長を初め井村、澁谷両委員及び私の四名が十一月十二日出発、現地に出張、関係出先官庁より実情を聴取し、特に大阪においては釜ケ崎地区居住者の民生、労働関係、成人病センター及び炭鉱離職者就職先事業場、京都においては、西陣織物工場休業に伴う労務管理の状況、環境改良住宅及び陶工職業訓練所等を視察調査に当たりました。そのうちおもなるものにつき、概要御報告申し上げます。
○ まず大阪市釜ケ崎地区の状況については、東京の山谷地区など他の大都市にも同じような問題を擁しており、重要な問題であると考えたので、特に十三日、労務者の集合数の最も多い早朝六時に現地を視察したのでありますが、その状況について申し上げます。
○ 現在釜ケ崎地区には、簡易宿泊所約二百、日払いアパート約二百、バラック貸家約五百軒が密集し、住民は約三万五千人、そのうち約二万五千人は独身日雇い労務者で、その他は行商、くず商、なおし、売春、やくざ等約一万人が混住しており、去る八月の事件後、国が関与した施策としては、厚生省関係、不良環境地区改善事業として生活館共同浴場に対する補助と、労働省関係、大阪府労働部西成分室くらいのもので、調査当時府市において愛隣館事業の拡充、診療施設の拡充等に着手されており、これから労働宿泊所、公法人労働福祉センターの設立等が計画されておりますが、この寒さに向かう時期に際して、この対策に抜本的な促進をはかる必要があることを感じたのであります。これについては、釜ケ崎地区に限った施策ではないが、昭和三十七年度予算として関係者から若干の改善計画があるようで、厚生省関係、不良環境地区改善事業拡充、労働省関係、職業安定所、労働出張所利用促進、無料職業紹介、生活相談等に対する補助等はぜひ実現をはかる必要があるものと思量いたします。
○ なおこれらの地区改善に対する施策について感じましたことを一言つけ加えますと、旅館業組合等の結成、運営等、業者自体の自発的立ち上がりと必要な助成策がきわめて重要視されなければならないということでございますが、いまだこの点が不十分のように見受けたのであります。
○ 中野委員長 この際、赤松勇君よりただいまの報告に対して要望したきよしにて発言を求められておりますので、これを許します。赤松君。
○ それから、今吉村委員の報告の中に釜ケ崎の問題が出てきた。この釜ケ崎の問題は、問題が起きるとぱっとマス・コミが盛んに書く、政府の方もあわてる、国会もあわてる。ところが問題が下火になってくると、いつの間にやら忘れてしまう。これは大へんな問題だと思うのです。というのは、大阪の検察庁当局がわれわれに言いましたことは、釜ケ崎は一触即発の情勢だ、いつ何どき暴動が起きるかもわからない。私は釜ケ崎の実態を見て、冬は大丈夫だ。しかし夏になれば、あの〇・六畳、それが七十円です。ひな壇のようなところに寝ている。そして四十度。日本一高い旅館なんです。〇・六畳の四十度のところで五十円、七十円という旅館である。これは生理的に、とても寝ていられるものではない。むかむかしてくる。そういうことがいろいろな問題とからみ合って出てきているので、この点につきましては、大阪の社会学研究会、これは和歌山大学の教授、助教授を中心に若い社会学者が研究会を作っておりますが、外から見たのではわからないというので、約二カ月間そのスラム街に入って、そしてスラム街の諸君と起居をともにして研究の結果、私どもにいろいろな研究の資料を提供しております。そのことはやがて申し上げる機会がありますから別としまして、要するに大阪の検察当局の言うには、一触即発の情勢だ。あそこで調査をされてわかったと思うのですけれども、大阪府が労働部の分室を作っておる。それから大阪市が善隣館というものを作っておる。地方自治体が乏しい予算でもってやっているので、これは大へんけっこうだと思うのでありますけれども、政府の施策は全然ない。何もやっておりません。政府は何をやっておるか。だから検察当局は、あそこで問題が起きれば、治安の面だけ警察や検察庁が引き受ける、そしてなぐりたくなくたって人をなぐらなければならない、暴動を鎮圧しなければならない、その暴動の原因というものが全然除去されない、また除去しようとする努力が払われていない、その結果だけ警察や検察庁が出て、そして世間からとかく批判を受ける、まことに心外だということを言っておりました。私はその通りだと思うのです。しこうして、そういう暴動発生の危険のあるのは、ひとり釜ケ崎だけでなしに神戸にもある。それから尼崎にもあるそうです。名前は私はよく知りませんけれども、検察当局はそう言っておりました。従って、そういうスラム街では、釜ケ崎の経験がありますから、いつ何どき暴動が発生するかもわからぬという状態なんだ、このことを政府の方も、あるいは国会も十分に考えて、われわれが治安上いろいろな行動を起こさなくてもいいように十分対策を講じてもらいたいということを強く言っておりました。そこで法務委員会が近く大阪の、今言った社会学研究会の学者諸君を呼ぶようであります。スラム街対策は元来社会労働委員会の所管に属する問題だと思います。その結果発生した治安問題については法務委員会の問題だと思います。従ってここは主管委員会です。だから委員長の方からむしろそういう機会を利用して連合審査を法務委員長に提案をして、そしてこの連合審査を開いて、ここで根本的なスラム街対策というものをもっと本格的に、系統的に取り組んでいく必要があるのじゃないだろうか、こう私は考えるのであります。従って二点、委員長に要望いたしますが、一点は今要望のあったもの、もしくは委員諸君が予算化もしくは法制化を緊急に必要とするもの、これを理事会で検討していただきまして、それぞれ政府の予算担当者あるいは法制担当者を呼んでいただいて政府の所信を聞き、かつこれを実現するように努力してもらいたい。いま一つはスラム街対策として法務委員会との連合審査をやっていただきたい。
○ 中野委員長 御要望の点については、今後の国会運営上有益なる御意見でありまするので、十分善処するよう必要を痛感しておりまするから、必ず努力いたします。