野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守る会会報 創刊号 1996/11/30


前史―「釜ヶ崎差別と闘う連絡会」

1983年横浜・寿で野宿者が少年たちに襲撃され、殺された。そのことを契機に「釜ヶ崎差別と闘う連絡会」が結成された。

釜ヶ崎の労働者からの仕事や生活についての聞き取り調査と報告書の発行、学者・研究者による二回の実態調査、新今宮小中学校跡地を地域労働者のために有効活用させるための活動への参加など多彩な活動を行ったと言える。

しかし、「釜ヶ崎差別と闘う連絡会」は、新今宮小中学校跡地が再整備され、利用が始まったことを現地視察で確認し、1993年にテレビ東京の番組「浅草橋ヤング洋品店」のコーナー「ヒッピーはヤッピーになれるか」について、テレビ東京並びにテレビ大阪と釜ヶ崎において現地諸団体と共に2回の話し合いをもち、謝罪の放映の後、目立った活動がとぎれた。

昨年10月、戎橋から道頓堀に野宿をしていた藤本さんが二人の青年によって投げ込まれ、殺された。そして、元釜ヶ崎差別と闘う連絡会代表幹事西岡智さんの呼びかけにより、「野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守る会」が発足することになった。

再開でなく新発足!

釜ヶ崎差別と闘う連絡会には「会計」というものは存在しなかったが、野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守る会は、西岡さんの働きかけで寄せられた大口のカンパを基礎資金に活動が始められることになった。そして、会則も作成される。

会計基盤と会の運営の明確化を追求し、持続的な活動が目指される。

今後は、会の大きな目的と具体的な課題を多くの人に伝え、理解してもらい、協力を得られる体制づくりが肝要であると考える。

「会報」は、その役割の一端を担うものとして発行される。なお、発足人事として、代表ー西岡智・事務局長ー野口道彦・事務局次長ー黒田伊彦・監査ー本田哲朗が確認されている。


 ー野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守る会発足第一号行事として開催ー

8月3日、大阪府同和地区総合福祉センターにおいて、『路上死のない21世紀をめざして・釜ヶ崎フォーラム』が開催されました。

準備期間が十分ではない中で、多くの人の協力を得られたおかげで、充実した内容のフォーラムとなったことを感謝しています。

当日の報告内容については、テープおこしが終わっているので、年内にパンフレットとしてまとめ、さらに詳しくお知らせできるものと思っています。乞う、ご期待。今号では、部落解放研究所の「研究所通信」(96/9.No217)に掲載された黒田伊彦さん(当会事務局次長)の報告を転載させていただき、それをもって報告に変えせていただきます。

行政・町内会の参加を・・・ 関西大学 森井@教授提起

「釜ヶ崎差別と闘う連絡会」の世話人でもあった関西大学法学部の森井@さんから、当日意見を求めたところ発言の中で、「次回フォーラムには是非とも行政や地元町内会の人々の参加を求める努力を」と次のフォーラムに向けての貴重な提起がなされました。

今回のフォーラム開催にあたっても、大阪府や大阪市に後援の依頼、出席を要請したほか、地元の組織と言うことになっている「あいりん会」にも参加を呼びかけました。しかし、いずれも実現しなかったのが現実であり、会の目的を達成する前提として、今回参加してもらえなかった諸団体・組織に参加してもらえるフォーラムを目指さなければならないと考えています。

森井さんの提起を真剣に受け止め、次のフォーラムに向けて努力を積み重ねていきたいと考えています。


会を支えてください

会は発足したばかりで、会員は一桁にとどまっています。まだ実績もわずかで、先行きも定かではありませんが、少なくとも、年間350名といわれる西成区の行旅病死者の多さを何とか減少させるために力を尽くしたいと考えています。「人権」の基本は「生存権」にありますが、それが奪われている現実は、早急に改められなくては成りません。

会員となって、目的達成のためにあなたの力を加えてください。

入会の意思表明は、下記「野口研究室」宛にお願いします。

〒558大阪市住吉区杉本3-3-138

大阪市立大学同和問題研究室内

野口道彦研究室気付「野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守る会」

なお、会費・カンパの送金は郵便振込でも可能です。

口座番号―00960−4−122746番

「野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守る会」

また、運営会に参加希望の方、日常活動にも関心をお持ちの方は(勿論、行事・運営会は極力全会員にお知らせはしますが)、一筆加えていただければ幸いです。

当会の会報を、大阪府議会議員名簿・大阪市会議員名簿・あいりん会名簿記載の各氏には送付し続けようと考えています。これらの人々の理解を得ることが会の目的達成のために必要だからです。

要望・ご意見を

今回会報は、会報の名前も含めて見本のようなものです。次号からは、釜ヶ崎の具体的な情報も伝えられるようにしたいと考えています。

会員・非会員を問わず、会や会報に対するご意見・ご要望を大阪市立大学同和問題研究室気付でお寄せいただきますようお願いいたします。釜ヶ崎に関する質問でも結構です。よろしく。

 釜ヶ崎のことが一冊の本でよく分かる。そんな本が、「釜ヶ崎―歴史と現在」です。釜ヶ崎資料センターが編集したもので、書き手のほとんどが10年以上釜ヶ崎に関わっている人たち。一読に値、と、推薦します。


野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守る会会則案

第一条 名称

 本会は、「野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守る会」と称する。

第二条 目的

 本会は、野宿者と釜ヶ崎労働者の社会的処遇の改善を促し、もって野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守ることを目的とする。

第三条 所在地

 大阪市立大学同和問題研究室内野口道彦研究室を連絡先・所在地とする。

第四条 会員

 本会の目的に賛同し、所定の会費を納入する者を会員とする。

第五条 事業

第二条の目的を達成するために以下の活動を行う。

@野宿者・釜ヶ崎の状況把握のための調査・研究活動。

A第二条の目的を達成するために必要な広報活動。

B第二条の目的を達成するために必要な計画の策定とその現実化に向けての必要な諸活動。

C本会の目的に共感する諸個人・団体・企業から寄付を募る活動。

D必要と認められる釜ヶ崎現地活動団体への支援活動。

Eその他上記に関係する一切の事業。

第六条 運営

@年一回、全会員に通知し、総会を開く。

A総会の議事は、人事・会計報告・活動    報告・その他必要な事項とする。

B会員は、総会並びに会報において、会の運営につき意見を述べることができる。

C会の運営のため、次の役職を設ける。

代表 一名・副代表 一名・事務局長 一名・事務局次長 一名・監査 一名・事務局員 若干名

D運営のため随時「運営会」を開く。「運営会」には参加を希望する会員は誰でも参加でき、意見を述べ、決定に加わることができる。

E会計は事務局長が掌握し、監査役が監査する。また、会員は会計簿の閲覧をし、会計を点検することができる。

F会費・役員の任期その他については、細則を持って定める。

野宿者と釜ヶ崎労働者の人権を守る会細則

第一条 人事は、会員の自薦・他薦により、総会出席会員の三分の二の賛同を得て決する。任期は総会から総会までとし、再選は妨げないものとする。

第二条 会費は次のように定める。

@会報購読会員―一カ年三千円

A会員―一カ年五千円

賛助会員―一口一万円

但し、本会の目的を達成するために特に必要と認められる者については、当人の了解を得た上で特別会員とし、会費を免除することができる。

第三条会則は、会員の発議により、総会出席会員の三分の二の賛同を得て改訂される