「梅雨期の緊急避難適一時措置」を考える
下に掲載した「センター夜間開放にかかる協議事項」では、誰と誰の協議事項であるのか明確ではないが、それを補うと、大阪府労働部のあいりん特別対策室と大阪市民生局の保護課と釜ヶ崎反失業連絡会が協議し、合意したものである、ということになる。
6月6日以降、毎日午後6時にシャッターが閉められ、清掃を済ませて一時間後の午後7時には再びシャッターが開けられている。
団体の自主管理はそれから開始される。
まず、カンパンの支給(毎日午後7時には千名を超える労働者の列がセンターを一回りしている)。それがすむと、ブルーシートを敷き、ゴザ・毛布が配られる。
これらは行政から提供されたものではなく、釜ヶ崎反失業連絡会が用意したものである。
それから毎日10〜15名の労働者が夜警をし、翌日未明にはゴザ・毛布を片づけて、求人と求職に支障がないように配慮されている。
釜ヶ崎反失業連絡会は、毛布・ゴザを提供しているだけではなく、週三回三角公園で炊き出しを行うほか、毎日夜警する労働者に夜食・弁当・風呂券などを支給している。
「梅雨期の緊急避難的一時措置」としては、行政の立場から言えば安上がりで他に方法もなかったのかもしれないが、二ヶ月も民間団体に頼りきるというのは、民間団体に過酷すぎるのではなかろうか。
また、「人」に対する対策として、果たして適切なものであるといえるだろうか。
センター夜間開放にかかる協議事項
《目的》
- 求人減による就労環境の悪化などにより、あいりん地域内で多くの労働者が野宿を余儀なくされていることから、梅雨期の緊急避難的一時措置として、府・市が協同して、あいりん労働福祉センター1階寄場を夜間開放する。
《開放中における施設管理運営≫
- 合意後、1階避難場所は団体が自主管理し、2、3階部分は施設管理者が管理する。
≪その他≫
- 正常な運営管理を図るため、「使用上の注意」を作成する。
- 1階寄場内の照明は半減する。
「労働」と「福祉」の中間点での思案
釜ヶ崎全体の困窮度が高まる中、従来からの課題も重くなる。
高齢者清掃事業の現状
事業主体 |
大阪府 |
大阪市 |
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仕事の出し方 |
大阪府勤労者福祉協会が(株)大阪環境整備に委託し、西成労働福祉センターヘ求人 |
西成愛隣会が社会福祉法人・大阪自彊館へ委託し、西成労働福祉センターへ求人 |
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期間 |
94年度 |
94.11.7〜95.2.28 |
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95年度 |
95.6.13〜95.8.19 95.12.5〜96.2.3梅雨期・年末など求人減少期 |
95年度 |
95.5.23〜96..3.31 通年 |
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96年度 |
96.5.8〜96.8.17(未定)梅雨期・年末など求人減少期 |
96年度 |
96‘4.2〜97.3.31 通年 |
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事業規模 |
94年度 |
一日30人 延べ3,000 |
94年度 |
一日20人 延ぺ2,000 |
95年度 |
一日20人 延べ2,230 |
95年度 |
一日10人 延べ3,530 |
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96年度 |
一日20人 延ぺ未定 |
96年度 |
一日20人 延ぺ未定 |
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対象者 |
55歳以上の地区日雇労働者 |
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作業内容 |
あいりん総合センターの清掃 |
地区内生活道路の清掃 |
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労働時間 |
13:45〜16:45 |
10:00〜15:00 |
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賃金 |
5,700円(雇用保険・健康保険印紙料控除後の金額) |
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紹介方法 |
西成労働福祉センターの窓口において登録 登録番号順による輪審紹介 当日紹介・当日就労 |
上の表は西成労働福祉センター労働組合が作成した「自立支援の新しい就労対策をめざして」(1996年10月)から転載したものです。
本年6月から下のように増員されています。
1.あいりん地区生活道路清掃について平成9年6月9日(月)から、休日(日曜日、祝祭日)の次の日に限り、1日6人増やし、1日26人の紹介となります。 2.あいりん労働福祉センター内清掃について平成9年6月16日(月)から、平成9年7月31日までの期間に限り、1日10人増やし、1日30人の紹介となります。 |
「高齢者清掃事業」が「労働対策」なのか「福祉対策」なのかはっきりとしません。現状では、「生活保護」も遠く及ばないほどの収入しか労働者にもたらさない原因が、その区分の不明確なことにあるとすれば、区分ははっきりさせられなければならないでしょう。
しかし、本当の原因は、単なる予算の出し惜しみに過ぎないように思えます。とりわけ大阪府はそうです。
釜ヶ崎の高齢化とそれに対する対策の必要は1980年代の初めからからいわれていました。福祉センターへの高齢者窓口設置・軽作業職域の開拓の要求は早くから言われていたのです。
要求の背景には、釜ヶ崎労働者の多くを生活保護の受給者とするのではなく、社会の中で役割分担し続ける労働者とすることが、社会のためにも労働者のためにもなる、とする考え方があります。
これを現実のものとするためには、公的援助が必要です。なぜなら、釜ヶ崎の労働者の「労働力販売者」としての経済的競争力が極めて低いからです。
労働力の社会的活用を促進するという側面から言えば「労働」問題です。困窮者への社会的援助という側面から言えば「福祉」問題です。行政の区分で切り分けることは、実務的でないと考えます。
もっとも、「こんな論議は不要である。労働も福祉もない。個人の責任で切り抜けるべきだ」という意見もあるかも知れません。ご意見を!