農本思想の社会史-生活と国体の交錯 岩崎正弥著
1997年2月 京都大学学術出版部
序章 課題と方法
第1節 課題
1.農本思想研究の整理/2.本書の立場と課題
第2節 分析視角と構成
第1部 大正期「<自然>委任型」農本思想
第1章 帰農思想の特質-新たな生活世界の創造
はじめに
第1節 帰農の背景と帰農への批判
第2節 新たな生活世界の創造-<自然>への全面的自己委任
1.喜びとしての農業労働/2.<自然>への全面的自己委任/3.新たな生活世界の創造としての帰農生活
第3節 15年戦争下の帰農生活者-帰農の客観的意義
1.帰農からの離脱/2.帰農の持続
むすび
第2章 江渡狄嶺の「農行」思想-生活哲学の可能性
はじめに
第1節 狄嶺の帰農
第2節 <場>と<行>の思想
1.家稷農乗学/2.戦時下流行の「行」批判
第3節 狄嶺と国体・天皇・戦争
1.国体論・天皇論/2.戦争観/3.後期狄嶺の変質
むすび
第3章 石川三四郎の「土民生活」-権力への抵抗-
はじめに
第1節 「土民生活」の源泉
1.抵抗の原点/2.永遠性への依拠-<自然>の発見
第2節 15年戦争下の石川三四郎
1.運動の挫折/2.東洋文化史研究/3.「土民生活」の特質
第3節 「土民生活」と農本主義
1.石川の農本主義批判/2.石川の「複式網状組織」論/3.「土民生活」の有効性をめぐって
むすび
第2部 昭和恐慌期「<社会>創出型」農本思想
第4章 農本連盟の歴吏的位置とその思想-農本イデオロギーと<地域社会>構想
はじめに
第1節 昭和恐慌期の農村
1.農村窮乏の実態/2.都市・農村不均衡論
第2節 農本連盟の結成
1.日本村治派同盟/2.農本連盟(「農民」派の運動と思想 農本連盟の共通認識)
第3節 農本連盟の<地域社会>構想をめぐって
1.山崎延吉の農村建設論/2.地方計画から国土計画へ
むすび
第5章 規範と自治の<地域社会>構想-岡本利吉と権藤成卿を中心に
はじめに
第1節 岡本利吉の規範社会構想
1.協同社会創出構想の系譜/2.岡本利吉の規範社会論(規範経済学 規範社会論)
第2節 権藤成卿の自治社会構想-雑誌『制度の研究』を通して
1.権藤の社稷自治論(雑誌「制度の研究」に関して 「社稷」理念の三つの特質 権藤の社稷自治論)/ 2.権藤の歴史的位置(農本主義運動における位置 日本主義批判 軍部独裁批判=議会制擁護 ファシズム批判)/3.権藤の自治社会構想
第3節 岡本と権藤における<地域社会>構想の歴史的意味-むすびにかえて
第6章 農本主義運動、その理念と現実との緊張-白山秀雄の行動の軌跡と兵庫・静岡両県での運動の実態を通して
はじめに
第1節 農本主義運動の勃興-農村青年共働学校入学と但馬での共働運動
1.農村青年共働学校での生活/2.郷里・但馬での共働運動
第2節 農本主義運動の活発化のなかで-純真社での活動と静岡県での農本自治運動
1.農本連盟の分裂-自治農民協議会と先駆者同盟の対立/2.静岡県での農本自治運動(共働運動から請願運動へ飯米闘争の実態)/3.地方農本主義運動のゆるやかに共有された生活世界
第3節 農本主義運動の終息-帰農から民芸への転回と農杢圏治運動の失敗
1.帰農から民芸へ/2.農本自治運動の挫折(永田新司郎と郷倉運動 太田良元治と医療自治運動)/3.農本自治運動の分裂
第4節 「<社会>創出型」農本思想の変質-むすびにかえて
第3部 戦時期「<国体>依存型」農本思想
第7章 総力戦体制下の農本思想-国体論との結合
はじめに
第1節 「<国体>依存型」農本思想の特質
1.戦時下の農村/2.戦時下の国体論/3.戦時下農政思想-「国本」としての農本思想
第2節 農政イデオローグの葛藤-有馬頼寧と加藤完治を通して
1.有馬頼寧の農本思想/2.加藤完治の農本思想
第3節 戦時下農民文学の視線
第4節 戦時下の農本主義運動-農本自治からの転回
第5節 「<国体>依存型」農本思想と戦時下農村厚生運動-むすびにかえて
第8章 戦時下農村保健運動の歴吏的意味-滋賀県湖北地域を事例として
はじめに
第1節 人的資源論と厚生運動
第2節 戦時下の国民健康管理と農村
第3節 滋賀県湖北地域における戦時下農村保健運動-長浜保健所の活動を中心として
1.1938年度の活動/2.1939年度以降の活動/3.指導の実態(農繁期共同炊事 健民特別指導)
第4節 戦時下農村保健運動の特質-むすびにかえて
第9章 農民道場の「訓育」実態-大阪藍野塾卒業生へのアンケート調査から
はじめに
第1節 藍野塾の設立とその「訓育」内容
第2節 農民道場生の意識構造
1.アンケート調査の内容紹介/2.考察
第3節 戦時下農村厚生運動の歴史的意味をめぐって-むすびにかえて
終章 農本思想の歴吏的・現代的意味
第1節 農本思想の変質
第2節 農本思想と生活世界
1.生活世界論からみた農本思想の変質/2.農村生活世界の構造変質をめぐって
第3節 農本思想の通説批判
あとがき