[019/019] 38 - - 建設委員会 - 3

昭和360912

 

     田中一君 道路局に最後に伺っておくのは、私ども地方をずっと歩いてみますと、地方公共団体等から非常な強い訴えを受けるのです。自分でも行ってみました。大体臨就並びに失対事業の対象として道路整備事業というものがなっておりますけれども、今の実情から見て、職業安定所に登録している失業者というものの定義が、また、実在というものが相当な変貌を来たしていると思うのですよ。経済の成長というものは非常に伸びております。もうそれこそ身体障害者またはろうあの方々までが、今は就職して生産部門に働いているということをしばしば新聞で見ますけれども、たとえばことしの釜ケ崎の問題とか昨年の東京の山谷等の問題から見ても、私はこれらの方々があの低賃金であっていいんだという考え方に立っておらないと思うのです。やはり自分が正常な――自分で失業者なんという感覚じゃなく、実際に正規な就労ができるんだというような環境を与えることが、政治的には必要じゃないかと思うのです。同時にまた、それらの方々がそうした面に就業できるならば、賃金も相当大幅に上がるわけなんですよ。だからこの臨就並びに特失対を道路からはずす。私はこれが全然ほかの者に――どうしてもそうしなければならぬ人たちもあると思いますから、そのためには失対事業というものを全部やめろというわけじゃないのです。この対象を道路からはずすというようなことを考えなければならない段階に来ているのではないかと思うのですが、それらの点は、これは私の個人の意見ですけれども、どうお考えになるか。地方を歩きましてつくづくそういう訴えを受ける。それから実情を見ても、これはこの指定された事業が必ず臨就並びに特失対の人たちを使わなければならないことになっておりますから、五キロも六キロも遠い所にまで、山や部落内にはいませんから、都市に行って車に乗っけて連れて来て仕事をさせて、またある一定の時間には車に乗せてそこまでお返しをするというようなことをしているのです。一体、失業対策が主なのか事業が主なのかちょっとわからない時代に来ているのですね。これは河川局でも同じことが言えるのじゃなかろうかと思う。だからといってですよ、働くにも働けない人たちを働かすことは当然です。そうして生活保護並びに就労をさすということは政治的に必要です。対象からはずして別の面に持っていくということの方が私はいいのでないかと思うのです。その点はどういう気持でおられて、そうして労働省との話し合い等が行なわれたものかどうか。どこまでも私はその労働者に高賃金を与えたい、よい生活環境に持っていかなければならぬのじゃないかというような気持から質問をするわけなんですが、一つ道路局長並びに河川局長から御答弁願いたい。

 

    説明員(高野務君) 臨時就労対策事業及び特別失業対策事業につきましては、実施の過程におきまして、ただいま先生がお述べになりました通り、失業者を吸収して、相当の障害があるばかりでございません、特に最近におきましては労働情勢が変わって参りまして、いろいろな困難があるわけでございます。また、道路事業にこれらの事業を併用いたしますにあたりましては、交通が非常にひんぱんになりまして、できるだけ早く工事を遂行する、あるいは場合によりましては夜間におきましても工事をやるという公共事業としての目的と、また、失業対策としていたします場合には年間なるべく均霑いたしまして工期をむしろ一年間引き延ばすというような必要があるわけでございまして、この失業対策としての目的と両立させることがますます困難となっているのでございます。
 従いまして私どもといたしましては、道路整備事業に、今までの形でとうてい、これらの事業を入れまして五カ年計画を遂行するということは困難ということになって参っているのでございますので、この制度の改廃につきまして、これは官房の方でやっているわけでございますが、労働省との間におきまして目下検討中でございます。

○説明員(山内一郎君) ただいま先生の御指摘の通りでございまして、最近、失業者の救済ということと事業の遂行が数年前は合致していたと思います。公共事業以外の事業がないものでございますから、よく働ける失業者といいますか、それと公共事業の達成、両方相待って相当の成果を上げていたと思いますが、ごく一、二年前からはそれが非常に失業者の質が変わってきた。よく働く失業者はほかの産業に吸収をされていった。その傾向が非常に顕著になりまして、ただいま道路局長の言いました通り、河川事業におきましても何らか別途の対策を講じてもらいたい、こういう点で建設省としても、担当者から、労働省と今折衝している段階でございます。