釜ヶ崎に新しい施策が必要

衆議院議員選挙アンケート結果

当会では、衆議院選挙にあたり立候補者へのアンケート調査をおこなった。対象は大阪小選挙区の77候補。5通が住所不完全で届かず、1通は差出人が記入されていなかった。よって、有効回答31通、うち当選者8名であった。

質問は以下の通り

@社会制度(年金・生活保護など)で生活を保障すべき高齢者とは、一般的に何歳以上であるとお考えですか。

イ・55歳以上 ロ・60歳以上 ハ・65歳以上 ニ・70歳以上 ホ・75歳以上

A長年の強労働を理由に、炭坑・港湾で働き続けた労働者の年金支給年齢は55歳とされています。建設・土木産業に長年従事してきた現場労働者にも同様の配慮が求められると思いますが。

イ・建設・土木産業の場合は、個々人の事情によるので一般的には答えられない。

ロ・配慮は当然なされるべきだ。

ハ・年金制度未加入あるいは国民年金加入者が多数と考えられるので、年金制度では対応できないのではないか。

ニ・建設・土木産業の現場労働者に配慮すれば、他産業の現業労働者にも配慮しなければならなくなるので困難。

ホ・配慮の対象にならない。

ヘ・その他(          )

B釜ケ崎(あいりん地区 )を知っていますか。

イ・知っている(a.知識として知っている・b.行ったことがある)

ロ・知らない( a.関心が無い  ・b.今後、関心を持ちたい)

C雇用審議会答申第23号では「65歳まで働き得るような社会の仕組みを作り上げていくことが必要である。」としています。現在釜ヶ崎では55歳以上を対象とした「高齢者就労対策事業」が府・市協力の下に実施されていますが、登録労働者900名に対して仕事数が極端に少なく、月に一度か二度の就労機会を与えているにすぎません。そのため平均年齢62.7歳の労働者の7割が野宿生活を余儀なくされています。地区の労働者を対象とした「高齢者事業団」の設置が求められていますが。

イ・詳しい事情が分からないので、判断を保留したい。

ロ・よく事情がわからないので、今後研究したい。

ニ・65歳までの就労システムづくりは早急に確立されるべきで、釜ヶ崎における必要は理解できる。

ホ・特定地域のことであり、地方自治体が立案し、国に提案すべき事柄である。その時点で判断したい。

ヘ・衆議院議員には関係のないことがらである。

ト・その他(        )

D大阪では現在一千人を超える労働者が野宿し、路上での死や少年たちの襲撃に直面していますが。

イ・もう少ししたら景気が回復する。それまでの辛抱だ。

ロ・労働問題を担当する大阪府、民生担当の大阪市、双方の努力を見守る。

ハ・縦割り行政の弊害が問題解決を遅らせている。「行政改革」が必要だ。

ニ・労働・福祉を統一した国政レベルでの新しい施策を考える時期だと思う。

ホ・都市のホームレス対策は、国で新しい対策を考えるべき時期にあると考える。

ヘ・よく事情がわからないので、今後研究したい。

ト・その他(         )

回答者は以下の通り(アイウエオ順)

相田勲(民主)・朝野弘樹(共産)・有川功(共産)・有沢志郎(自民)・石井郁子(共産)・石垣一夫(新進)・井上一成(民主)・請川清(共産)・奥田クスミ(自連)・小沢福子(無所属)・小野田隆(自連)・小畑勉(共産)・柏本景司(新社会)・加藤成一(無所属)・岸上倭文樹(共産)・小林ひとみ(共産)・佐藤啓二(共産)・佐藤恵(新進)・田端正広(新進)・長尾勝則(共産)・中野寛成(新進)・西野方庸(民主)・西森洋一(共産)・東中光雄(共産)・福西亮(自連)・藤井幸子(共産)・藤田スミ(共産)・古久保暢男(共産)・宮崎守正(共産)・柳河瀬精(共産)・山中智子(共産)・吉瀬孝子(共産)

ご協力ありがとうございました。

紙面の都合により各質問について最頻値だけを紹介する。

質問@ ロー21名

質問A ロー23名

質問B 全員知っているに記入。

質問C ニー27名

質問D ニー23名

「 65歳までの就労システムづくりは早急に確立されるべきで、釜ヶ崎における必要は理解できる。」と「労働・福祉を統一した国政レベルでの新しい施策を考える時期だと思う。」が多数意見であることは心強い。回答者の内当選者は8名であった。

なお、前回衆議院選挙では釜ヶ崎日雇労働組合が立候補者に質問を出し、今回回答者との重複者をのぞき下記の各氏から回答を得ている。

西村真悟・前田 正・谷口隆義・樽床伸二・藤村 修・福島 豊・吉田 治・近江巳記夫・佐藤茂樹・山本孝史

前回でも「国政レベルでの新しい施策を考える時期だと思う。」に意見が集中していた。上記の各氏は全員今回の当選者であるので、衆議院議員のうち18名が同意見ということになる。


参考資料

平成8年2月2I日 あいりん地区対策の総合的な推進に関する要望

総務庁長官 中西績介様

厚生大臣 菅直人様

労働大臣 永井孝信様

大阪府知事 山田勇
大阪市長  磯村隆文

大阪府と大阪市は、昭和36年8月の釜ケ崎騒動を契機として、今日まで30有余年にわたり、関係機関の協力の下、労働対策と民生対策を中心とする、あいりん地区に対する諸施策を鋭意講じてまいりましだ。

あいりん地区は、戦前にはスラム街を形成し、低賃金労働力の大きな供給源となっておりましたが、戦災、復興需要や朝鮮戦争の特需等によって労働カの都市集中が起こり、日雇労働者が全国から流入する我が国最大の日雇労働の拠点となりました。

労働者の流入により、多数の簡易宿所(ドヤ)が建てられ、地区の中心的建物となり、スラム街からドヤ街へとその姿を変えてまいりました。

近年は、簡易宿所の近代化、・高層ビル化が進み、街並みも大きく変貌いたしましたが、簡易宿所を拠点とする労働者の流動性、匿名性が高くなっておりますところから地域社会や近隣者とのつながりの薄い社会構造が形成されております。

日雇労働者はその就労形態から生活が不安定であり、特に高齢者においてこの傾向が強く見られるところでありますが、他の地域に比して著しく高齢化が進んでおり、長引く景気の低迷をきっかけに野宿者の増加等、深刻な社会間題として顕在化いたしております。

このため、今後ますます高齢化が進展するものと予想されますところから、より一層、深刻な事態に発展することを危倶いたしております。

あいりん地区は、さまざまな社会問題を内包しており、これらの問題への対応には労働、福祉、治安はもとより、生活環境、保健医療、住宅、社会教育、都市整備等、広範多岐にわたる行政施策を必要としており、また、全国に及ぷ日雇労働市場を抱えていることから、日雇労働者の高齢化問題と併せて、より総合的な取り組みが求められております。

したがいまして、地区対策の実施に当たりましては、国の全国的な観点からの総合的な取り組みが図られ、併せて、府・市・関係機関が一体となって対処しなけれぱ、実効を期することができないものと考えております。

大阪府・大阪市におきましては、緊急を要する各種の措置を中心に鋭意対策を講じるとともに、抜本的な改善には街づくりの視点が必要なところから、あいりん地区の中長期的なあり方について検討を進めておりますが、国におかれましても、総合的な、地区対策を推進されますとともに、当面次の事項の早急な実現につきまして、格段の御配慮を要望する次第であります。

1 生活福祉対策について 地区日雇労働者の生活等の安定に係る下記の地方単独事業について、国庫補助の対象とされたい。

@越年対策事業(施設設置及び運営費)

A社会福祉法人大阪社会医療センターによる医療援護事業

B緊急に保護を必要とする者に対する短期保護事業

C地区環境改善事業

2 日雇労働対策について 地区日雇労働者の雇用の安定及び労働福祉の向上に係る下記の地方単独事業について、国庫補助の対象とされたい。

@日雇労働者のための常用化促進事業、就労あっ旋事業

A日雇労働者のための各種福利厚生事業

3 地区対策の総合調整について

(1)地区の抜本的改善に係る対策の総合的調整を国において図られたい。

(2)地区における新しい街づくりの推進において、都市計画の策定や教育・文化を中心とした、コミュ三ティ施設の整備などについて一体的な取り組みを図るため、国における組織・財政等にわたる支援体制を整備されたい。